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2016.07.29

ゴダールの傑作『気狂いピエロ』がデジタルリマスターされ訳も新たに公開!

ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』が公開されたのは1965年。ヌーヴェル・ヴァーグの最高峰と言われる映画は、50年以上を経ても色あせない魅力を持っている。

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©StudioCanal/Only Hearts

デジタルリマスターで字幕も新訳に

日本で1年間に公開される映画は、今や1000本を超えているらしい。秀作も多いけれど、これだけの数だと残念な作品に出会ってしまうこともある。確実に良い映画を観たいなら、評価の定まった名作を選ぶのが確実だ。古いフィルムだと経年劣化が心配だが、最新の技術で古いフィルムをベストな状態に戻すことできるようになった。ジャン=リュック・ゴダールの1965年公開作『気狂いピエロ』もデジタルリマスター版が公開されている。

画質補正やノイズ除去などを行っただけではなく、字幕も新訳が採用された。文学の世界なら古典は時代ごとにさまざまな訳があるのが普通で、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の村上春樹による新訳が話題になったこともある。映画だって公開から50年も経てば訳し直すのが自然だ。この作品にはランボーやセリーヌなどの引用が数多くちりばめられているので、今の言葉で字幕が作られる意義は大きい。

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作品に登場するアルファ ロメオ『ジュリア スパイダー』

パーティーで交わされるアルファ ロメオ談義

ヌーヴェル・ヴァーグの代表作とされるこの映画は、さまざまなジャンルを横断する作品だ。恋愛映画であり、犯罪映画であり、冒険映画でもある。アクションシーンもあれば、突然ミュージカル仕立てになって歌と踊りが始まったりもする。主人公のフェルディナンを演じるのは、ジャン=ポール・ベルモンド。恋人役マリアンヌは、ゴダールと離婚したばかりのアンナ・カリーナだ。

自動車好きのゴダールは、この作品にもたくさんの魅力的なクルマを登場させている。最初は言葉だけでクルマが語られる。妻の実家であるエスプレッソ家でのパーティーで、男たちの話題は最新の自動車だ。一人の男が「アルファ ロメオはエンジンもブレーキもいい。グリップ性も高く遠乗りには最適なクルマだ」と熱心に話す。女は「美肌に大切なのは、石鹸、コロン、そして香水」と言っていて、まったく話が噛み合わない。

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パーティーで左側の男2人がクルマについて話し合う。

男女のコミュニケーションの不可能性というテーマが、早くも提示されている。この場面には真っ赤な照明が用いられていて、別の場面では青や黄色も使われる。色彩のコントラストは全編に貫かれていて、あの衝撃的なラストを暗示しているのだ。

ジュリア スパイダーを颯爽と乗りこなすマリアンヌ

フェルディナンは恋人マリアンヌに5年半ぶりに再会したが、武器商人の殺人事件に巻き込まれてしまった。パリの生活を捨て、彼らは南仏に逃亡する。盗んだクルマは自分たちが死んだと見せかけるために炎上させ、また別のクルマを手に入れて南に向かう。このクルマも乗ったまま海に突入して捨ててしまった。

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作品には、一瞬だがアルファ ロメオ『2600 スパイダー』も登場する。同型のモデルは、同じゴダールの作品『軽蔑』(1963年)にも登場する。

海辺での生活は、マリアンヌにとっては退屈だ。自分の気持ちが伝わらないと感じた彼女は「あなたは言葉で話しかけ、私は感情で答える」と不満をぶつける。フェルディナンは「君と会話するのは不可能だ。感情のみで思想がない」と答える。マリアンヌの好きなものは「お花、動物、青い空、音楽の響き」で、フェルディナンは「野心、希望、モノの動く様、偶然の出来事」。言葉はすれ違い、心の距離は広がっていく。

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アルファ ロメオ『ジュリア スパイダー』

フェルディナンだけでなく、マリアンヌがクルマを運転するシーンもある。彼女のほうがむしろ男っぽいドライビングスタイルかもしれない。アルファ ロメオ「ジュリア スパイダー」を颯爽と乗りこなしていて、勢いよく発進するところなどは小気味がいいほどだ。

「ジュリア スパイダー」に乗るマリアンヌは、「アウトビアンキ プリムラ」に乗るフェルディナンとすれ違いざまにキスかわす。ここでも、赤と青が鮮烈に対比されるのだ。すでに愛は失われ、死の影が忍び寄る。赤は血の色であり、海の青は悲しみと痛みを湛えている。映画史に残る美しいシーンだ。

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©StudioCanal/Only Hearts

文 鈴木真人

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『気狂いピエロ』公式サイト

1950年代末に始まったフランスにおける映画運動“ヌーヴェル・ヴァーグ”の最高峰と称される『気狂いピエロ』。その名作がデジタルリマスター版で蘇った。7月23日(土)新宿K’s cinemaを皮切りに全国劇場公開。詳細はHPにて。

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映画に登場するアルファ ロメオ

アルファ ロメオ ジュリア スパイダー
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1962年に誕生したジュリア スパイダーは、ジュリエッタ スパイダーのボディに1.6リッターエンジンを搭載し、高出力化を図ったモデル。最高出力92hpを発生した。ボンネットに設けられたパワーバルジが外装におけるジュリエッタ スパイダーとの識別点となる。1964年にはエンジン出力を112hpにまで高めた上級版“ジュリア スパイダー ヴェローチェ”が登場した。

アルファ ロメオ 2600 スパイダー
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1962年に2000シリーズの後継として登場した“2600シリーズ”には、2ドアクーペの「2600スプリント」、4ドアセダンの「2600ベルリーナ」、そして「2600スパイダー」が設定され、後にザガートが手掛けた「2600SZ」も追加された。2600スパイダーのボディは、ピニンファリーナの手によるもの。6気筒エンジンを搭載した上級モデルという位置づけで、最高速度は200km/hに達した。

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