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2015.01.09

アルファロメオに乗る。 それは情熱と喜びを燃料に走ること。(第8回)

四葉のクローバーは、特別なモデルの証

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。今回は2015年の最初のコラム。新年の幕開けというタイミングで、アルファ ロメオ・ファンの皆さんにもうひとつの「おめでとう!」なニュースをお伝えできることを嬉しく思います。

そうです。本日、1月9日の午前11時、千葉県の幕張メッセで開催されている東京オートサロンの会場で、すでに予告されていたKEN OKUYAMA DESIGNとのコラボレーション・モデルと並んで、ジュリエッタのハイパフォーマンス・モデルである“クアドリフォリオ ヴェルデ”が発表されたのです。ジュリエッタ・クアドリフォリオ ヴェルデは昨年のジュネーヴ・モーターショーでワールドプレミアとなり、情報通のファンの間では以前から日本への上陸が期待されていましたが、今回は突然のアナウンス。新しい年のスタートに相応しい、とても嬉しいサプライズになりました。

“クアドリフォリオ ヴェルデ”という呼び名は、アルファ ロメオの熱心なファンにとっては馴染み深く、けれど特別な響きを持つもの。直訳するなら“緑色の四つ葉”、つまり四つ葉のクローバーを意味します。

その四つ葉のクローバーが、なぜアルファ ロメオにとって特別なのか。お話は1923年の4月15日にまで遡ります。それまでレースを勝てそうで勝てなかったアルファ ロメオのファクトリー・ドライバー、ウーゴ・シヴォッチが、自分のマシンに白地に緑色のクローバーをあしらったマークをマシンに描いてシチリアで行われたタルガ・フローリオという公道レースに出走し、逆転優勝を果たしたのでした。以来、アルファ ロメオのレーシングカーには幸運を呼ぶシンボルとして同じマークがあしらわれるようになり、四つ葉のクローバーは数々の栄光を見守ってきたのです。それにちなんで、1960年代の後半からはロードカーの中の高性能モデルにも、他のモデルとは異なる特別な存在である証として、そのシンボルと名前が冠されるようになったのでした。

まごうことなき、史上最速のジュリエッタ

そうしたロマンティックなストーリーに心を躍らせることができるのもアルファ ロメオの魅力のひとつなわけですが、それはとりあえず横に置いておくとして、晴れて日本の地を踏んだ新しいクアドリフォリオ ヴェルデも、その伝統を受け継ぐのに相応しいモデルということができるでしょう。現在の3代目となるジュリエッタには以前にも同じ名前の高性能モデルがラインナップされていましたが、新しいジュリエッタ・クアドリフォリオ ヴェルデはさらにパフォーマンスを上げています。

最も大きな違いは、そのパワートレーン。旧型は最高出力235ps/5500rpm、最大トルク34.7kgm/1900rpmを発揮する1742ccの直列4気筒DOHC直噴ターボと、3ペダルの6速マニュアルトランスミッションとの組み合わせ。対する新型は、同じ1750ユニットながら、世界的な評価の高いスーパースポーツカー“4C”のパワートレーンを移植したかたちです。エンジンのスペックそのものは最高出力240ps/5750rpm、最大トルク34.7kgm/2000rpmと大幅に向上したわけではありませんが、新しい1750ユニットはシリンダーブロックがアルミ製とされるなどでエンジン単体の重量が22kgも軽くなっており、また2ペダルのデュアルクラッチ式トランスミッション、Alfa TCTと組み合わせられたことで、0-100km/h加速タイムが6秒ジャストと、0.8秒も速くなっています。また日本の交通環境を考えればあまり関係ないともいえますが、最高速度は244km/h(欧州参考値)という堂々とした数値です。

そのパフォーマンスを支えるために、当然のごとく専用のスポーツサスペンションが与えられ、ブレーキもフロントにブレンボ製のキャリパーとφ320のディスクが備え付けられるなど、強化を受けています。それ以外にもサポート性の高い専用のスポーツシートが採用されたり、ペダルがアルミ製の専用品となるなど、細かい部分を挙げていくとキリがないのですが、あらゆる部分がスポーツ性能とGT性能を高めるための仕様とされています。

スタンダードなジュリエッタは同じ直列4気筒の直噴ターボながら、排気量は1368ccで、最高出力は170ps/5500rpm、最大トルクは25.5kgm/2500rpm。それですら走らせてみれば充分な速さと楽しさがあって、思うがままにスポーティなドライブを堪能できるモデルであることは、前回のコラムで触れたとおりです。それより65ps高く、0-100km/h加速タイムで1.7秒も速くなっているジュリエッタ史上最速の新型クアドリフォリオ ヴェルデ。走らせてみたらどんな印象を与えてくれるのでしょうか? 興味津々ですよね?

ダッシュが違う、伸びが違う。その名を誇れる熱い走り

特別なジュリエッタであることは、走り出して30mもいかないうちに直感できます。いや、キーを捻った直後に、と言い換えてもいいかも知れません。エンジンのサウンドが違うのです。乾いていて、やや野太く、迫力を増した音質。クアドリフォリオ ヴェルデのエンジンは、奏でる音質にもしっかりとチューニングを受けていて、音色がもっさりとした印象になりがちなダウンサイジング系ターボ・エンジンの中では最上級といえるほどの快音を聞かせてくれるのです。とりわけ4000rpm辺りからトップエンドまで伸びていくときの音色は、かなり刺激的。一気に高揚させられます。

30mもいかないうちにと記したのは、身体に伝わってくる路面の表情が、あきらかにダイレクトに感じられるから。サスペンションがかなり締め上げられていることが判るのです。スプリングのレートやダンパーの減衰が数値の上でどのくらい変わっているのかは判りませんが、スタンダードなジュリエッタから乗り換えたら即座に判るという程度には固いです。そして固いは固いのですが、ありがちな“サスペンションを締め上げたから乗り心地が酷くなった”という感じはありません。足がしっかりと伸び縮みしている感覚はちゃんとあって、日常的な街中でのドライブに不快を感じることは皆無でしょう。乗り心地は充分に家族で使えるレベルが保たれています。Alfa TCTがAT車としても機能してくれることもあって、これまでは家族の誰かがAT車限定だったために高性能モデルを諦めざるを得なかった人でも、堂々と候補に入れることができるでしょう。

高速道路に侵入して速度が高くなると、クアドリフォリオ ヴェルデの足腰はしなやかさを増していきます。「Natural」モードのままですらスロットルをちょっと踏み込むだけでスッと速度を上げてくれるエンジンの力強さが全域に渡ってあり、走行中の流れを作りやすいし、しなやかに動きながらしっかりと路面を踏みしめているような安定感もあって、高速移動がかなり楽にこなせます。長距離を走るときの疲労の度合いも、かなり少ないことでしょう。もちろんモードを「Dynamic」に切り替え、シフトダウンしてスロットルを深く踏み込めば、爽快というよりは豪快ともいうべき息の長い加速を味わうこともできますが、いともあっさり禁断のスピードに達してしまいます。GT性能に関して、まず文句の付けどころがありません。

けれど、クアドリフォリオ ヴェルデの真髄をフルに堪能できるのは、やっぱりワインディングロードでした。4C譲りのパワーユニットとAlfa TCTは、心躍るような速さをジュリエッタに与えてくれました。スタートダッシュが違う。中間加速が違う。スピードの伸びが違う。しかもジュリエッタは、もともとハンドリングに関してはピカイチといえるほどの優れたパフォーマンスの持ち主です。そのうえシャシーはこれまで以上にタフなコーナリングを容易に受け入れてくれるセッティングになっています。だから、速い速い。4座以上の2リッター以下のクルマでこれほどの速さを楽しませてくれるクルマは、他に1〜2車種しか知りません。いわゆるホットハッチと呼ばれるカテゴリーの中で、ジュリエッタはトップ・クラスの性能を持つ1台にカウントされるべき存在であるといっていいでしょう。しかもただ高性能なだけではなく、バターに熱したナイフを入れたときのようなスムーズさとキレの良さを感じさせてくれるステアリングフィール、常に気持ちの柔らかい場所をくすぐってくるようなビート感のあるエンジン・サウンドというような、快感に直結する要素を幾つも持っているのです。これほどエキサイティングなハッチバック・モデルは、そうそう生まれてくるものではないと思います。これまたモノ書きとしての語彙の少なさを遺憾なく発揮させていただけるなら、ファーストインプレッションとしては、とにかく楽しかった!

冷静になって考えてみると、スタンダードなジュリエッタで充分なのです。スポーツ性能もGT性能も、それに操る楽しさも、充分に満足のいくレベルにあると思うのです。だから、例えば絶対スピードを望んだりしない限り、選ぶべきはスタンダードなジュリエッタであっていいのです。けれど、その枠に収まらず、さらなる速さ、さらなる快さ、加えて“濃さ”のようなものを追い求めるエンスージャストも、確実に存在します。クアドリフォリオ ヴェルデはそうした人のためのジュリエッタ、と考えていいでしょう。もし僕が知人からどちらを選ぶべきか相談されると仮定したなら、相手の日頃のクルマの乗り方にもよりますが、大抵の場合はより乗り心地がよく、適度以上にスポーティな味わいを持つスタンダード・モデルをオススメすることになると思います。なのに、一度あの領域を味わってしまったがために、自分が選ぶならクアドリフォリオ ヴェルデだな、と考える自分もいるのです。美しくエレガントなジュリエッタは、こんなところでも悩ましさを感じさせてくれちゃうわけですね。

ともあれ、東京オートサロンは11日(日)の午後5時まで開催されています。KEN OKUYAMA DESIGNとアルファ ロメオがコラボレートしたことで生まれたジュリエッタの2台のスペシャル・エディションと合わせ、ぜひクアドリフォリオ ヴェルデを見に行ってみてください。



嶋田 智之

1964年生まれ。ヤミ鍋系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー系雑誌『ROSSO』の総編集長を1年間担当した後、独立。クルマとヒトを柱に、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントなどではトークショーのゲストとしてクルマの楽しさをときにマニアックに、ときにわかりやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。現在の愛車はアルファ ロメオ166。

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