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2017.04.05

ミシュラン三ツ星フレンチ「カンテサンス」 常に成長し続ける料理を提供する究極のおもてなし

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ミシュラン三ツ星を10年連続で獲得しているフレンチレストラン「カンテサンス」。オーナーシェフ・岸田周三氏は20代後半で渡仏し、ミシュラン一ツ星から三ツ星まで数軒のレストランでの修業を経て、2006年にカンテサンスを立ち上げた。岸田シェフが長年に渡り積み上げてきた経験/知見[IQ]は「進化し続ける料理」を通じて、顧客に感性[EQ]を刺激する体験を提供している。


進化し続ける「モダン・フレンチ」を提供する名店へ

フランス語の「カンテサンス(Quintessence)」には「物事の本質」や「神髄」などの意味がある。顧客には最高の食材を最高の状態で提供するので、それを五感で味わい、楽しんでほしい、という岸田シェフの願いが込められている。

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岸田周三氏。1993年、三重県の志摩観光ホテル「ラ・メール」に入社。2000年より約6年、フランスで修業。2006年にカンテサンスを立ち上げる。「料理は文化なので変化し、成長していくもの」を信条とし、常に料理をより良い形へと進化させ続ける。

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洗練された重厚感のある入口。2013年に現在の品川区、ガーデンシティ品川御殿山に移転した。

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ウエイティングルームの照明は、ドイツ人照明デザイナーであるインゴ・マウラー氏の作品「紙切れ(ツェッツル)」。紙の一枚一枚に世界各地を発祥とする詩やメッセージが書かれている。

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ウエイティングルームのテーブルにレイアウトされた植物のオブジェは、岸田シェフが一つひとつ作っている。季節ごとにテーマを決めて都度変更する。

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座席は全30席。照明デザイナーと綿密な話し合いをし、料理が最もきれいに映えるライティングを実現。「フレンチレストランの中では(照明が)明るいほう」だと岸田シェフ。どこからどう見られても自信のある料理を提供しているからこそできることだ。

岸田シェフは26歳で渡仏し、フランス各地でミシュラン一ツ星から三ツ星まで数軒のレストランで修業を積み、パリの三ツ星レストラン「アストランス」にて、シェフのパスカル・バルボ氏に次ぐポジションとなる副料理長(スーシェフ)に就任した経験も持つ。

帰国後、2006年にカンテサンスをオープンした翌年、現役最年少(2007年当時)の33歳にしてミシュラン三ツ星を獲得し、以後10年連続でミシュラン三ツ星に輝く快挙を成し遂げた実力派である。

「常に最高の料理を提供することで、顧客の満足度は上がる」と信じる

オープン当時は白金台にあったカンテサンスが、品川区の高台、御殿山に移転したのは2013年。前の店と比べて大きく変わった点は、キッチンの面積が広くなったことだ。

「現在のカンテサンスは料理人の僕にとっての理想を叶えるお店です。今までずっと最高の食材を最高の状態で調理してきましたが、これまで以上に高いクオリティで料理を提供するには、譲れない条件をすべて満たしているこの場所に引っ越す以外、選択肢はありませんでした」

20年を超える歳月をかけて積み上げた膨大な経験や知見をベースに、あらゆる食材に対し最もふさわしい火入れをし、食材の真の美味しさを徹底して引き出す様は、経験/知見[IQ]と感性[EQ]の両面から料理と向き合っていることにほかならない。

実際、カンテサンスの料理に魅了され、来店時に次の予約を取って帰る顧客も多く、全30席の店内は常に満席で、数ヶ月先まで予約が取れないことでも有名だ。

顧客ごとに来店・提供メニュー履歴を記録 次回につなげる粋なおもてなし

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店名を刻印した御影石のショープレートは位置皿の代わり。この上に料理を直接置くこともできる。

顧客が心を奪われるカンテサンスの料理は、来店する度に異なるものが提供される。メニューは「おまかせの1コース」のみで、前菜7品、魚料理、肉料理、チーズ、デザート4品の計14品。

オープン当時から存在する「Menu carte blanche(白紙のメニュー)」 には、岸田シェフの「僕にすべてを任せてください。責任を持って毎回、クオリティの高い料理を提供します」との意思が反映されている。

「お客様の来店履歴と提供した料理の履歴をオープン当時から記録しています。かなり労力がかかりますが、来店される度に違う料理をお出ししたいと考えていますから、やめられません。2品のスペシャリテを除き、日々メニューが変わっていくので、毎回新鮮な感覚で楽しんでいただけると思います」

カンテサンスそのものを表現する一品「山羊乳のババロア」

カンテサンスの料理におけるこだわりのひとつは「シンプルであること」。美味しさを追求するために、必要最低限の食材を用いて、盛り付けもシンプルにする。あれもこれもと盛り込みすぎると、食べる順番や比率によって、味が変わってしまうことを岸田シェフは懸念する。

不要なものをとことん削ぎ落とした料理を目指すことで、岸田シェフが顧客に楽しんでほしい味をイメージ通り伝えられるというわけだ。

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スペシャリテのひとつ「山羊乳のババロア」。山羊のミルクは年間を通して味が微妙に変わっていくため、その変化を楽しみに来店するリピーターも。

前菜のひとつで、スペシャリテとして通年提供される「山羊乳のババロア」にも、岸田シェフの料理哲学が色濃く反映されている。山羊乳にオリーブオイルと塩をかけ、上には共に薄く削られた百合根の芯とマカデミアナッツを乗せている。

「『山羊乳のババロア』には、他の料理にも用いる高品質なオリーブオイルと塩を使い、調味料自体の味わいを感じていただける一品です。オリーブオイルと塩の良さが引き立つよう、他には強すぎる個性を持たない食材を用いています」

オリーブオイルがたっぷりと贅沢にかかっていながらも、油っぽい印象は皆無で、山羊乳の自然な甘さが口の中に広がる。と同時に、オリーブの華やかな香りが鼻腔をくすぐる。あくまで主役はオリーブオイルと塩。一方で、ほくほくした百合根とシャリッとしたマカデミアナッツの組み合わせが、食感にも感動を与えてくれる。

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修業時代から「シェフになったら、こんな料理を作りたい」とノートに書き溜めてきた。山羊乳のババロアの原点ともいえる、修業時代に出会ったフレッシュチーズの料理も、当時記録していたという。

昨日よりも素晴らしいものを作ろうという気持ち

もうひとつのこだわりを「常に成長し続ける料理を提供すること」だと岸田シェフは話す。パリ「アストランス」時代、パスカルシェフから受けた教えに、多大な影響を受けることとなった。

「食材は自然からとれるものなので、たとえ同じ食材であっても、状態は一つひとつ微妙に違う。当然、日によっても異なる。だから、昨日まではベストだと思っていたやり方が、今日もベストかというとそうとは限らない。食材と直に接していて、料理を作っているのは君なのだから、常に『今日はどんなやり方をするのがベストなのか』自問自答して、昨日よりも素晴らしいものを作ろうという気持ちでやりなさい――そんなことを教わりました」

常により良い方法や改善策を模索し、考え続ける方法論を身に着けなければ、新しい料理を自ら生み出せるようにはならない。教わった料理を作れるようになっても「同じものを作ろう」という意識で、ただ作り続けているだけでは、料理のクリエイティブな要素は失われ、単なる「作業」になる恐れもある。さらに、時間の経過とともに料理そのものが古くなり、進化とは無縁になる。

「人は考えたぶんだけ成長する、と僕は思っています。人よりも多く考えるからこそ、人よりも優れた料理を作れるようになるのです。僕にとっては考えないことが怠慢。手を動かしながら、同時に脳も動かして、どんなときでも考えています」

豊富な経験/知見[IQ]を持っているだけでは最高の料理は完成しない。1日として同じ日はない。同様にひとつとして同じ食材はない。岸田シェフは感性[EQ]を研ぎ澄ませた状態で、一つひとつの食材と毎日真剣に向き合い、培ってきた経験/知見[IQ]を元に考えながら、極上の料理に仕上げる手法を瞬時に導き出す。

「僕にとってのおもてなしは、そのときのベストを尽くして、美味しい料理を提供すること」。岸田シェフの真摯な姿勢が誠実に反映された料理に、顧客は感性[EQ]を揺さぶられ、カンテサンスという名店に魅了される者が後を絶たないのだろう。帰路、岸田シェフの重みのある言葉の一つひとつと、鳴り止むことがなかった予約の電話を重ね合わせて納得したのだった。

レストラン カンテサンス
東京都品川区北品川6丁目7-29 ガーデンシティ品川御殿山101
03-6277-0090
ランチ 12:00~15:00(L.O. 13:00)
ディナー 18:30~22:00(L.O. 20:00)
定休:日曜日中心に月6日、年末年始、夏期休暇

撮影 安井信介
取材・文 池田園子(プレスラボ)

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