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2016.06.30

ひとりのイタリア人がチョコレートの未来を変える ―DOMORIで味わうカカオの魅力―

世界的に有名なチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で賞を獲得したショコラティエの多くが、近年、あるブランドのチョコレートを原料にしているという。それが、ピエモンテ州トリノの「DOMORI(ドモーリ)」。イタリア人ジャンルーカ・フランゾーニ氏のこだわりと情熱が結実した大注目のブランドだ。

何気なく、馴染みのあるチョコレートと思って口にすると、少なからぬ衝撃を受ける。何の前情報もなく味わえば「なぜここまで豊かに香るのか?」と、好奇心にかられることだろう。

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ウイスキーとチョコレートが好相性なのはご承知の通り。「DOMORI」なら完璧なマリアージュとなる。

軽やかでマイルドな口どけ。チーズのようなクリーミーかつ繊細な旨味。フルーツでも入っているのかと思うほど豊かな香り、心地よい甘味。エスプレッソにはもちろん、お酒と合わせたくなる味わい・・・そんな褒め言葉で称えられるDOMORIの味や香りを支えているのはアロマティック・カカオ。その豊かな芳香で、チョコレートの概念と未来を変えてしまう逸品である。

重要なのは、カカオ自体の遺伝子

「チョコレートのクオリティを決めるのは、50%が遺伝子、25%が発酵、15%が焙煎、残り10%がコンチング(実際に味を決める、焙煎後の工程)です」。そう語るのは、DOMORIの創始者、ジャンルーカ・フランゾーニ氏。コーヒー豆同様、カカオ自体の品質が重要なのは言うまでもないが、質を決定づけるのは産地ではなく遺伝子なのだという。カカオの風味を活かしたチョコレートを作るという点でDOMORIが実際に世界をリードしていることを考えれば、彼がたどりついたこの結論は正しいといえる。

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Gianluca Franzoni: DOMORI創始者であり社長。大学卒業後、ベネズエラ滞在中にカカオの魔法に魅了される。良質なカカオがないがしろにされ、労働者の状況もよくないことを知り、研究をスタート。以来、アロマ性の豊かな高品質カカオの生産から発酵・焙煎など全行程において最良の状態を維持しながら最高級のチョコレートを生み出している。DOMORIの名は、彼が小説を書いていたときのペンネームから。〈写真提供/DOMORI〉

DOMORIには、通常チョコレートに添加されるカカオバターや香料などは一切含まれていない。創業時から一度も加えたことはないという。なぜなら、何も足す必要がないから。仮に足してしまえば、カカオが持つ豊かな香りやまろやかでクリーミーな食感を邪魔するだけだという。カカオ豆の重要性を考慮せず、ミルクやカカオバターを加えることで口どけや味を追求しているチョコレートとは、まさに“遺伝子レベルで”異なるのだ。

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〈写真提供/DOMORI〉

カカオを知り尽くした男が作り上げるチョコレート。日本で味わうなら、輸入元NONNA&SIDHIの直営店へ。DOMORIのタブレット約45種がずらりと並び、試食もできる。カカオマスときび砂糖のみを使用したダークチョコレートは、シンプルかつベストな方法で作られているので、風味の差がはっきりと打ち出され、品種による違いがダイレクトに感じられる。食べ比べの面白さを体感してほしい。

ひとりの男の人生を変えるほどのカカオとは?

今回とくにおすすめしたいのは、ジャンルーカがベネズエラで出逢い、その後の人生を変えるきっかけにもなった「クリオーロ」という品種。

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希少種クリオーロ100%というプレミアムなタブレット。一般的なチョコレートは、砂糖で甘味を加えるが、こちらの原材料はカカオマスのみ。ほのかに感じる甘味は、カカオ本来の味だ。口当たりは驚くほどマイルドでクリア、そして適度な酸味とフルーティーな香り。本物のカカオは、それだけでおいしいのだと教えてくれる/イル100%クリオーロ 25g 800円

現在、市場に出回るカカオの約90%は病害虫に対する耐性が強く栽培の容易な「フォラステロ種」だが、これは苦味や渋味が強い。対して、ジャンルーカが魅了された「クリオーロ」はカカオの原種といわれ、最も風味が豊かで高い品質を誇る。が、傷みやすく収穫率も低いため、全体の0.001%未満ほどしか生産されず絶滅寸前だったのだ。ちなみに、残る約2%はフォラステロの交配品種である「ナショナル種」、約8%はフォラステロとクリオーロ双方の性質を受け継ぎ、栽培しやすく品質も高い「トリニタリオ種」である。

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「クリオーロの父」とも呼ばれる古代品種で、希少価値がとくに高い「グアサーレ」。グアサーレの農場で探し当てた木を自社の契約農場に持ちこみ接ぎ木をして増やしている。まろやかでエレガントな口どけとインパクトのある香味で、力強さと繊細さを併せ持つ。カカオ70%にしては明るめな色だが、これはクリオーロ種のカカオ豆が真っ白だから(ゆえに渋味も少ない)/グアサーレ25g 870円

大量生産に適した他品種におされ、絶滅の危機に瀕していたクリオーロ種を、より原生品種に近づけ復活再生させること。クリオーロだけでなく、香り豊かで苦味や酸味の少ない理想的な「アロマティック・カカオ」の魅力を世界に広め、素材感をそのまま味わえるチョコレートを製造していくこと。それがDOMORIの使命なのだ。

びっくりするほど、お酒に合う味!

DOMORIを味わっていると、単なる「お菓子」ではなく「お酒に合わせたい」「食事の流れのひとつに加えたい」というイメージが浮かぶ。

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豊かな風味のおかげでほんのひと口でも十分な満足感が得られるので、小さく割ってちびちび味わうのもいい。ドライフルーツは言わずもがな、ゴルゴンゾーラやグラナパダーノなどチーズとも非常に相性がいい。そして、生ハムとも。ワインのつまみにワンプレートで出すのもおすすめだ。

朝、お茶やコーヒーと一緒に楽しむのはもちろん、暑い日に冷えたスプマンテやビールと一緒につまむシーンも、深夜にブランデーやウイスキーと一緒にじっくり味わうシーンも、容易に想像できるはず。

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トリニタリオ種のダークチョコレートに唐辛子をブレンドした、イタリア人らしい遊び心が詰まった「ペペロンチーノ」。トリニタリオのとろりとした甘味が長く持続し、ピリリとスパイシーな唐辛子の後味がほどよく残る。好きなお酒と一緒にぜひ。

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ビールと合わせるなら軽めのピルスナーやヴァイツェンではなく、スタウトやストロングエールなど色の濃いビールを。写真は、NONNA&SIDHIで販売されているイタリアの「アイキュベ」。シャンパン製法の繊細な泡立ちと濃厚な味わいが同居し、魚の燻製や肉、チーズに合う。DOMORIでも「チョコレートにぴったり」と薦めているそうで、絶妙なマッチングが楽しめる。

ひとりのイタリア人と1本のカカオの木との出逢いがきっかけとなって誕生したDOMORI。これまでにない豊かな香りと繊細な味わいが、チョコレートに対する価値観を変えることだろう。

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店内ではDOMORIイルブレンド70%を使用したチョコレートドリンクも提供されている(Hot/Cold共に500円+税)。日本で飲めるのはここだけ。

NONNA&SIDHI SHOP
渋谷区恵比寿西2-10-6-102 03-5458-0507
営業時間:11:00〜19:00
日曜・祝日定休

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
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