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2014.12.25

細部にわたるすべてのこだわりは「旨さ」のため 〜サルメリア69〜

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イタリア産の生ハムやサラミを専門に販売するSALUMERIA 69(サルメリア・ロッキュー) 。その魅力は、扱う肉の質が最高級であるというだけでは語れない。もちろん、仕入れる段階での目利きは絶対的な条件。とくに生ハムは、比較的品質が安定しているサラミと違って個体差がとても激しいというから、上質な生ハムを塊のまま仕入れるのは当然として、この店のこだわりはさらに上をいく。

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2005年に練馬で開業し、2011年に成城に移転したサルメリア69。15坪ほどの店内は、ひとりひとりとじっくり向き合い丁寧に説明する店主・新町賀信さんのスタイルもあり、休日ともなれば行列が続くが、常連客はみな待つだけの価値があることを知っている。「一度ここの生ハムを知るとほかでは買う気がしない」という声多数。

おいしさを引きだす、こだわりの切り方

絶妙な塩加減はもとより、何とも言えない甘い香りが食べた後にも余韻として口の中に残る。新町さんの「赤ワインよりもむしろ白に合います」という言葉に納得できる味わいだ。そんな生ハムを提供できるのは、サルメリア69だけのやり方を堅持しているから。ひとつめにして最大のポイントは、切り方にある。パルマ産プロシュットの日本への輸入が解禁されたのは1996年のことだが、新町さんはまだ生ハム自体が一般的ではなかったその時代にスライサーを導入。以来、切っては食べ、食べては切る試行錯誤を徹底的に繰り返し、機械にも自分で手を入れてカスタマイズしてきた。

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「種類、個体差、部位、何時間後に召し上がるのかなどを総合的に考慮して、スライスしていきます」 こだわるのは厚みだけではない。1枚のスライスをすっすっすっと3回に分ける感じで切り落としていく。「断面が増えるので、より香りが広がるんです」 スライスしたら一枚ずつ透明フィルムを間に挟んで鮮度を保つ。

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生ハムもサラミも、切り方でこうまで味わいが変わるのかと驚くほど。「切り立てが最も旨い」そうなので、ぜひイートインスペースを、と思ってしまうが、分散するとどれも中途半端になるから、とあくまで肉屋を貫く。その姿勢がまた、唯一無二の味につながっている。

一般にはスライサーの目盛りを設定して一定の厚さに切るのが常識だが、それとは全く違うやり方を独自に編み出し、向こうが透けて見えるくらい薄く仕上げる切り方を確立。おかげで、噛んでいる感覚がないくらい口溶けがよく、甘味を含む香りを口の中に残しながらすぅっと溶けていく、ほかにはないおいしさを実現させた。

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「旨いかどうか」に徹底的にこだわる

こだわりは、切り方だけではない。最高級の生ハムを目利きして仕入れているとはいえ、切って、食べてみるまで味の善し悪しはわからないし、どこを切っても同じ味ではないという。「自分が生で食べて旨いと思うのは1本を三等分した真ん中のあたり。スライスして提供するのはそこだけです。残りは調理用としてほぼ卸値で販売しています」

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左は30ヶ月熟成のパルマ産、右は店内唯一の日本産「ボンダボン」のペルシュウ(パルマの方言で生ハム)。イチオシの逸品だが、生ハムとして売るのはやはり真ん中の3分の1のみで、あとは調理用として販売。この日も、近所の有名なリストランテ「フィオッキ」のシェフが来店し、「こんなにいい肉をこんな値段で買える店はほかにないです」と調理用の塊をいくつも購入していた。

閉店後は酸化を防ぐ真空保存をしたうえで、翌朝、販売前に肉の切り口を100gは削る。「どうしても表面は酸化していますから、そこはお客さんには提供できません」 こうして「最もいい部分だけ」を生ハムとして売る。おかげで、原価率は一般的にはあり得ないほど高くなるが、「大切なのは旨いかどうか。そこは絶対に譲れません」と言い切る。その良心的なこだわりがお客さんを惹き付け、一度得た信頼は決して目減りしない。

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サンニコラ社の30ヶ月熟成、プロシュット・ディ・パルマ、100g 2,000円(写真は約30g。薄切りなので100gあればかなりのボリューム!)。世界三大ハムのひとつといわれるパルマ産生ハムの中でも良質なメーカーを目利きしているだけあって、さすがの味わい。

店頭では、状態のいい生ハムやサラミを常時40〜50種扱う。たとえば30ヶ月熟成のパルマ産と、18ヶ月熟成 フリウリ産のプロシュットがあるとする。「パルマ産だから」「熟成期間が長いから」「有名メーカーのものだから」「単純に高価だから」と、客としては目に見えるスペックで「おいしさ」の裏付けを取ろうとしがちだ。

でも「生ハムの原料は豚肉と塩だけなのに、極端にいえば豚、鶏、牛の違いくらいに振り幅が大きいんです」と新町さんが言うように、その日、その時間帯にどの生ハムが最もおいしいかはスペックだけでは推し量れない。さらに、振り幅が大きいとはいえ、その違いは、言葉で表現するにはあまりにも繊細。毎日いくつもの生ハムを口にする新町さんなら感覚的にわかるものでも、買い物に来た私たちがそれを判断するのは難しい。では、何を基準に選べばいいのだろう?

そんなときは、迷わず新町さんのすすめに従おう。なにしろ、この店の根幹を成すすべての基準は、新町さん自身が「旨いと感じるかどうか」なのだ。その基準は決してブレないし、基準を満たさないものが店頭に並ぶこともない。すべてを把握している店主に任せて、買う。これが一番、間違いがない。

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カーサ・グラッチャーノの24ヶ月熟成、プロシュット・ディ・パルマ、100g 2,500円。サルメリア69の繊細な生ハムは白ワインにぴったりだが、このプロシュットは日本酒にも好相性。

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大型の豚の大腿肉(クラッチャ)のみを使用した、クラッテッロ・コン・コテンナ、100g 1,800円。骨抜きし皮を付けたまま長期熟成させる希少品。塩分控えめで脂身が多く、甘い香りが特徴の、日本人に好まれるテイスト。

新町さんは接客に時間をかける。デパートではなく昔ながらの魚屋や肉屋のような在り方を心がけているためだ。「初めての方ならまず好みをじっくり聞きます。おすすめを聞かれたらその日最もコンディションのいいものをおすすめします」 どこ産の何年熟成というスペックだけでは決してわからない生ハムの魅力を、話しながら伝えていきたいという。だから、今もこれからもインターネットショッピングはやらない。「電話なら直接話せるので、電話注文は承っています」

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皿を持参して「○千円以内で盛り合わせてください」という頼み方もできるが、これは近隣の人限定のサービス。「味も香りも切り立てがピークなので、こういう提供の仕方は30分以内に召し上がれる方だけです」 基本的には、一枚ずつ交互に透明フィルムを重ね、乾燥しないように包んでくれる。食べるまでに時間がかかる場合はやや厚めに切るか、真空パックをすすめられることも。「30分以内なんてハードルをあげてしまっているのは自覚していますが、本当に、それが一番旨いんです!」

「旨いかどうか」にとことんこだわる。簡単なようでいて、じつは最も難しいことではないだろうか。儲けや効率よりも「旨さ」を優先させるのだから。でも、だからこそ、サルメリア69は常に最高に旨い生ハムを提供し続けることができるのだ。

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SALUMERIA 69 サルメリア・ロッキュー
東京都調布市入間町3-9-11サミール成城
※ 店の前に1台分の駐車スペースあり。
TEL 03-6411-9496
月・木・金 12:00~19:00
     
土・日・祝日 11:00~19:00
火・水曜日定休

スライサーを持参し、さまざまなイベントにも参加しています。
臨時休業となる場合もありますので詳細はHPをご確認ください。

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり

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