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2017.04.13

文字を書く楽しみを広めつつ、世界に通じる作品を生み出す──書家・中塚翠涛

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さまざまなジャンルの題字やロゴ制作、テレビ出演など各メディアで注目を集める書家・中塚翠涛氏。昨年末にはルーブル美術館地下会場「カルーセル・ドゥ・ルーブル」で開催されたサロンに作家として招待され、金賞・審査員金賞をダブル受賞。世界を見据えて活躍する彼女の創作活動を支えるものとは?

 

4歳から書に親しみ、漢字の魅力を引き出していく

古典的な書を学んだのち、独自のスタイルを築き上げてきた書家・中塚翠涛氏。流れるような美しいラインが絵画のようにも見える作品群は、漢字を読まない海外の人にも高く評価されている。今回、そんな彼女とアルファ ロメオのコラボレーションが実現。IQとEQを両輪に走り続ける中塚翠涛氏の在り方とは?

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中塚翠涛(なかつか すいとう)氏。岡山県倉敷市出身、東京都在住。古典的な書をもとに多ジャンルで創作活動を続ける傍ら、「多くの人に手書きを楽しんでほしい」との想いからペン字練習帳などの出版も多数。著書『30日できれいな字が書けるペン字練習帳』(宝島社)シリーズは累計366万部を突破している。

書に親しんだのは4歳から。兄について地元・岡山県倉敷市の書道教室に行ったのがきっかけだという。4歳から“学んだ”ではなく、“親しんだ”と表現する理由は「勉強するという感覚はなく、筆遊びの感覚でしたから。筆の弾力が好きで自由に遊んでいました。だからこそ書の魅力に気づけたのではないかなと思っています」と当時を振り返る。

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パリにて制作された石版リトグラフの第1作「楽」。
彼女の活躍は、古典的な「書」だけにとどまらず、色を活かしたり和紙以外の素材を使ったりと多岐に渡る。

学ぶより楽しむ。その感覚を大切にしながら書家となり、現在のスタイルを築いてきた。感性が大きく影響する世界には違いないが、やはり根幹にあるのは漢字。その奥深さに敬意を払い、文字が持つ意味を理解した上で彼女の解釈を加えているからこそ、世界に通用する書が生まれる。中塚翠涛氏自身の個性だけでなく、漢字が持つ個性をも表現した作品なのだ。

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日本人はどうしても「何という字が書いてあるか」がまずわからないと不安になる人が多いが、「飛行機雲に見えたりゾウに見えたり、子どものように柔軟な感覚で楽しんでいただけたら。書く側も、たとえば王羲之の最高傑作として知られる蘭亭序は、お酒に酔っている時に書かれた草稿でしたが、王羲之本人もこれを上回る清書を書けなかったといいます。書くほうも見るほうも、自由でいいと思います」

ご存知のように漢字の歴史は非常に古い。象形、会意、指事など文字としての成り立ちも様々で、古代中国の歴史と文化の粋を集めたまさに知性[IQ]の結晶といえる文字だ。幼少期より書に親しみ、絵画や自然の景色を眺めて持ち前の感性をさらに磨いてきた彼女が、大学では中国文学を修めて漢字の魅力を深く知ることになる。そうして知性と感性を見事に融合させた作風に至ったのは必然なのかもしれない。

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湿度の影響を如実に受ける和紙の特性を見極めながら書の道具を扱うが、そんな中でも「道具選びも楽しんでいます。道具にこだわらないことにこだわりたい、というか」と笑顔で語る。たとえばガラス作家に作ってもらったというお気に入りの水差しを、気分によって文鎮代わりにすることも。

豊かな感性を通じて内面に蓄積されるエッセンス

作品を書くときも展示するときも、感性が重要なのは言うまでもない。子どもの頃から好きだという現代美術や建築、美しく盛り付けられた料理、外を眺めれば目の前に広がる自然の景色、たとえばちょっとした葉っぱの動きひとつをとっても、彼女にとっては「日々蓄積されるエッセンス」となる。そしてそれらが中塚翠涛という作家を形作り、作品として昇華されていくのだ。

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制作の場として出向く機会も多いパリが、個人的にも好きだという。「行くたびに違った表情を見せる街の雰囲気も聞こえてくる音も魅力的。パリの人は人目を気にしないで自分にあったスタイルを築いていますよね。だから私も素に戻れるし、行けば行くほど好きになる。日本の良さにも気づけるんです」

視覚的なものだけでなく、「創作にかかるときはいつも音が浮かんできます。集中してくると外からの音は気にならなくなるので、音楽はかけたりかけなかったり、気分しだいですが、音楽に限らず“音”そのものがとても重要な要素です」と語る。

「ゼロから考える段階のときはむしろ人の声や足音、スチーマーの音など適度なノイズがあったほうが集中できるのでカフェなどに行くことが多いですが、やるべきことがかたまってくると静かな場所のほうが集中できるかな。でも、意識的にそういう状況を作っているのではなくて、後で思い返すと“この状況のときはこういう場所を求めていたな”と気づくんです。無意識的に、自分の感覚が求める行動を取っているのかもしれません」

自身が心地よく楽しめるように行動し、まわりも楽しませるように心がけること。それらの積み重ねが自らの心理状態や作品にどんな影響を及ぼすかを無意識的に分析して、理解すること。それも彼女の強みといえるだろう。

自身の在り方を評し、「常にアクセル全開で走り続けようとした時期もありましたが、遊びの部分ってやはり必要ですよね。最近は自分の中の70点、80点を100点と考えて、残りの2〜3割は見る方にゆだねようと。120%を目指していた時より、余力を残した今のほうが吸収も早いし、成長できると感じています」と語ってくれた書家・中塚翠涛氏。マイペースで軽やかに駆け抜ける彼女の活躍に、今後も大いに期待したい。

「Alfa Romeo with 中塚翠涛」キャンペーンページはこちら

撮影 SHIge KIDOUE
取材・文 山根かおり
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