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2017.02.02

観るだけではない、“感じる芸術”との出会い 自然とアートが調和した「ヴァンジ彫刻庭園美術館」

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そこにいるだけで気持ちいい。素晴らしい環境と立地にある文化複合施設「クレマチスの丘」。その魅力の一部を2度にわたりお届けする(後編は2月末公開予定)。今回ご紹介するのは、「ヴァンジ彫刻庭園美術館」。自然とアートの理想的な融合は、心地よい空気に触れて感性が高まった訪問者に、知的な刺激を与えてくれる。観るだけではない、感じる芸術がここにある。


アート、食、ゆったりした時間。すべてを満たす至福の時

都心からだとクルマで1時間半程度だが、「もっと遠くても訪れたい」。そんな気持ちにさせてくれるのが、静岡県は長泉町にある文化複合施設「クレマチスの丘」。4館の美術館に咲き誇る花々に囲まれた庭園、本格派リストランテやピッツェリアなど、アートや食への関心が高いアルフィスタにおすすめのスポットだ。

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クレマチスの丘の目玉のひとつ「ヴァンジ彫刻庭園美術館」の常設コレクション。フィレンツェでの大回顧展に出品された屋外大型彫刻を中心に、四季折々の庭園のなかに作品が展示されている。屋外作品は手で触れて楽しめるのも特徴だ。写真は、京都の竹林に感動して制作された「竹林の中の男」。

そのクレマチスの丘のなかにあるミュージアムのひとつ「ヴァンジ彫刻庭園美術館」は、イタリアを代表する具象彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの作品を展示する世界で唯一の個人美術館。本人も設計に関わり、開館した2002年の来日時も、富士山麓の豊かな自然に囲まれた美しい地にとても満足していたという。

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ジュリアーノ・ヴァンジ。1931年、フィレンツェ近郊で生まれ、フィレンツェ国立美術学校で学ぶ。イタリアの都市パドヴァやピサの大聖堂に作品を提供するほか、各地で個展や大回顧展を開催。2002年には芸術分野でのノーベル賞ともいえる高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。85歳の今なお、作品を作り続けている。

人間の多面性をつかみ取るEQと、異素材をたくみに操るIQ

ルネサンス以来の歴史と伝統が息づくフィレンツェで青年期を過ごし、デッサンや制作に没頭したというヴァンジ。人間の内なる心のあり様を独自の視点で捉え、具象的に表現するその作品は、ダイナミックでありながら繊細な機微を感じさせる。時に悲しく、時に強く、時に美しく、時に醜く。そんな人間の多面性をつかみ取ることができるのは豊かな感性[EQ]があってこそだろう。

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同時に、その感性を作品として表現するには相当な知性[IQ]をも必要とするはず。彼の作品には、大理石やブロンズなどの彫刻でよく使われる素材に、ガラスやニッケル合金といった異素材を組み合わせて制作されたものが多い。当然素材によって扱い方は変わる。素材ひとつひとつへの探究心を絶やさず、それらを巧みに操る技術の研鑽を積み、アートとして成立させているのだ。

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花模様のように見える御影石を見てひらめいた1991年の作品「花柄の服の女」(左)。安らかな表情のこの女性は、自身の祖母をイメージしたという。右の写真は、「紫の服の男」。頭部にクルミの木、胴体にはシナノキと寄木のように木材を組み、顔にはヒゲとも汗とも思える金属の粒を埋め込んでいる。異素材をまとめあげるヴァンジの技法はこの作品で一層の洗練を遂げた。

花咲き乱れる春に空気の澄んだ冬。四季折々の魅力

美術館の屋外展示は手入れの行き届いた美しい植栽とともにある。館内展示は作家の意図のもと配置が計算され、照明により空間の演出が施されている。変化に富んだ順路をたどりながら、ヴァンジの人間や社会に対する洞察力と、とどまるところを知らない造形に対する探究心に感嘆する。

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1970年に制作された「壁をよじ登る男」。ヴァンジの彫刻によく見られる特徴なのだが、右と左とで表情が異なる。角度によって躊躇しているようにも、希望に向かって前進しているようにも見え、鑑賞者の想像力を刺激する。

示唆に富んだヴァンジの作品を眺めていると、外へと解き放たれ、じつに爽快で開放的な心持ちになる。それは自然に囲まれたすばらしい環境によるところが大きい。

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ヴァンジ彫刻庭園美術館は今年で開館15周年。冬場の黄色い芝生も、息を潜めるかのようなクレマチスも生命力に満ち、春の訪れを待っているようだ。右は庭園の一角にあるガーデナーズハウス。アートにふれ、自然を眺め、ぼんやり瞑想する時間も悪くない。

ここクレマチスの丘は、1973年に開館したベルナール・ビュフェ美術館から発展を遂げたもの。創設者は「ひとりの天才の才能を通じ、この地に文化が花咲くこと」を願ったという。その願いは結実したといえるだろう。ベルナール・ビュフェ美術館から広がる「ビュフェ・エリア」と、ヴァンジ彫刻庭園美術館とIZU PHOTO MUSEUM、ガーデン、本格派レストランを擁する「クレマチスガーデン・エリア」から成るクレマチスの丘。これらが揃い、文化の花が見事に開いたのだ。

食への取り組みも本格的

アートを堪能したら空腹も満たしたい。県外からも多くのリピーターが訪れる本格的なリストランテ「プリマヴェーラ」は次回に紹介するとして、今回は気軽に入れるピッツェリア&トラットリア「CIAO CIAO」を紹介しよう。

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石窯で焼き上げるナポリピッツァ。写真のこちらはクレマチスの丘のスペシャルピッツァ「マルゲリータ・クレマチス」。プーリア州の最高級チーズ、ブッラータ(モッツァレラを巾着状にした中に細かいモッツァレラと生クリームを入れた絶品)を使用したひと皿は、とても美味。

美術館に併設されたカジュアルなレストランと聞くと、さほど期待しない人もいるかもしれないが、こちらのピッツァはそのためだけにでも来たくなるおいしさ。契約農家から届く新鮮な野菜をはじめとする地元静岡の食材にこだわり、前菜やパスタなども本格的だ。

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明るく開放的な店内は、居心地もいい。入り口付近に飾られた赤いオブジェ。その正体は、戦前のアルファ ロメオのレーシングカー「P3 (ティーポ B モノポスト)」のボディパネルおよびエクゾーストパイプの一部。 意外なところにアルファ ロメオの片鱗があった。訪れた際はチェックを忘れずに。

春は桜にチューリップ、初夏から夏はクレマチス本番、秋は紅葉や秋バラ、冬は澄んだ空気の中でより一層感じられる太陽の恵み。曇った日のグレーの冬空も一興だ。いつ訪れても感性と知性を刺激され、充実した時間を過ごすことができる。アルフィスタのドライブ目的地として理想的といえるのではないだろうか。

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ヴァンジ彫刻庭園美術館
静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
055-989-8787
休館日:水曜日(祝日の場合は開館、その翌日休)、年末年始
2月25日より、The Bambiest 2017 「樹々の隙間」ヴァンジ彫刻庭園美術館開館15周年記念企画 映像・写真展が開催されます(〜4月11日)。常設コレクションとともにお楽しみください。
※無料の駐車場、入館料、各施設の営業時間等の情報はこちらをご確認ください。

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
matricaria

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