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  • 「男性を特別セクシーに、女性はとびきり美しくスタイリングしたい」。銀座に進出した京都在住のキモノデザイナー・斉藤上太郎氏
2017.06.26

「男性を特別セクシーに、女性はとびきり美しくスタイリングしたい」。銀座に進出した京都在住のキモノデザイナー・斉藤上太郎氏

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銀座の新名所「GINZA SIX」にある「JOTARO SAITO GINZA SIX」には“進化する伝統”をコンセプトにした着物が並ぶ。米国人歌手レディ・ガガ氏のTV出演時の衣装も手がけた、キモノデザイナー・斉藤上太郎氏の知性 [IQ]と感性[EQ]に迫る。

 

最先端の着物が生まれる、京都の路地裏に佇む工房へ

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空は広く遠望に山が見られる、京都盆地特有の景観だ。

京都駅から京都御所を過ぎ、北へ徒歩20分ほど。鴨川から路地に入ったところにある、斉藤家が代々継いできた工房へ足を運んだ。

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“和を楽しむライフスタイル”に基づく作品に定評がある(左)。「JOTARO SAITO GINZA SIX」は上太郎氏の着物に直にふれられる唯一の実店舗だ(右)。

近代染色作家の礎を築き、業界では“キモノ三代”の名を馳せる斉藤家。三代目の上太郎氏は、祖父に染色作家の斎藤才三郎、父に現代キモノ作家の斎藤三才をもつ家系に生まれた。新進気鋭のキモノデザイナーの活動は、着物のデザインに留まらず、ファッションショーの演出やインテリアの提案まで多岐にわたる。

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「見栄えよくあかぬけた印象になる。それが、今着物に求められている美意識でしょうね。」(上太郎氏) (C)SUNAO OMORI@TABLE ROCK

現在アルファ ロメオで行う「IQEQキャンペーン」で、“触覚”をテーマに、2種類のオリジナルの着物を手がけた上太郎氏。その素材はなんと、デニムとジャージだ。
斬新な発想から前衛的な着物は、常に知性[IQ]と感性[EQ]、双方を働かせて生まれるという。だが職人の世界である以上、何事も基本となる土台ありきだ。「強いて言えば、IQにあたる技術が前提にあり、EQによってエッセンスを加えるイメージ」と上太郎氏は語る。

「新しいものを作ることは、特に意識していない」

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「着物が、戦後から日本人の生活から遠ざかっている。その結果、現代の人々にとって“新しく”見えるのかもしれません。」(上太郎氏)

かつて日本人の日常着であった着物は、現代においては特別なシーンにおける装いとなり、私たちの生活から乖離した。だからこそ、上太郎氏の作品を見ると、ハッとしてしまうのだろう。大判の柄や豊かな色彩など、我々の感性に訴えかけるような革新的なデザインがほどこされている。
「故意で、革新を取り入れているわけではないんですよ。モダンで斬新な着物とよく言っていただけるのですが…。現代の価値観や美意識に照らし合わせたリアルな着物を作り、今の人々に日常生活で楽しんでもらうことが目標です。」

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「かつて洋服に携わった経験は、今のキモノデザイナーとしての作品にも生きています。」(上太郎氏)

今まで目にした着物とは、なにかが違う。そう思わせる作品を輩出するのは、かつて自身のアパレルブランドを創業・運営していたことも関係しているのかもしれない。「若い頃に独学で立ち上げたのですが、当時は反骨精神でやってた部分もありますね。僕が作りたいものは、着物では作れない。業界でも理解されないだろう…と(笑)。着物作りにいずれは携わると当初から思っていましたが、しばらくは他の衣類について勉強したかったんです。」
アパレルブランドに携わっていた当時は、絹以外の素材にもふれた。そのとき培った知性[IQ]が、今の活動にも生きている。

「かつて日本の民族衣装であった着物は、はたしてファッションなのか?」

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工房の近くにある機織り屋は、朝7時から夜7時までフル稼働する(左)。素早く密なコミュニケーションを取れることが、工房の近くに機織り屋があるメリット(右)。

一般的に洋服、つまりファッションは“トレンド”を伝えるもの。一方で、かつて民族衣装であった着物は、はたしてファッションといえるだろうか。キモノデザイナーとして活動を始めた当初は、業界で議論も起こったという。「着物業界全体が、これまで着物をファッションとして発信してこなかった。そのツケが今回ってきているのだと思います」。今後いかなるスタイルで着物を発信するか。それが作り手にとって、最たる課題なのだ。

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「着物はただ着るのではなく、着方(さばき)が大事です」(上太郎氏)(C)SUNAO OMORI@TABLE ROCK

ファッションショーを通して“リアルクローズ”としての着物を発信

日常着として着物を着る。それは普段着物をほとんど着ない現代人にとって、なかなか難しいことでもある。そこで着物のスタイルを提案する場として、上太郎氏は自身のファッションショーも構成している。演出から選曲まで着物の世界観そのものをデザインし、さまざまなアプローチで、観客の感性[EQ]を刺激する。

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この日、着物にさらりとポシェットを合わせていた上太郎氏。

ショーをクリエイトするさいに、上太郎氏が常に意識するのは“リアリティのない世界を作らないこと”“現代のリアルクローズである洋服と同じ見せ方をすること”なのだという。
「たとえば従来の着物のショーモデルは、袖の模様が見えるように、脇をしめて肘を曲げてウォーキングしていました。でも冷静になれば誰でも気付くと思うのですが、街中でそんな姿で歩いている人は、一人もいません。ショーのランウェイは街のストリートと同じだと僕は考えています。そのため、ショーモデルには自然に手を横に下ろして歩いてもらうのです。」

「日本の日常が外国人には面白い。僕の作品の源泉です」

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「デザインでも伝統に基づいた様式美はやはり大切なもの。そのことを念頭に、スタッフ一同、非常に注意深く作業しています。」(上太郎氏)

近年ファッション業界において、洗濯も手軽にできる、取り扱いが簡単な、手間がかからない洋服が増えている。その点で、着物はいろんな面で手間がかかると上太郎氏は述べる。「しかし着物を着て街へ出るのは、なかなかいいものですよ。歩幅や歩くスピードが変わって、いつもの景色も違って見えますから」。

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彩色前(左)と彩色後(右)。細やかな模様に一色ずつ、丁寧に色を差していく。

現代のライフスタイルに融け込む着物。その着想のヒントの多くは、普段の生活に潜んでいるという。「わざわざシルクロードや砂漠へ行かなくても、日常に刺激はたくさんある。僕の場合は、今の日本人にとってリアルな着物を作るため、日常生活を送る中でアイディアが浮かぶことが多いのです」。
昨今、外国人の間では日本の漫画や文化がブームだ。「視点を変えれば、日本人にとっての日常はユニークなものだ」と上太郎氏は語る。

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彩色用の刷毛。その壁に掛けられた様にも趣を感じられる。

「数少ない日本人のルーツの一つが着物です」

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「初代は特に色にこだわっていました。当時、化学染料はなく色のバリエーションもない。今ほど設備が整っていない中、深みのある美しい色を生み出していたことに感心します。」(上太郎氏)

かつて街には着物を召した人々の姿で溢れていた。当然、建物の造りや生活様式などには、着物を着る人々の姿が前提にあった。しかし今は違う。洋服が日常着であること以外にも、着物を取り巻く環境は変化している。
「生活が豊かになった今、ITの普及とともに、情報量も選択肢も増えた。国際化によって異国が身近になった。だからこそ、人々は自分のルーツを探り、ルーツそのものにふれる体験に価値を感じるのでしょう」。

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大正ロマンを想起させるモダンなデザイン

着物は現代に残る、数少ない日本のルーツの一つだ。「僕の作品を見て『なつかしいね』と声を掛けてくれるご年配の人も、わりといますよ。誰もが着物を着ていた時代のほうが、人目を引くような大胆なデザインが多いんですよね」。かつて着物を日常着にした人々は、昔の着物に通じるものを上太郎氏の着物に見いだすのだろう。

「京都は僕のルーツ。いつでもベースにあります」

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「哲学の道界隈で先代も僕も暮らしています。なんとなく、そうなるものかもしれませんね。そう遠くには離れないというか。」(上太郎氏)

創業後の数年間を除けば、斉藤家の拠点はつねに京都にある。「工房を京都の外へ移そうと思ったことは一度もなかった」と上太郎氏は振り返る。「世界中飛び回ってる人でも『祖国に骨をうめてくれ』とか言うそうですし(笑)、ルーツにいずれ戻りたいという本能は、誰でもあるのではないでしょうか。」

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「京都の街並は昔からずいぶん変わりました。それでも空気感など含めて、やっぱり僕にとって居心地のいい場所なんだろうな。」(上太郎氏)

伝統のある京都で、確固たると知性[IQ]と繊細な感性[EQ]から生み出される、旧来とは一線を画す着物。常に最先端を進むキモノデザイナーの作品は、今後ますます多くの人の手に渡りゆくに違いない。

IQEQキャンペーンページはこちら

「JOTARO SAITO GINZA SIX」
住所:東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 4F JOTARO SAITO GINZA SIX店
TEL:03-6263-9909
E-mail:shop@jotaro.net

取材・文/門上奈央
撮影/コタニシンスケ

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