News 2018.07.27

アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

アルファ ロメオにしか作れないSUV。オールロード性能と、スポーツセダンを凌駕する操縦性能を兼ね備えたステルヴィオ。今回は軽井沢で行われたプレス向け発表会でステルヴィオを体感した、モータージャーナリストの岡崎五朗氏によるレポートをお届けする。

クルマ選びを“枠”から解放してくれた、アルファ ロメオ155ツインスパーク

年齢を重ねると、人はそれぞれのスタイルを確立する。それにつれ、自分に似合うファッションや、自分に相応しいホスピタリティを求めるようになる。決して悪いことではない。ただ、そんなマインドが強くなりすぎると、ときとして気付かないうちに保守的になってしまうものだ。クルマでいえば、いまより格下の車種には乗り換えられないとか、性能は落とせないとか、自分はずっとこのブランドに乗ってきたからとか。でもそれってつまらないことなのでは?

DSC_6203 アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

それに気付かせてくれたのが、20数年前に購入したアルファ ロメオ155ツインスパークだった。とくに高性能でもなかったし、うっとりするようなデザインの持ち主でもなかった。けれど、走らせると得もいわれぬ楽しさ、気持ちよさが存在し、最初は不格好だとすら感じていたデザインにもどんどん惹かれていった。普通、クルマへの惚れ込み度は納車日がピークで、日が経つにつれ下降線を描いていくものだが、155は違った。乗る度に好きになっていったのだ。もちろん、クルマそのものの魅力も高かったが、目に見えない“枠”が外れたことにも興奮していたのだと思う。無意識のうちに自分に課していた制約から解放された歓びと言い換えてもいい。それ以降、もちろん予算の上限という制約はあるけれど、国やブランド、サイズや性能やジャンルに囚われないクルマ選びをするようになり、僕のクルマ選びは以前よりずっと楽しくなった。

DSC_6152 アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

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胸騒ぎのするSUV、アルファ ロメオ ステルヴィオ

転じて日本の自動車マーケットを眺めると、ほぼ9割が日本車で、残り1割の多くをドイツ車が占める。そう考えると、多くの人がまだまだ枠にはまったクルマ選びをしているんだなと思ってしまう。もちろん、多くの人に選ばれていることが安心感につながるのも理解できるが、各国のクルマを乗り継いできた経験からいうと、ここ10年ほどで輸入車全般の信頼性は急速に向上した。それは各種の信頼性調査の結果を見ても明らかで、個人的には安心感を新車購入時のキーワードにする時代は終わりつつあると感じている。むしろ大切にすべきは直感で、たとえばデザインを見て胸騒ぎが起きたとしたら、それが本当の“答え”だと思うのだ。

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Alfa Romeo Stelvio(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』を見た瞬間、ああこの手があったか!と思った。最近は各メーカーからSUVが次々にリリースされ、あの手この手で個性の演出を試みているが、ステルヴィオは直球だ。どこから眺めても無理をしていない。だから美しい。一方、ひと目でアルファ ロメオであることもわかる。もっともわかりやすいのは伝統のトライローブ(三つ葉)を配した顔だが、SUVとしては薄いノーズ、短いフロントオーバーハング、リアフェンダー周りの肉感的な造形、コンパクトなキャビンなど、プロポーション全体でアルファ ロメオらしさをアピールしている。これほど軽快で、スマートで、いかにもよく走りそうな体躯をもっているSUVなど他にはない。そう、ただひたすらアルファ ロメオらしさを追求することで、ステルヴィオは自動的にとびきり個性的なSUVになったのである。やはりこのブランドの神通力は並みじゃない。

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ステルヴィオ、そのコックピットからの眺めは……?

インテリアも気に入った。伝統の2眼式メータはとてもスタイリッシュだし、要所要所に配したウッドパネルも抜群にセンスがいい。日本車ともドイツ車とも明らかに違う香りが漂っている。インストルメントパネル中央には液晶モニターがあり、オーディオや車両設定、ナビゲーションを表示するなど、時代への対応にも抜かりない。スマートだなと思ったのは、ナビゲーションシステムをスマホ(Android AutoとApple CarPlayに対応)を利用したタイプに割り切ったこと。いまや車載ナビでは検索のしやすさや音声認識の正確性、最短時間ルートの検索性能などでスマホを上回るのは困難。であるなら自前にこだわるより優秀なものを利用するほうが賢い。なお、iPhoneユーザーにとっては、次期OS(iOS12)からCarPlayがGoogleマップ対応になるのも朗報である。

DSC_7542 アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

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軽快なドライブフィール、そして高いエンターテイメント性

ステルヴィオはもっともスポーティーなエクステリアデザインをもつSUVだが、同じことがドライブフィールにもいえる。走りだした瞬間、SUV離れした軽快な身のこなしに驚いた。ステアリングをわずかに切り込んだだけでノーズが躊躇なくインを向く。こんなに軽快なSUVに乗ったのは初めてだ。これならわざわざワインディングロードに行かなくても、街中でもスポーティーさを満喫できる。一方、ここまで敏感な味付けにすると高速域で神経質な動きになりがちだが、それを感じさせないのもステルヴィオのすごいところ。軽快なのに狙い通りのラインを正確にトレースしていく様はまるで自分の運転が上手くなったかのようだ。

DSC_5855 アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

軽快感の演出にはステアリングギア比をスポーツカー並みの12:1に設定しているのがひと役買っているが、それだけではこういう特性は絶対に出ない。アルミやカーボンを使ってウェイトを徹底的に落とすとともに、ボディ、サスペンション、ステアリングなどの設計や味付けに細心の注意を払った結果、この素晴らしいフットワークが生まれたと解釈するのが正解だろう。まさに職人技の世界である。2L直4ターボエンジンは素晴らしい動力性能を生みだすとともに、アクセルを踏み込んだ刹那の素早い反応や、高回転域まで回していったときの気持ちのいいサウンドなど、エンターテインメント性にも大きく貢献している。このあたりもアルファ ロメオらしい。昔から、彼らにとってエンジンは単なる動力発生装置ではなく、快感発生装置でもあるのだ。

DSC_6976 アルファ ロメオだからこそ作り得たSUVとは。モータージャーナリスト岡崎 五朗氏が解き明かす。

IQとEQが見事に融合した、新世代のアルファ ロメオ

近年、アルファ ロメオはブランド価値として「IQ(知性)/EQ(感性)」をアピールしている。そんな観点でステルヴィオを語った場合、EQの高さが最高レベルに達しているのは間違いない。一方のIQに関しても、内外装の高い質感やスマートなインフォテインメントシステム、充実した先進安全機能など、従来のアルファ ロメオがあまり得意としていなかった領域で大躍進を遂げている。このIQとEQの見事な融合こそ、新世代アルファ ロメオの魅力であり、またステルヴィオがもたらす最大の価値である。実際に眺め、触れ、走らせてみれば、クルマ選びに課していた“枠”がガラガラと音をたてて崩れていくに違いない。

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PROFILE

岡崎 五朗

1966年東京生まれ。2児の父親。
青山学院大学理工学部機械工学科在学中から執筆活動を始め、卒業と同時にフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始。現在は日本自動車ジャーナリスト協会理事を務める。「生活をともにして気持ちがいいかどうか」が、クルマを評価するうえでの最大の関心事項。「いくらスペックがすごくても、見て、乗って気持ちがよくなければ、それはいいクルマとはいえない。ドライブフィール、空間設計、内外装のつくり込みなどが高レベルで、なおかつそれがクルマのコンセプトに合致していることがいいクルマの条件」。1年に試乗するクルマは200台以上。テレビ神奈川「クルマでいこう!」MCの他、ahead、Men’s EX、カービュー、&GPなどに執筆中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・アワード選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Text:岡崎 五朗
Photos:安井 宏充(Weekend.)

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