Passionista 2018.05.11

F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜

アルファ ロメオ が33年ぶりにF1のサーキットに帰ってきた。ここで、レースと共に歩んできたアルファ ロメオの歴史を振り返ってみたい。

アルファ ロメオが33年ぶりにF1に復帰する……。
2017年11月。かねてから噂として上がっていたそのニュースは、とりわけF1の本場ヨーロッパにおいて喜ばしいニュースとして受け入れられた。

FIA Formula One World Championship™。通称・F1(エフワン、フォーミュラワン)。
それは、走る・曲がる・止まるを極めた、純粋に速く駆け抜けるための一人乗りレーシングカーで競われる、文字通りの自動車レースの世界最高峰。
その舞台とアルファ ロメオとの深い関係についてご紹介したい。

レースと共に歩んできたアルファ ロメオ

1910年に創業したアルファ ロメオは、産声をあげるとほぼ同時に、レースの世界にその身をおいてきた。1930年代頃まで、つまり戦争がはじまる以前、自動車には今とは比べ物にならないほどの高級品であり、大変なステイタスを持ちあわせていた。

当時の一流といわれる自動車メーカーたちは、こぞってその性能や品質を世に問うべくレースに参加していたわけだが、今も名門とうたわれるメーカーたちの歴史とは、この頃のレースでの活躍によって生まれたもの。

AlfaF1_02 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜アルファ ロメオの歴史を一同に介した博物館、ミラノにある「Museo Storico Alfa Romeo(アルファ ロメオ歴史博物館)」そこには、いかに彼らがレースに対し情熱を注いできたかを目のあたりにすることができる(画像提供:馬渕 忠則)。

アルファ ロメオはその筆頭格であり、かの自動車王ヘンリー・フォードをして「私はアルファ ロメオが通り過ぎると帽子をとり一礼する」といわしめたほどの存在。他を圧倒する革新的な技術による勝利の数々。それを背景に作られた品質とデザインを身にまとった市販モデルの数々によってより確固たるものになっていく。ちなみに、1925年に開催された世界初の自動車統一王者選手権ともいえる「Automobile World Championship」での最初の栄冠もアルファ ロメオに輝いている。

78_AF0160-1 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜(画像提供:Museo Storico Alfa Romeo)

グランプリ(フランス語で「最高のレース」の意。自動車レースの起源がフランスにあったことからそのままこの呼称が一般化し広まった)が改めてF1というカテゴリに統一されたのは、1950年の英国GP(シルバーストーンサーキット)から。

AlfaF1_03 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜(画像提供:馬渕 忠則)

全7戦のうち6勝(第3戦はアメリカでのインディ500は不戦敗、つまり出場試合には全勝)を飾り、その記念すべき初年度の栄冠を手にしている。

94_AF1055-1 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜1950年のイギリスGPで優勝したジュゼッペ・ファリーナ(画像提供:Museo Storico Alfa Romeo)。

AlfaF1_04 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜ジュゼッペ・ファリーナはその年3勝を挙げ、初代F1チャンピオンとなった。“ニーノ”は彼の愛称である(画像提供:馬渕 忠則)。

翌51年にも圧勝で再び栄冠を手にし、一度はF1界から身を引くアルファ ロメオだが、その時唯一土をつけたのが、後にフェラーリ社を興す元アルファ ロメオのエンツォ・フェラーリである。当時、彼が泣きながら発したとされるコメント「私は母を殺してしまった」はあまりにも有名だが、67年を経た2018年アルファ ロメオ ザウバーF1チームの心臓部に搭載されるエンジンは、そのフェラーリ製である。こうした縁を感じさせるストーリーもドラマを好むイタリアらしいものではないか。

79_AF0218-1 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜アルファ ロメオ時代のエンツォ・フェラーリ(画像提供:Museo Storico Alfa Romeo)。

FCAのCEO、セルジオ・マルキオンネは2017年11月29日のリリースでこう語った。
「アルファ ロメオは30年以上の時を経てF1に復帰する。アルファ ロメオは、このスポーツの歴史を支えてきた存在で、F1に参加している他の自動車メーカーたちの名に加わることとなる…」

控えめにも聞こえるコメントには、こうした背景があるということを知ることで、また楽しみが増えるというわけだ。

AlfaF1_05 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜(画像提供:Alfa Romeo Sauber F1®︎ Team)

171202_Alfa-Romeo_Team-F1_03 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜(画像提供:Alfa Romeo Sauber F1®︎ Team)

現代のF1、変わらぬ社交の場

自動車レースといえば、燃料や油の臭い、けたたましい爆音といったイメージが先立つかもしれないが、F1GPには、それ以外の独特の雰囲気と世界がある。それはパドックと呼ばれるピットの裏側、実際にはVIPゾーンと呼んで差し支えのないエリアにこそある。

スタンドで観戦するレースも一興だが、刻一刻と変わる順位や状況をモニターでたまに見ながら、シャンパンやワインを片手に談笑しながらレースを楽しむ世界。エグゾーストノートが響く会場内にいながら、そこには釘付けにならない…。

一千分の一秒を競う世界と、まったく異なる時間が流れる世界とが共存する世界こそ、F1のF1たる所以、世界最高峰のゆとりとおもてなしの姿なのかもしれない。

さしずめサロンと化す各チームのモーターハウスには、関係者やマスコミ、スポンサーや顧客、招待客、映画俳優や監督、ミュージシャン、有名企業のCEO、スポーツ選手、スーパーモデルや女優たちといったセレブリティが溢れ、一種独特の華やいだ空気に包まれる。

特に由緒ある開催地のひとつであるモナコGPでは、初夏の陽気にも近い天候とあいまって、コース脇の港に高級クルーザーがひしめき合い、まさにF1特有の豪華さを醸し出してくれる。

たゆまぬ性能と情熱で、レースの歴史に彩りを添えた名門アルファ ロメオ。そのビショーネのエンブレムとレースアイコン、クアドリフォリオ(四つ葉のクローバーのマーク)が再びサーキットに戻ってくるということは、F1という自動車の社交界にとっても、また一つ華を添える役割も担っているのだ。

96_AF1131-1 F1という文化、自動車という歴史 〜レースとともに歩んだ名門アルファ ロメオという存在〜(画像提供:Museo Storico Alfa Romeo)

The C37 – 2018 Alfa Romeo Sauber F1 Team Launch

Text:馬渕 忠則

POPULAR