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2017.01.26

ガストロノミー界の頂点「ハインツベック」が提供する美食と健康、アートの世界

ローマに初めてミシュラン3ツ星をもたらしたレストラン「ラ・ペルゴラ」のシェフとして名を馳せるハインツ・ベック氏。その後も高級レストランを各地に展開し、ガストロノミー界の頂点に立つ彼が、初めて自らの名を冠したファインダイニングを東京・丸の内に開業した。知性と感性から生み出されるその料理は、もはやアートの領域だ。

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美食家を魅了するローマの3ツ星「ラ・ペルゴラ」の味を東京で

逸品の料理を味わうとき、その真価を感じ取るのは味覚だけではない。視覚、嗅覚、時には聴覚までもが研ぎ澄まされる、そんな経験はないだろうか。作り手は、食べる人のそれら感覚を想像し、計算し、あらゆる手段を講じて食に歓びをもたらす。知識、思考、経験。そして、記憶、想い、情熱。まさに知性[IQ]と感性[EQ]を総動員し、ひと皿ひと皿を作り上げていくのだ。

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モダンガストロノミーを牽引するシェフ、ハインツ・ベック氏。ヌオーヴァ・クチーナ(新イタリア料理)の革命児として厳選した最高の素材を用い、オリジナリティ溢れる味を生み出す。美食と健康にいち早く注目し、子供たちへの食育へも力を注ぐ。(写真提供/ハインツベック)

東京・丸の内。皇居のお堀が目の前に広がる閑静な立地に、イノベーティブなイタリアンを提供する「HEINZ BECK(ハインツベック)」はある。世界中の美食家に愛され、3ヵ月以上前から予約が埋まるローマの3ツ星「ラ・ペルゴラ」のメニューを味わえるとあって、国内外から注目を集めるファインダイニングだ。

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お堀を見下ろす「ハインツベック」の一角。個室もあり、さまざまなシーンで使いやすい。1階にはカジュアルなモダンイタリアン「sensi by Heinz Beck センシ バイ ハインツベック」があり、こちらは皇居前の美しい和田倉濠を見渡せるパノラマテラスが人気。

ローマ「ラ・ペルゴラ」のシェフに就任したのが1994年、その後、イタリア国内に3店舗、ポルトガル、ドバイでもレストランをプロデュースしているが、東京のこの店に自身の名を付けたのは日本への特別な思い入れがあるからだという。

「私が初めて来日したのは1989年。ドイツのレストランに在籍中に、横浜で開かれたフードフェスティバルのために訪れました。そして、日本に一目惚れしたのです。その後も来日の機会があるたびに、いつかこの地に自分の店を出したいという夢を描いていました」 そうして時は熟し、世界で唯一自らの名を店名とする「ハインツベック」が誕生した。

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丸の内の「ハインツベック」でシェフを務めるのは、ハインツ・ベック氏からの信頼も厚い、ナポリ出身のジュゼッペ・モラーロ氏。2017年からは毎月1度コースランチ付きの料理教室「マスタークラス」も開催。ジュゼッペシェフ自ら2品の料理を指南してくれると評判。※マスタークラスの情報はこちらで告知されるのでぜひチェックを。

カルボナーラの新解釈「ファゴッテッリ」は想像を超える旨味

「ハインツベック」では、ローマの「ラ・ペルゴラ」と同じメニューが味わえる。たとえば「ラ・ペルゴラ」で最も有名な一品「ファゴッテッリ ハインツ・ベック」。見るからに手の込んだその料理を口に含むと噛む感覚があるかないかのうちに、中からふわっとクリーミーなソースがとろけ出す。最後に楽しめるクリスピーな食感は、6時間かけてじっくり乾燥させたグアンチャーレ。この軽やかでありながら濃厚で味わい深いソースの正体は、カルボナーラだ。

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カルボナーラのおいしさを十分に表現しながらも、胃への優しさまで追求したファゴッテッリ ハインツ・ベック。料理とは、味はもちろん、見た目、香り、温度、食感、すべてのバランスが重要なのだと改めて感じ入る一品。健康をも視野に入れて作られている。

ハインツ・ベック氏は語る。「ローマの郷土料理カルボナーラを食べたとき、なぜこれほどおいしいのに胃にもたれるのかと残念に思い、試作を重ねました。もたれる原因はソースの卵に火が入りすぎて固まっていること、パスタがアルデンテでないこと。この2点だとわかりました。そこで、ソースをパスタにからめるのではなく“詰める”ことにしたのです。できる限り生に近い卵をなめらかなクリーム状に保ち、パスタもできるだけ薄い生地にして、胃の負担を軽くする。伝統あるカルボナーラを私流に表現したのが、このファゴッテッリです」

そもそもドイツ出身のハインツ・ベック氏がドイツ料理でもフランス料理でもなくイタリア料理を志したのはなぜなのだろう。「日本と同様、イタリアも私を魅了した国のひとつなのです。イタリア料理はフランスよりもライトで健康的な一面を保ちながらも、ハイクオリティな料理といえます。私が理想とする「美食と健康」を追求するスタイルに最も近いのがイタリア料理でした」

感動して心が動いたとき、インスピレーションが湧いてくる

これだけイノベーティブで美しく、健康にも着目した料理を考案するには相当な知識と創造力を要するはずだが、発想を生み出す特別な秘訣があるわけではないという。「すばらしい風景を見ると感動しますよね。美しい森、海岸、あるいは思いがけない人の笑顔。感動して心が動いたときに新しい料理のインスピレーションが湧くのです。それを持ち帰って試作します」

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「カンパチのホワイトバルサミコのマリネ ザクロの粉雪」。皿底に隠されたドライアイスにミントエッセンス入りの液体を注いでサーブされる。海霧の中にピンクの粉雪が溶け出すかのようで、じつに幻想的。ハーバルで爽やかなのはもちろん、花びら1枚までもが味わい深いことに感動する。

たとえば「ラ・ペルゴラ」20周年記念メニューでも提供された「カンパチのホワイトバルサミコのマリネ ザクロの粉雪」は、シェフがノルウェーを旅したときに見たピンクのアイスバーグを表現した料理。ピンクの色を成すザクロはイタリアで幸運をもたらすといわれ、この料理を象徴する食材として選ばれた。粉雪がソースの役割を果たし、マリネしたカンパチの刺身と軽やかに融合する。斬新なガストロノミー・アートだ。

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こちらもハインツ・ベックのスペシャリテ、「赤い果実の冷製スフェラ」。「ある日、ローマで驚くほど真っ赤な太陽が沈む様子を目にして、それを赤いフルーツで表現しました」という爽やかなラズベリーシャーベット。美味な食事をこのデザートで締めくくれることに至上の喜びを感じさせる逸品。

ハインツ・ベック氏が掲げる大きなテーマは子供たちへの食育

健康を支える美食を追求する中で、氏が自ら大きなテーマとして掲げているのが子供たちへの食育だ。興味があるというより大きな責任を感じる、という。なぜなら子供たちは私たち人類の未来そのものだから。

「“健全なる精神は健全なる身体に宿る”という古代ローマ時代の詩人ユウェナリスの言葉がありますが、私はこの言葉はまさに現代にこそあてはまると思います。生活習慣病のほとんどは間違った食事法からきていますし、医者やシェフが提唱するだけではなく、親が子供に幼い頃から正しい食事法をしつけていくのは大きな責任だと考えています」

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また、彼自身、子供の頃から絵を描いたりデザインをしたりという分野でも才能を発揮していたが、「天性の才能だけが大人になってからの職業を左右するとは思いません」とも。「ひとつのすばらしい料理を作るには、才能以上に、感受性や創造力などが大きなバネになっているように思います」

料理の世界の知性[IQ]と感性[EQ]。ハインツ・ベック氏は、自らそれを両輪として新たな道を切り拓いているだけでなく、子供たちへも IQとEQの両面から料理を教え、次世代へ残そうとしているのだ。

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最後にハインツ・ベック氏にクルマの趣味について聞いてみた。
「私は60年代、70年代のイタリア映画に見られるカラビニエリ(イタリアの国家治安警察隊)のパトカー「アルファ ロメオ ジュリア」が大好きです。あれはいま見てもワクワクしますね」と話してくれた。

ローマに行かなければ味わえなかったハインツ・ベック氏の料理がここ日本で味わえる。ご本人も1年に何度か来日するそうで、ラ・ペルゴラとの連携も完璧だ。五感がフルに刺激される極上のひと時を、ぜひ体感していただきたい。

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ハインツベック
東京都千代田区丸の内1-1-3 日本生命 丸の内ガーデンタワー M2F
(1Fはsensi。ハインツベックの入口もsensiと同じく1Fです)
ランチ 11:30〜15:00(L.O 13:00)
ディナー 17:30〜23:00(L.O 20:00)
03-3284-0030 (日曜定休)

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
matricaria