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2015.06.03

アルファ ロメオはモデル名にも“想い”を注ぐ

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「アルファ ロメオ」というブランド名は、その響きにどことなく美しかったりロマンティックだったりするような何かがあるように感じられるせいか、クルマのモノ書きなんぞをやっていることもあって、ときどき「それってどういう意味なの?」と訊ねられることがあります。それも、これまでの体験からいえば、なぜか男性よりも女性であることが多いです。

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そんなときには「もともとは“A.L.F.A.”って名乗ってたんだ。Anonima Lombarda Fabbrica Automobiliを略して、ブランド名にしてたんだよ。頭にSocietaがついた状態が会社名としての正式名称で、その会社名を日本語にするならロンバルダ自動車製造株式会社。1910年にスタートしたときからモータースポーツに積極的なスポーツカー・メーカーだったんだけど、その5年後にはレースに積極的だったニコラ・ロメオさんという優れた実業家が経営に携わるようになって、おそらくその人がいなかったら今のアルファ ロメオはなかったとは思うのだけど、ともあれ、1918年にはロメオさんの別の会社と経営を統合して会社名がニコラ・ロメオ技師イタリア株式会社になって、そのあたりから“ALFA ROMEO”っていうエンブレムがつけられるようになったんだ。それでもって何とかのへったくれがどうしたこうしたで……」と、ここぞとばかりにダラダラ説明したくなっちゃうのがクルマ好きの性なのですが、女性を相手にそれをしてしまうと痛い人だと思われること必至で、最近になってグッとこらえることを覚えました。以前からここでグッとこらえ、サラリとセンスのいいユーモアとインテリジェンスに溢れた何か別の答え方ができる男だったとしたなら、僕にはきっと違う人生があったかもしれません。……ちっ。

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いや、それはまぁどうでもいいとして、先日、仲間内の飲みの席に友人が「ジュリエッタが気になってるみたいだから相談にのってやってよ」と連れて来た30代女子から、こんな質問をされました。「“スプリント”とか“ジュニア”って、どういう意味があるんですか?」。……ほほぉ。そう来たか。これは堂々とオタクになってもいい場面ですよね?

今年、創業105年を迎える自動車メーカーですから、これまで世に送り出してきたクルマ達の車名の中には、想いの込められたものもたくさんあります。それこそ過去の名車のストーリーを受け継ぐ“ジュリエッタ”あたりは、典型といえるでしょう。が、車名だけでなく、シリーズの中の位置づけを示すモデル名の中にも、無視することのできないものがいくつかあるのです。なぜならアルファ ロメオの場合、モデル名は単にラインナップの中の上位・下位を区分するための記号ではなく、そのクルマの性格づけや方向性を表していたりすることが少なくないからです。そして同じモデル名が、歴史を見つめてみると繰り返し使われてきていることがわかってきます。つまり、そこにも従事した人達の想いが注がれている、ということなのですね。

モデル名はそのクルマの世界観を言い表す

最もわかりやすいのは、“クアドリフォリオ ヴェルデ”でしょう。現行の3代目ジュリエッタのラインアップをご覧になれば一目瞭然ですが、アルファ ロメオのモータースポーツにおける栄光の歴史にちなんだ、シリーズの中で最も高性能なモデルもしくは最もスポーティなモデルに授けられるネーミングです。アルファスッド、33、初代スパイダー、164などに使われましたが、四つ葉のクローバーのエンブレムそのものは、市販車では1960年後半にジュリアクーペにつけられたことからスタートしています。

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アルファスッド スプリント クアドリフォリオ(1983-1987年)

それ以外にも無視できないものがいくつかあるのですが、それぞれ細かく説明していくと大変なことになるので、代表的なものをメモ書き程度にして、以下にサラッと並べてみますね。

T.I.(トゥーリズモ・インテルナツィオナーレ=ツーリング・インターナショナル):第2次世界大戦後の初の量産モデル、1900シリーズのセダンに設定された高性能モデル、1900T.I.が最初。国際的なツーリングカーレースにちなんだ名称だが、転じて国々を楽々と行き来できるような足が長く速いモデルを意味するように。以来、セダン系やスポーツワゴン系、ハッチバック系のスポーティ&ゴージャスなモデルに付けられた。

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アルファ ロメオ ジュリエッタ TI イタリア(1961年)

スーパー:同じく1900シリーズの時代に生まれた、十分な性能と充実した装備とを併せ持つセダンが起点。以来、セダン系に他のモデル名と併用されず“スーパー”のみがつく場合には、比較的ゴージャスな備えを持つ上級グレードであることを示す。後のジュリア時代のベルリーナ、ジュリア スーパーが有名。

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アルファ ロメオ ジュリア ベルリーナ(1962-1978)

ヴェローチェ:イタリア語で“速い”ことを意味する言葉。2代目ジュリエッタの時代に設けられたクーペの高性能バージョンが最初で、以来、スポーツ色が強い俊足クーペやスパイダーに冠される。ジュリアシリーズやそのものズバリの車名を持つGTVの“V”も、ヴェローチェの意味。

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アルファスッド スプリント ヴェローチェ1.5 (1979-1983年)

GTA:ジュリアシリーズの時代にモータースポーツ用のベース車両的な位置づけで生み出されたモデル。“A”は“alleggerita”、つまり軽量化を意味したものだが、GTAそのものはレースの世界で猛威を奮うほど活躍したため、後には別格的な高性能を持つモデルの象徴として使われた。

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アルファ 147 GTA(2002年)

……と、まぁ説明しはじめると、キリはありません。なので、彼女の質問にあった“スプリント”に話を戻すことにしましょう。これもまた1900シリーズの時代に生まれたもので、1900スプリントがホイールベースを切り詰めた軽快なクーペボディを持つモデルだったことから、それ以降は同じシリーズに複数のボディタイプがある場合にはクーペモデルを示す意味で使われてきました。2代目ジュリエッタ、ジュリア、アルファスッドがよく知られているところです。現行ジュリエッタの場合にはドアの数こそ4枚ですし、ボディのタイプも1種類しかありませんが、装備品などを吟味して“軽快”というキーワードに沿った仕様にして“スプリント”を冠しています。

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アルファ ロメオ GT1300 ジュニア(1966-1968年)

そして、“ジュニア”。これは1963年から1977年まで生産された、ジュリア クーペの時代に生まれました。メインストリームとなるモデルよりも排気量の小さなエンジンを搭載したモデルで、スプリントGT(1600cc)と1750GTVの時代には“GT1300ジュニア”として、2000GTVの時代には“GT1600ジュニア”として販売され、大きな支持を得ていました。ジュニアはメインストリームとなるモデルよりリーズナブルな価格で手に入れることができた、いわば廉価版的な意味合いを持つモデルでしたが、決して手を抜いて安く作ったモデルではなく、しっかりとエキサイティングな熱い走りを味わうことができる満足感の高いモデルに仕上げられていた、というのがアルファ ロメオらしいところでした。

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アルファ スパイダー(1962-1983年)

同様に、1966年から1993年にかけて生産された、初代アルファ スパイダーにも“ジュニア”が設定されていました。映画『卒業』に出てきたボートテールスタイルのいわゆるデュエットの時代には“スパイダー 1300ジュニア”が、その後のテールをスパッと切り落としたカムテールスタイルの時代には“スパイダー 1300ジュニア”と““スパイダー 1600ジュニア”が、それぞれラインアップされていたのです。

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アルファ ロメオ ジュニアZ(1969-1975年)

もうひとつよく知られるモデルとしては、ジュリア クーペのスペシャルモデルとして1969年から1975年に生産された、“ジュニアZ”があげられます。“Z”は“ザガート”の略であり、ジュリア系のシャシーにカロッツェリア・ザガートが、直線を基調とした、デザインがまったく異なるボディを架装したもの。その頃のザガートボディのアルファ ロメオといえば、ジュリアTZのようなレーシングスポーツカーがファン達の憧れの対象でしたが、ジュニアZはレース出場を目的にしない純粋なロードカーとして作られたこと、当初は1300ccエンジンを、途中からは1600ccエンジンを搭載して、性能的にはジュリア クーペの上級モデルほどのものを持たせなかったことなどから、“ジュニア”の名前を冠したようです。

いかにスポーツ色が強いアルファ ロメオであっても、シリーズの最高性能までは必要ない、けれど気持ちよく楽しく走りたい、という“ほどほどのちょうどよさ”を求めるファンは多いものです。そのうえ値段が安ければ、なお嬉しいですよね? ジュニアはそうした人達のために存在するモデルです。

現行のジュリエッタにひさびさに復活した“ジュニア”は、機構的には他のスタンダードジュリエッタと全く変わらず、パフォーマンスの面ではわずかばかりも見劣りしません。装備類がシンプルな仕立てとなるスプリントをベースにしていますが、アルファ ロメオD.N.A.システムやAlfa TCTのパドルシフトといった必要なものは備わっていて、不足はありません。本国仕様の乗り味に最も近いと感じられる、しなやかさとスポーティさのバランスに優れた標準型サスペンションも魅力です。アルミマット仕上げのドアミラーや専用のアロイホイールも備わって、それでスプリントよりもだいぶ安価な299万1600円という価格は、お買い得としかいいようのない設定です。“ジュニア”にしてはだいぶ奮発してるような気もしますが、間違いなく魅力的なモデルです。

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アルファ ロメオ ジュリエッタ スプリント ジュニア(2015年)

そんなわけで“ジュリエッタ”“スプリント”“ジュニア”という3つの伝統的なキーワードを持つ250台限定の特別仕様を、僕は彼女にオススメし、彼女は「ありがとうございます。週末にディーラーさんに行ってみますね。じゃ、電車の時間があるのでお先に失礼します」と帰って行ったのですが、果たして本当に終電の時間を気にして帰ったのか、僕の長話に辟易して巧みに逃げ出したのか、それは定かじゃありません。連れてきた友人はクスクス笑うばかりでした。……ああ、やっぱり酒を飲んで格闘技を見たらマズイのに似て、酒を飲んでクルマの話をしたらいかんのだな。……ちっ。

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