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2017.02.23

地元食材を生かした料理法が感動を呼ぶ リストランテ プリマヴェーラの“食べる芸術”

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訪れた人の感性[EQ]を満たし、知性[IQ]への刺激を与えてくれる静岡県クレマチスの丘。以前に「ヴァンジ彫刻庭園美術館」を紹介したが、今回はその庭園を見下ろす絶好のロケーションを誇る「リストランテ プリマヴェーラ」。収穫したての野菜を“食べる芸術”に仕上げ、静岡随一の呼び声も高いイタリアンだ。


エル・ブジでも経験を積んだ黒羽シェフが生み出す“食べる芸術”

Primaveraはイタリア語で「春」。「すべての物事の始まり」「起源」という意味も持つ。総料理長 黒羽徹氏が「心躍り、気分が高揚する食卓との出会い」を念頭に 物語を始める場所、それがリストランテ プリマヴェーラだ。

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アンティパストからドルチェまで続く“物語”の幕開けを飾るのは、ヴェネツィアを拠点に活躍中の現代アーティスト 三嶋りつ惠氏の作品。知性と感性を刺激される至福のひとときが始まる。

黒羽シェフはフランス料理を学んだ後、5年半に及ぶイタリア有名店での経験、さらに「世界一予約の取れないレストラン」として名を馳せた、あの「エル・ブジ」での修業を経て日本へ帰国した経歴の持ち主。調理の技術はすべて体得した上で美しく独創的に魅せる、まさにIQ×EQを両輪としながら道を拓き前進してきた人である。

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黒羽 徹氏。2002年、クレマチスの丘に誕生した最初のイタリアンレストランで料理長を務めた後、2009年、同地に「リストランテ プリマヴェーラ」を開業。食材の選定、調理はもちろん、調度品や食器の調達にいたるまで全方位で手がけ、自らのこだわりを貫く。

新鮮な地元野菜が持つおいしさを伝える“モノテマーティカ”とは?

エル・ブジ仕込みの前衛的な料理を振る舞うこともできる黒羽シェフだが、彼が富士の麓で目指す“リストランテとしての頂点”はそこではない。漁業、農業、畜産のすべてが盛んなこの土地で「東京と同じことをやる必要はない。ここでしかできない料理を作るべき」と思い至った。

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イタリア修業中、「食材や調理が重要なのは当然。もっと大切なのは目の前の景色だ」と言われた言葉が今も忘れられないというシェフ。ここはまさに理想の地。庭園側からは、ちょうどヴァンジの「プリマヴェーラ」という作品の向こうに、リストランテの窓が見える(写真右)。

最初に手がけたレストランでは魚介を中心に据えた黒羽シェフ。現在の「プリマヴェーラ」で発信しているのは「野菜そのもののおいしさ」。

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契約農家から届く朝採り野菜を使ったランチが終わると、トラックで自らディナー用の野菜を仕入れに行くほどのこだわり。「このあたりの野菜は抜群においしい。きちんと育てられた採れたての味は圧倒的です」と、生産者への敬意を込めながら五感を研ぎ澄まし、食材と向き合う。

ここで追究する料理観を、シェフは“モノテマーティカ”と表現する。tematicaはイタリア語でテーマ、すなわち“mono(単一)主義”とでも訳せるだろうか。「野菜と魚と肉、素材を重ねて複雑な味わいを出すことはできますが、そういう複合的な方法ではなく野菜を文字通り主役に据えて豊かな個性をそのまま表現する。野菜自体のおいしさを出すには単一的な料理がベストだと考えています」と語る。

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感動を呼ぶ前菜「大根とオリーブオイルのズッパ」(ズッパ=食べるスープ)。「火山灰土で水はけのいい三島の大根は実においしい。だからこそ単一素材での調理が生きるんです」という。甘みの中に大根特有の香りが生かされ、まろやかでいて力強い。その風味をオリーブオイルが際立てる。

「無農薬でも、おいしくなければ感動は与えられない」という生産者と共鳴

野菜の魅力に目覚めたのは、生産者である杉本正博氏との出会いが大きいという。「無農薬や有機といった栽培法だけで人に感動は与えられない、本当においしくなければ、と杉本さんは言います。その考えが“食材は旅をしない”という私の持論と共鳴したのです」。こうして杉本氏が作る“圧倒的な野菜”と、その味を損なうことなくおいしさを引き出す黒羽シェフが出会い、食材ありきの料理“クチーナ・モノテマーティカ”が誕生したのだ。

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鮮度の良さがそのまま表れた鮮やかな色合いのドルチェ「小松菜のズッパ」。小松菜をデザートに? と驚くなかれ、これがじつに美味。生のままペーストにした小松菜は上品な甘さが際立ち、ソースの下のパンナコッタと抜群の相性。タピオカの食感もアクセントを添え、繊細さを極めたひと皿だ。

野菜が主役だが、魚や肉もこのあたりの特産。前菜からセコンド、ドルチェまですべての素材を地産地消で提供できるのが、プリマヴェーラの強みである。たとえばシェフ自身が感動したという手長海老。「駿河湾は日本一深い湾で、魚介の宝庫です。15年前に初めて来たときはとくに海老の種類が豊富で質もずば抜けていました」と振り返る。

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野菜と同様、近海で捕れる魚介のおいしさも格別。こちらは「手長海老とブロッコリーのタリオリーニ」。緑と海老の鮮やかな色合いが美しく、素材の旨味が口いっぱいに広がる。訪れたら、ぜひ味わいたい一品。

シェフの技術[IQ]と感性[EQ]があってこそ到達したひとつの頂点

食材の魅力を語るシェフの表情は楽しげで、生産者への敬意と自然への感謝に満ちている。「エル・ブジ的なアプローチを期待されるお客様もやはりいらっしゃいました。でも素材の良さを生かしたシンプルな料理を食べたがる人も多いです。両方の期待に応えようと、コースを2種類用意したことも(笑)。すべてのお客様を満足させたくて、あれこれやったんです」という言葉には、人柄がにじみ出る。そんな紆余曲折を経て辿り着いたのが、今のスタイルだ。

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訪れた人を心底満足させるには、空間や食器も重要。このフォークは自らフィレェンツェに1週間泊まり込み、シェフのパスタが一度でくるりと巻けるように先端の幅や持ち手の角度を細かく調整してもらったという貴重な職人技。美しいプレートも、三嶋りつ惠氏の工房を訪ねて依頼した。

最高の技術[IQ]を持つ人が最高の食材と環境に恵まれたとしても、それを駆使してどんな料理を完成させるかはやはりその人の感性[EQ]しだい。プリマヴェーラの味わいは、黒羽シェフだからこそ到達した、素材と自然と人への想いが詰まったひとつの頂なのだ。

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プリマヴェーラでの“食の旅”を終えて帰路につくとき、夕日に染まる駿河湾が眼前に広がっていた。素材の力と人の想いが凝縮した本物の料理は、食べ終えた後も深く心地よい余韻を残してくれる。ひとときアルファ ロメオをとめて、その余韻にひたりながら美しい景色を眺めてみるのも一興かもしれない。

季節が変わったらまた来よう、そう思わせてくれる「リストランテ プリマヴェーラ」であった。

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Ristorante Primavera リストランテ プリマヴェーラ
静岡県長泉町東野クレマチスの丘347-1
055-989-8788
ランチ 11:00~15:00(L.O. 13:30)
ディナー 17:30~22:00(L.O. 19:00)
定休:水曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
matricaria

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