alfawoman 2021.10.15

ファッションスタイルは人生の縮図。大草直子という生き方

スタイリングディレクターとしてファッション情報を発信し、インスタグラムのフォロワー数は、30万人を超える(2021年10月現在)大草直子氏。そのほか、執筆や編集、商品開発やブランドコンサルタントなど、その活躍のフィールドは多岐にわたり、いくつもの肩書を持つ人だ。八面六臂の活躍を見せ、プライベートでは3人の子どもの母親でもある大草直子氏は、どのようにして現在の場所にたどり着いたのか。そして、彼女はどこに向かおうとしているのか。FCAジャパン マーケティング本部長、ティツィアナ・アランプレセ氏が話を聞いた。

生きるということは旅のようなもの

全身からポジティブなオーラがにじみ出ている。きっと多くの人が大草直子氏に抱いているイメージそのままの人だ。今回のインタビューはオンラインで行われた。インタビューの冒頭、大草氏は都内の撮影スタジオから、画面越しのアランプレセ氏に、「今日はどうぞよろしくお願いします」と明るく声をかける。

高校生の時にアメリカ留学、会社を辞めたあとに南米にサルサ留学をしている大草氏は流暢な英語を話すが、この日のアランプレセ氏との会話にも、時折、英語が混ざった。

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▲FCAジャパン マーケティング本部長、ティツィアナ・アランプレセ氏

インタビューの冒頭、アランプレセ氏は、「今日はぜひ直子さんのストーリーを聞かせてほしいと思っています。直子さんはどうやってご自分の居場所を確立されたのですか」と問いかけた。

「私にとって生きるということは旅のようなもの。ずっと同じところにいるのは退屈なんです(笑)。旅そのものも大好き! 旅先でトラブルに巻き込まれたこともあるし、いいことばかりではないけれど(笑)、初めての場所、初めての味、初めての匂い、初めて会う人──旅に出て新しい体験をして刺激を受けたいといつも思っています。私ね、勘がとてもいいんですよ。何かを決断をする時も、この道は危ないとか、危ないかもしれないけれどきっと楽しいことが待っているといった、イメージが湧いてくるんです。この勘の良さは、旅で培かったものだと確信しています(笑)」

仕事はもちろん、プライベートでも海外に行く。「自分で決断して、自分で予約をとって、自分でお金を払って、自由に過ごす一人旅も大好き。そういえば、私、初めての一人旅はイタリアだったんですよ」

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▲大草直子氏

大学卒業後に就職した出版社で、大草氏は『ヴァンテーヌ』という女性誌の編集部に配属される。

「ミラノのおしゃれをテーマにした女性誌でした。仕事を通してイタリア文化やイタリアのファッションスタイルについて学び、いつか本場に行ってみたいと思っていたんです。リュック・ベッソン監督の映画『グラン・ブルー』の影響も大きかったですね。映画の舞台となった、タオルミーナにも足を伸ばしました。その後もイタリアには何度も訪れています」

世界的なパンデミック下で未だ海外渡航が難しい状況が続いているが、「私、コロナ前の1年で12回ほど海外に行ったんです。だからまだ旅貯金があるの(笑)」と艶やかに笑う。「いつ何が起こるかわかりません。やりたいことがあるなら、多少の犠牲を払っても実践するべきだという思いを強くしました」

“サードプレイス”を持つことが大事

これを受け、アランプレセ氏は、自宅で過ごす時間が多くなったことで、ライフスタイルにどのような変化が生じたかを尋ねた。

「インテリアを変えるなど、今まで時間が取れずにできていなかったことに着手しました。子どもたちと一緒に料理をしたり、ヨガやメディテーションをしたりと、自分と向き合う時間も増えました。ネガティブな点は、やはり踊りに行けないことかな。でも自宅で夫と踊っています(笑)」

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大草氏のご主人はベネズエラ出身だ。日本人男性との結婚・離婚を経て、「彼と出会い、恋におちました」
そして現在は3人の子どもの母親でもある。

「お互いにフェアで、お互いの世界を大切にしあえる人──。これが私が結婚相手に求めたものです」

アランプレセ氏は大きく頷きながら、「とても大切なことです。でもコンセンサスを取るのはなかなか大変でしょう?」とつぶやいた。

大草氏は続ける。

「そう、だから夫とはいろいろなことを話し合います。長く一緒に生活をしていても、話してみないとわからないことはたくさんあります。たとえば、彼は5年間、ハウスハズバンド(主夫)を担ってくれましたが、『今回は私のキャリアを優先させてもらったけれど、あなたが仕事に打ち込みたい時は、私が全力でバックアップする』ともきちんと伝えています」

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それゆえ、「自分の今のキャリアや収入は、自分ひとりで作ったものではなく、ファミリーキャリアだと認識している」という。「それに、お互いのキャリアを“ファミリーキャリア”にすることで、お互い嫉妬心を抱かずに済むでしょう(笑)?」

「きっと、直子さんはファミリーのモチベーションを作るのがとても上手なんだと思います」と、アランプレセ氏。そして、こう問いかける。「でも落ち込むこともあるでしょう? そんなとき、直子さんは、どんな風に“自分らしさ”をキープしていますか」

「アンサーになっているかどうかわからないけれど、私は“サードプレイス”を持つことが大事だと考えています」

サードプレイスとは「家族でも友人でも仕事でもなく、趣味でもなくて、なんていうのかな、自分のゾーンというか、自分が自分でいられる居場所のこと」と大草氏は解説する。

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「カフェで本を読むのでもいいし、ヨガに行くのでもいい。ひとりで映画を観るのもいいかもしれません。1週間に1時間でもそこに身を置くことをお勧めします。私の場合はサルサでした」

「とてもいいアドバイスだと思います」と共感するアランプレセ氏にとっての“サードプレイス”は、「旅をすること」だという。大草氏は、「大事、すごくいいと思う」と言って、2人は笑いあった。

家庭や仕事、旅、そしてサルサ──大草氏のパワーの源泉は多彩だ。そのエネルギッシュな大草氏をして、「とてもエネルギッシュな人」と語る母親からの影響も大きい。

「母は今も仕事をしています。母から『一生働きなさい』と言われたことはありませんが、いつだって楽しそうで、今も次々と新しいことを始め、パワフルに生きている母の背中を見て育った影響はやっぱり大きいかな」

さらに、「パワフルに、楽しく過ごすには自分が健康でないとだめ」とも強調する。

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「健康的にも、メンタル的にも、ヘルシーであることが大切です。ストレスをため込むのは不健康。やりたいことがあるなら文句を言われてもやるべきです。若い人たちは、自分自身に問いかけ、自分で決断することが大切だと声を大にして伝えたいです。小さなことでもまずは自己主張してみることが、トレーニングになると思います」

何ものにも左右されず、自分の求めるものに貪欲になる──。その思いは、大草氏のファッション観にも表れている。

私のファッションは、私の人生が凝縮した、私だけのもの

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「私は誰かに褒められたくて、おしゃれやメイク、また体型をキープするためにエクササイズをしているわけではありません。すべて自分のためであり、自分を好きになるためのひとつの手段です。それに私にとってファッションとは自分の人生そのものなの。私のファッションの原体験は、小学生の時のネイビーと白の制服です。ベーシックなトラッドスタイルを学びました。高校時代にはアメリカに留学し、アメリカンカジュアルに傾倒します。会社員時代にミラノのファッションを学び、また、会社をやめて南米にサルサ留学し、ベネズエラ人の夫と結婚したことで、ラテンなモードが入ってきました。私のファッションは、私の人生が凝縮した、私だけのもの。だからこそとても大事に思っているし、人に褒められる必要はないんです」

そうしなやかに語る大草氏は現在49歳。2022年には50歳の節目を迎える。

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「女性の体が大きく変化するタイミングでもありますし、正直怖さもあります。とはいえ、加齢するとか、白髪が増えるとか、そういったことはどうでもいいの(笑)。私、フリーランスになりたてで、子どももまだ小さかった30代は記憶がないくらい働いたんです。その土台の上で生きた40代は贈り物みたいに楽しいものでした。でも50代から先を、自分らしく生き抜くためには、50代での土台づくりが大切になってくると思っていて。そのことを考えると少しドキドキします」

その反面、年齢を重ねるごとに、人生が楽しくなっていることも実感しているという。

「だから少し不安はあるけれど、それ以上に楽しみのほうが大きいかな」

そういって、大草氏は華やかに微笑んだ。

多かれ少なかれ誰にだって不安はある。でも自分が選んだものを、自分で選びとることで人生はより豊かで、楽しいものになっていく──。大草氏はその言葉で、その生き方で、人生という大冒険は命ある限り、続いていくことを教えてくれる。

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Interviewer:FCAジャパン株式会社
マーケティング本部長
ティツィアナ・アランプレセ

20210108_qetic-alfaw-0016 ファッションスタイルは人生の縮図。大草直子という生き方

Text:Aya Hasegawa
Photos:大石隼土

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