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2015.03.06

アルファロメオに乗る。 それは美学と哲学を羽織ること。(第6回)

退屈な日常を絶妙に彩るアルファロメオ

おいおい、おっさん、いい年してナニ言っちゃってるの? なんて思われるかも知れませんが、ここはひとつ、正直に告白することにいたしましょう。実はここ2〜3年、どういうわけかふとした瞬間に、自分自身が映画やドラマの中の主人公になったような気がしたりすることがあるのです。

もうオヤジなので自己憐憫はこっそりと強いかとは思いますが、これまで泣いたり笑ったり転んだり身悶えしたりしながら生きてきたおかげで、良くも悪くも自分がどれほどのものかは理解している年頃、自分が特別な人間でもなんでもない“その他大勢”の中のひとりであり、ましてやスクリーンの中で光り輝けるようなカッコよさなんて微塵もないということだって、さほどの痛みも感じることなく受け止められていたりするわけです。10代や20代だった頃のように自意識が強いわけではもうないし、とっくに開き直っちゃってるのでナルシシズムみたいなものもほとんど残っていません。

なのに……です。それだからといって急にカッコつけてみたり、何かを演じてみたり、そんなことができるわけではないのですが、ほんのついさっきまでの何てことのない日常が急にちょっと違ったものになった気がして、背筋がスッと伸びたり、思わず襟元をただしてみたり、パカッと開いてたクチを閉じてみたり……。

おそらくそれはクルマのせいなんだろうな、と実は考えています。自分のアルファ ロメオ166を走らせてるとき、あるいは目の前にしたときに、そんな気分になることが多いように感じられるからです。それが具体的にはいつ頃からなのか定かではないのですが、以前のドイツ車に3台続けて乗っていた頃にはそんな想いをした記憶というのが一切ありませんから、少なくとも自分の愛車がアルファ ロメオになってからであることには間違いありません。

そういえば、アルファ166と暮らすようになってから、日頃は互いにケチョンケチョンに言い合っているような旧い悪友達から思わぬ言葉を時々もらうようにもなりました。「クルマに乗ってるときだけは、ちょっと雰囲気が違うよな」とか「降りるといつものダメ人間なのにな」とか。彼らが世辞を言えるタイプでないことは解りきってるので、最大限のホメ言葉なのだと思います。ちなみに女子達からは何ひとつホメていただいたことはありませんが、クルマを見て、それから僕を見て……という視線に気づいたことなんて、前のクルマのときまではなかったことでした。これでちゃんとモテてくれるのなら言うことはありませんが、それほど世の中は甘くないですね。ただ、アルファ ロメオが僕を、いつもと少し違った雰囲気に見せてくれてることだけは確かなようです。

僕のアルファ ロメオ166はそろそろ15年落ちになる古ボケはじめたクルマですが、そのままだったら退屈な僕の人生を、色々なカタチで絶妙に彩ってくれているようです。

アルファ ロメオとは、確かにそういうクルマなのですよね。

主役と名バイブレイヤーを往き来するクルマ達

そういう存在だからこそ、アルファ ロメオが多くの映画に登場しているのだということを、以前、こちらのコラムでも御紹介させていただいたことがありました。アルファ ロメオが世に送り出したクルマ達は、皆一様にスクリーンの中で無視することのできない存在感を放ちながら、同時に登場人物あるいは役者さん自身のキャラクターを鮮やかに浮き彫りにする、という見事なバイプレイヤーぶりを発揮します。これほどまでに映画馴染みのいいクルマ達を、僕は他に知りません。

アルファ ロメオを胞するFCAも、それは先刻御承知。FCAジャパンもアルファ ロメオの公式ウェブサイトの中で『I WANT ALFA ROMEO, I LOVE CINEMA』というプロジェクトを展開し、僕達の目と心を楽しませてくれました。

御存知なかった方のために添えておくと、このイベントはウェブサイト上でアルファ ロメオが登場する過去の名作を紹介しつつ、8名の若手映像ディレクターがアルファ ロメオの登場するオリジナルのショートムービーを制作して順次公開してきたもの。そしてアルファ ロメオのミューズであり女優でもある長澤まさみさんや映画プロデューサーが応募作品の中からグランプリを選び、発表するという流れでした。

この2月26日に東京のイタリア文化会館において、そのグランプリの表彰イベントである「ALFA ROMEO CINEMA AWARD」が開催されたので、僕もお邪魔してきました。

そこであらためて8つの作品を拝見したのですが、全てに赤いジュリエッタが登場しているにも関わらず少しも似た作品というのがなく、様々な愛情のかたち、様々な心模様、そして夢や希望などを個性豊かに描いている印象でした。

今回の作品は“限られた予算”で“若手”監督が制作する、というのが隠れテーマにもなっているようで、目を見張るような舞台設定もなければ驚愕の特撮モノなんていうのもありませんが、それが逆にそれぞれの監督の発想や撮影・編集の技術やセンスというようなものが浮き彫りになったかたちで、そういうところも含めて全般的にとてもおもしろかったです。

それぞれに作品については、僕のようなシロートがワケ知り顔で語るより、実際の映像を御覧になっていただくのがいいと思います。こちらから全作品を御覧になれますゆえ。

この中からグランプリに選ばれたのは、藤沢浩和監督の『HERO』でした。オリジナリティ溢れる企画を短い時間の中でテンポ良く表現していたことが主な選考理由であるとのこと。確かに“夢”のある作品であり、「おおっ?」と思わされる展開もあり、意外な結末あり。僕の中でも1〜2にランキングしていた作品でした。

が、個人的にはもうひとつ、菊池清嗣監督の『her memory』がとっても心に残りました。理由は思わずポロリと涙しそうな気持ちにさせられたから、です。世の中的にはオヤジですが、こういうのには弱いのです。それにジュリエッタの綺麗な曲率のフロントウインドーをスクリーンに見立てて街の灯りを移し込むところ辺り、「わかってるなぁ……」。作品に対する御本人のコメントにあった“Romeoに対するGiulietta。その美しい車名の由来をイメージして作りました”という言葉辺り、「わかってるなぁ……」。

ともあれ、今回の8作品は、いずれもジュリエッタの存在感や美しいディテールがところどころに織り込まれたものになっていたようですが、おそらくこれが他のメーカーの他のクルマだったら、どうだろう……? 地味すぎて今ひとつ絵になってなかったか、あるいは派手すぎて役者さんを打ち負かして居座っちゃったか、そんな感じになっていたかも知れません。

極めて印象的ではあるけれど妙に悪目立ちしたりはせず、同じ空間や時間にいる役者を絶妙に彩るクルマ。考えてみるまでもなく、アルファ ロメオは僕達の日々の暮らしにおいても、全く同じ“役どころ”を演じてくれているのですね。

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