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2016.09.08

イタリアと日本の伝統芸能が共演『ジャパン・オルフェオ』開催 宝生和英、藤間勘十郎、沼尻竜典、福島康晴独占インタビュー 前編

数百年の長い年月を積み重ねてきたイタリアと日本の伝統芸能が、ひとつの舞台で交差する。オペラ、能、日本舞踊、雅楽が共演する新歌劇『ジャパン・オルフェオ』。その結末は、演技する役者、あるいは作曲者でさえ想像が付かないという。すべてが初の試みだからだ。そんな前代未聞の舞台に挑む役者、作曲者、合唱指揮者に、その意気を聞くことができた。

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国を代表する伝統芸能が、殻を打ち破り、まったく異なる分野の芸術と舞台を共にする。その道で確固たる地位に就く精鋭たちが、確立された世界を飛び出し、接点のなかった芸術家たちと作品づくりに挑む。ジャンルを超え、国をまたぐ。日伊修好150周年の祝宴にふさわしいその奇跡の舞台が、10月7日と8日には鎌倉鶴岡八幡宮の野外舞台で、10月12日と13日には東京芸術劇場で実現する。

『ジャパン・オルフェオ』。それは400年の歴史を持つオペラのなかでも初期の、モンテヴェルディが手掛けたバロックオペラの名作を、イタリアと日本の現代の精鋭たちが再現する新歌劇である。原作は、ギリシア神話「オルフェウス」。主人公オルフェオは、亡くなった妻をあきらめきれず、冥界に取り戻しに行く。妻との再開を果たすも、地上への途上に「振り向いてはならぬ」という禁を破ってしまい、別れを余儀なくされてしまう。そして再び哀しみに打ちひしがれる。そんな愛と苦しみがテーマの物語だ。この悲劇が現代にどう蘇るのか。オペラの名作に、邦楽の大家(たいか)の人々がどう加わるのか、注目すべき点は多い。

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もうひとつ興味深いのは、この愛の悲劇の物語が、日本の古事記「イザナギ、イザナミ」に酷似すること。この日本発祥の神話でも、男性が、死者の世界(黄泉の国)に女性を連れ戻しにいき、うまくいくかに見えたもう少しのところでこみ上げる欲望を抑えきれずに禁を破ってしまう。そんな人間の脆さが描かれている。

このオペラの古典作品と日本の古事記は、人間の内面に共通して存在する「愛」と「苦しみ」そして「邪心」をテーマとしているのみならず、それらのストーリーへの落とし込み方までが似ている。むしろ共通しているといっていいかもしれない。遥か昔に西洋と東洋で別々に生まれた物語の偶然の一致。それを、イタリアと日本それぞれの伝統の担い手たちが合同で演じる『ジャパン・オルフェオ』。まさに時空を超えたコラボレーションの実現といえるだろう。

今回、最初にお話をうかがったのは、『ジャパン・オルフェオ』の主催者であるNPO法人友情の架け橋音楽国際親善協会で理事長を務める三村京子さんだ。

「演出家と指揮者が『これは世紀の発見だ!』と持ちかけてきたのです」<友情の架け橋音楽国際親善協会理事長:三村京子>

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友情の架け橋音楽国際親善協会理事長の三村京子さん。同NPOでは2004年以来、国内外で音楽や食を通じたさまざまな異文化交流を行ってきた。『ジャパン・オルフェオ』の実現のため、昨年から準備に取り掛かり、東奔西走する日々を送る。

―今回の日伊の伝統芸能の融合で、イタリアからどんな刺激が持ち込まれることを期待しますか?
「日本とイタリアは、それぞれ文化の層に厚みがあり、芸術が盛んです。そうした分野において、日本とイタリアはお互い、美しいものを愛でるセンスを持ち合わせています。今回の『ジャパン・オルフェオ』では、オペラ誕生初期の作品と日本の伝統的な芸術が融合します。そこに、なにか普遍的なつながりが生まれるのではないかと期待しています」

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―『ジャパン・オルフェオ』は、オペラの古典作品と日本の古事記に共通する愛の悲劇をテーマとしますが、そうなった経緯を教えてください。
「オペラの古典作品と日本の古事記が類似しているのは、偶然なのか歴史的に繋がっているのかは、色々な先生方にお話をうかがいましたが、神話学的には証明できないそうです。でも、どこの国の人であっても、人は普遍的なところで繋がっているという実感を持つことができると思います。じつは今回の話はイタリア側から来ました。指揮者のアーロン・カルペネと演出家のステファノ・ヴィツィオーリの2人がオルフェウスと古事記の接点について『これは世紀の発見だ!』と興奮気味に持ちかけてきたのです。それが初の発見であったかは置いておいて、このふたつの物語の類似がイタリア側から持ち込まれたのは、嬉しかったですね。結果的にふたつの物語は出会うことになりましたが、芸術分野での出会いは、これからです。『ジャパン・オルフェオ』で、イタリアと日本の伝統芸能が初の対面を果たします。ぜひ、お楽しみください」

「お客さまの目線で理想的に見られるものを追求します」<能楽師:宝生和英>

2人目は「プロセプピナ」を演じる宝生和英さん。室町時代から続く能楽の名門、宝生流の第二十世宗家。宝生流の指導者として、古典的な舞いに重きを置き、人材の育成も精力的に行う。2015年ミラノEXPO、2016年ミラノトリエンナーレで公演した能楽の第一人者。


「プロセプピナ」を演じる宝生和英さん

―宝生さんは、お家元として、代々伝わる伝統を継承される一方、指導者としても舵取りもされていますが、能楽師として新しい変化を取り入れる部分と、大事にしている部分について教えてください。
「新しさや表面的な驚きのようなものを求めるのは能ではないんですね。それをやったのは歌舞伎です。能楽で大事なのは、冷静に振る舞うこと。そのうえで見えない部分にパッションを宿らせる、というイメージです。自分にとって理想的な姿を追求するというよりは、どうしたらお客さまの目線に理想的に見えるかを考えることが大事で、そこを目指しています」

―海外の芸術で影響を受けたものはありますか?
「イタリアにはリスペクトがあり、コンメディア・デッラルテという仮面を使用する演劇もあります。母からは能楽をやるのであれば、バロック時代の画家を見ておくようにというアドバイスを受けました。特にフレスコ画の技法は能面の技法と似ているので、とても興味がありました。あとはバロック時代の宗教画は、ただ感情を伝えるのではない、カタチ的な美しさの追求に影響を受けました。幾何学的なカタチを並べた構図が美しく、遠近法や陰影の技法に頼らず、平面的にも美しいと思える美の追求を感じます。それをよしとする感性が能楽師には必要であると思います」

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―最後に、能楽師の立場から『ジャパン・オルフェオ』について、注目してもらいたい点はありますか? またそれは、どういったあたりですか?
「バランスを見て欲しいと思います。我々としては今回の公演にいかに溶け込めるか。出過ぎず、出なさ過ぎもしない。このバランス感覚を重視しています。正直なところ、日本的な感性の芸能というのは、海外のものとは相容れない部分を抱えています。オペラなどは指揮者もいるし、コードもかっちり決まっていて、完璧であることにこだわりを持っています。それに対して日本の芸能は、旋律が決まっているわけではない。道筋も割とファジーで、ころころ変わります。でも、その完璧でないものが完璧であろうとする過程に魅力があるのだと思います。海外の芸能の持つ性質に、日本的なものが歩み寄るのは難しい部分はありますが、そこをクリアにしつつ、自分の領域のなかで最大限努力することが、いい舞台に繋がるのではないかと思っています」

後編につづく
後編では、日本舞踊家の藤間勘十郎さん、音楽監修と補筆作曲を担当した沼尻竜典さん、合唱団を率いる福島康晴さんのインタビューをお届けする。各界の精鋭は、性質の異なる芸術がぶつかり合う『ジャパン・オルフェオ』にどんな姿勢で挑むのだろうか。

『ジャパン・オルフェオ』公式サイト

席・チケットの問合せ

ヴォートル・チケットセンター
03-5355-1280(平日10:00~18:00)
チケットぴあ
イープラス
テンポプリモ
03-5810-7772(平日10:00~18:00)
チケットかながわ(鎌倉公演のみ)
0570-015-415(10:00~18:00)
東京芸術劇場ボックスオフィス(東京公演のみ)
0570-010-296(休館日を除く10:00~19:00)

■は両会場の公演とも販売するプレイガイド。
□は片方の公演のみ販売するプレイガイドです。
*未就学児の入場はご遠慮ください。

写真 荒川正幸
文 曽宮岳大

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