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2016.03.17

美しき手動レバー式エスプレッソマシンla Pavoniで自分だけの一杯を淹れる

コーヒーの抽出速度を上げるためさまざまな機械が考案されていた時代、蒸気圧を利用して抽出する方法を確立し洗練させたのはご存じ、イタリア人。中でもエポックメイキングな発明となったのは1901年にミラノで開発された業務用機械だ。その特許の使用権を得て初めて実用化したのが、パヴォーニ氏。現代もほぼ変わらぬ姿で製造されている美しきエスプレッソマシンの幕開けだった。

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アルファ ロメオがミラノに創業したのは1910年。同じ時代、同じ街で、イタリア人にとって欠かせないもうひとつのmacchina(マシン)を作る会社が誕生する。1905年に世界で初めて商業ベースのエスプレッソマシンを販売したla Pavoni(ラ・パヴォーニ)だ。100年以上経た現在でも変わらぬ構造とデザインは、エスプレッソを飲むこと以上に「このマシンで淹れる」という行為自体を楽しませてくれる。美しい車が、便利に移動すること以上に「運転する喜び」を与えてくれるのと同様に。

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自分だけの方法を探究するエスプレッソマシン

お手軽に操作できる最新式エスプレッソマシンが主流となっている現代において、la Pavoniのエスプレッソマシンはポンプを使わず、蒸気圧を用いた旧型の手動レバーで抽出する。昨今は業務用でもマシンの自動化が進んでいるが、とくに家庭用ではレバー式を出しているのは同社だけ。デザイン性、構造のオリジナリティ、手間暇かける操作性、そして、それによる「自分らしいやり方」への探究心を創出してくれる唯一無二の存在である。

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原型が発明されたのは1901年、ルイジ・ベッツェラ氏の手による。この特許の使用権を得て、実用的な業務用マシンとして昇華させたのがLa Pavoniの創業者、デシデリオ・パヴォーニ氏だ。自社のプロダクトデザインに、著名な建築家やデザイナーをいち早く起用したことでも知られるLa Pavoniだが、その名を一躍有名にしたのは1960年代に発売された“ユーロピッコラ”。もともとはミラノのアーティストが考案したレバー式マシンを改良して市販化した、蒸気利用型では世界初の家庭用市販モデルだというが、車にしろエスプレッソマシンにしろ、ミラネーゼのマシンに対する強いこだわりがうかがい知れる。

ユーロピッコラはその類い希なるデザイン性ゆえ映画の小道具などでも登場し、MoMA(ニューヨーク近代美術館)にも展示されている。それ以上にすばらしいのは、そのカタチを保ったまま現在でもロングセラーを続けていることだ。このユーロピッコラの上級モデルとして1974年に登場したのが、今回ご紹介している「プロフェッショナル」である。

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ボイラータンクに入れた水が熱湯に変わり、抽出準備が整ったことを指し示す圧力計。あえてアナログな計器を用いているところがたまらない。アルフィスタなら、この雰囲気に魅せられる人も多いだろう。

手動レバーで「自分」のコーヒーを淹れる

操作は決して難しくない。まず、レバーをいったん下げておき、ボイラータンクに水を注ぐ。それがお湯に変わるのを待つ間に、パウダー状に細かく挽いたコーヒー粉をセットする。

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コーヒー粉の適量は7〜10g。撮影時は10gほど使用した。豆は、言うまでもなく挽きたてがベスト。パウダー状になるくらい細かく、なおかつ一定の密度で挽くことが重要だ。本格的に淹れたい人はグラインダーにもこだわることをおすすめする。

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適量の粉を入れたら、慎重に力加減をしながらタンパーで垂直に押し込んでいく。強く押すと目がしまるので、コーヒー粉が粗すぎると思ったら強めに押すなど、ある程度の調整がここでできる。「かためにタンピングしたほうがクレマはキレイに出やすいです。かたすぎると抽出できなくなりますが……」と井川さん。加減が難しい分、ハマる人には面白い工程のひとつかもしれない。

la Pavoniを販売するmarveの井川彰彦氏いわく、「la Pavoniは粉の状態が仕上がりにかなり影響します。量が少なすぎたり粗挽きだったりすると密度が低くなるため圧力が十分にかかりません。レバーを押しても抵抗をあまり感じませんし、結果として薄いエスプレッソに。とはいえ粉が細かすぎたり量が多すぎたりすると、今度はレバーが下がらず、抽出できないということもあります」

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十分な圧力がかかったら、抽出開始。レバーを上げるとお湯がタンクからピストンに移動するので、ここで数秒置く。こうすることで、コーヒー粉にお湯がかかり、蒸らすことができる。あとは一定の速度でレバーを下ろしながら抽出。レバーを上げてから下ろすまで、全体で30秒ほど。

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「レバーを下ろしきったら、ポタポタ落ちていてもそれは雑味なので、カップをはずします。まず大切なのは、毎回同じようにできるという“慣れ”でしょうか。そこから『今回はちょっと薄かったな。次はもう少し濃くしてみよう』とか、逆に『今日はあっさり目に淹れてみよう』と自分なりの微調整を楽しんでみてください」(井川さん)

おいしいエスプレッソの条件は、9気圧で、20〜30秒かけて30ccほど抽出したものといわれ、全自動マシンならそれがすべて機械任せで制御されるわけだが、手動レバーは、手でそれを感じる。正確に何気圧ということは無論わからないが、自分なりの「ここだ!」というポイントを文字通り手探りで見極めていく。慣れるまでは失敗することもあるだろうが、それもまた悪くない。

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「自分で淹れたエスプレッソ」はなんとも言えず旨い。たっぷりの砂糖を入れ、イタリア人のように何十回もかき混ぜてから味わってほしい。

一度使えばトリコに、一生使える逸品

電化製品は毎年のようにモデルチェンジされるのが当たり前で、実際何年かすると時代遅れのような、古びた感覚をまとうものだが、la Pavoniに限ってそれはあり得ない。飽きないデザインと、こわれにくい構造。消耗する部品のオーバーホールは無論必須だが、それを定期的に行ってさえいれば、一生ものとして使える、使いたくなる逸品。今回の撮影に協力してくれたmarveではオーバーホールも受け付けてくれるので(対応モデルは「プロフェッショナル」のみ)、その点でも万全だ。

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ミルクフォームもコツが要るが、抽出と同じでこれまた楽しい作業。何よりも、きめ細やかなフォームミルクを使ったカプチーノが自宅でできるのだから、嬉しい限り。ラテアートにハマっていく人も多いそうだが、なるほどそれもうなずける。

「抽出」のボタンを押せばあとは機械が勝手に淹れてくれる最新型のマシンに比べれば、非常に手間がかかるのは事実。しかし、機械任せではなく自分の感覚で仕上がりをコントロールできる一連の作業、これがちょっとした儀式のように楽しいのだ。言い換えれば、この作業を楽しいと感じる人だけがla Pavoniの魅力を感じ取り、一度使えばトリコになるのかもしれない。

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la Pavoni本体にもプラスティック製の簡易タンパーは付属しているが、見た目にこだわりたい、力の入れ具合をしっかり調整したいという人には、別売りのタンパーがおすすめ(写真は参考商品。実際の商品にはla Pavoniのロゴは入っていない)。しっかり押すためのタンピングマットフォームミルク用のジャグ、0.1g単位で細かく量れるドリップスケールもあると便利。

la Pavoni

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
matricaria

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