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2013.09.24

ラリックが手がけた「オリエント急行」で珠玉のティータイムを〜箱根ラリック美術館「LE TRAIN」〜

箱根でラリックの作品を鑑賞

東名御殿場I.C.から乙女峠を経由して仙石原方面へ約20分で到着する、箱根ラリック美術館。アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代に名声を博したジュエリーデザイナー・ガラス工芸家、ルネ・ラリックの美しい作品群を多数所蔵する、緑豊かな美術館だ。


車を停めて降り立つと、鳥のさえずりが聞こえ、高原の空気が心地いい。4000坪もの広々とした敷地には、今回ご紹介する「オリエント急行 LE TRAIN(ル・トラン)」のほか、美術館、雑貨のセレクトショップ、カジュアルながらも本格的な料理が味わえるレストランも。

当館のオーナーがラリック作品を蒐集するようになったのには、大のクラシックカー愛好家だったことが影響している。というのも、ラリックの代表的な作品のひとつにカーマスコットがあり、それをきっかけにラリックの幅広い作品群の魅力に開眼したオーナーが、この美術館を創り上げることにしたのだ。

美術館の前には、カーマスコットの付いたクラシックカーも展示されている。当時の車のオーナーにとってカーマスコットはステータスシンボルであり、おしゃれのひとつでもあった。金属製が一般的だったが、ラリックは初めてガラスで制作。女性像、昆虫、動物、彗星などモチーフは多岐に渡り、ダンディズムの象徴として人気を博した。

折しも、美術館オープンに向けて多くの人々が試行錯誤を繰り返していたとき、ラリックの装飾が施されたオリエント急行の車輌がスイスのチューリッヒで売りに出される。車輌制作当時のラリックは、1925年のパリ万博(通称 アール・デコ博)でガラス部門の総責任者に抜擢されるなど、まさに「時の人」として名を馳せていた。そんなラリックが内装を手がけたのだから、その価値たるや、想像を絶するものだったに違いない。ラリックの車輌は10数車輌つくられたというが、スイスで見付けたのは4車輌。そして、その中でも内装に全く手を入れていない当時のままのものがひとつだけあった。それが、ここ箱根へと運ばれていたのだ。

パリの「リヨン駅」に実在するプラットホームをイメージした特別展示「LE TRAIN」。運行会社ワゴン・リ社のエンボスの紋章、高級感あふれるシックなオリエントブルーがとても印象的。

存在自体が美術品、LE TRAINで優雅なひと時を!

「青いプリマドンナ」の愛称で親しまれた美しきオリエント急行。車内にはラリックが制作した優美なガラス作品が飾られ、存在自体が美術品だ。ここラリック美術館では、特別展示「LE TRAIN(ル・トラン)」として、完全予約制で利用できる。ラリックの装飾が間近で見られるだけでなく、贅沢なシートに座り、ティータイムを楽しめるのだ。また、60tもの車輌や内装を傷つけることなくはるばる運ぶ労苦は並大抵ではなかったはずだが、その様子もティータイムの前に映像で鑑賞できる。

ヴェルヴェットが張られた座り心地抜群の椅子は幅が80cmもあり、通路の幅よりも大きい。車輌が完成する前に一流の椅子職人が車内に入り、その場でひとつひとつ完成させていったという。

新幹線とほぼ同じ長さの車内だが、座席は2つのコンパートメント(個室)を含め28席しかない。天井のランプシェードや壁面に飾られたガラスパネルはラリックの作品。壁には硬く高級なマホガニーが使われている。


ガラスパネルのモチーフは、食堂車を意識してバッカス(ローマ神話の酒神)とぶどう。透明なガラスの下地に銀が貼られ、光の陰影が楽しめる。ラリックらしい細やかさが光る美しい名作だ。


ラリックのガラスパネルを背にして味わうティーセットは、まさに格別。このセットも1920年代に実際の乗客に出されていたものを再現していて、優雅な雰囲気が味わえる。

ゆったりと贅沢にとられた空間といい、ひとつひとつの装飾品といい、これほど優雅な列車で食事しながらゆったり旅をしていたのかと思うと、当時の人々がうらやましいくらいだ。今ではなかなか体験できない世界だからこそ、ここ箱根で、ほんの束の間でもかつての優雅な時間の流れ方を感じられるのは本当にすばらしい。


「LE TRAIN」は完全予約制。10:00より、現地で1時間ごとに16:00まで受け付けている。所要時間は約45分、1名につき2,100円(コーヒーor紅茶とデザート付き)。

LE TRAINは来館当日に受付カウンターにて直接予約する方式なので、たとえば到着してすぐに希望時間の予約を入れ、それまで美術館をじっくり見学してみてはいかがだろうか。


敷地内には、美術館ができる前から生育していた落葉樹がそのまま手つかずで残されており、手入れの行き届いた美しい芝生とともにすばらしい景観を作り出している。「蝶の森」と名付けられたこの豊かな自然を探索するのもおすすめだ。


併設のカフェ・レストランLYS(リス)がこれまたすばらしい。芝生に面して全面がガラス張り、オープンテラスもあって、どの席からも仙石原の自然が一望できる。シャンパーニュ地方出身のラリックにちなみ、こだわりのぶどう農家が醸すシャンパンを扱っているのでぜひテラスで味わってみていただきたい。ドライバーには、彩りも美しいさわやかなフレンチソーダがおすすめ。

ランチセットは、魚と肉料理、季節の一品(この日はテリーヌ)をワンプレートで。さらに、朝採れの新鮮なサラダ、じゃがいもの天然酵母を使った自家製パンとハーブで香り付けしたオリーブオイルが付いて、1,900円。料理やサラダはもちろん、甘味があってもちっとした自家製パンも美味。

LYSは近隣の産地から厳選した新鮮な旬の食材を活かし、カジュアルながらも本格的なフレンチを提供する。ランチタイムにはもちろんだが、近くの宿に宿泊する人々や近隣住民にはここの朝食のすばらしさもよく知られていて、スタッフと親しげに会話しながら食事を楽しんでいた。カフェメニューも充実しているので、食事から休憩まで、幅広く利用できる。

アガサ・クリスティーやマレーネ・ディートリッヒも魅了されたというオリエント急行。多彩な才能を発揮したルネ・ラリックが残した貴重な空間で味わえる珠玉のひとときを、ぜひご堪能あれ。

箱根ラリック美術館 http://www.lalique-museum.com/
〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1
TEL:0460-84-2255
午前9時~午後5時(美術館入館は4時30分まで)
第一駐車場(100台) 1日¥300
第二駐車場(100台) 無料


撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり

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