Vision 2018.06.21

「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

『サローネ・ロッソ』のサウンドプロデュースを担当した音楽家の沖野修也さんにインタビュー。選曲家、作曲家、DJとして知られる沖野さんの仕事論を伺うと共に、“アルファ ロメオで聴いてほしい”ジャズの名盤を選んでもらった。

新しい『Alfa Romeo Giulia(アルファ ロメオ ジュリア)』の日本デビューに伴い、アルファ ロメオ ショールームの一角に誕生したラウンジスペース『サローネ・ロッソ(SALONE ROSSO)』。アルファ ロメオを象徴する赤=ロッソを基調としたその空間では、アルファ ロメオおよびジュリアの世界観をくつろぎながら体感することができる。
“ショールームのラウンジをホテルのロビーへ”というコンセプトを掲げたサローネ・ロッソの空間演出には、各分野で日本を代表する一流クリエイターが参加した。その中でサウンドディレクションを担当したのは、国内外を問わないDJ活動で知られる沖野修也さんだ。

「自ら肩書を語らせてもらえるなら、音楽家(選曲家・作曲家・DJ)です」

そう話した沖野さんに、サローネ・ロッソで展開したサウンドプロデュースはもちろん、アルフィスタにお勧めの名盤紹介もお願いしつつ、肩書および仕事に向けた深い思いをたずねた。

20180604_qetic-alfa-OS-0065 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。沖野修也さん。

アルファ ロメオの歴史と伝統を音楽で演出

ところで、サウンドプロデュースとはどういう仕事なのだろうか。沖野さんによれば、「つまり選曲」だという。

「現在の主な仕事は、企業の価値を音楽で変えるサウンドブランディングの提唱です。皆さんご存知の銀行や商業施設、映画館などの空間に向けた選曲という形で、すでにいくつも実例があります。成田空港の到着ゲートから入国審査までの通路に流す音楽も担当しましたが、あのときは外国人の歓迎がコンセプトだったので、日本のジャズやクラブミュージックをベースに和をテーマにした選曲を行いました」

20180604_qetic-alfa-OS-0036 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

そこでもまた疑問が沸く。沖野さんが知り得る音源は膨大な量だと思うが、その取捨選択にはどんな基準やルールが存在するのだろう?

「何となく雰囲気で、はあり得ません。これは著書の『DJ選曲術』(2005年、リットーミュージック刊)で曲順の決め方などを書きましたが、選曲はフィルターのレイヤーそのもので、いかに曲を重ねていくかは、まずコンセプトを明確にしなければならない。しかも徹底的にロジカルに」

ということは、サローネ・ロッソの音響演出でも理詰めのコンセプトがあった?

「まずはイタリアです。イタリア出身のミュージシャンや、イタリアのレーベル。イタリア人DJが選んだ曲等々。それから、60~70年代のジャズと最新音楽のミックスもコンセプトにしました。そこには僕のアルファ ロメオ観を込めたのです。アルファ ロメオには伝統と歴史がある。それを財産としながら、しかし過去にとらわれず常に変化しながら斬新なスタイリングを提案し続けている。今度のジュリアはまさにそのシンボルで、僕としては空間デザインとの協調性も考えながら、過去と現在をミックスすることでアルファ ロメオの未来を演出したかったのです。全部で30曲×3回分。加えてプロトタイプで10曲の計100曲を用意しました。改めてイタリアのアーカイブを探ったので、いくつもの再発見がありました」

20180604_qetic-alfa-OS-0019 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

隙間を埋める曲が欲しくて作曲を始めた

カッコに収めた沖野さんの肩書。次は作曲家としての顔について。ただし、自ら新しい曲を生み出すというのは、既存の音源からの選曲に相反するような気がするのだが……。

「実は僕もそう思っていたんです。DJが音楽を創り出すようになるのは90年代からですが、当時の僕はそのムーブメントに乗りませんでした。DJとは人の曲をかけるもの。何より自分が作曲するなんておこがましい。ところがDJを続ける中で、Aという曲とBという曲を書ける隙間を埋めるのにふさわしい曲が欲しくなったんですね。それがなかなか見つからなかったのが、僕が作曲を始めるきっかけでした」

沖野さんはさらっと話したが、よく考えればとんでもない動機だ。なぜなら、重複するがプロフェッショナルDJの音源ストックは膨大であるはずなのに、それでもかけるべき曲がないとは! この人はどれだけ自らの感性を刺激すれば気が済むのだろう。ちなみに沖野楽曲は、自身が率いるジャズバンド、『KYOTO JAZZ SEXTET』で聞くことができる。

「すべて最初は鼻歌から始まります。僕は楽譜が読めないし楽器もできないので。その所構わず思いついてしまう鼻歌を録音してプログラマーに渡し、各楽器のメロディに落とし込んでもらい、メンバーに聞いてもらいます。バンドはアコースティック楽器を使ったジャズスタイルなので、どこか古臭いと思われがちですが、曲自体にヒップホップやテクノ、ダンスミュージック等々、つまり僕自身を構成している音楽要素がふんだんに散りばめられているので、むしろ新鮮というか、発想の新しさで時代の先端を見極めたいと思っています。それにはやはり、オリジナルの曲が必要だったということです」

20180604_qetic-alfa-OS-0013 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

選曲は知的な作業

さて、自身のキャリアの中で最も認知されているDJという行為は、沖野さんがもっとも長く携わっている活動で、現在も様々なイベントに参加している。しかしだからこそ、DJという存在に対して複雑な思いを抱いてしまうというのだ。その胸中の吐露には、沖野さんならではの知性がにじんでいる。

「いまだに夜の人、爆音で若者を盛り上げるいかがわしい職業というイメージがあるんです。けれど本来は、プロフェッショナルとしてのコンセプトやテーマの絞り込みを含め、実に知的な作業です。だからこそ僕は、選曲を文化として根付かせたい。アートやデザインや建築といったクリエィティブなジャンルと対等に語り合える存在でなければならないと考えています。サローネ・ロッソはそれが結実した一つの理想形です。DJの経験を生かしつつ、空間における音響体験の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらえるよう頑張りたいですね」

沖野修也プレゼンツ。アルファ ロメオで聞いてほしいジャズの名盤!

では、今回のスペシャルプログラム。沖野プレゼンツによる、昼と夜それぞれのドライブにマッチするアルファ ロメオをイメージした名盤紹介を!

20180604_qetic-alfa-OS-0079 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

[ Daytime ]

2017-alfa-romeo-giulia-003-1-1 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。※写真は欧州仕様車です。日本仕様と異なる場合があります。

20180604_qetic-alfa-OS-0061 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。JOHN STUBBLEFIELD『Confessin’』(1985)

今回は、サローネ・ロッソにちなんでイタリアのSOUL NOTEというレーベルから発売された2枚を選びました。いずれも70〜80年代のアルバムですが、この時代はジャズの巨人だったコルトレーンの死後、彼の継承者たちが創り上げたスピリチュアル・ジャズという流れに属する作品です。どちらかというと夜っぽい印象をもたれるジャンルです。
しかし最初の『Confessin’』は、その中でも演奏の軽快さが際立ち、曲自体もキャッチーなので、海岸線のドライブに合うのではないでしょうか。ジャケットはかなり濃いですけれど、そういうスピリチュアルもあるんですよね。
ジョン・スタッブルフィールドはアメリカ出身のサックス奏者です。80年代のアメリカはジャズの不遇時代を迎えていたので、イタリアのレーベルを頼ったのかもしれません。後にアメリカのレーベルで発売され、現在はiTunesでも入手できます。一般的なジャズの名盤にはまず挙げられませんが、ジャズを好きになるきっかけとしては耳に入りやすいオススメの1枚です。

20180604_qetic-alfa-OS-0082 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

[ Nighttime ]

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20180604_qetic-alfa-OS-0053 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。GEORGE RUSSELL SEXTET『TRIP TO PRILLARGURI』(1982)

こちらはスピリチュアル・ジャズの中でも僕が好きな完全に夜っぽい内容。ジャズのスリルとナイトドライブのスリルがシンクロする感じで、都会の高速道路が似合うと思います。発売は1982年ですが、録音されたのは1970年です。
ジョージ・ラッセルは、作曲もオーケストラアレンジもする奇才と呼ばれたピアニストで、難解な作品が多いことで知られますが、このアルバムに関しては1曲ずつの表情が異なり、全体を通して楽しめると思います。
余談ですが、これは震災後の福島のレコード店で買いました。地震の影響で閉店したジャズ喫茶の店主が手放したものだそうです。レコード1枚にも様々な物語がありますね。

20180604_qetic-alfa-OS-0089 「選曲は文化!」サローネ・ロッソの音響演出を担当した沖野修也さんの志をたずねる。

文化と志というオールを手に果てしないサウンドの海を突き進む航海者。最後に沖野さんからメッセージをいただいた。

「クルマはただの乗り物ではなく、ライフスタイルの一部。それら様々なカルチャーの発信源に向けて常にアンテナを張ることで、人生はより豊かになると僕は信じています。そんな思いを込めたサローネ・ロッソで、この空間の素晴らしさをぜひ味わってください」

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INFORMATION
沖野 修也

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Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土

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