Creativity 2019.11.29

時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

腕時計に関する数々の著作を持ち、様々なメンズ媒体紙でも活躍する時計ジャーナリストの並木浩一氏。長年に渡り、世界2大時計見本市であるSIHH(ジュネーブサロン)とバーゼルワ―ルドを取材する氏が、今おすすめする腕時計7本を厳選してご紹介。

いま身に着けるべきは、誇りを持てる腕時計だ。値段に関係なく、その腕時計の存在価値と見定めた自分の両方に自信が持て、しかも違いの解る人には、腕時計と持ち主の両方が高い評価を受ける。そうした時計は“腕時計以上のスーパーウォッチ”といっていい。実はそんな時計が、増えてきている。スマートフォンひとつあれば時刻も日付も曜日もわかり、ストップウォッチで経過時間も測れる。およそ腕時計が苦労して開発してきた「何かをする機能」は、簡単に手に入る。逆説的ではあるが、だからこそ腕時計は自由になった。やる必要がなくなったことをやらずに、腕時計そのものの価値だけを高めることに専念できることになったのである。スマホを持つことは、いかに最新の型であるとしても、格好よかった時期はもう終わっているし「何かをするための道具」という限界がある。いっぽう腕時計は「なくても困らないもの」になった瞬間から、それ自体とその持ち主に、特別な意味を持たせるものに変わったのである。

文字盤の上に「赤道で真っ二つにした地球」のダイナミズム

Montblanc(モンブラン)『モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション 1858』

2 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、ブロンズ、ケース径42mm、NATOストラップ、世界限定1858本、¥710,000(+税)

01 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

遠目には、流行のグリーンをフィーチャーしたスタイリッシュさが目立つ。しかしこの腕時計、ただものではない。文字盤の上下には、赤道で真っぷたつにした地球の北半分と南半分。飾りではなく、それぞれの半球は自転方向に24時間で1回転する。つまり文字盤上に、地球そのものを再現してしまったのである。しかもそれぞれの赤道部分の外側には、2色に色分けした24時間のスケールがあり、地球上のどこでも現在の昼夜と、おおよその時刻がわかる。ワールドタイマーの上をいく超スケールの“アースタイマー”をブロンズケース仕様にし、グリーンに染め抜き、同色のNATOストラップを合わせたのが、この最新バージョンだ。地球の上にはセブン・サミッツの位置がマーキングしてあり、そのひとつが他ならぬ“モンブラン”である。

▼INFO:画像提供
リシュモンジャパン株式会社
https://www.montblanc.com/

「グラン・フー」エナメルの技法で描く極上の“ブレゲ・ブルー”

Breguet(ブレゲ)『クラシック 5177 グラン・フー ブルーエナメル』

2-1 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、18Kホワイトゴールド、ケース径38mm、アリゲーター革ストラップ、¥2,570,000(+税)
※商品についてのお問い合わせは、ブレゲ ブティック銀座(03-6254-7211)まで。

01-1 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

エナメル文字盤は今年、大流行中。その中でフィーチャーされてきたのが「グラン・フー」=フランス語で「大火力、高温」を意味する仕上げの技法だ。800度、時にはもっと高温で焼成を繰り返すグラン・フーの文字盤は、宝石レベルの透明感を持つ発色を見せる。高級腕時計屈指の老舗ブランド、ブレゲによるその技法の傑作がこれだ。“ブレゲ・ブルー”とでもいうべき青い彩色は美しく、とても目新しい。日付以上の付加機能をもたないきわめてシンプルな3針モデルに、審美性だけで圧倒的な価値を与える腕時計である。パリ発祥のブレゲは創業者の時代に、ルイ16世妃マリー・アントワネットの時計を作り、革命で王妃が斃れた後は、ナポレオンの時計も作った。桁外れの品をつくってきた年季が、そもそも違うのである。

▼INFO:画像提供
スウォッチグループジャパン株式会社/ブレゲ
https://www.breguet.com/jp

80年の年季を誇る、ポインターデイトの本家本元

Oris(オリス)『ビッグ クラウン ポインターデイト 80th アニバーサリーエディション』

01-2 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、ブロンズ、ケース径40mm、カーフ革ストラップ、¥220,000(+税)

Anniversary-Edition 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

「ポインターデイト」というのは、外周に回された日付を専用の針で指していくアナログなカレンダー表示だ。ほとんどの時計が小窓に数字を表示するのとは異なる伝統的な表示形式はオリスのお家芸で、途切れることなく搭載され続けてきた。最近そのヒストリカルな魅力が再評価され、超がつくような高級時計にも採用されたりするが、オリスのオーセンティシティは揺るがない。その魅力を最大限フィーチャーしたのが、グリーン文字盤の特別なモデルである。パイロットが手袋をはめたまま操作できる大きなリュウズ(クラウン)とポインターデイトを備えた、オリス社の歴史的モデルが誕生して80年を記念する品。経年変化を楽しめるブロンズ製ケースで登場したが、それでなくても歴史的価値のある腕時計である。

▼INFO:画像提供
オリスジャパン株式会社
https://www.oris.ch/jp

アール・デコスタイルと調和するジャパンブルーの藍色

Girard-Perregaux(ジラール・ペルゴ)『ヴィンテージ 1945 ジャパンブルー限定モデル』 

1 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、ステンレススティール、ケースサイズ33.30×32.46mm、アリゲーター革ストラップ、日本限定100本、¥1,160,000(+税)

腕時計のブルーという流行の中でも、日本の伝統色である藍色を選んだ品の存在はまれだ。その“ジャパンブルー”を文字盤のインデックスに使った、特別な限定モデルである。白地のダイヤルに生えるローマ数字のその色をアイコニックな角型ケースの『ヴィンテージ1945』に合わせて、わずか100本をしかも日本だけで販売するという、とびきりのレアモデル。そもそも『ヴィンテージ1945』は1945年にさかのぼる自社の角形時計をルーツに持つ、ジラール・ペルゴでも特別な意味を持つコレクション。そのスタイルは20年代にヨーロッパで興り、30年代にはアメリカンで爛熟したアールデコへのオマージュであり、しかもそれ自身が遅れてきたアールデコの傑作でもあった。我が国の建築様式にも色濃く痕跡を遺すアールデコが、日本の地で映える。

▼INFO:画像提供
ソーウインド ジャパン株式会社
https://www.girard-perregaux.com/ja

パネライの衝撃モデルは薄く、軽く、鮮やかなブルー

Panerai(パネライ)『パネライ ルミノール ドゥエ – 38mm』

1-1 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、チタン、ケース径38mm、アリゲーター革ストラップ、¥760,000(+税)

2-2 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

デビュー時に、パネライへのイメージを一瞬で変えてしまった衝撃の会心作が、38ミリ径の『ルミノール ドゥエ』だ。スイス時計の中でも小さめのサイズを得た“ミニマルなパネライ”は薄く、そして軽い。それでも、世界中の男たちを魅了したパネライらしさは、不思議と少しも失われていないのである。特徴的なフォルム、特許取得リューズプロテクターをはじめとするディテールが織りなすシルエットの魅惑は揺るがない。むしろ手首のサイズとのマッチングでパネライをためらっていた人々への、心理的な“壁”を取り払った。自社製キャリバーP.900によるスリムさ、チタンケース採用による軽量化は画期的で、ファーストタッチでの一目惚れを誘う。ブルーのサンブラッシュ文字盤も出色の出来で、どこまでも新しい魅力に満ちている。

▼INFO:画像提供
オフィチーネ パネライ
https://www.panerai.com/ja/

70パーセント以上に手を入れた、極秘のフルモデルチェンジ

Chanel(シャネル)『J12』

Chanel 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、高耐性ブラックセラミック、ケース径38mm、高耐性ブラックセラミック製ブレスレット、¥632,500(+税)

ことし事実上のフルモデルチェンジを決行したのが、シャネルのアイコンウォッチ『J12』。キーコンセプトである“何も変えずに、全てを変える”のもと、極秘裏に進んだプロジェクトは全体の70%以上に手を入れた。何より腕時計の専門家筋が注目したのはムーブメントの変更で、シャネルも出資するケニッシ社製のマニュファクチュールが初登場した。デザイン上ではベゼルを細く、外縁の刻みを増やし、リューズは小さく。文字盤上の書体をブランドロゴと同じものに変更し、レイルウェイ・インデックスは5刻みのポイントを明確に。ブラックモデルの針の夜光塗料は白から黒に変え、時分針の太さを揃え、カウンター側エンドの丸型を小さくした秒針も一直線に整えた。しかも、ちょっと見ただけではこれだけの変化に気づかないことも、通好みな魅力なのである。

▼INFO:画像提供
シャネル
https://www.chanel.com

今年も更新された、レーシング・クロノグラフの完成形

Chopard(ショパール)『ミッレ ミリア 2019 レース エディション』

3 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?
▲自動巻き、ステンレススティール、ケース径44mm、カーフ革&ラバーライニングストラップ、世界限定1,000本、¥845,000(+税)

1-2 時計ジャーナリスト・並木浩一氏がおすすめする、注目の腕時計7選ーー価格を超えた“腕時計以上のスーパーウォッチ”とは?

ミッレミリア”はいうまでもなく、出走車に厳密な条件を課して純潔性を守る、世界最高峰のクラシックカーレースだ。ちなみに、アルファ ロメオはミッレミリア開始翌年の1928年には6C 1500 SS(スーペル・スポルト)が初優勝、その後3年連続で優勝を飾るなど、1947年までに11勝をあげ、最多優勝メーカーとなっている。そして現代、ショパールはもうかれこれ30年以上、そのレースのオフィシャルパートナー兼タイムキーパーであり、毎年ファンが待ち望む“レース エディション”の最新版がこの腕時計だ。クラシックカーのレースだから機械式クロノグラフであることにリアリティがあり、パンチングカーフのストラップやピストン状のプッシュピースなど、細部も気が利いている。腕時計の『ミッレミリア』は、レーシング・クロノグラフのひとつの“形”の完成形である。ショパール現・共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏自身も、毎年このレースに参加している。そんなレース好きがつくるからこそ、レーシング・クロノグラフは様になる。

▼INFO:画像提供
ショパール ジャパン プレス
https://www.chopard.jp/

PROFILE

並木 浩一(なみき・こういち)

時計ジャーナリスト、桐蔭横浜大学教授、博士(学術)
横浜市生まれ。ダイヤモンド社で雑誌編集長、編集委員を経て大同大学教授、2012年より現職。1990年代よりスイスの時計フェア S.I.H.H、バーゼルワールド他を毎年取材・研究し続けている。腕時計関連の著書に「腕時計一生もの」(光文社新書)、「腕時計のこだわり」(ソフトバンク新書)等がある。現在、雑誌「ウォッチナビ」「Pen」「メンズプレシャス」での連載をはじめ、雑誌・新聞・オンラインでの執筆、出演、講演など多数。学習院と早稲田大学のオープンカレッジでは、一般受講可能な時計の文化論講座を開講している。

Text:並木浩一

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