alfawoman 2020.04.28

一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

Alfa womanインタビューの第2弾として登場いただくのは、軸のぶれないAlfa womanな生き方を貫いている料理研究家の有元葉子氏だ。有元氏は、数々のレシピ本を上梓する日本を代表する人気料理家で、台所道具のシリーズ『ラバーゼ』のディレクターでもある。彼女が生み出すセンスあふれる料理だけでなく、その洗練された生き方にあこがれを抱く女性は多い。しかし、料理研究家としてのスタートは決して早くはなかった。有元氏が料理研究家としてデビューしたのは、編集者、専業主婦を経て、3人のお嬢さんの子育てが終わってからだ。しなやかに、どこか楽しそうに日々を生きる有元氏に、人生の歩み方、これからの展望を聞いた。

編集者・専業主婦を経て料理の道へ

取材の冒頭から、有元氏は少し意外な発言をした。

「私、とくに料理研究家を志したわけではないんですよ。そもそも、自分のことを“研究家”だとも思っていません」

取材は緊急事態宣言下の4月中旬、オンラインを通しての実施となった。パソコンの画面越しの有元氏は、たおやかに微笑む。

3 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

婦人画報社(現ハースト婦人画報社)で、男性誌『MEN’S CLUB(メンズクラブ)』の編集業務を担当。『MEN’S CLUB』の兄妹誌『mc Sister(エムシーシスター)』の立ち上げにも携わる。村上里佳子など、数々のタレントや女優を輩出したティーン向けファッション誌だ。「編集者は私ひとり(笑)大変でしたが、とても楽しい仕事でした」

編集者をしていたのは、「3、4年だったでしょうか。長い期間ではありませんでした」と、有元氏。その後、結婚、出産を機に「仕事を一切やめて」(有元氏)専業主婦となる。

きっとその頃から料理には凝られていたんですねと話を向けると、「特別なことをしていたわけではないんです。私はものを作り出すことが好きで、掃除や洗濯も嫌いではありませんでしたが、家事のなかでいちばん面白いと思ったのが料理だったんです」

2 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

現在、3人のお嬢さん、このみさん、くるみさん、めぐみさんはそれぞれ独立し、建築や料理の分野で活躍している。その子育てについても伺った。

「自主性を重視しました。親に勉強しろと言われたら、勉強したくなくなると思うんです。私も親から勉強しろと言われたことはありません。勉強は大事ですが、親である私にできることは勉強ができる環境を整えること。そのためには健康な体は不可欠で、そこには食事が大きくかかわってきます。あれこれ言う前に、子どもにきちんと食事をさせること、また、みんなで楽しく食べるという、食事をするシーンも大切にしました。環境を整えたらあとは本人に任せていました」

“面白い”と思えることを探すことで仕事はもっと楽しくなる

re_DSC4777 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

20年ほど専業主婦を務めたあと、子育てが落ち着いたのを機に女性誌の編集者として仕事を再開する。しかし、たまたま受けた雑誌取材がきっかけで取材する側からされる側へと立場が逆転して、料理に関する取材を受ける機会が増えていく。

「そのうち、編集の仕事よりも料理の仕事のほうが忙しくなり、気づいたら独立していたという感じです」

料理研究家という職業は知っていた。編集者として一緒に仕事をしたこともある。
「私は料理好きと言っても、家族の食事を作っていただけ。自分が料理を仕事にするとは考えてもいませんでした」

女性誌での料理レシピの制作から始まり、料理教室の主催、新潟県燕市のメーカーと共同開発したキッチン道具『ラバーゼ(la base)』のディレクション、東京・田園調布のセレクトショップ『shop281』など、その後の活躍は目覚ましい。著作も100冊を超えた。押しも押されもしない、日本を代表する料理研究家だ。しかし、料理に関する職業にとくにこだわりがあったわけではなかったという。

4 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

「人様からオファーがあったからそれを仕事にしただけ。私の場合、それがたまたま料理だっただけで、他のことでもよかったと思っています。自分の仕事に、少しでも楽しいと思える部分があるなら、それを面白がってやっていれば、いろいろなアイデアが出てくると思うんです。それを自分なりに発展させていけば、仕事はどんどん面白くなります」

そう語る彼女の言葉はやわらかだが力強い。有元氏にとって、至極当たり前のことを言っているだけなのだと実感する。自分の意思に反して“やらされている”仕事でも、面白いと思えるところを探しながらやっていくことで、何かが見えてくるはずだと有元氏は続ける。

「私が仕事をする上で大切にしているのは、食を通して楽しむこと。たとえば、レシピ撮影の時は、料理の過程をプロのカメラマンさんに切り取ってもらい、撮影を終わらせたあとはみんなで楽しくお食事をいただく──。仕事を始めた当初からこのスタンスは変わりません」

大切なのは自分の感覚を信じること

「料理は、人と人をつなぐコミュニケーションの道具でもあり、その道具が料理なら美味しいほうがいいですよね」と有元氏は続ける。なるほどその通りなのだが、料理が苦手な読者も多いはずだ。そんな人が料理に向き合うにはどうしたらいいのだろうか。

5 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

「料理にはいろいろな楽しさがあります。食材と向き合い集中すること、自分の料理を美味しいと言ってもらうこと。自分のために作った料理でも、美味しければうれしいですよね。料理が苦手という人におすすめなのは、髪を整え、きちんとエプロンをすること。身なりを整えて、冷蔵庫を開き、材料を出したら、頭と手は一緒に動きます。その結果、美味しいものができない時もあると思います。その時はなぜだめだったのか考えてみればいいんです。ひとつひとつのことを、大切に、考えながらやることが大切です」

“自分で考える”ということに、有元氏は重きを置く。

「料理教室でいつも言っているんですよ。レシピの数値に頼らないで、五感を使って、自分で味を決めて欲しいって。もっと自分の感覚を信じていいんです。それは、料理だけでなく、生き方にも通じることだと思います」

有元氏は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、多くの人の行動が制限されている現状についても語っていた。
「今のような大変な時期だからこそ、自ら動き、考え、俯瞰して物事を判断する──。誰もが利己的になりがちな状況のなか、なぜこうなったかを考えることで、何をしないといけないかが見えてきます。今は自分がどうやって生きていったらいいのかを考え直す時期であり、そして、これからも考え続けていかなければならないのだと思います」

6 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

そんな有元氏に、人生におけるターニングポイントを聞いたところ、「……特にないかもしれません(笑)」と、とても彼女らしい答えが返ってきた。

「日々考えながら生きていくと、少しずつ見えてくることがあります。人にガイドしてもらうのではなく、自分で考えながら自分で進む。壁に突き当たることもあると思いますが、自分の頭で考えること、感じることが大切です」

日々を丁寧に生き、人生をあざやかに楽しんでいる有元氏が放つ、ポジティブなパワーによるものなのだろうか。彼女と話していると、チア・アップされる。

最後に、自分の人生を切り拓きたいと、日々を懸命に生きている女性たちへのメッセージを伺った。
「人それぞれ夢があると思いますが、それを実現できない理由を探してしまう人は少なくありません。そして、できないことを、年齢や子どもがいることなど、何かのせいにしてしまいがちです。やりたいことがあれば、自ら責任をもって今できる範囲で一歩踏み出せばいいんです。常にうまくいくとは限りませんが、踏み出さなければ何も始まりません。大事なのは一歩ずつでも前進すること。いつかはきっと扉は開きます」

夢のために一歩踏み出すことは、実はとても簡単なことなのかもしれない。

7 一歩ずつでも前進する勇気を。料理研究家・有元葉子氏の生き方

Alfa womanについて。
FCAジャパン株式会社 マーケティング本部長 ティツィアナ アランプレセからのメッセージ

Text:長谷川あや
Photos:中本浩平

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