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2013.08.01

現在のセクシュアル・マイノリティの立ち位置と多様な生き方

フランスでは同性婚が合法化されたり、カンヌ映画祭ではレズビアンの恋を描いた作品がパルムドールを受賞したりと、世界的にセクシュアル・マイノリティへの関心は高まっていますが、そういった背景がある中で『アウト・イン・ザ・ダーク』を制作することになった経緯をお聞かせください。

10年前になりますが、僕が住むロサンゼルスに来たイスラエル人の友人が、イスラエルのゲイ&レズビアンセンターという所でボランティアをしていると聞いて、350人ものパレスチナ系の人たちがイスラエル国内で潜伏して生活しているという状況を教えてくれたんですね。ゲイ&レズビアンセンターは政治的なアジェンダを持っているわけではなく、ただ単にセクシュアル・マイノリティとして不安や悩みを抱える人たちを迎え入れようとする、対立を超えた共通の悩みを持つ者同士の同胞愛的なコミュニティなんです。それについてもっと知りたいと思い、色んな人たちに会い始めたというのが、この映画を撮ったきっかけになっています。

では、なぜイスラエル・パレスチナ紛争と関連させたのでしょうか。

ゲイのパレスチナ人がイスラエル・パレスチナ紛争の犠牲者ではなかったとしても、自分の性的志向によって認められない抑圧されているような人たちがいて、自分のアイデンティティ故に国を自由に行き来できない。つまり、この映画には二重の障害があるのです。それを聞いただけでもストーリーは豊かで、1万ぐらいのことを連想できそうだと考えました。

イスラエルとパレスチナの分断された関係を踏まえた上で、異なる環境に身を置くロイとニメルが恋に落ちますよね。本編の内容に少し触れると、ニメルがゲイであると彼の家族に分かってしまった時に家を勘当されてしまいますが、実際に現地のセクシュアル・マイノリティの人々は、そういった状況の中で生きているのでしょうか。

ニメルに関しては、彼がパレスチナ人であるために複雑な状況になっていますが、あくまでもフィクションです。様々な人に聞いたエピソードを集めて撮っている映画なので、もちろん家族に受け入れられている人もいます。ただ、例えばアメリカでは、75%のセクシュアル・マイノリティの方たちが何らかの問題を抱えていると聞きますし、イスラエル・パレスチナという設定でなく、どこの国でも、家族から追い出されることはなかったとしても、いじめを受けるといった問題は起こり得ると考えています。

あなたは今作の監督だけでなく脚本を共同で手掛けていますが、デリケートな問題を複数描写している作品だけに、執筆にあたって共同脚本者の方と意見が一致した部分、合わなかった部分はありましたか。

僕の良き友人でもあるイスラエル人のヤエル・シャフリルという脚本家と執筆していますが、彼女はどちらかというと思想が右寄りで僕は左寄りと、お互いの政治的スタンスが異なるので、イスラエル・パレスチナ紛争においてどうあるべきなのかということに関しては、意見が異なりますね。ただ紛争に関して楽天的に発想しないという共通点が僕らにはあります。僕たちの世代では無理かもしれない、今の国家の陣営と体制では難しいかもしれないけど、将来的に何世代か後には解決があるだろうと希望を持っているので、それを象徴的にエンディングに示しました。

つまり、ロイとニメルの恋の行く末だけでなく、あなたたちの政治的な見解を示したエンディングでもあるんですね。

そうです。希望のように太陽が昇ってくる。ただ、その後はどうなるのか分からないという、はっきり断定しない形を敢えてとりました。明らかなハッピーではないけれども、最悪の悲劇でもないということですね。それと僕自身、オープン・エンディングが好きというのもあります。

本作は既に約70もの映画祭の招待作品として上映されていますが、触れる人の国籍・文化背景などによって、受け取り方が異なると感じます。これまで実際に、どんな感想が上がったのか教えていただけますか。

様々な映画祭で観てくださった方の話を聞いて思うのは、逆に感想と質問が必ず似てくるということです。それは、僕が凄い映画を作ったという偉ぶったことではなくて、この映画が持つ普遍性によるものだと実感しています。イスラエルの人にとっては、知識があるし新鮮なトピックではないと思いますが、それ以外の国の人にとっては、やはりかなりのリアクションがありました。ある程度、イスラエル・パレスチナ紛争については、日本の皆さんも知っていると思いますが、その地域で起きているストーリーがさらに好奇心を駆り立てているのではないでしょうか。

本作の撮影はイスラエルで行われたそうですね。

はい。ポストプロダクションは僕が住んでいるロサンゼルスで行ないました。最後のエディットを決めるにあたって少人数に観てもらい、意見を聞くというセッションを設けたんですね。正直なところ、ロサンゼルスでは落ち込むエンディングという反応が多かったけれども、同じ夜にイスラエルでも行なったところ、イスラエル側のプロデューサーによると、「誰も死んでいないし、良いエンディングじゃないか」という反応が多かったそうです。そういう意味で、馴染みによって印象が異なるのだと思います。

本作はイスラエル・フィルム・ファンドという公的機関から制作資金のサポートを受けていますが、それを得るまでの道のりも大変だったのではないでしょうか。

イスラエル・フィルム・ファンドは、予算をどう配分するかという裁量を任されていて、審査の対象となる映画の脚本を読む選任が、資金援助するかどうかを決めています。もちろん予算の配分は年によって異なりますが、あくまでもその基準は良い脚本であることなのです。実際に歴代の援助を受けたイスラエル映画の中には、東京国際映画祭でグランプリを獲得した『迷子の警察音楽隊』がありますし、昨年は『ゲートキーパース』、日本でも公開された『壊れた5つのカメラ』という二本のイスラエル映画が、アカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされました。『ゲートキーパース』はイスラエルでも成功した一方で、『壊れた5つのカメラ』はお金を回収出来ず、「国のお金を減らしてしまう映画を援助するべきではない」という声がありましたが、それと同じくイスラエル人の中には、今作のように国に対して批判的な映画をハッピーじゃないと感じている人もいるでしょうね。

最後にお聞きしますが、Alfa Romeoは「Drive your own Way. Be yourself.」のメッセージを掲げ、CSR活動の一環として、ゲイ・レズビアン東京国際映画祭をサポートしています。Alfa Romeoのそのような取り組みをどう思われますか。

光栄にもトリノ映画祭で観客賞をいただいたので、そういった意味でイタリアに愛されているのはとても嬉しいことですね。あと主演のニメルを演じた彼はお母さんがイタリア人だから、きっと喜ぶと思いますよ。Alfa Romeoがセクシュアル・マイノリティのコミュニティをサポートしたいと貢献してくださるのは、非常に素晴らしいアイデアであり進んだことだと思います。Alfa Romeoファンの方々に露出することで、普段馴染みのない社会問題や政治問題に触れる経験に繋がるかもしれないですから。ヨーロッパではグロールシュというオランダのビールの会社がサポートしてくれたことがありましたし、映画祭の会場だけでなくウェブサイトと連携して私の発言をアウトレイジしてくれるのは、より私と映画のことを知ってもらえるので感謝しています。

アウト・イン・ザ・ダーク
監督:ミハエル・メイヤー
2012年|USA、イスラエル|96 min|日本初上映

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