alfawoman 2020.11.27

挑戦の先で出会う、自分らしさ。クリス-ウェブ佳子が体現する“未知を楽しむ人生”

モデル、コラムニスト、デザイナーとさまざまな顔を持つクリス-ウェブ佳子氏。ファッション誌『VERY』の専属モデルとしてデビューしたのは、2011年。2人の娘を育てながら30歳で活動を開始した異例のモデルとして注目を集めて以降、ロールモデル的存在として同世代女性を中心に厚い支持を得ている。発光するような美しさとパッションを宿す、彼女の“自分らしさ”の源はどこにあるのか? FCAジャパンマーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセ氏との対話から、その力強さと魅力を紐解いていく。

一番忙しい人が一番たくさんの時間を持つ

泳ぐように生きる--。クリス-ウェブ佳子氏は、そんな言葉を想起させる女性だ。ファッションモデル・コラムニスト・ラジオDJ、デザイナー、トラベルライターと、活躍の場は枚挙に遑がない。「一番忙しい人が一番たくさんの時間を持つ」という座右の銘そのままに、流されることなく自らが望む方へと絶えず泳ぎ続ける強靱なバイタリティとスピリットの源流はどこにあるのだろうか?“Be yourself.”を体現する女性同士のセッションは、まずクリス-ウェブ佳子というひとりの女性のキャリアを遡ることからスタートした。ストーリーの始まりは、18歳のころ。NYへの留学を決めたことに端を発している。

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▲クリス-ウェブ佳子氏

「もともと、すごく興味があったファッションについて学びたかったんです。ただ親としては、いろんなことを目指している人に出会えるから、大学に行って欲しいって。結局ファッションへの想いの方が強くて、日本の大学には1年間だけ通って休学、次の年からの4年半は留学先のNYで過ごしました。帰国後、NYで出会ったアップカミングなデザイナーたちのポートフォリオを持って日本のアパレル会社に『会ってください!』と電話をかけて、そこでバイヤーの仕事を見つけ、22歳のときファッション業界に入りました」

情熱と行動力で切り開いたファッションの世界への道。その後、当時まだ日本では知られていなかったNYのブランド『ASFOUR(現threeASFOUR)』のコレクションを1シーズン500万円分フルで買い付け独自にエキシビションを展開するなど、持ち前の積極性でバイヤーとしてのキャリアを積み上げていった。

リスペクトする“お母さん”という仕事を極めようとした4年間

「結婚して25歳で長女を出産したのですが、それからの4年間は一切仕事をしませんでした。夫も『子どもと一緒にいて欲しい』という考えだったので意見が一致したし、専業主婦を極めた祖母に習って『私もプロのお母さんになりたい!』という気持ちが強かったんです。すべてのママは、働くママ。お給料は出ないけれど、リスペクトするお母さんという仕事を極めたいと思っていました。だけど、ファッション業界から離れた4年間の間で、私自身を示すのが“誰かの奥さん・誰かのお母さん”でしかなくなってしまっているように感じていたんです」

「あなたはそういうカテゴライズの外にいる人だと思うのですが--」と、アランプレセ氏は少し驚きながらも、日本は依然として男性社会であり、女性の場合は個人のパーソナリティが“奥さん・お母さん”と家庭内での役割と同一化される慣習が未だ根深いと指摘した。

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▲FCAジャパン マーケティング本部長 ティツィアナ・アランプレセ氏

26歳で出産した次女が4歳を迎えるタイミングで仕事に復帰しよう--。そう考えていた折に、ファッション誌のモデルとしてスカウトされるという思いもよらない機会が訪れる。それまでバイヤーとして裏方を務めてきた彼女にとって、自身が表舞台に立つのは想像もし得ないことだったという。活動を本格的に始めたのは、30歳になったころ。モデルという新たなチャレンジは、“プロのお母さん”に大きな変革をもたらしたという。

「30歳というと、年齢的にモデルとしては下り坂。だから、始まりがもう終わりみたいな感じでした。ビジュアルだけでずっと仕事をすることは難しいだろうからと、いろんな新しいことを始めてみたんです。まずは、自分を知ってもらうためにブログを書き始めたんですけど、間も無くして顔半分を27針縫うっていう結構大変な事故にあってしまって。丸1ヶ月ベッドから起き上がれなくなってしまったので、ブログになにも書くことがないんですよね(笑)。なので、読者の方に『なんでも答えます』って呼びかけてみることにしたんです。そしたら、ファッションに関することだけじゃなくて、意外と人生相談的なものも多くて。ベッドの中で、誰かの問題に自分の言葉で向き合った1ヶ月間でした」

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このQ&Aが話題になり、当時専属モデルを務めていた雑誌内でのコラム執筆がスタート。すると今度は、他雑誌の編集者やラジオ局関係者からコラムやトーク番組の出演への依頼が立て続けに舞い込み、ついにはラジオDJとしてレギュラー番組を務めるに至る。その後も、旅行や音楽、インテリアといった自身のライフスタイルとファッション業界で培った知見を掛け合わせることで、肩書きでは括ることのできない“クリス-ウェブ佳子”という存在を自ら確立していった。その根底にあるのは、彼女が好奇心とチャレンジ精神で耕し続けてきた、自分のフィールドだ。もちろん、モデルとして10年目を迎えた今も新しい種を蒔き続けている。

「今年は、マンションのショールームの内装を手掛けることになっていて。自分で図面を描けるように勉強して、ソフトウェアもダウンロードして、グラフィックでパースを作りました。そしたら、今度はクライアントから『手描きでパースを描いてきてほしい』って言われて(笑)。それはすごいチャレンジだったんですけど、ちょうどステイホーム中でどこにも行けない期間だったので、設計用の大きな定規なんかも買って、ひたすら勉強しました。わからないことがわかることが楽しいんですよね。歳を重ねていくと、経験のないことに対して知らず知らずのうちにブレーキをかけてしまうので “自分がなにを知らないか”にも気づくことができなかったりするんですが、私は常に新しいことにチャレンジしていたいと思っています。安定することよりも、より良く変化しながら生きることが、私が私であることを構成していると思っています」

人は誰しも進化し続けることで、美しくいられる

自分自身を知り、認める強さ。それは、誰かを認める優しさにもつながる。「人とのコミュニケーションこそ自分のフィールドを潤す水であり、働く原動力」と語る彼女の交友関係は広く、あらゆる環境に身を置く人々と親交するなかで、異なる価値観や多種多様なバックグラウンドへの理解を深めてきたという。そして、現在モデル・女優として活躍する長女・新音(にのん)さんもまた、環境問題やリベラリズム、ジェンダーイクオリティについて意見を交わすなかで自身に新しい気づきを与えてくれる存在だという。

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「私の親はLGBTQのことをなにも知らない世代だったんですが、私は興味があって自分でいろいろ調べたりしていましたね。高校のときの大親友がゲイだったんですけど、学校では私にだけ言ってくれていたんです。そういう友達がたくさんいるし家にも遊びに来るから、子どもたちは“いろんな人がいて当たり前”という環境で育っているんですよね。なので、娘たちともジェンダーの話は普段からすごくします。サスティナブルやエコに対しても今の若い子のほうがフットワークが軽いのかもしれませんね」

インクルーシブな社会の実現を目指すNPO活動のサポートとともに、エコについても積極的なアクションを実施しているアランプレセ氏は、「インテリアやファッションにおいても、環境に優しいということがすごく大事になってきている」とトレンドを語ったうえで、今後はより環境のことに目を向ける人がより増えるだろうと期待を語る。

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それを受け、クリスウェブ佳子さんは、長女が提案したある取り組みについて語ってくれた。

「それこそ娘が、アマゾンの森林火災を知ってから1日3食のうち1食をヴィーガンにすることにしたようで、『1日のうち1回くらい、食物連鎖のヒエラルキーのトップに立たない食事があってもいいんじゃないか』って言っていました。あと実は今、車が欲しいなと思っていて、私はデザインや誰と乗りたいかを基準に選んでいたんですけど、娘たちに聞いたら『地球にやさしい車がいい!』って言われました。私たちがやっていることが子どもたちの未来を作っているから、責任を持って生活しなきゃいけないんだなと思っています」

自分で自分を制限しない、合言葉は“私は私だからこそ”

自分で将来を切り拓いた10代、尊敬する母親という仕事を突き詰めた20代、モデルをキッカケに新しいフィールドに歩を進めた30代。そして迎えた40代。つねに自分の可能性を認め、未知を楽しみ続ける彼女の目は、常に情熱と輝きを宿している。「佳子さんにとっての美しさとは、なんですか?」--インタビューの終わりに、アランプレセ氏はシンプルな質問を投げかけた。

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「“美しさ”というと見た目の話で進むことが多いですけれど、容姿のことだけではなく、暮らしや生き方に関わってくるものであって、そのすべての物事に“美しさ”を求めることを諦めてはいけないと思っています。自分が若いからとか年老いているからとか、自分はママだからとか離婚してるからとか……自分を勝手にカテゴライズしちゃうと行動にリミットがかかっちゃうので。それよりも “私は私だからこそ”という気持ちでいろいろなことに向き合っていくのがいいんじゃないかな。継続すれば、失敗することはないと思っているので。デザインだって常に進化していますよね。進化し続けていれば、美しくいられると思っています」

新しい自分に出会いたいと願う人へ、最後にとっておきのメッセージを贈ろう。「なにかを始めることはすごく勇気がいるし、終わることに対しての恐怖心もあると思うんです。だけど、終わることって、なにかが始まるっていうことだから」。あなた自身ですら、あなたを限定することはできない。泳ぐようにしなやかに、かつ力強く自分の人生を進む彼女の姿からは、そんなメッセージさえも感じられるようだ。

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クリス-ウェブ佳子氏着用:ワンピース¥135,000(ERDEM/MAISON DIXSEPT/03-3470-2100) パンプス¥72,000(Malone Souliers/MAISON DIXSEPT/03-3470-2100)

Interviewer:FCAジャパン株式会社 マーケティング本部長
ティツィアナ・アランプレセ

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Hair&Make:秋山 瞳 (PEACE MONKEY)
Styling: 朝倉 豊
Text:野中ミサキ(NaNo.works)
Photo:豊島 望

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