Car Event 2021.08.06

歴代のアルファ ロメオが集った、初夏の北海道恒例のクラシックカーラリー『トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ』

クラシックカーラリー『トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ』が、7月16日(金)〜18日(日)の3日間にわたり開催され、サポートカーを含む7台のアルファ ロメオが集結! 3日間のクラシックカーラリーの模様を、自動車ライターの西川淳氏によるレポートでお届けする。

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▲室蘭市母恋のチキウ岬の程近いワインディングロードを走り抜けるラリー先導車両のジュリア ヴェローチェ。太平洋を一望できる有数の景勝地であり、地元高校生も通学前に大海原を眺めて深呼吸をしていた。

タツィオ・ヌヴォラーリとは?

史上最高のレーシングドライバーは誰か。そんな問いかけに対して、よく見かける回答といえばF1選手権においてドライバーズタイトルを獲った回数で判断するというものだ。現代なら7回、そして今年8回目を獲るかもしれないルイス・ハミルトンだろうし、少し前ならミハエル・シューマッハー、さらに大昔のドライバーならばファン・マヌエル・ファンジオといった名前が挙がることだろう。  

確かに彼らは不世出の名レーサーだ。異論はない。しかし、F1は1950年に始まった世界選手権であり、当然のことながらモータースポーツはそれ以前から存在した。自動車の誕生とともに生まれたと言っても過言ではない。なかでも第二次世界大戦前夜における欧州のモータースポーツといえば国家の威信がかかっており、戦争さながらに白熱していた。巨大なエンジンを積んだだけのレーシングカーを操るレーサーたちもまた戦闘機パイロットのような存在だった。  

“フライング・マントヴァーノ(空飛ぶマントヴァ人)”と称され、四輪ドリフトテクニックを生み出したイタリア人、タツィオ・ヌヴォラーリはそんな1930年代における最高の、そして伝説のドライバーである。

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▲イタリアの詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオは、この世界最速の男に“のろまな亀”の置物を贈ったという。それを気に入ったヌヴォラーリは、常に亀のブローチを身につけてレースに臨んだ。当時のレースは危険が当たり前であり、多くの偉大なドライバーは事故で亡くなっていたが、ヌヴォラーリはベッドの上で60歳の生涯を閉じることができた。 / ©️ Scuderia Tazio Nuvolari Asia / Museo Tazio Nuvolari

現代とは比べるべくもないが、タツィオが頭角を表したのは30歳代以降のことで、その才能はアルファ ロメオを駆ることでまずは発揮された。これまた天才的エンジニアだったヴィットリオ・ヤーノに才能を見出されたタツィオは38歳の時、すなわち1930年のミッレミリアにアルファ ロメオ6C 1750で参戦するや、この有名な公道レースにおいて史上初の平均速度100km/h超えを達成し、見事に総合優勝を勝ちとった。のちにはエンツォ・フェラーリの運営するアルファ ロメオのセミワークスチームの契約ドライバーにもなり、1935年のドイツGPでは総統のメルセデスを下す奇跡の勝利を掴んだことで伝説のドライバーとなったのである。

そんなタツィオ・ヌヴォラーリの功績と栄誉を称え、故郷にほど近い街マントヴァ市では毎年秋、『グランプレミオ・ヌヴォラーリ』というクラシックカーラリーイベントが開催されており、今ではミッレミリアと並ぶ世界的に人気のイベントへと成長している。2000年から北海道でスタートした『トロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリ(TTN)』(スクーデリア・タツィオ・ヌヴォラーリ・アジアSTNA主催)はGPヌヴォラーリを開催するマントヴァ・コルセと提携して開催される、いわば姉妹イベントだと言っていい。  

北海道の地に集った7台のアルファ ロメオ

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▲千歳のスタート地点に並んだアルファ ロメオ。奥から順に現行型ジュリエッタ、現行型ジュリア、バケットシートを奢られたスポーツ仕様の1957年式ジュリエッタ ベルリーナ、1959年式ジュリエッタSZ、1969年式ジュリアGT1300。

今年で21回目を迎えたTTN北海道ステージ。例年と同様に7月半ば(16日〜18日)の三日間にわたり開催され、個性豊かなクラシック&ヴィンテージカーが集まった。なかでも注目は最も多くの参加メイクスを集めたアルファ ロメオで、ジュリエッタ SZやジュリエッタ Ti、GTA 1300ジュニア、1300GT ジュニア、そしてアルフェッタ GTVの計5台が参戦。最新のジュリエッタとジュリア クアドリフォリオの2台を合わせた全7台がアルファ ロメオ111年の歴史の一端を垣間見せてくれた。

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▲梅雨のない北海道。2021年のトロフェオ・タツィオ・ヌヴォラーリは3日間ともに好天に恵まれた。

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▲オフィシャルカーのステッカーは参加車両のゼッケンスペースにOFFICIALの文字が。控えめながら主催者のセンスを感じさせるデザインだ。

その次に多かったメイクスが戦前のブガッティというあたりもまた、このイベントの面白いところだろう。その他1953年式のマセラティA6 GCSや、この手のラリーイベントには常連というべきポルシェ 356、珍しいところではBMW 2000CS、同2002ターボ、さらにはフィアット バリラ、ホンダ S800クーペといったマニア垂涎のモデルも北の大地を駆け巡った。

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▲戦前のフィアット、ブガッティや、1953年式のマセラティなどの名車も多数参加した。

本州の酷暑を避けてやってきたはずなのに、今年の北海道の七月は例年になく猛暑となり、スタートしたその日から日本列島最高気温をマークする始末だった。しかも“運よく”三日間とも晴れに晴れわたり、クラシックカーにも、そしてドライバー&ナビゲーターにも厳しいツアーとなった。特にオープンボディのエントラントは燦々と輝く太陽を恨むことしきり。かといって去年のような雨と霧じゃ雄大な北海道の景色を楽しむことはできない。真っ赤にやけた顔の汗をぬぐいつつ、どこそこは素晴らしい景色だったと互いに慰め合うほかなかった。今年のTTNは新型コロナ禍の続くなかでの開催ということもあって、PC競技などを排した、純粋に北海道は道央のドライブを目一杯楽しむツアーラリー形式での開催となった。とにかくみんなで道央をとことん走りながら楽しむ。それに尽きる大会となったのだ。  

スタートは新千歳空港の近く、車両輸送で有名なトランスウェブの北海道支社。出発して半時間もすれば、そこはもう快適な山間のワインディングロードである。世界のクラシックカーがそれぞれにユニークなサウンドを響かせている。

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▲勢いよくスタートする1968年式 ジュリア 1300GT ジュニア。

ジュリエッタ&ジュリアがサポートカーとして活躍

ここで、あらためてサポートカーの紹介をしておこう。
まずは『Alfa Romeo Giulietta(アルファ ロメオ ジュリエッタ)』だ。

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激戦区である欧州Cセグメントにおいて、実用面での機能性はもちろんのこと、加えて運転する楽しさを積極的に付加したモデルとして登場したジュリエッタ。デビューから11年経った今なお、その魅力は色あせない。なかでも日本で販売されているヴェローチェ 1750TBIはスタイルとパフォーマンスにおいてアルファ ロメオ一流の表現を駆使した一台。劇的な加速性能に加えて、ニンブルなハンドリングがクルマ運転好きを虜にする。個人的にはハッチバックスタイルとしては異例の躍動感あふれるエクステリアデザインとともに、今となっては貴重な実にコクピットらしい雰囲気のインテリアデザインが好み。イタリアで何度も取材のパートナーとして活用したが、街乗りからアウトストラーダ、そして峠越えと万能にこなしてくれたことが印象に残っている。

続いて、先導車を務めた『Alfa Romeo Giulia Quadrifoglio(アルファ ロメオ ジュリア クアドリフォリオ)』。

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欧州Dセグメント屈指のスポーツサルーンだ。スタンダードシリーズでも十分にスポーティで、その理由は堅牢な骨格と優れたサスペンションシステム、そして理想的な重量配分によるところが大きい。そしてよりダイナミックな性能を望むクルマ運転好きは迷うことなくクアドリフォリオを選んで欲しい。2.9リットルのV6ツインターボエンジンは510PS、600Nmのパフォーマンススペックを有する。8速オートマチックによって後輪へと伝えられる動力は、官能的なエンジンフィールと排気サウンドを発しながら凄まじい加速へと車体を導く。もちろんハンドリング性能も第一級。サーキットではほとんど完璧なドリフトパフォーマンスを楽しむことも可能である。ビート感あふれるサウンドが乗り手を常に刺激する。街中で冷静にクルージングすることだけが少々難しいけれども、それもまたイタリア製スポーツサルーンの魅力というものだろう。

道央の景色・文化・食を楽しむ3日間のドライブコース

快晴の支笏湖を右手に眺め、山を上がっていくと、久しぶりに白滝からの絶景に臨むことができた。牛肉で有名な白老を過ぎて、苫小牧は最近人気のスポット、民族共生象徴空間“ウポポイ”へ。そう、今回のツアーはオトナの遠足のようなものでもあった。このご時世、ただただ走り回っているだけじゃ(何につけ)もったいない。初日のゴールは登別温泉。ディナーはエントラント全員で典型的な北海道の宴会料理に舌鼓を打ちつつ旧交を温める。

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▲毎年様々なクラシックカーで参加される北海道のコレクター。今年もジュリエッタ SZで快走した。

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▲主催者はルート内で様々な見所を用意してくれる。今回は競技がなく、ゆったりとしたツーリングに終始した。

二日目。登別の海岸線を走り、室蘭は南の先、地球岬へ。語源はアイヌ語の“ポロ・チケップ”(断崖の親玉)で、そこから転じてチケウエ→チキウとなり、地球の字が当てられた。白鳥大橋を渡って室蘭から離れ、今度は北上、伊達から内陸へと入り今度は洞爺湖を目指す。名菓『わかさいも』が有名なレストランで念願の白老牛を頂いた。

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▲130mの絶壁を擁する地球岬。北海道の自然100選で第1位に選ばれるなど、北海道を代表する人気の観光スポットとなっている。ハヤブサの営巣地としても有名だ。

面白かったのは午後からで、洞爺湖から二日目の宿泊地であるニセコまで、一応推奨ルートは設定されていたものの、基本は自由行動である(といってもそうそう多くの別ルートがあるわけではない。そこがまた北海道のいいところ)。筆者は以前に訪れて感動した真狩村の温泉へ直行し、羊蹄山を眺めながら湯を愉しんだのち、しばらく真狩周辺をうろうろとして旨いソフトクリームや、真狩牛のハンバーガーなどを堪能する。

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▲あらゆるところで、地元名産のソフトクリームが楽しめる。

三日目はウニ目当ての行楽客で賑わう積丹半島を周回。筆者の駆るアルフェッタ GTVは素晴らしい調子で、軽快な4気筒サウンドを響かせ海岸線を駆けた。なんでもないドライブが楽しいと思えるあたり、最新のジュリエッタやジュリアにも共通する魅力であり、アルファ ロメオの伝統というべきだろう。日常性を犠牲にすることなく、さりとてドライバーにピーキーな要求を押し付けるわけでもない。公道で愉快だと常に感じることのできるパフォーマンスが、アルファ ロメオの魅力だと言っていい。  

札幌あたりから目指してきたクルマで大渋滞の反対車線を尻目に余市のキャメルファーム・ワイナリーを目指す。参加賞として頂いたスパークリングワインが美味かった(後日談)。ワイナリーで“ウニといくらのスペシャル海鮮丼”をいただく。むしろ漬けの小海老に感動したことは主催者には内緒の話である。この日の午後も江別のゴールまで自由行動というので、赤井川の有名なソフトクリーム屋に立ち寄り、そのまま峠を降った小樽では名物のザンギと若鶏半身揚げを貪った。

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▲3日目は海鮮丼のお弁当が振舞われた。見掛け以上にボリュームがあり、お腹いっぱいに。

ちょっと寄り道が過ぎたかもしれない。ゴールは設定時間のギリギリで江別の蔦屋書店でのゴール記念撮影にも間に合わず。思い出づくりでは負けていないぞ!と、強がってみる。それはともかく、北海道で開催されるこの手のラリーは比較的、道案内も簡単でドライバーやナビゲーターが初心者でも走りやすい。そして何より、旨いものが沢山ある。景色もまた素晴らしい。TTNは来年ももちろん、同じ時期に開催される予定である。

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▲ジュリエッタを前に、参加者全員で記念写真。

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▲筆者(自動車ライター西川淳氏)は、途中でアルフェッタ GTVに乗り換えて。

PROFILE

西川 淳

「クルマ趣味を実践する」をメインテーマに、日々クルマを追って世界を駆け巡ることを生業とする自動車ライター。イタリア・ミッレミリアなど国内外の著名イベントにも参戦経験をもつ。奈良県出身。京都大学工学部精密工学科卒。株式会社リクルート勤務を経て独立。日本カーオブザイヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

Text:西川 淳
Photos:五十嵐飛鳥

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