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2016.11.18

イタリアでも愛好される日本の伝統美、盆栽の魅力を再認識する旅へ 〜大宮盆栽村・清香園〜

2千年以上の歴史を持つ盆栽。ヨーロッパ諸国でも高い人気を誇り、日本からの輸出も増加の一途。そんな“BONSAIブーム”を牽引するのがイタリアだ。国交開始150周年を迎えた今年、イタリアでも愛される盆栽の真の魅力を再認識したい。

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世界中から愛好家がつめかける「大宮盆栽村」

盆栽がヨーロッパに伝わったのは、1900年のパリ万博がきっかけといわれている。その後、盆栽は日本に近い気候のイタリアやスペインを中心に愛好者を増やし続け、イタリアでは今や「盆栽芸術学校」「盆栽大学」が存在するほど、カルチャーとして定着している。なかでもいち早く盆栽の魅力が開花したのが、アルファ ロメオのお膝元であるミラノ。愛好家の間で盆栽を愛でるパーティーが開かれるなど、盛り上がりを見せているという。職人気質で緻密な作業も得意とし、芸術を解するミラノの人々と、粋な雰囲気をまとい、日々のまめな手入れを必要とする盆栽の魅力がフィットしたのだろう。

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市営の大宮盆栽美術館。旧高木盆栽美術館のコレクションを核とした盆栽の名品、優品をはじめ、盆器、水石、盆栽にまつわる絵画や歴史資料などを収集・公開している。

そんな海外のBONSAI愛好家も多数訪れるのが、埼玉県にある盆栽町。かつて多くの植木職人・盆栽師が住んでいた東京の団子坂(現文京区千駄木)・神明町(文京区駒込)・巣鴨辺りから、関東大震災を機に、広い土地、新鮮な水と空気を求めて集団移住してきたのが、大宮盆栽村(現さいたま市北区盆栽町)の始まりだ。現在でも6つの盆栽園をはじめ、市が運営する盆栽美術館や盆栽四季の家(休憩所)などが点在するこの地に、『アルファ ロメオ ミト』とともに訪れた。

江戸嘉永年間創業、160年以上もの歴史を誇る「清香園」

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盆栽の手入れは「水やり3年、針金整形10年」などとも言われ、木の状態に日々目を配り、気遣うなかで、木を守りさらに良い状態へと導いていく。目の前に並ぶ美しい作品を見ていると、手がけた人たちの熱意と愛情が感じられる。

やってきたのは、創業1853年江戸嘉永年間より盆栽を生業とする老舗中の老舗、清香園。160年以上に及ぶ歴史の中で培ってきた盆栽文化は、伝統と革新を両輪としている。美術品と呼ぶにふさわしい伝統的な名品もあれば、数千円で購入できる現代的なミニ盆栽も。盆栽を熟知した専門家はもとより、若い人や外国人、もちろん初心者でも、誰もが満足できる盆栽文化の発信地である。

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盆栽作り一日体験や月に一度の定期的な講座が開かれる教室内に飾られた彩花盆栽。手前にコナラ、後ろにはヤマコウバシ。山あいの小道を進むかのような景色をそのまま切り取ったイメージで作られている。

門をくぐると、まずは初心者向けのエリア。ベランダにも難なく置けるミニ盆栽や、清香園五代目家元・山田香織さんが提唱する新しいスタイル「彩花(サイカ)盆栽」も目を惹く。彩花盆栽は、「一盆一樹」(ひとつの鉢に1種類の樹木)を常とする盆栽の伝統を踏まえながらも、そこにあえて自由な遊び心を取り入れた寄せ植えの盆栽だ。また、オリジナルのモダンな鉢や、外国人も多数買い求めるという盆栽道具も豊富に並ぶ。奥の教室には、盆栽作りについて学ぶ生徒さんたちの熱心な姿があった。

「美術作品」が多数並ぶ庭園で、好みの盆栽を探す

清香園を奥に進むと、普段は撮影禁止の美術庭園。見事な枝振りの逸品がずらりと並び、購入もできる。取材にうかがったこの日も海外からのお客さんが多く訪れ、スタッフの説明を聞き入っていた。

そもそも盆栽は、お盆に石や植物を入れ、外にあるものを中に取り込んで愛でることから始まった。先ほども述べた「一盆一樹」を基本に、ムダを極限まで削ぎ落とした中に自然界の美しさと芸術性を見出したのだ。あるがままの景色を盆器の中に再現することで、見る人に昔の思い出や記憶を思い起こさせる。それが、盆栽なのだ。

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樹齢80年の五葉松。古葉は取り除くがさほどの剪定は必要とせず、形を整える程度でいいという。価格は優に100万円を越えるが、それもうなずける枝振りと根張り具合。

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樹齢60年のケヤキ。埼玉県の木ということもあり、県内に引っ越してきた記念にケヤキの盆栽を購入する人も多いという。持ち主をかえながら、長い間愛されてきたケヤキに思いを馳せたい。価格は100万円。

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外国人にも人気が高いという実のなる盆栽、ピラカンサ。白く愛らしい小花を付け、それがそのまま鈴なりの赤い実になる。樹齢は20年、価格は5万円。

樹齢100年は当たり前。何人もの作家に愛でられた名品たち

購入可能な作品が並ぶ美術庭園の奥には、国内外のVIPから預かっているという、素人目にも迫力のある名品が鎮座し、手厚く世話をされていた。今回、Mondo Alfaのために一般には公開されていない芸術品も特別に撮影させていただくことができた。

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「明星」の銘を持つ、真柏(しんぱく)の作品。樹齢は500年以上といわれ、近年は難しくなった山採り(山に自生する自然木を掘り起こして活着)をしてからも150年以上は経過している名品中の名品。迫力に満ちた優美な姿に、言葉を失うばかり。

盆栽は最低でも十年は手元に置いて、ようやく自分の「作品」になるといわれる。銘を持つような名品になると、樹齢は数百年、盆栽になってからも100年、200年が経過しているほどの逸品も多いのだ。ちなみに、どちらを「正面」とするかを決めるのは造り手。以前の持ち主とはあえて逆の向きを正面と決めて育て上げる人もいるという。

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清香園四代目であり、日本盆栽作家協会代表幹事でもある山田登美男さんが設える床飾り。うねりのある山採りの真柏が、自然界の見事な造形美を成している。

山田登美男さんが代表を務める盆栽作家協会にはヨーロッパ支部があり、フィレンツェのフィエゾレに拠点を置いている。「真の美しさや価値を理解するという意味で、文化の真髄はイタリアも日本も同じ。自然環境が似ているので、山に登れば素材もそろっています。われわれも長年、指導をしてきましたし、今ではすばらしい人材が育っていますよ」と山田さん。イタリアの盆栽熱は単なるブームではなく、伝統に根ざしたすばらしい文化として定着していくだろう。

「盆栽御膳」で腹ごしらえしたら、盆栽を連れて愛車と帰路へ

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盆栽町は小さなエリアに見どころが集まっているので、クルマで到着した後は、市の運営する「盆栽四季の家」(清香園のすぐ隣)に駐車して歩いてまわる人も多いという。また、大宮盆栽美術館の向かいには、盆栽道具を扱う「盆栽ネットワークジャパン」が経営する「盆栽レストラン」もあるので、散策中に空腹を感じたらこちらへ。

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盆栽レストランの人気メニュー、盆栽御膳。この日は秋の御膳で、お刺身、豚のあぶり焼き、かれいの竜田揚げ、大学芋などが付いて1,500円(ソフトドリンク付き)。イタリア、ボローニャ産のワインも用意されている。

長い歴史や伝統に根ざしたものの中に真の価値を見出し、絶対的な造形美に「一目惚れ」するような感覚。それを直感的に感じ取るイタリア人だから、盆栽の姿に心底魅了され、愛好家が増え続けているのだろう。そして、「歴史あるものを愛し、造形美に一目惚れする」というのはアルフィスタにも流れる共通の感覚ではないだろうか。改めて、盆栽の歴史、美しさに触れると、身近に置いて愛でてみたくなる。あなたもぜひ盆栽町に出かけてみては? 帰路に着く車中では、助手席に見事な盆栽が置かれているかもしれない。

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清香園
本店:埼玉県さいたま市北区盆栽町268
9:00〜18:00(最終入園受付は17:00)
0120-464-870(木曜日定休)
本店のほかに、日本橋三越本店屋上にも店舗があります。盆栽教室は本校(本店内)、表参道校、大宮そごう校の3カ所で開催中。

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
matricaria

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