alfawoman 2021.02.17

アイデアは流れ星のように降り注ぐ──。『森八』若女将・中宮千里、和菓子と生きる決意

今年のバレンタインドライブキャンペーンでは、 石川県金沢市の『加賀藩御用菓子司 森八』(以下、『森八』)の『小型羊羹 粋』をプレゼントしている。『森八』の創業は1625年、390余年の歴史を誇る、金沢では誰もが知る老舗和菓子店だ。加賀藩御用菓子司も務め、江戸時代、藩主や将軍家に献上していたとされる落雁『長生殿』をはじめ、さまざまな和菓子を創出。金沢市内だけにとどまらず、富山、東京に直売店を出店している。
中宮千里氏はその森八の19代若女将であり、和菓子職人だ。今回、Art of Tasteプロジェクトにも参加いただいた中宮氏に、FCAジャパン マーケティング本部長、ティツィアナ・アランプレセ氏が『森八』、そして、和菓子への思いを聞いた。

『森八』の歴史のなかで初めて若女将と和菓子職人を兼任

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▲『森八』19代若女将・中宮千里氏

森八』の19代若女将である中宮千里氏が、家業を継ぎ、同店に入ることを決めたのは、20代前半だったという。

「高校卒業後、デザインの専門学校で学び、東京でエディトリアルデザインの仕事をしました。ただ、将来は生まれ故郷である金沢に帰りたいと考えた時、『森八』に入ることが現実味を帯びてきました。『森八』という会社にはいろいろな仕事があります。そこでやりたいことをやろうと考えました」

中宮氏は、東京製菓学校で学んだのち、『森八』に入社する。

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「『森八』の長い歴史のなかで、若女将と和菓子職人を兼任するのは私が初めてです。ただ、母も経営者と接客を初めて兼任しています。前例がないなか、自分のやりたいことを実現させたのは、実は母のほうが先なんです」

中宮氏が和菓子づくりを手がけることに関しては、「好きにやりなさい」と誰も異を唱えなかったという。

「金沢に戻り、工場に入った時にはみなさんに歓迎してもらいました。専門学校で知識を身に付けただけの1年生の私に、私が子どもの頃から働いてくれているベテランの職人たちが、製菓学校で学んだ流行や、最前線の製菓技術などを教えて欲しいと、列をなして聞きにきたほどです。うちの職人たちは、勉強熱心でわからないことを人に聞くことを恥ずかしがりません。そこが『森八』の強みだと思っています」

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そう誇らしげに話す中宮氏に、アランプレセ氏は彼女のターニングポイントについて質問を投げかけた。

「たくさんありますが、東京でデザインの事務所に入った時、そこのエグゼクティブデザイナーに、『残念ながらたぶん君は天才じゃない』と言われたことは今も強く印象に残っています」

彼はこう続けたという。

「『僕たちのような凡人が天才に近づくためには、美しさの黄金比を学ぶ必要がある。縁から何ミリあけると美しく見えるか等、どのように配置したら天才が作るモノに寄せていくことができるか、数値化して組み立てていくことが大切だ』と教えてもらいました」

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「若く、自信満々だった」という当時のプライドは傷つけられたが、以来、常に“天才の黄金比”を意識するようになった。そして、「立体的なもののとらえ方をすることが私は得意だと思います」と自己分析する。また、左右対称(シンメトリー)にも特別な思いがあるという。

「シンメトリーはお菓子を作る上で大切なキーワードです。私の名前も、正確にはシンメトリーではないのですが、篆書体で書くと、シンメトリーなんですよ」

練習や勉強の積み重ねが自身の裏付けに

そんな中宮氏は、2018年、全国和菓子協会が優れた職人を認定する『選・和菓子職』の優秀和菓子職部門に選出される。2019年には、女性初、歴代最年少で、伝統和菓子職部門の認定も受けた。

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「私には子どもが3人いますが、育児休暇を取っていた時、社会から置いていかれるような焦りがありました。そんな時、練習や勉強をすることが、いつでも社会復帰できるという自信の裏付けとなり、休暇を取る前よりランクアップして、職場復帰することができました」

日々、“美”に触れ、“美”を生み出す仕事を生業としている中宮氏は、“美しさ”というものをどのようにとらえているのだろうか。

「たとえば、鯉が泳いでいるところを見て絵を描くとすると、海外の方は鯉そのものを描く人が多いと思うんです。でも日本人の場合、池の水の反射する色など、空間も合わせて描くのではないでしょうか。遠くにある花を愛でるのは日本人の粋だと思います。私たちは空間を愛することができます。私は、和菓子の最大の特徴は空気感を表現するところにあると考えていますし、そこに和菓子の美しさがあると考えています」

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Art of Tasteプロジェクトにて中宮氏に制作していただいた、アルファ ロメオをイメージした4つの上生菓子。

「アルファ ロメオもとてもデザインにこだわっています。美しいデザインを考えるプロセスは、お菓子づくりと似ているかもしれませんね」と語るアランプレセ氏は、じつは大の和菓子好き。「毎日、家で抹茶をいれています。それに、和菓子はエスプレッソともよく合いますよね」と満面の笑みを浮かべる。

「私はミルクコーヒーに合わせるのが好きです(笑)。『森八』は東京にも店舗があるのですが、時々、『上生菓子を食べたことがないんです』という方も取材にいらっしゃいます。これって、とても損をしていると思うんですよ(笑)。金沢の人にとって、和菓子は日常です。幼稚園や小学校で和菓子の体験授業もあるほどです。ランチのあとにデザートとして買いに来る人もいますし、じつは上生菓子はワインにも合うんですよ」

「私は金沢の人かもしれません(笑)」と、アランプレセ氏は誕生日に長女が用意してくれたという和菓子で作ったデザートの写真を披露した。楽しそうに語るアランプレセ氏の様子を眺めながら、中宮氏はこうつぶやいた。
「人の絆が絡み、思い出に寄り添うのも、和菓子の素敵なところだと思います」

アイデアのヒントは日常の中にあふれている

アイデアは、「毎日、流れ星のように降ってきます」。子どもと一緒に散歩をしている時やピアノを弾いている時、また子どもの何気ない一言がヒントとなることもあるという。

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「特別なことをしなくても、アイデアのヒントは日常にあふれています。それに、これは女性の特権だと思うのですが、たとえば、多くの男性は口紅=赤、だと思っていると思うんです。でも実際には赤だけではなく、ヌーディーベージュとかテラコッタオレンジとか色々な色がありますよね。そんなところにも、ヒントは隠されているのではないでしょうか。自由に使える時間は、人によって異なりますが、限られた時間をどう有効活用できるかが大切だと考えています」

大店を背負うプレッシャーに関して尋ねると、「もちろんありますよ」と中宮氏。

「大きなお茶会の時はいつも緊張します。ただ、日頃から努力を重ね、やることはすべてやっておけば、何も怖いものはありません。怖いのなら、事前にしっかり準備し、イメージトレーニングを行えばいいんです」

その話を聞き、アランプレセ氏は「武士道みたいですね」とつぶやいた。そして、“Identity(自分らしさ)”について尋ねると、中宮氏は少し時間をおいてこう答えた。

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▲インタビューはオンラインにて行われた

「私個人というより、“森八らしさ”のお話になってしまうのですが、東京にはたくさんの和菓子店がありますし、古い和菓子店もたくさんあります。そんななかで、『森八』を選んでもらうには、明確な理由が必要です。そこで、石川県の食材をはじめ、国産材料にこだわることにしました。能登大納言、能登のブルーベリーやキウイ、地元でとれる葛など、石川県ならではの、また、私たちだからこそ仕入れることのできる食材を使うことで、『森八』のブランド価値、そして、食材としての付加価値を上げたいと思っています。また、農家の人を応援する意味でも、来年も仕入れますと先の約束をするようにしています」

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伝統を守りながら、新しいものを作り出していく──。歴史ある店ならではの、そんな実務にも迷いはないと言い切る。

「小さい頃に祖母に聞いていた、たくさんのお菓子の物語にヒントが詰まっていました」

店舗には、三百数十年変わらぬ製法・原料を守り続ける代表銘菓の『長生殿』をはじめ、和菓子作り体験セット、そして、現代的なセンスが光る季節の上生菓子など、さまざまな商品が並ぶ。どれもこれも魅力的で、思わず顔がにやけてくる。何気ない日常を彩ってくれる和菓子を、この機会に手に取ってみてはいかがだろうか。

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Interviewer:FCAジャパン株式会社
マーケティング本部長
ティツィアナ・アランプレセ

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INFORMATION

ご試乗プレゼント

実施期間 2021年2月1日(月)- 2月28日(日)

寛永二年創業。古都・金沢で400年近い歴史をもつ老舗『森八』の逸品。厳選しつくした素材と、加賀金沢の天然の伏流水との出会いが生んだ家伝の羊羹を、お召上がりやすい形に仕上げました。格調高い味わいの『黒羊羹・黒小倉羊羹』をはじめ、豊かな風味と上品な味わいの『白羊羹』、上品な抹茶の香りと白小豆の豊かな風味の『抹茶羊羹』を取り揃えております。

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Text: 長谷川あや
Photo:前川拓也(道洋行)、前川裕介

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