Art of Taste 2021.12.23

無事に過ごせたこの1年に乾杯。大野尚斗シェフによるアルファ ロメオのスペシャルディナー、ついに開催

アルファ ロメオの世界観を、食の世界に生きるプロフェッショナルと共に表現するArt of Tasteプロジェクト。世界を渡り歩いた若手として注目される大野尚斗シェフによるアルファ ロメオのオーナー向けスペシャル限定ディナーがこのほど開催された。途中、コロナ禍の影響で何度も仕切り直しを余儀なくされた特別な夜だが、ようやくの大円団を得た形となった。『Restaurant TOYO Tokyo』で開催された魅惑の内容をご紹介しよう。

アルファ ロメオの華麗な世界観を料理で表現

ほんの少しずつではあるけれど、“アフターコロナの世界”がイメージできるようになってきた今日この頃。むろん、世界はまだそのダメージから完全に脱することはできずにいるが、それでも、不穏な空気が広がり始めた2020年の春から夏にかけての頃を思うと、今、大切な人たちと食事の時間を共にしたり近場ながらドライブ旅行に赴いたりするたびに感慨深い思いにとらわれる。

今回、アルファ ロメオがオーナーを対象に抽選制で開催した『アルファ ロメオ スペシャル ディナー』イベントでは、またしてもそんな感情に包まれた。大野尚斗シェフが繰り出す料理を楽しげに堪能するご家族の様子を眺めるうちに、ドライブ中、暗く長いトンネルを経て太陽の下に出た時のような気持ちが心の中によみがえったのだ。

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▲『アルファ ロメオ スペシャルディナー』に招待されたのは東京在住の川瀬純利さんとご家族。右奥はFCA ジャパンのマーケティング本部長、ティツィアナ・アランプレセさん。

筆者はふだん、レストランをはじめとする飲食業界を中心に活動しており、そのため、この1年半ほどはとても切ない状況を目の当たりにしてきた。他の業界も同様に辛かったとは思うのだけれど、料理の腕で人々に感動を与えることを生業(なりわい)とする職業に就いた人々、つまりシェフたちが、食べ手に会えず過ごしたこの時期に抱えたフラストレーションについては容易に想像できる。

しかしその一方で、ハートウォーミングな出来事も多々あった。ハイエンドなレストランがテイクアウトグルメをスタートさせたり、高級料亭の料理が“取り寄せ”で手に入るようになったり、それらはコロナ禍以前には到底考えられなかったことだ。このような状況になってみて、「もう、レストランに行かなくても家で食べればいいかも」「取り寄せグルメで十分」などとは思わない。逆に、プロフェッショナルの料理人たちがふだんどのように努力しているか、レストランがどのような思いでゲストを喜ばせるべくサービスに心を配っていたかも、さらに深く想像できるようになったのだ。

そんな中で、コロナになる前から食に携わる人たちに深い敬意を払い、食とライフスタイル、そしてクルマの世界を密接に結びつける活動を続けているブランドがある。そう、イタリアの名門自動車ブランド、アルファ ロメオだ。Art of Tasteと名付けられたプロジェクトでは、食の世界に生きるシェフやパティシエ、和菓子職人といった人々がアルファ ロメオの世界観との共通点を探り、自らの作品でそれらを表現するという試みを続けてきた。今回のスペシャルディナーで腕を振るった大野シェフもその一人。「アルファ ロメオは大好きなブランドです」と語り、千葉県いすみ市に食材探しの旅へと出向く様子を記事で紹介したのが2020年秋のことだ。

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▲2020年秋、いすみ市の農園『ファームアキ』を訪ねた際の大野シェフ(右)と、農園の主で野菜の作り手である青木昭子さん(左)。

1年越しのプロジェクトがついに終幕するという日を迎えて思うこと

あれから1年が経った。記事で大野シェフの料理を実際に体験できるスペシャルディナー体験の希望者を募ったところ多くのご応募をいただき、川瀬さんご家族にその幸運なる席がプレゼントされたわけだが、コロナ禍の影響でプロジェクトは幾度もスケジュール変更され、ようやく今回の実施となった。

今日のスペシャルディナーのホスト役を務めるのは、アルファ ロメオ。同ブランドを日本で展開するFCA ジャパンのマーケティング本部長、ティツィアナ・アランプレセさんは、当選された川瀬さんご一家との対面を前に非常に喜んでいたそう。「ずっと続けてきたアルファ ロメオのArt of Tasteプロジェクトですが、昨年は大野尚斗シェフの動画を公開し、このディナーをもって完了となる内容です。それだけに、オーナーでいらっしゃる川瀬さまがどのような気持ちでアルファ ロメオにお乗りいただいているかを伺うのを、心待ちにしていました」と話してくれた。

当の大野シェフもまた変化に満ちた年であったようだ。自身の新たなレストランをオープンさせる予定であったのがこれまた計画は延期となっており、現在もフリーランスのシェフとして活動中。長すぎたウエイティングタイムを淡々と受け止め、今の自分にできることは勉強であると言わんばかりに、日本各地を飛び回っているという。

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▲コックコートに身を包んだ大野シェフ。東京か、地元福岡かのいずれかにレストランをオープンさせる予定だったのが、ようやく福岡に照準を合わせることを決意したという。

今回の料理を作るにあたってのコンセプトを大野シェフに尋ねてみた。
「アルファ ロメオの世界観を、お客様と共に味わうための料理をということで、昨年秋に千葉県いすみ市に食材探しの旅に出た時のことを思い出しました。真っ赤なステルヴィオに乗って、ファームアキでは野菜を、いすみ市の大原漁港近くでは伊勢海老やはまぐりを見せてもらったんです。幼い頃、実家で父が大切にしていたのもアルファ ロメオのスパイダーで、クルマに対する僕の記憶はアルファ ロメオから始まっています。なので、運転するときのわくわくした想いと共に、何か懐かしい郷愁のような感情もあるんです」

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▲昨年訪ねたいすみ市『丸大水産』で見つけた味わいの濃い伊勢海老。大野シェフは今回の料理のメインにも、再度その伊勢海老を取り寄せて使用。

そんな大野シェフが今回の料理に込めたコンセプトの一つは、“疾走感”であるという。
「アルファ ロメオ好きの間では有名な話なのですが、シュッと跳ねるような心地よい躍動感を感じるんですよね、このクルマには。知り合いのアルフィスタからはそれを『アルファダンス』というのだと教えてもらいました。僕にとってはそれが快感を与えてくれる疾走感というか、そんな風に感じられます。そんな記憶を料理で表現するにはどうすれば良いか、知恵を絞りました。今回は香りや酸味、ニュアンスや余韻などに効かせることができたらと思い、どこかしらに心地よい後味として残るように工夫してあります」

大野シェフと仕事を共にするといつも感心するのだけれど、非常に個性のある表現方法を編み出す人だとつくづく思う。通常、「アルファ ロメオを表現してほしい」と言われたら、おそらく単純にブランドカラーでもある赤をフィーチャーする方法を試みるはずだ。しかし大野シェフはあえてそれだけに終始しない。アルファ ロメオを運転する日の心の昂りを自分なりに解析し、そこに料理としての輪郭を与えようとするアプローチは見事の一言に尽きる。

大野シェフがアルファ ロメオの疾走感や躍動感を表現したいくつかの料理をご紹介しよう。アミューズ3品に始まり、前菜『シトラスのカルパッチョ』、温前菜『牡蠣のポッシェ』、メイン『伊勢海老』、デセール『ゴールデン ドリーム』と続く全7皿の構成であった。

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▲アミューズの中から1品。凍らせたビーツのブロックの上に置かれたものが料理で、ビーツのチュイルにビーツのコンフィと燻製クリームを合わせたフィンガーフード仕立て。

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▲前菜はシトラスのカルパッチョ。ジューシーな帆立を並べた上に、ピンクグレープフルーツやバレンシアオレンジ、みかんなど、合計5種類の柑橘類を重ねて。アルファ ロメオで走る時に感じられるキレの良い動きや加速のイメージがここに。

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▲大ぶりの牡蠣は気仙沼から届いた『もまれ牡蠣』と呼ばれるブランド品種。少しだけ火を入れ、能登の『あんがとぅ農園』で収穫された赤蕪と青首大根を合わせ、上からアオリイカのヴェールをかぶせて仕上げたもの。クリーミーで優しい味わい。

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▲メインの伊勢海老には同じくいすみ市産のはまぐりをリゾットにして添えた。はまぐりは身を用いず、ミネラルウォーターで出汁をひき、塩もあえて使わずに合わせて旨味の一皿に。奥に写るじゃがいもとにんじんの千切りに効かせた花椒(ホアジャオ)がアクセント。

こんな時代だからこそ伝えたい“アルファ ロメオ流おもてなしの心”

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▲会場となったのは、日比谷にあるフレンチレストラン『Restaurant TOYO Tokyo』。故・髙田賢三さんのプライベートシェフを長年務めた中山豊光さんがオーナーシェフを務める店で、この日はスペシャルディナーのために特別なテーブルスタイリングがなされた。

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▲『Restaurant TOYO Tokyo』のエグゼクティブソムリエ、成澤享太さん(右)からこの日の最初にサーヴされたアルファ ロメオのオリジナルスパークリングワインの説明を受けるアランプレセさん(中央)と川瀬さん(左)。川瀬さんは愛車のステルヴィオで訪れたため、残念ながらこの日はその味を堪能できず。

さぁ、スペシャルディナーが始まった。アルファ ロメオのオリジナルスパークリングワインとソフトドリンクを手にした川瀬さんご一家とアランプレセさんは、乾杯をする前からすでに打ち解けた様子。『Restaurant TOYO Tokyo』のカウンターに集い、アルファ ロメオのイメージで生けた赤いフラワーアレンジメントと落ち葉のスタイリングを見た途端に、「ようやくこの日が来ましたね」とどちらからともなく言葉があふれ、以降は終始、和やかなムードのなかでディナーが進んでいった。

「大野シェフが今回のディナーの意図を本当によく理解してくださり、素晴らしいインスピレーションに満ちた料理を作ってくださったことに心から感謝しています。Art of Tasteのプロジェクトではアルファ ロメオが大切にしている無形の宝物、それは伝統であったり美意識であったり様々なのですが、そんなものを料理という枠組みの中で表現しようとクリエイターの方々と手を取り合ってやってきました。アルファ ロメオを運転する喜びとは、そういった無形の宝物を毎日の中で享受するということです。今回、オーナーである川瀬さんご家族とそんな思いを共有しつつ、料理を堪能することができ、これほどうれしいことはありません」(アランプレセさん)

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▲アルファ ロメオのブランドカラーである赤を身にまとい、胸元にはブランドロゴにも描かれている蛇をモチーフにしたペンダント。ティツィアナ・アランプレセさんもまた、アルファ ロメオ愛にあふれる一人だ。

これに対し、この日の宴を堪能した川瀬さんご家族を代表して、オーナーでもある川瀬純利さんはこのように語ってくれた。
「コロナ禍において、閉ざされたような心情になることもありましたが、それでも家族同士でドライブをしたり語り合うことで、前向きに過ごせたと思います。大きな変化といえば、アルファ ロメオと出会えたこと。昨年の秋にヴェズヴィオ グレーのステルヴィオを購入しました。私は理工系の人間で、洋服も車も実はそれまではドイツブランドを贔屓にしていたのですが、ある日たまたま通りかかったディーラーの店先でアルファ ロメオに一目惚れしたのがきっかけで、初のイタリア車デビューとなりました。ドアを開けるだけで心が躍り、ステアリングを握るとワクワク感が体にみなぎります。まさに大人の色気というのでしょうか、この車が今では家族の素敵な相棒です。長男の大学受験が終わったら、家族でゆっくりドライブ旅行に出かけようと話しており、今から待ち遠しいです」

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▲アルファ ロメオ ステルヴィオ オーナーの川瀬純利さん。大野シェフの料理には「情熱をひしひしと感じ、胸が熱くなりました」と語ってくれた。

ブランドとして、人として、次の扉を開くために

和やかな雰囲気の中、『アルファ ロメオ スペシャルディナー』は終了。川瀬夫妻やティツィアナ・アランプレセさんはもちろんのこと、17歳の息子さんや6歳の娘さんも、世界各国で腕を磨いてきた大野シェフによるイノベーティブな料理に大いに感動した様子だった。ディナー終了後は、アランプレセさんはじめ、スタッフ全員で川瀬さんご一家をお見送り。川瀬さんの愛車ステルヴィオを挟んで、またしても会話が弾み、記念撮影が行われ……と、名残惜しい時間を最後まで互いに堪能し、この日が終了したのだった。

世の中が完全に元の生活を取り戻すには、まだまだ時間がかかるだろう。いや、“元通りの生活”はおそらく、もうやってくることはない。それほど、この2年ほどで人間や社会の意識は変わってしまったと思う。しかし、それでも悲観に暮れることはないのだというのを、今回また改めて学んだように感じる。というのも、料理人はどんな状況に置かれても人を感動させるにはどうすれば良いかを考え続けるのが性(さが)であるし、ブランドも同様、アフターコロナの世界に必要な感動を生み出すべく努力し続けるだろうというのが目に見えてわかったから。

アルファ ロメオが世界に対して創業以来発進し続けているのは、まさにそういった感動体験だ。分かち合える人が一人、また一人と増えていることをまさに実感した魅惑の時間であった。

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▲幸せな時間を終えて、川瀬さんご家族、ティツィアナ・アランプレセさん、大野シェフ。

【PROFILE】

大野尚斗/Naoto Ohno

1989年生まれ、福岡出身。
バックパッカーだった両親の影響で、幼少時より旅が身近に。
「料理界のハーバード大学」と呼ばれる「The Culinary Institute of Americaニューヨーク本校」を卒業後、シカゴの三つ星レストラン「Alinea」で部門シェフを務める。
その後は世界各国のハイエンドレストランで修業を重ねる。
日本帰国後も変わらず精力的に料理修業に励み、2018年からは赤坂の会員制レストラン「sanmi」でエグゼクティブ・シェフを務める。
退職し、現在は自身の店の開業準備中。

【PROFILE】

山口繭子/Mayuko Yamaguchi

神戸市出身。
『婦人画報』『ELLE gourmet』(共にハースト婦人画報社)編集部を経て独立。
現在、「食とライフスタイル」をテーマに、動画やイベントのディレクション、ブランド・新規レストランのコーディネートなどで活動している。
近著に、自身の朝食をまとめたレシピエッセイ『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』(サンマーク出版)。

Text:山口繭子
Photos:李 春湖
Flower:梶谷奈允子
Coordination:Restaurant TOYO Tokyo

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