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2015.12.24

どれもたまらなくドラマティック。それがアルファ ロメオのスパイダー

アルファ ロメオは戦前からオープンスポーツカーをつくり続けてきました。今回は最新の4Cスパイダーの登場を機に、それぞれの時代を彩ってきた代表的なモデルを振り返り、アルファ ロメオのスパイダーがなぜこうも人々を魅了するのかを探ってみたいと思います。

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最速のスパイダー、ついに発売

東京モーターショーのアルファ ロメオ・ブースで、4Cスパイダーが日本デビューを飾ったことは、皆さんもご存じのことと思います。2015年の1月にアメリカでお披露目されて以来、実車を見ることができるのを今か今かと待ちわびていたファンも多かったことでしょう。アジア初公開ということも手伝ってか、開催期間中は常に来場者に囲まれているような状態でした。

151215_Alfa_02写真:小林俊樹

4Cスパイダーは、本国仕様の数値を参考にするなら、最高速度は257km/hとクーペより1km/hほど低いだけで、0-100km/h加速は4.5秒とまったく変わりません。その運動性能の高さから“史上最速の市販アルファ ロメオ”と評された4Cが、パフォーマンスそのままにオープンカーになったわけです。でも、それを実現させるのは、おそらく大変なことだったでしょう。4Cというスポーツカーは、“軽さ”が命。オープンカーというのはルーフの部分が開けた構造になるわけで、そうすると元々の車体の剛性をキープすることができないという宿命にあるからです。

そのためアルファ ロメオは、フロントウインドーを取り囲むフレームの部分を新たにカーボンファイバーで強固に作り直し、カーボンモノコックに接着した上でボルト留めするとともに、頭部後方にアルミ製のロールバーを設けてカーボン製のアウターで覆う、という手の込んだ方法で、重量増を抑えつつ剛性を確保しました。トップがハードなパネルではなく、取り外してクルクルと巻き収納できるファブリック製とされているのも、ウインドーガラス類が10%ほど薄手にされているのも、すべて軽さにこだわったがため、です。結果、クーペに対してたった+10kgという、異例なほどベース車両と重量差のないオープンカーができあがりました。

151215_Alfa_03東京モーターショーで披露された4Cスパイダー。F1マシンばりにプリプレグ方式でつくられるカーボンファイバー製モノコックに、オールアルミ製の4気筒ターボの1750ユニット(240ps/35.7kgm)とデュアルクラッチ式トランスミッションのアルファTCTをミドシップマウントする。写真:小林俊樹

クーペと異なる箇所はまだまだたくさんあります。ひと目でわかるのは、まずヘッドランプ。クーペのクールな表情を見せるバイLEDヘッドランプから、別デザインの穏やかな表情を浮かべるバイキセノン・ヘッドランプに変わりました。またクーペのファストバックスタイルを踏襲するのではなく、ロールバーからテールエンドにかけてのデザインが、垂直に落ちたリアウインドーと左右の切り欠き、それにデッキ型のエンジンフードを持つ古風なミドシップらしいものとなり、それが逆に4Cならではの抑揚を強調し、エレガンスを濃厚にしています。文句なしの美しさ、です。

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4Cクーペのルーフの部分を切り取ってソフトトップに換えただけのように思われがちだが、実は色々なところが異なっている。

こうしてざっと見ただけでも、4Cスパイダーが4Cクーペのスポーツカーとしての鮮やかなパフォーマンスをまるで損ねることなしに、オープンエアの堪らない心地よさ、そしてデュエットクルージングの時間に出掛けたくなるようなエレガンスを手に入れていることが、簡単に想像できてしまいます。そして、これまでアルファ ロメオの歴史の中に登場してきた多くのオープンエアモデル達の、紛うことなき末裔であろうことも……。

操る喜びにも美しさにも、手を抜かない伝統

アルファ ロメオは戦前の時代から、オープンスポーツカーをほぼ絶やすことなく作り続けてきたメーカーです。それらのモデル達には、見過ごすことのできない共通点が必ずあったのでした。ひとつは、スポーツカーである以上、ドライバーがひとりで走ることに没頭したいときに存分に応えてくれる、操縦する楽しさとパフォーマンスを持っていること。そしてもうひとつは、ベースとしたクルマとは異なる造形が与えられ、悪目立ちのしない美しさのある印象的な存在感を放っていること。インスタントにつくられたモデルとは一線を画した手の込みよう、という点も共通しているといえるかもしれません。

それはおそらくアルファ ロメオのフィロソフィの成せる技。屋根がないことで得るものがある代わりに失うものがあるのも道理で、それを補って余りある何かをひとつふたつ盛り込まずにはいられないのは、ドライバーが“快”を感じられるクルマしか作らないというDNAの表れだと思います。時代ごとにできることや許される範囲は当然違ってきたわけですが、オープンスポーツカーにおいても常に“アルファ ロメオなのだから”ということを強く意識したクルマ作りが脈々と行われてきたことの証なのだろう、と僕は考えています。

さて、そんな歴代スパイダーのなかから皆さんにも馴染みのあるモデル達を、いくつか並べてみましょう。

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ジュリエッタ・スパイダー(1955年〜)
ベルトーネによるクーペ、社内デザインのセダンという似て非なるスタイリングの他のジュリエッタとは明らかに違う、ピニンファリーナがデザインした流麗なスタイリングが特徴的なジュリエッタ・スパイダー。その美しさは今もって評価が高い。クーペの高性能版と同じエンジンを持つモデルもラインアップされ、またクーペよりも20kgほど車重が軽くホイールベースが短かったこともあり、走りのパフォーマンスでは引けを取らなかった。

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スパイダー(初代/1966年〜)
初代ジュリアのバリエーションとして登場。映画『卒業』でよく知られる通称“デュエット”に端を発するまろやかでスレンダーなフォルムは長く愛され、マイナーチェンジを受けながら1990年代まで生産され続けた。パフォーマンスの面でも常にクーペの高性能グレードと同じエンジンが与えられ、車重こそ補強のおかげでクーペより少々重くなったものの、空気抵抗に優れていたこともあり、時代的に重要視されはじめていたグランツーリスモ性能では、むしろクーペを上回っていた。

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RZ(1992年〜)
サルーンのアルファ75をベースに開発されたスペシャルモデル、2代目SZの特徴的なルーフラインを切り落としたオープン版。同じパワーユニットを持つクーペのSZより車重が100kg以上重かったが、重心の高さがクーペと比べて低く、それを活かしたサスペンションのセッティングが行われているせいか、クーペより明らかにヒラリとした軽快感の強いテイストを持つ。史上最も美しい音色を奏でるといわれる伝統的なV6エンジンのサウンドを生で浴びられる点も、ファンには堪らない。

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スパイダー(2代目/1995年〜)
まるでコンセプトカーのような大胆なスタイリングを持つ2代目スパイダー。ルーフの有無以外はほぼ共通したデザインのクーペもあり、メカニズム的に全く同一なクーペに車体剛性で若干劣りはするものの、屋根がないことで持ち前のエッジの効いた大胆なデザインがより鮮烈に強調されたスタイリングとなっている点ではスパイダーに軍配があがる。またこの当時はツインスパークにアルファV6とサウンドに特徴があるエンジンが載せられていたため、音フェチには圧倒的にスパイダーが人気だった。

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8Cスパイダー(2008年)
4Cのひとつ前のスペシャルモデル、8Cコンペティツィオーネのオープン版。ルーフを切り取ったことでリアフェンダーの膨らみがさらに強調されるデザインとなり、印象の強さも強調された。フロントウインドーのフレームをカーボンでつくり直してカーボンモノコックに接着、ボルト留めする剛性確保は、このモデルから。燃料タンクの位置を換えて前後の重量配分を調整するなど、運動性能のキープにも細心の注意が払われている。大排気量V8ユニットの甘美な咆吼をダイレクトに味わえるのも、オープンモデルならでは。

──と駆け足でサラッと紹介させていただきましたが、それぞれその時代におけるポジショニングも目指した方向性も少しずつ異なっているわけですが、これらのクルマ達に試乗した後、決まって感じていたことがあったのを思い出しました。それは“何てアルファ ロメオらしいのだろう……”ということでした。考えてみれば、ある意味では屋根のないアルファ ロメオほど“らしさ”が強く感じられるクルマはないのかもしれない、なんて思ったりもします。

スパイダーの“快”はどこまで膨らむのか

アルファ ロメオはどのモデルも押し並べて、乗って出ることを思い浮かべただけで、キーを手にして立ち上がっただけで、そして走り出してみればもちろんのこと、愛すべきありきたりな日常の中にポッと非日常ともいうべき特別な灯を点けてくれるようなところがあるクルマ達です。他のブランドのクルマ達とは異なる独特の美意識溢れるスタイリングデザインを眺める“快”、それに身を浸していけることの“快”、長い歴史と伝統が滲み出てくる誇り高い空気に包まれることの“快”、情熱的なエンジンのパワーやサウンドの高まりを自分で引き出してコントロールできることの“快”、自由そのものを無意識に連想させるマジカルなハンドリングの“快”……と、全ての“快”が渾然一体となって、ここではないどこか違う心地良い世界へ、単に物理的にではなく心ごと、いともたやすく連れていってくれるようなところがあるからです。

自動車はA地点からB地点までの移動装置という役割を担う乗り物ですが、アルファ ロメオは瞬間的にエモーショナルな世界へと自分を運んでくれる移動装置でもあるのです。“アルファ ロメオらしさ”という言葉の中には色々なモノが詰まっているのだけれど、僕はこれこそが“らしさ”の最たるモノ、というような気がずっとしているのです。スポーティなクルマはいくらでもあるし、惹かれる姿をしたクルマも他にあるけど、そうした諸々を超越したところで、どこかたまらなくドラマティックであるように感じられてならないのです。

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そのうえ、オープンエアです。トップを開け放てば“空間”という軛から解き放たれ、風や光や音や空に生身で触れることができ、少し大袈裟にいうなら宇宙と一体化するような気持ちよさまで味わえてしまいます。それがアルファ ロメオ特有の“快”に混じり合ってエモーションを大きく増幅させるから、テイストが何倍にも濃厚なものに感じられたりするのです。

これまでのアルファ ロメオのオープンモデルは、すべてそういうクルマでした。歴史と伝統が証明しているようなものですね。4Cスパイダーも、その血筋がしっかりと脈打つスポーツカーになっている、と僕は予想しています。走らせることのできる日が、待ち遠しくて仕方ありません。

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