alfawoman 2020.10.02

“楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー

金子みどり氏は、2018年にアマゾンジャパン パブリック・リレーションズ本部本部長に就任。自社商品やサービスの広報に加え、会社のミッションや理念など、アマゾンという会社の本質を社内外に伝える役割も担っている。また、NPO活動にも積極的だ。そんな働く女性のあこがれのひとりである金子氏に、FCAジャパン株式会社 マーケティング本部長 ティツィアナ・アランプレセ氏が自分らしく仕事を楽しむために大切なことについて尋ねた。

一人ではできないことも、会社に属していればできる

プロフィール写真 “楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー

▲金子みどり氏

米ミシガン大学を卒業後、オグルヴィ(広告)、ネスレ(飲料・食品)、シティバンク(金融)、GE(医療・コングロマリット)そして、2018年より、現在のアマゾンジャパンで活躍。グローバル企業におけるコミュニケーション分野で25年余のキャリアを積んできた。その華々しいキャリアを築いた原動力は“楽しさ”だと、金子氏は清々しく語る、

「家族に笑われるのですが、毎朝、私、とても元気なんです。自分ひとりではできないことが、大きな組織にいるからこそできる、社会に還元できることがある──。仕事の目的が自分の中ではっきりしていると、楽しくて仕方ないんです。」

自分は毎日を、そして仕事を金子氏のように楽しめているだろうか──。その眩いまでの笑顔や情熱はどこからくるのだろう?

「目的のないまま、会社に行くのはつらいですよね。自分がなんのために仕事をしているのか、もう一度、自分自身に問い直してみることが大切だと思います。私が仕事を楽しいと思えるのは、仕事に対する志や目的がはっきりしているから。私が仕事をする最大の目的は、すばらしい会社、すばらしい仲間を通して、多くの人に笑顔を届けること。もちろん失敗することもあります。でも、仕事は厳しいのが当たり前。失敗も自分の強さにつながっていくと考えれば、チャレンジが楽しめるようになります」

写真やインタビュー記事の印象のまま、ポジティブなエネルギーをもった人だ。彼女と話していると、自分も笑顔でいたいと思わされる。その“金子みどり”という人物はどのように形成されていったのだろうか。

「私は早くに両親を亡くしていますが、二人から受けた影響はとても大きいんです。多くの両親は子どもにまっすぐな道を進んで欲しいと考えると思いますが、私は中学生くらいの頃から、“人生は寄り道したほうが豊かになる。たくさん寄り道し、経験をしていると、40歳くらいで極めたい方向が見えてくる”と言われてきました」

そして、金子氏は16歳で、最初の大きな挑戦をする。「英語も何もわからないまま、親戚もいない」アメリカに単身で渡り、大学を卒業するまでをアメリカで過ごした。

州立ミシガン大学-日本同窓会総会にて “楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー
▲州立ミシガン大学 日本同窓会総会にて

「日本の学校では毎年学級委員をやっていましたし、小学校の時には児童会の役員も務め、自然とリーダーシップをとっていました。でもアメリカに来た途端、言葉も話せない、何もできない状態になってしまったんです。私は英語を習得するのに、7,8年かかっています。簡単な自己表現すらできない立場になったことで、謙虚さについて教えられました」

「行く私も、行かせる両親も大きな決断だった」(金子氏)という、この“寄り道”は、現在の金子氏を作る大きな要素になっているという。

COVID-19が古いロールモデルを変えるきっかけに

前述のとおり、金子氏が活躍してきた業界は多岐にわたる。それも業界ナンバーワンかナンバーツーのグローバル企業ばかりだ。しかし、「大きい会社で仕事をしようと思って会社を選んできたわけではないですし、役職も関係ありません。転職の理由はいつも、ミッションが活かされているすばらしい会社で仕事をすることで、世の中に還元できるということ、そして、それを志に仕事がしたいというものです」

そう語るように、金子氏は“楽しい”を基準に仕事場を選んできた。そして、2001年に入社したネスレ日本では広告、CSR、デジタルなどの仕事を手がけるほか、初の女性取締役を務める。

「若い頃に経営会議のメンバーに加えていただき、経営トップの考え方を学べたことは、とても大きな意味がありました。そのため、パブリック・リレーションズの仕事は、“組織の課題解決”と“(お客様、ひいては社会が抱えている)機会の最大化”の2つを柱に、世の中の変化に合わせ、戦略を変えていくことが必要だと学びました」

また、金子氏個人としては、性的志向(LGBT)や、「環境がなかなか改善されない」(金子氏)障がいを持つ子どもたちのサポートなどをテーマにしたNPOの活動にも参加している。

日本最大のLGBTネットワークFruits-in-Suitsの理事仲間と2 “楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー

▲日本最大のLGBTネットワークFruits in Suitsの理事仲間と

そんな金子氏に、アランプレセ氏はいまだジェンダーによる格差や差別が問題視される日本において、いかに自己実現をはかったかについても聞いた。さまざまな調査で、ジェンダーインクルーシブ等における日本の順位は先進国のなかでも下位にランクする、その現状を金子氏はどうとらえ、どのように挑戦を挑んでいるのだろうか。

「日本が、戦後、経済的に成長できた理由の一つは、男性は外で働き、女性は“家内”というロールモデルがうまく機能したからです。でも時代が変わってもなお、日本の社会には、経済成長という成功体験が残っています。日本という国はなにか大きな外圧がないとなかなか変われないと言われていますが、今回のCOVID-19は、ひとつのきっかけになるのではないでしょうか。一挙に変化をもたらすのは難しいかもしれません。ただ、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が推進され、30、40年、変わらなかった様々な側面が、変わっていく環境が整ってきました」

そう金子氏は期待を込める。それでも未だに女性蔑視をする人は要所要所に存在し、「本当に驚きます」。しかし、金子氏はあえて戦わないことにしているという。

「面と向かって戦うのは私流ではなく、むしろ相手の懐に入っていくんです。挨拶をしてくれなかったら、こちらのほうから毎朝、笑顔で元気に挨拶をしたり、その人が会議などでいい意見を言ったら、本当にそうですよねと、相槌を打つ。懐に入るというのはその人の立場に立ってみるという積極的な姿勢です。擦り寄るのではなく、関係性を改善していい関係性を築いていきたいんです」

自分のアイデンティティーを隠す必要はない

ティツィアナさんと “楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー

▲左:金子みどり氏 / 右:ティツィアナ・アランプレセ氏

日本のジェンダーギャップの原因は、「日本という国の環境そのものにもありますし、会社などの組織にもあります。そして、女性本人の意識も無関係ではないと考えます」と金子氏は付け加える。

「親からああしなさい、こうしなさいと言われて育つと、ともすれば自分に否定的になってしまいます。まずは自分を否定しないこと。そして、自分のいいところを確認し、強みを最大限にいかし、自分を信じてあげること──。これが新たなチャレンジにつながっていくとともに、より多くの日本の女性に求められているのではないかと思います」

そして、金子氏はこんな興味深い話をしてくれた。

「ネスレに入社して最初の会議に、どの色のスーツを着ていくか、迷ったんです。オグルヴィのテーマカラーは赤でしたから、ティツィアナさんのような真っ赤なスーツも持っていました。でも、日本企業の男性ばかりの取締役会に初めて入っていくのだから、ダークスーツのほうがいいのではないかな、とも。で、どうしたと思います?」

「もちろん赤でしょう?」とアランプレセ氏。

「そうなんです(笑)。女性である自分のアイデンティティーを隠す必要はない、違うことこそがアイデンティティーだと、私は初日に真っ赤なスーツを着ていきました。きっとみなさん、絵にかいたような外資系から来た女性が現れたと思ったと思います(笑)」

しかし、自らのアイデンティティーを主張するだけでは転職はうまくいかないと金子氏は言う。

HND17- “楽しい”を基準に仕事場を選んできた、アマゾンジャパン 金子みどり氏のフィロソフィー

「中途採用は即戦力を求められます。これは紛れもない事実ですが、転職の時に大事にしなければいけないのは、その会社に以前からいる人に教えを乞い、ただ変化を持ち込むのではなく、先ず何を守るべきかを知ったうえで、皆さんと一緒に変化を作っていくことだと思います。存在していたモノをすべて壊して新しいモノを作ることは誰にでもできます。謙虚に学び、皆さんが作ってきた大切な基盤を守りつつ、必要な変革のためのチャレンジをしていくことが大切です」

美しくいるためには、どう生きるかが大切

アランプレセ氏はAlfa womanのインタビューのテーマのひとつ、“美しさ”についても尋ねた。

「これも母からの言葉です。母は、若い頃はみんなスタイルも良く、きちんとメイクすればある程度は魅力的でいられる、でも50歳を過ぎると、それまでの生き方が表面に現れてくると繰り返し言っていました。美しくいるためには、どう生きるかが大切なんだという母の言葉は今も鮮明に記憶に残っています。一生懸命自分磨きを心がけてきましたし、むしろ毎年、年齢を重ねるのが楽しみなんですよ」

好きなこともたくさんあるという。

「ジャズのライブにはよく行きます。最近は自転車にもはまっています。在宅勤務が増えると、自己管理は自己責任ですからね。週末には、4〜5時間自転車で、東京ディズニーランドなどに足を伸ばすこともあります(笑)」

インタビューの締めくくりに、金子氏は、自らのキャリアを切り拓こうとする女性たちに伝えたいことを語ってくれた。

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▲インタビューはオンラインにて行われた

「お伝えしたいことは3つあります。まずは自分と他人を比較しないこと。周囲の人から学ぶことはたくさんありますが、それはあくまでも栄養素。あなたらしさはあなたにしかないもの。2つ目は、冒頭でもお話しましたが、自分の強みをいかし、それを磨き、自分らしさを確立していくこと。自分にダメ出しせず、自分のいいところを見つけること。そして、3つ目は仲間を大切にすること。あなたが辛いことを乗り越えていく時の支えとなってくれる宝物です」

文字にするとシンプルなことだ。しかしどれも人が生きる上でとても本質的なことで、その3つが実現できた時、きっと眼に映る景色は違ったものになるのになるのだろう。金子氏が、朝起きるのがうれしくてたまらない、太陽を見ると楽しく、そして、祈りたくなるといった境地は、ここにあるのかもしれない。

Interviewer:FCAジャパン株式会社 マーケティング本部長
ティツィアナ・アランプレセ

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Text:長谷川あや

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