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2016.02.23

横浜ドリーマー 副キャプテン横瀬さんが語る、車椅子バスケとジュリエッタ

イタリア製の運転補助装置グイドシンプレックス。“運転の楽しみを損ねない”という、その装置を愛用するスポーツマンにお話をうかがいました。

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初めて車椅子バスケットボールを見たのは、いつのことだっただろう? 想像していたイメージとは違って、あまりにもアグレッシブなプレーに驚きを隠せなかった。当時、私は部活でバスケをやっていて、大会のための遠征先で彼らのプレーを偶然目にしたのだけれど、激しくスピード感に溢れる動きに衝撃を覚えた記憶がある。子どもの頃に明けても暮れてもバスケという日々が続いたせいか、いまも、アメリカのモーターショーに行けば、時間を見つけてNBAを観戦したりしている。

初めての車椅子バスケ観戦から20年近くが経ち、イタリア製の運転補助装置「グイドシンプレックス」を装着したジュリエッタをサポートカーとして使っている車椅子バスケットボールチームがあるという話を聞いた。バスケのことしか頭になかった頃を思い出して、取材に行く道すがらからウキウキだった。

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アルファ ロメオ横浜町田店では、グイドシンプレックスをディーラーオプションとして扱い、販売・装着からアフターサービスまでを行っている。

グイドシンプレックスの輸入販売を行っている株式会社ジー・エス・ティーが運営するアルファ ロメオ横浜町田店で、横浜ドリーマーの副キャプテンを務める横瀬正樹さんと待ち合わせをした。同社では、身体に障害を持つドライバーに運転を楽しんで欲しいとの思いから、下肢障害などに対応するグイドシンプレックスを輸入し、ディーラーオプションとして取り付けまでを行っている。実際の作業を見せてもらったが、車両ごとに取り回しに違いがあるため、取り付けには相応のスキルとノウハウを必要とする。損得勘定ではできない作業だ。

160217_Alfa_03イタリアの運転補助装置グイドシンプレックスが装着されたジュリエッタ。装置は目立たず、付いていることすら気付かないほどだ。

そうこうするうちに、横瀬正樹さんと、奥さまであり、チームマネージャーとしても辣腕を振るう横瀬英里子さんがジュリエッタに乗って到着した。横瀬さんは、私と同じで子どもの頃からずっとバスケをしていた。

「社会人になってから、怪我で脊髄損傷を負ったんです。リハビリをしているとき、車椅子バスケの見学に誘われて、見たらやりたくなって、やったら面白くてハマってしまいました。車椅子バスケは、障害の程度によって使う車椅子も違うし、選手の動きも違ってきます。選手によって攻め方も変わってくるので、そこが健常者のバスケとはまた違う魅力なんだと思います」

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横浜ドリーマー 副キャプテンの横瀬正樹さん。

横瀬さんはクルマの運転が好きで、グイドシンプレックスに出会う前は、日本製の運転補助装置を使っていた。ただ、その装置では左手を常にブレーキとアクセルに置くため、片手運転になってしまう。グイドシンプレックスでは、ステアリングホイールの背後に設置されたリング上の補助具で加減速をして、左右のいずれかに備えたブレーキノブは手の平で押してブレーキをかけることができる。そのため、横瀬さんのような下肢のみの障害であれば、両手でハンドルを握ることができるのだ。

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アクセル操作を行うアクセルリングは、ステアリングホイールの裏側に装着されている。リングを指先で動かすことでアクセルを作動させる仕組みとなっている。



「教習所でも使われているので、片手での運転が当たり前だと思っていたんですよね。でも、グイドシンプレックスを装着したジュリエッタに乗ってみて、両手でステアリングホイールを握ることで、操舵フィールを感じられるようになり、運転する楽しさが増しました。特に高速での運転では、両手で身体を支えることで安定感が増して、安心にもつながります」

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このクルマがチームに来てまもなく、横瀬さんは友人とロングドライブに出かけた。横浜から千葉まで遠出し、帰りはフェリーで横須賀に戻るというルートを、ずっと自分で運転してしまったのだそう。もちろん、奥さまも同じジュリエッタを運転する。

「両手でステアリングホイールを握っていると、ブレーキを掛ける時に健常者はつい足が出ちゃうんですが、この装置ならブレーキペダルがそのまま残っているので、私が運転するときは足でブレーキを踏むこともできます。彼は上手にブレーキをかけて丁寧に止まれるのですが、私が手でブレーキをかけると、ちょっとギクシャクしちゃうんですよね」

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横浜ドリーマーの試合。車椅子同士がはげしくぶつかり合う。初めて見る人はその勢いに圧倒されるという。

バスケをしている横瀬さんのことを「カッコいいんですよ」と何度もおっしゃる英里子さんは、奥さまとして横瀬さんを支えるだけではなく、マネージャーとしてチームも支えている。熱心に活動した結果、日本車椅子バスケットボール連盟の関東支部の役員に抜擢されて、社員として支部まで支えている。ほっそりしているのに、どこにそんな力があるのかしら? と聞いてみたら……
「家族みたいなチームなんですよね。みんながイキイキとしてプレーしていて、バスケしてるときって、ホント、選手のみんながカッコいいんです。障害の程度によってプレーもチーム内での役割も違うんですけど、お互いを知った上で、一緒にプレーしていくから絆も深いんです。そんなチームだから、私も頑張って応援したい! って思うんです」

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横瀬正樹さんと奥さまの横瀬英里子さん。

幸せそうだなあ、と二人をうっとりと見つめていると、「せっかくだから、試乗しませんか?」と横瀬さんがおっしゃってくれた。初めは、横瀬さんがドライバーズシートに座って、グイドシンプレックスの運転の仕方をレクチャーしてくれる。ジュリエッタの荷室に車椅子バスケ用の車椅子を入れた後、普段の移動に使う車椅子から運転席に乗り移り、自分一人でさっと車椅子を閉じて、後席に収納する。スポーツマンらしくキビキビとした動作で、手伝いましょうか? なんて言葉を挟む余地もないくらいだ。

ステアリングホイールの後ろにあるリングをずらすと、ジュリエッタが力強く加速し始める。アップダウンの多い住宅地を抜けて、桜並木の下を気持ちよく加速していく。コーナリングの手前では、左の手の平でブレーキノブを押さえて減速し、カーブを曲がりきる頃に再び、リングをずらしてアクセルを開けていく。

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実は、助手席に座って横瀬さんの運転を見ていると、とても簡単そうに思えたのだが、実際にステアリングホイールを握ると、アクセルワークを自然にできるまでには多少の慣れを必要とする。が、いったん慣れてしまえば、両手でステアリングフィールを感じながら、キビキビと操舵をし、微妙なアクセルワークを楽しむこともできる。コーナリングも思いのままだ。奥さまの英里子さんのおっしゃる通り、健常者が運転するときにはブレーキだけは足を使うこともできるし、高速巡航のときにはアクセルワークをリングで行う方が楽に運転できるくらいだ。


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多少の慣れを要するものの、アクセルリングによる加速操作は思いのほか使いやすい印象。

「僕は背中を自分で支えられるのですが、障害の程度によっては、体幹を支えることができない人もいます。その場合、両手でステアリングホイールを握ることで身体を支えることもできるんです。この装置は、運転の楽しさを広げてくれると同時に、両手で身体を支えることで疲れにくく、安心感も高めてくれます。そろそろ、他のチームメイトにも使ってもらおうと思っているので、みんなの感想も聞いてみたいですね」

次の大きな試合は、4月に高崎身障者体育館で開催される関東リーグ戦だ。入場は無料なので、気になる人はぜひ、横浜ドリーマーと、そのチームを支えるスタッフを応援に行って欲しい。

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写真 高橋信宏