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2017.09.25

40年ぶりの復活となるアルファ ロメオ『ジュリア』の歴史を振り返る

待望の新型アルファ ロメオ『ジュリア』が発表されましたが、今回はその『ジュリア』にまつわる歴史を振り返ります。

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アルファ ロメオが新しい時代へと突入したことを象徴する最初のモデル、『ジュリア(GIULIA)』が日本国内でも発表になりました。メディア向けの発表会で、エクステリア・チーフ・デザイナーのアレッサンドロ・マッコリーニが語ったとおり、新型ジュリアは過去のヘリテイジを踏まえたうえで誕生した、オール・ブランニューといえるアルファ ロメオです。

新型は『ジュリア』として2代目にあたるモデルであり、同時に未来に向かう道筋がここから変わっていくことを約束する存在として登場したモデルでもありますが、実は初代もアルファ ロメオにとってエポックメイキングなクルマでした。そのヒストリーを軽くおさらいしておきましょう。

1910年にスタートしたアルファ ロメオの歴史で最初に『ジュリア』の名前が登場したのは、1962年のことでした。1950年代にヒットをおさめ、アルファ ロメオが量産車メーカーへと発展するのを決定づけた『ジュリエッタ』の後継として企画されたものでした。先代といえる『ジュリエッタ』の名称は“小さなジュリア”の意味。つまりジュリアは“大きなジュリエッタ”の意味にも置き換えられるわけで、その名称は“ジュリエッタのお姉さん”=さらに発展・成熟したモデルを示唆したものでした。オールアルミ製ブロックのDOHCエンジン、5速トランスミッション、4輪ディスクブレーキといった当時としては先進的なメカニズムを持ち、同じクラスの他社のクルマと比較すると明らかに高いパフォーマンスを誇ったことから、『ジュリエッタ』を凌ぐ大ヒットをおさめ、現在でも第2次世界大戦後のアルファ ロメオを代表するシリーズとして認められています。

『ジュリア』の新型車として当初デビューを果たしたのは、『ベルリーナ』(セダン)でした。並行して『ジュリア』の名前をつけられた『ベルリネッタ』(クーペ)と『スパイダー』もラインナップされましたが、それは『ジュリエッタ』のマイナーチェンジ版。ややこしくなるので、ここでは割愛します。

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『ジュリア』は、その社内デザインの『ベルリーナ』のほか、カロッツェリア・ベルトーネがデザインを担った『ベルリネッタ』、『ジュリア』を名乗らない派生車種ではありますがピニンファリーナによるスタイリングを持った『スパイダー』、そしてジュリアベースのレーシング・スポーツカー&スペシャル・モデルと、おおまかに4つのモデルに分けることができるでしょう。1977年まで続いた長寿のシリーズで、それぞれのモデルが様々な発展を遂げてきたため、シリーズ全体の変遷を俯瞰しようとすると混乱を招きかねません。モデルごとにシンプルに触れていきましょう。

ベルリーナ系

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▲最初に登場したのは、『ジュリアTI』と呼ばれる『ベルリーナ』。92psの1.6リッターエンジンを搭載したモデルで、後に78psの1.3リッターを搭載したジュリア1300、82psのジュリア1300TIなどバリエーションが追加されていく。

『ジュリア』の先陣を切って登場した4ドアの『ベルリーナ』のボディは、見るからに四角い“箱”といったフォルムをしていながら、その実は当時としては珍しかった風洞実験などを経て念入りに開発されたものでした。そんなところからも推し量れるように、アルファ ロメオはこの『ジュリア』の開発に相当な力を注ぎ、量産車メーカーとしてのさらなるステップアップを狙ったのでした。

シルエットはボクシーだけどディテールに数々の特徴を持つスタイリングは、独特の愛嬌があったことから、デビューしてすぐに“醜いジュリア”というニックネームがつけられ、親しみを持って受け入れられました。このスタイリングデザインはいまだにアルフィスタ達の間では評価が高く、『ジュリア ベルリーナ』のヒストリックカーとしての人気も高いです。

『ジュリア ベルリーナ』のパワーユニットは、92〜112psの1.6.リッターと78〜89psの1.3リッターで構成されていました。現代の感覚ではアンダーパワーに思われるかも知れませんが、当時としては充分にパワフルでしたし、そもそも車重が1,000kgほどという軽い車体に積まれていたのです。『ジュリア』はデビュー当初から高性能なスポーツサルーンとして高い評価を得ていました。

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▲ツーリングカー・レースへの参戦を睨んだこの『ジュリアTIスーパー』は確かに高性能だったが、リアにはクッションの薄いシートが用いられるなど、ファミリーユースには少しハードなモデルでもあった。そのため後に追加された『ジュリア スーパー』は、ロードユースを前提とした高性能とセダンとしての使い勝手のバランスが良好なモデルとされ、人気を博した。『ジュリア スーパー』は1.6リッターでスタートしたが、後に89psの1.3リッターモデルも追加されている。

中でも最も高性能なモデルが、1963年に登場した『ジュリアTIスーパー』でした。パッと見ではそれほど大きく違ったところは見当たらないかも知れませんが、エンジンは標準的なモデルより20psも高い112psまでチューンナップされ、車重は100kg近い軽量化が施されて910kgほどへ。他にも細かな部分に無数の手が入れられた、ツーリングカー・レース向けのベース車両というべきモデルでした。そのため生産台数も少なく、たった501台が生産されたに過ぎません。

そのため市場からは、高性能な『ジュリア』を望む声が絶えませんでした。そして1965年にラインナップへと加わったのが、『ジュリア スーパー』でした。『ベルリーナ』の中で最もよく知られるのは、このモデルでしょう。サルーンとしての快適性を何ひとつ犠牲にすることなくエンジンを98ps(後に102ps)へと強化してスポーツ性を高めた『ジュリア スーパー』は、そのバランスのよさが高く評価され、人気モデルとなりました。その快適性とスポーツ性のバランスを考えるところあたり、新型『ジュリア スーパー』にも受け継がれている気がします。

ベルリネッタ系

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▲『ジュリア クーペ』の最初のモデルは、106psの1.6リッターを搭載する『ジュリア スプリントGT』。写真はその高性能版であり、事実上の後継モデルである『ジュリア スプリントGTV』。“V”はもちろん、veloce(=速い)の意味で、1.6リッターエンジンは109ps、最高速は5km/h伸びた185km/hである。

日本では“ジュリア・クーペ”と呼ばれることが多い2ドア4シーターの『ベルリネッタ』は、『ベルリーナ』に遅れること1年後の1963年にデビューしました。デザインを担当したのは、当時『ベルトーネ』のチーフデザイナーだったジョルジェット・ジウジアーロ。すっきりとクリーンでありながら美しいシルエットを見せるクーペスタイルは、後に巨匠と呼ばれることになるジウジアーロの60年代の最高傑作といわれています。やや寄り目ぎみにセットされた2灯式ヘッドランプにノーズとボンネットにあえて段差を持たせた手法が生み出す愛らしい表情は、日本では“段付き”と呼ばれ、現在でも高い人気を誇っています。

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▲こちらは後年になって追加された1.3リッターモデルで、『ジュリエッタ』のエンジンの中で最もチューンが高かった89psユニットを搭載。排気量が小さく簡素な仕様とされたことから“GT1300ジュニア”と名付けられた。が、兄貴分の『ジュリア スプリントGTV』より90kgも軽かったため、最高速は170km/hとなかなかの高性能であった。

エンジンは基本的には『ベルリーナ』と同じく1.6リッターと1.3リッターがメインでしたが、スポーティなクーペとあってチューンナップも高めとなり、1.6は106〜115ps、1.3は89〜96psとされていました。車重も『ベルリーナ』より50kg前後ほど軽かったので、パフォーマンス的には当時にしてはかなりのもの。当然ながらスポーティなクルマに目がないイタリア人の間で大きな人気を博しました。

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▲こちらは1750GTVをベースにしたレーシングカー、1750GTAm。名称とは異なりエンジンは2リッターまで拡大され、最高で220psを発揮した。このベースとなった1750GTVからヘッドランプは4灯となり、特徴的だったノーズの“段”も廃止され、キリッとした顔つきを見せるようになった。

その後、1.6リッターの高性能版は、排気量を拡大した1750GTVへ、さらには2000GTVへと発展していきます。GTVの“V”は“ヴェローチェ”の略。1967年デビューの1750では118ps、1972年デビューの2000では132psを発揮し、2000GTVでは最高速度195km/hという俊足ぶりを発揮するに至りました。

が、1963年から1977年まで続く『ジュリア クーペ』の系譜の中で最もホットなモデルは、“GTA”に尽きるでしょう。GTAの“A”は“alleggerita”、つまり“軽量化”を意味します。ボディ・パネルを大幅にアルミ化し、遮音材や内装なども徹底的に簡素化して、約200kgほども重量を削り取っていたのです。もちろんそれはモータースポーツに参戦するベース車両として開発されたもの。1.6リッターでは標準で115psながらレース仕様では170psへ、1.3リッターでは標準で96psながらレース用パーツを組み込むと160psへとパワーアップを果たし、当然ながら当時のツーリングカー・レースでは猛威を奮いました。

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▲1.6リッターの『ジュリア スプリントGTA』、1.3リッターのGTA1300ジュニアともに、ツーリングカーレースでは大活躍を収めた。写真のGTAのようにバルーン・タイプのオーバーフェンダーが備え付けられた強力な仕様も存在した。

スパイダー

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▲初期の『スパイダー』はテールがボートのように丸くすぼまっていくデザインだったが、この1969年登場のシリーズ2から、リアをスパッと切り落としたようなコーダトロンカ・スタイルとなる。リアビューが大きく変わったことで、双方にファンを生み出した。

車名の上では一度たりとも『ジュリア』を名乗ったことはありませんが、ピニンファリーナのスタイリングを手掛けた流麗な『スパイダー』も、『ジュリア』一族といえるでしょう。『ベルリネッタ』の初期のモデル、『ジュリア・スプリントGT』のプラットフォームからホイールベースを100mm縮めたものに、同じく『ベルリネッタ』系の高性能版だった109psのエンジンを搭載した、まさに『ジュリア』をベースにしたオープン・スポーツカーだからです。映画『卒業』で有名になった『スパイダー 1600 デュエット』は1966年の発表ですが、この美しい『ジュリア』系『スパイダー』は、発展やリファインを繰り返しながら1993年まで作られる超長寿モデルとなったのでした。

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▲こちらは初代『ジュリア』の系譜を1993年まで引っ張った、『スパイダー2.0』。基本的なシルエットはそれまでの『スパイダー』と共通ながら、ディテールは大幅にリファインされてモダンな印象を得た。

レーシング・スポーツカー&スペシャル・モデル

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▲ロードカーとしても販売されたが、明らかにレーシングユースを前提として開発された、『ジュリアTZ』。『ジュリア』をベースにしてはいるものの、基本骨格は鋼管スペースフレーム、ボディはザガートのデザインによるアルミ製の空力的なものとされていて、ベルリーナ系『ジュリア』やベルリネッタ系『ジュリア』の面影はどこにもない。

『ジュリア』をベースにしながらも、鋼管チューブラーフレームやザガート製アルミボディ、専用サスペンションなど、まさに戦うためのクルマとして作られたのが『ジュリアTZ』でした。『TZ』はロードカーとしても販売されましたが、多くはGTクラスを走るためのレーシングカーとして活躍しました。その後継の『TZ2』はさらなる軽量化のためにFRPボディとされましたが、そちらは完全なレーシングカーのみの生産でした。

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▲こちらは『ジュリアTZ』の発展形である、『ジュリアTZ2』。ボディの素材がFRP製へと変更され、車重はTZより40kg軽い620kgとなった。エンジンは『ジュリア』の1.6リッターをベースとしたもので、165ps。完全なレーシングユースで、10台のみがデリバリーされた。

また、『ジュリア』をベースにしたスペシャル・モデル、1969年に発表された『ジュニアZ』の存在も忘れられません。『ジュニアZ』は、直線を多用したシャープなスタイリングをデザインしたカロッツェリア・ザガートを表すもの。基本的なメカニズムは『ジュリア』の『ベルリネッタ』と共通ですが、ベースになったモデルと印象の全く異なるスタイリングにもファンは多く、現在ではコレクターズアイテムになっています。

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▲『TZ』や『TZ2』と同じくカロッツェリア・ザガートが『ジュリア』系のコンポーネンツを使って開発したスペシャル・モデル、『ジュニアZ』。まろやかな『ジュリア クーペ』とは大きく印象の異なる独特のシャープなスタイリングにもファンは多い。1.3リッターと1.6リッターを合わせて1510台が生産された。

──と、駆け足での紹介はあまりにも不充分ではあるのですが、駆け足で紹介してもこれだけのボリュームになってしまうのが“ジュリア・ファミリー”というもの。初代ジュリアシリーズがそれだけ長く深く愛されてきたことの、それは証なのです。

新型『ジュリア』は日本導入の段階で、スポーツ性と快適性のバランスに優れたベースモデルの『ジュリア』、ラグジュアリーグレードの『ジュリア スーパー』、一段階上の速さとAWDシステムを備えたスポーツグレードの『ジュリア ヴェローチェ』、そしてクラス最速レベルのスーパーファスト・セダンである『ジュリア クアドリフォリオ』という4つの個性が揃っています。かつての初代『ジュリア』がそうだったように、あらゆるドライバーの望みに応えられる構成になっています。さて、あなたのお好みは──?

TEXT: 嶋田 智之

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