Creativity 2018.10.25

イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?

ポルトローナ・フラウといえばイタリアを代表する老舗家具ブランドであり、その最高級の革「ペレ・フラウ」はアルファ ロメオ ミトをはじめとした高級車のシートにも採用されている。その世界に認められた美しい革について掘り下げる後編に先駆け、前編である今回はブランドの歴史と日本における戦略について話を伺った。

1912年にイタリア・トリノで創業した老舗家具ブランド、ポルトローナ・フラウ。空間をラグジュアリーに演出する家具のみに留まらず、アルファ ロメオをはじめとする高級車のシートの張り込みも行っている。そのポルトローナ・フラウが、2018年3月、日本初の路面店であり、日本のフラッグシップストアとなる店舗を東京・南青山にオープンした。なぜこのタイミングでのオープンだったのか、そして、その意図はどこにあるのか──。その真意と同ブランドが世界の富裕層を魅了し続ける理由を探るべく、南青山の店舗をたずねた。

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王室御用達ブランドの目指す“歴史と現代の調和”

ポルトローナ・フラウは1912年創業、1926年にイタリアの王室御用達ブランドの指名を受けたイタリアを代表する高級家具ブランドだ。独特の柔らかさをもつ最高級の革「ペレ・フラウ」を使った家具は、古くから世界のセレブリティたちから絶賛されている。

ファッションブランドの店が立ち並ぶ東京・南青山の店舗に入った瞬間、高級な革の心地良い香りに包まれた。思わず目をつむり、深呼吸したくなるようなかぐわしさだ。開放感がある高い天井の2フロア約320㎡の店内には、ソファやラウンジチェアなどがゆったりと配されている。高級感と鮮やかさを併せ持つイタリアンカラーも目に飛び込んでくる。ポルトローナ・フラウの象徴ともいえる革は、170色以上ものカラーバリエーションを取り揃えている。

181025_mondo_pf_2 イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?

今回は、セールスマネージャーの朝倉祐樹氏に話を聞いた。

「店舗のデザインはイタリアの本部が監修しており、ミラノ・マンゾーニ通りにある本店の雰囲気を再現しています。内装から、小物の展示方法に至るまで、ポルトローナ・フラウの世界観を感じて頂けるよう、徹底的にこだわっています」

181025_mondo_pf_3 イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?ポルトローナ・フラウ セールスマネージャー 朝倉祐樹氏。

店内を見回すと一人掛け用の椅子の種類の多さが目をひく。

「ポルトローナ・フラウというブランドは、一人掛けの椅子からスタートしたブランドです。ブランド名の“フラウ”は創業者であるレンツォ・フラウから、とったもの。“ポルトローナ”とはイタリア語で、一人掛けの椅子を意味します」

181025_mondo_pf_4 イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?「ed il settimo giorno si riposò sulla…」ポスター内のこのキャッチフレーズは、「神様でさえ7日間座ってしまい、ついには寝てしまった」と座り心地を訴求した1926年のポスター

王族サヴォイア家から王室御用達指名を受けたのも、葉巻をこよなく愛したピストイア公爵のための、「葉巻を吸うための椅子を」と依頼を受け、一人掛け用チェア「1919」を製作したのがきっかけだった。

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181025_mondo_pf_6 イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?

「住宅環境は大きく変化し、技術は革新的に伸びています。『1919』のように100年近く続くモデルもありますが、最新の技術を用い、現在の生活スタイルに合わせたモデルも製作しています。ポルトローナ・フラウでは、伝統と革新、どちらも大切に、そして細心の注意を払いながらオリジナリティあふれるエレガントな家具を提供していきたいと考えています」

現在、ポルトローナ・フラウでは、伝統を大切に守り続けるヒストリカルコレクションと、先進的なデザイナーたちとコラボレーションするコンテンポラリーコレクションという2つのコレクションを展開している。

ヒストリカルコレクションは、現在のモダンな住宅にも不思議と映える。コンテンポラリーコレクションでは、ネリ&フー、ジャン・マリー・マソー、ロベルト・パロンバ、大城健作といった著名なデザイナーや建築家と積極的にコラボレーションを行っている。ブランドを象徴する“定番”と、時代を象徴する“モダン”の二つのラインが融合しているのだ。

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ポルトローナ・フラウの世界観を広める、コントラクトビジネスの強化

ポルトローナ・フラウというブランドを象徴するアイテムのひとつに、「バニティフェア」という一人掛け用のチェアがある。1930年代のカタログに登場する名作「904」を復刻したもので、現代のアームチェアの原型ともなっている名作だ。

181025_mondo_pf_9 イタリアの老舗家具ブランド「ポルトローナ・フラウ」が目指す、歴史と現代の調和とは?「バニティフェア」の原型となった「モデル904」

しかし、青山の旗艦店に「バニティフェア」は置いていない。これはイタリアの本社からの指示だったという。

「『バニティフェア』は、ブランドが誇るアイコン的なベストセラーアイテムです。それを置かないという決断に、私たちも驚きました。あえて、この店舗では『バニティフェア』を展示せずに、ブランドの世界観や価値を伝えるという本国の戦略なのでしょう」

戦略といえば、日本では2006年から大塚家具が日本総代理店を務めている同店は、なぜこのタイミングで旗艦店のオープンに踏み切ったのだろうか。

「これまで日本の市場では主にエンドユーザーに向けた展開を行ってきましたが、私たちは、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールや、すぐ近くの南青山のプラダの店舗の内装などでも我々の製品が採用されています。旗艦店のオープンを機に、これからはそういったコントラクトビジネスに強い面も知っていただき、広げていければと考えています」

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ポルトローナ・フラウは、そのほかアリタリア航空のマニフィカクラスのシートや空港ラウンジのインテリア、EU議事堂、ドイツ・ハンブルクの劇場・エルプフィルハーモニー、ブリティッシュ・ミュージアムホール、最近では、NIKEやAPPLEの本社、アブダビにあるルーブル美術館など世界各国の名だたるショップやホテル、美術館などの内装を手がけ、世界的に高い評価を得ている。

「アルファ ロメオさんをはじめ、他業種とのビジネスによって技術の向上がはかれることは、コラボレーションのすばらしい副産物だと思います。また、今年、青山のようなデザインとファッションの最先端を行く地区に旗艦店をオープンしたのは、まだ日本での知名度がそれほど高くはないポルトローナ・フラウについて、より多くの方に知っていただきたいという思いもあります。他の企業とのコラボレーションも、ポルトローナ・フラウというブランドを知っていただくきっかけになれば、うれしいですね」

住環境への意識の高まりとともに注目される高級家具

イタリアブランドらしく洗練されたカラーリングを展開しつつ、シックでクラシカルにまとめあげたアイテムは同社の真骨頂だ。丸みを持つ、どこか母性的なデザインも、エレガントな印象を醸す。そして、実際に座ってみると、やさしく抱かれるような心地良さ、ぬくもりに驚き、そして、うっとりとした気持ちになる。

卓越した伝統技術を持つ職人の手による、まるでアートのような高級家具は、当然ながら値段もはる。ポルトローナ・フラウの1人掛けチェアもその多くが80万円を超える。そして、そういった家具の存在は、なにげない“日常”を艶やかに彩る。富裕層以外にも、少し背伸びをして手に入れたいと考える人も少なくない。

ここ最近の家具を取り巻く環境について、朝倉さんは「私個人の考えですが」と前置きしながら、「よりシンプルなものが求められていると感じます。そして、もっとも長い時間を過ごす家での時間を大切に考える方が以前より増えている印象があります」と見解を語ってくれた。自宅での時間を心地よく、優雅に演出したいという、生活の質に対する欲求をラグジュアリーに満たしてくれるのが、そう、ポルトローナ・フラウの家具なのだ。

住環境に対する意識が高まってきている昨今、高級家具に熱い視線が注がれている。

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そして、目の肥えた世界のセレブリティたちがポルトローナ・フラウに魅了されている大きな要因が、「ペレ・フラウ」と呼ばれる革素材だ。『Alfa Romeo MiTo(アルファ ロメオ ミト)』のシートに使用されているのもこの「ペレ・フラウ」だ。次回は、ポルトローナ・フラウの代名詞といってもいい、「ペレ・フラウ」についてじっくり伺っていく。

INFORMATION
ポルトローナ・フラウ東京青山

所在地 東京都港区南青山5-2-13
TEL 03-3400-4321
営業時間 11:00~19:00
定休日 水曜(※祝日は除く)
URL https://www.idc-otsuka.jp/poltrona-frau-tokyo-aoyama/

 
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Text:長谷川 あや
Photos:大石 隼土

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