Be yourself 2020.09.18

最終回は初のオンライン開催。未来への希望を感じた『超福祉展』2020レポート

マイノリティの人々や福祉に対する“心のバリア”を取り除くことをテーマに、展示・体験・シンポジウムなどさまざまなコンテンツを通して意識のイノベーションを目指す『超福祉展(正式名称:2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展)』。2014年から開催されてきたこのイベントも、その正式名称内にある2020年をついに迎えた。最終回となる今年は、昨今の状況を考慮してオンラインでの開催に挑戦。スタート時からイベントに協賛するアルファ ロメオもこの新しい試みをサポートした。今回は9月2日(水)のオープニングセレモニーと、続く3日(木)のこちらもアルファ ロメオがサポートするNPO法人日本ブラインドサッカー協会によるシンポジウムの模様を、インタビューも交えてレポートする。

2020年、渋谷。混ざり合っていることが当たり前な社会の実現へ

9月2日(水)から8日(火)まで、今年も東京・渋谷ヒカリエ8階の『8/(ハチ)』で『超福祉展』が開催された。ただし今年がこれまでと大きく違うのは、シンポジウム・体験イベントなどのコンテンツを“オンライン”で開催したこと。超福祉展は最終回にして初の試みにチャレンジすることになった。

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9月2日(水)のオープニングセレモニーでは、まず超福祉展を主催するNPO法人ピープルデザイン研究所の代表理事・須藤シンジ氏がこれまでを振り返りつつ、関わるすべての人たちに感謝を述べた。

「思えば今年で7回目、テストパターンの1回を加えると8回目。2020年の渋谷の街では、ハンディキャップがあってもなくても、性別や年齢や国籍も関係なく混ざり合っていることが当たり前な社会を実現したいという想いでここまで来ました。今年はオンラインという形で開催できたのも全スタッフ、関係各所並びにいつもこの超福祉展に足を運んでくれていた皆さんのおかげです。本当にありがとうございます」

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▲NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事 須藤シンジ氏

続いて須藤氏は「最初に始めた時はおじさん3・4人だったんだけれども……」と笑みを浮かべながら、頼もしい次世代のスタッフたちを紹介。中でもピープルデザイン研究所で超短時間雇用という形で働いている中川可央里氏の言葉が素晴らしかったのでぜひ紹介させてほしい。

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「私は精神障がいを持っていて5年くらい引きこもりでした。ただどうにかして社会参加したいと思っていた時に超福祉展と出会い、2018年にボランティアで参加しました。1週間ボランティアをやってみたらあまりにも居心地が良くて、その時に“もっとここで何かをやってみたい。ここでならもっと何かできるんじゃないか”と思ったんです。そして去年はボランティアの副統括を担当することができて、さらに今年はボランティアリーダーになりました! 本当に人生で一番楽しい3年間になっているので、この一週間も楽しみたいと思います」

アルファ ロメオの“Be yourself.”とブランドのアイデンティ

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オープニングセレモニーでは渋谷区長の長谷部健氏、文部科学省スペシャルサポート大使の有森裕子氏、タイムアウト東京代表の伏谷博之氏といった超福祉展に関わるメンバーたちが登壇。そして2011年から続く“Be yourself.”プロジェクトを通してさまざまなNPO団体の活動をサポートするとともに、この超福祉展もスタート時からサポートしてきたアルファ ロメオからはFCAジャパン株式会社マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセ氏が登壇し、オンラインの視聴者に向けてメッセージを送った。

「皆さん一人一人が自分らしく生きられる社会をつくるために、アルファ ロメオは2011年から“Be yourself.”という活動をスタートし、さまざまな団体といろいろなアクションを進めてきました。その中でも超福祉展はスタートした時から須藤さんたちと一緒にやることができてとてもうれしいですし、このイベントはインクルーシブな社会を実現するための、東京で最もクールなイベントだと思います」

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▲FCAジャパン株式会社マーケティング本部長 ティツィアナ・アランプレセ氏

加えて、アルファ ロメオが大事にしてきたブランドのアイデンティティについても改めて語った。

「私たちがこのイベントをサポートする理由は、アルファ ロメオというブランドが自分自身のストーリーやパーソナリティを含めたアイデンティティを大事にしているからです。今年の超福祉展はオンラインでの開催ということで、リアルとオンラインのハイブリットな社会に向けて進んでいるのかもしれませんが、一つだけ変わらないことがあります。それは、私たちの心はずっとリアルで繋がることができるということです。この社会において、ヒューマニティの精神はずっと守らなければいけないものだと思います」

続いてアルファ ロメオの“Be yourself.”の活動をまとめたプロジェクトムービーを上映。ブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手やフォトグラファーのレスリー・キー氏、こころ Mojiアーティストの浦上秀樹氏、そして超福祉展を共に歩んできた須藤氏などが出演するムービーで“Be yourself.”のメッセージを届けた。

そして共に歩んできたアルファ ロメオに対して須藤氏は、別日のインタビューでこのようにも語っていた。

「アルファ ロメオさんにご支援いただいている活動はこの超福祉展だけではないですし、感謝しかないですよね。それは金銭的に協賛していただいているということ以上に、ティツィアナさんを筆頭にアルファ ロメオの皆さんにON TIMEの時間以外にもさまざまな形で支援していただいていることに対して感じています。人格や価値観の筋が通った方々ばかりですし、支援活動を一回ではなく継続的にやるというのは誰でもできることではないと思います」

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意識のバリアを憧れへ転換させる心のバリアフリーは進んでいく

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3日(木)には、<Alfa Romeo presents ブラインドサッカー混ざり合う社会に向けて>というシンポジウムを開催。このシンポジウムではNPO法人日本ブラインドサッカー協会の事業推進部で事業部長を務める剣持雅俊氏と、スペシャルゲストとしてブラインドサッカー男子日本代表強化指定選手で、日本ブラインドサッカー協会が行う『スポ育』や『OFF T!ME Biz』の講師もしている寺西一選手が、インクルーシビティを実現しようとしている協会の取り組みや男子サッカー日本代表の現状について紹介した。

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▲左:NPO法人日本ブラインドサッカー協会 事業推進部 事業部長・剣持雅俊氏 / 右:寺西一選手

「学校向けに展開している『スポ育』をコミュニケーションやチームビルディング、またはインクルーシビティといった観点に落とし込んで、企業向けの研修として開催しているのが『OFF T!ME Biz』です。参加者はアイマスクをすることで、言ったことと伝わったことのコミュニケーションの差を感じたり、目が見えない中で協力して達成したりすることを体験し、会社の同僚やお客様といった相手の立場に立った伝え方などを学びます。また、今回アルファロメオさんと一緒に実施をする、日本ブラインドサッカー協会が開発した個人向け体験プログラムの『OFF T!ME』は、現在オンラインで開催しています」(剣持氏)

「競技面としては今年の4月にブラインドサッカーの専用コートが完成しました、それによって練習環境は格段に向上して、充実した練習ができています。もちろん大会が中止になったことで動揺がなかったわけではないのですが、全選手・スタッフが健康な状態でそろうことができて、先ほどの専用コートも使えている。今すぐ海外のチームと試合をしたりすることもできませんし、来年もどうなるかはわかりませんが、僕らとしては日々新しいアイデアを巡らせながら、来たるべき時に向けてトレーニングを積んでいるのが今の状況です」(寺西氏)

シンポジウムではさらに、寺西選手が実際のブラインドサッカーの試合と同様にアイマスクを着用し、こちらも試合で使用するボールでドリブルやパス交換といったデモンストレーションを披露した。

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シンポジウム終了後、お二人にインクルーシビティという言葉に持つ印象や自らの考えを伺った。

「自分自身が常にどういう形なのかを考えることがインクルーシビティだと思っていて、それは視覚障がいの場合、目を隠すことで自分にベクトルが向くという面があります。あと例えば自分を日本人だと思ったら、それをベースとした多様性の捉え方になる。ただそれを“地球人”と思うようになったら、みんな一緒だと捉えられるようになるのではないでしょうか。自分の心がどういう形なのかによってインクルーシビティは変わる。その視点で見られれば、さまざまなことを受け入れることができると思います」(剣持氏)

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「こういうご時世で大会や試合をお見せできないため、オンラインでいろいろなコンテンツを見せていかなければいけないなと考えて、7月から“混ざり合う社会”をテーマにいろいろな方をお招きして対談する『What Burasaka?』という企画を始めました。8月は乳がんサバイバーの齊藤かおりさんをお招きしたところやはり通じる部分はあり、それは助ける人と助けられる人の想いや求めているものの差。ただし、それは障がいとか病気のくくりではなくてもすべての人の共通しているものですよね。人との距離感やものが言いやすい・お願いしやすい・断りやすい関係性や社会を作っていくことがすごく大事ですし、そのためにはお互いのことに興味を持って知っていく必要があると思います。“まだまだあなたが会ったことのない、いろいろな人がいるよ”っていうことがもっと広まれば、先ほど言った関係性や社会ができていくはず。そういったものがインクルーシビティに繋がっていくと、『What Burasaka?』のような企画をやることで改めて感じています」(寺西氏)

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初のオンライン開催となった今年の超福祉展は、文字通り場所や身体などの障壁を飛び越え、ハンディの有無に関わらず、世界中の誰もが繋がれる一週間となったことだろう。最後に、シンポジウム中に寺西選手が話したエピソードをご紹介したい。寺西選手が10年前に『スポ育』で教えていた小学生が、今なんと自らの所属するパペレシアル品川のゴールキーパーになって同じピッチに立っているという。そのエピソードを聞いて、ピープルデザイン研究所、アルファ ロメオ、日本ブラインドサッカー協会、そして超福祉展に携わるさまざまな人々が蒔いた種が着実に花を咲かせ始めていることを実感するとともに、“超福祉”という言葉の定義“意識のバリアを憧れへ転換させる心のバリアフリー、意識のイノベーション”はこれからも進んでいくことを確信した。

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※ソーシャルディスタンスを保ち、安全に十分に配慮したうえで取材を行っております

Text:ラスカル(NaNo.works)
Photos:宮下祐介

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