Heritage 2015.02.06

レースへの情熱を物語る、四葉のクローバー。

アルファ ロメオを好きな人にとって、アイコン的な存在は2つあって、一つは当然、エンブレムの一部である人間を飲み込む大蛇だ。12世紀頃にミラノを支配していたビスコンティ家の紋章に由来していて、現在のミラノ市の紋章にも採用されている。このあたりに、アルファ ロメオがイタリア車というより、ミラノの自動車メーカーとしての高い誇りを持つことがうかがえる。
そして、もう一つが「クアドリフォリオ ヴェルデ」のシンボルマークである。アルファ ロメオにとって勝利の象徴であり、歴代のレーシング・モデルにそのマークが掲げられてきたのだ。

直訳すれば、イタリア語で緑の四葉を意味するのだけれど、その背景にはアルファ ロメオの真髄ともいえるモータースポーツの歴史がある。発祥にはいくつかの説があるが、広く知られるようになったのは1923年に「タルガ・フローリオ」レースに勝利した「RLタルガ・フローリオ」に四葉のクローバーのマークが掲げられていたからだ。

私のような”アルファ ロメオ・ヴィールス”に感染した患者にはお馴染みの話だけれど、それ以降、アルファ ロメオにとって勝利の象徴であり、歴代のレーシング・モデルにそのマークが掲げられてきたのだ。

「タルガ・フローリオ」レースが始まったのは1906年のことで、まだ自動車の黎明期だった時代にシチリア島の山道を駆け抜けるという厳しいヒルクライム・レースだった。第一次世界大戦後に再開されたあと、アルファ ロメオとフィアットによる激しい戦いが繰り広げられたこともあって、各社の威信をかけて最高峰のグランプリカーを投入することになる。戦いが白熱する中、1923年に開催された第14回タルガ・フローリオに参戦するために仕立てあげられたアルファ ロメオ「RLタルガ・フローリオ」を持ち込む。このクルマでアルファ ロメオに初優勝をもたらしたウーゴ・シヴォッチの発案で、サイドに白い四角形に四葉のクローバーを描いたことをきかっけに、「クアドリフォリオ ヴェルデ」はアルファ ロメオにとって勝利の象徴となる。

ハードな男の世界であるレースシーンに幸運を呼ぶ四葉のクローバーを持ち込むという感覚は遊び心にあふれるイタリア人らしいと微笑んでしまうと同時に、「人事を尽くして天命を待つ」といった祈るような気持ちの現われにも思える。そしてこの勝利以降、アルファ ロメオの黄金期が続く。ときにはアルファ ロメオ同士でデッドヒートを繰り広げたり、1‐2フィニッシュを果たしたりしながら、1935年まで6連勝という快進撃を続けた。

かのエンツォ・フェラーリがアルファ ロメオのレース部門の責任者だったのも、ちょうどこの時期だ。テスト・ドライバーからレーシング・ドライバーになったものの、当時のアルファ ロメオには、件のウーゴ・シヴォッチやアントニオ・アスカリといった名ドライバーが所属していたこともあって、チームのマネジメントに徹したのかもしれない。それが功を奏して、”空飛ぶマントバ人”の二つ名で呼ばれた名ドライバーのタツィオ・ヌヴォラーリと天才設計者の呼び名も高いヴィットリオ・ヤーノと共に、アルファ ロメオのレーシングカーで勝利を重ねていったのだ。

今時代、ヒトラーの統制下にあったドイツが国の威信をかけてレーシングカーを開発してきたが、1935年にニュルブルクリンクで開催されたドイツ・グランプリにて、タツィオ・ヌヴォラーリが駆るアルファ ロメオ「P3」が劇的な勝利をおさめる。それ以降、アルファ ロメオとフェラーリはイタリア国民にとっての勝利の象徴にもなったのだ。

1938年には、美しく、しかも無敵と称される「ティーポ158」が登場する。ドイツ勢が威信をかけて開発したモンスターマシンに対して、1.5リッター直8ユニットを搭載したコンパクトなマシンを開発した。”アルフェッタ(=小さなアルファ)”とも呼ばれたこのマシンは、小さいながらも、1950年、1951年の2度に渡ってドライバーズタイトルをもたらし、13年に渡って第一線のレーシングカーとして活躍した。さすが、鬼才ヴィットリオ・ヤーノ!と喝采を送りたくなる。

戦後になって、レースで培った技術を活かして乗用車の開発をスタートしたあとも、レースへの情熱を反映したスポーティなモデルには「クアドリフォリオ ヴェルデ」が掲げられてきた。私が所有する「2000GTV」のように金色の「クアドリフォリオ オート」が付いた時期もあったけれど、70年代の「スパイダー」にクアドリフォリオ ヴェルデが用意されて以降、「アスファスッド」や「6(セイ)」のスポーティ版、V6のハイカム・ユニットを搭載したホッテストモデルなど、枚挙にいとまがない。
そう、長い年月を経ても、「クアドリフォリオ ヴェルデ」はアルファ ロメオにとって勝利の証であり、レースへの情熱の象徴なのだ。

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