Fashion 2020.01.30

THE RAKE JAPAN編集長・松尾健太郎氏が提案するドライビング・シューズBest5

ドライブに適したシューズとしてだけでなく、普段のスタイルに合わせられるタウンユースとしての顔をもち、ファッションアイテムとしても注目されているドライビング・シューズ。今回は『THE RAKE JAPAN』の編集長・松尾健太郎氏に、アルフィスタにおすすめのドライビング・シューズ5点を紹介してもらった。

ドライビング・シューズは、数ある靴のなかでも、ひときわ贅沢な存在だ。柔らかい革を用いたモカシンタイプで、ペブルド・ソールと呼ばれる、ゴム製のボツボツとした突起がついた靴底を持つ。これは普通に歩いていると、すぐに摺り減って使い物にならなくなる。あくまでもドライビングのための靴であり、かつては“歩く必要がない”お金持ちのためのアイテムだった。そしてアルファ ロメオに、深い縁を持つ靴でもある。

その成立については諸説あり、よくわからない。(最初にパテントを取ったのは、カーシューの創設者、ジャンニ・モスティーレで、1963年のことだった)。しかし、この靴を有名にした人物は、はっきりしている。元フィアット会長、ジャンニ・アニエッリである。イタリア財界の大物にして、稀代の洒落者として知られた人物だ。ニックネームは、THE RAKE(“放蕩者”などの意)。何を隠そう、私が編集長を務める雑誌のタイトルは、彼の渾名から取られたのだ。そして1986年に低迷していたアルファ ロメオを買収し、フィアット傘下に収め、再び蘇らせたのも彼である。

トッズ・グループ会長兼CEO、ディエゴ・デッラ・ヴァッレは、渡米した際に見たドライビング・シューズの原型を参考に、独自に洗練されたドライビング・シューズを作り上げた。これを宣伝するために、有名人に履いてもらうことを思いつく(今でこそ、セレブに自社製品を提供するのは当たり前の手法だが、1970年代当時は、誰もそんなことは思いついていなかった)。
そこで盟友にして元フィアット会長(当時はスクーデリア・フェラーリを経て、フィアット役員)のルカ・ディ・モンテゼーモロに頼み込み、自筆の手紙を添えて、ドライビング・シューズをアニエッリに進呈したという。当時、スタイル・アイコンだったアニエッリが履くことにより、ドライビング・シューズは、爆発的ヒットとなったのだ。アニエッリは、スーツにドライビング・シューズというコーディネイトに身を包み、アルファ ロメオを手中に収めたという訳だ。

ドライビング・シューズの最大の魅力は、その出自から来る、ノーブルな雰囲気である。どんなコーディネイトでも(スーツからジーンズまで)、ドラシューを合わせると、“リッチ・テイスト”になる。それが、上質なイタリアン・スタイルに欠かせないマスト・アイテムとして、いまだに人気の理由なのである。

ドライビング・シューズといえば、まずここ

Tod’s(トッズ)『タイムレス ゴンミーニ』

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▲今シーズン新しく登場した“T”モチーフを飾ったゴンミーニ。Tはトッズを意味すると共に、Tradition(伝統)、Talent(才能)そしてTime(時間)を表すTでもある。カーフスエード。3月展開予定。 ¥76,000(+税)

ドライビング・シューズの普及に大きく寄与し、いまだドラシューの代名詞となっているイタリアン・ブランドである。1920年代から製靴業を営んできたデッラ・ヴァッレ家の三代目で現会長兼CEOのディエゴ氏が70年代後期に立ち上げた。靴底には100個以上のゴム製の突起物がついており、そこからゴンミーニの愛称が生まれた(“Gomma<ゴンマ>”はイタリア語で“ゴム”の意)。
ディエゴ氏はマーケティング・センスに長けており、セレブリティに商品を提供し宣伝に繋げるという、今では当たり前になった手法を初めて思いついた人物だとされる。トッズを愛用するセレブは、ダイアナ妃ピアース・ブロスナンマイケル・ダグラスなど、枚挙に暇がない。
今ではシューズのみならず、バッグやアパレルも展開する総合ファッション・ブランドへと成長。そのドライビング・シューズは、数多くのバリエーションが揃い、かつトレンドに合わせて、常にアップデートされている。ドライビング・シューズを買いたいと思ったら、まず訪れるべきは、トッズのブティックだ。

▼INFO:画像提供
トッズ・ジャパン株式会社
https://www.tods.com/jp-ja/home.html

ドライビング・シューズの元祖といわれる

Car Shoe(カーシュー)『グレインドカーフロッソ』

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▲もっともオリジナルの形に近い、カーシューのドライビング・シューズ。ゴム製の小さなスタッドとクッションの利いたインソールが快適な履き心地を提供する。ちなみにロッソ(レッド)は前出アニエッリが愛した色とされる。 ¥67,000(+税)
(※コノリー銀座店のみで販売)

カーシューは、現代的ドライビング・シューズの祖とされるブランドだ。創業者のジャンニ・モスティーレは、1963年のブランド設立と同時に、イタリア産業貿易省よりドライビング・シューズについてのパテントを取得した。特許状には、現在のドラシューとほぼ変わらない、ペブルド・ソールを持つモカシンタイプの靴の写真が添えられている。
その後、表舞台から遠ざかっていた時期もあったが、2001年に、プラダ・グループに買収され、ブランドは息を吹き返す。チャーチなどの老舗靴ブランドも擁するプラダのやり方は、バリエーションを増やしつつも、オリジナルは徹底的に大切にするというもの。より原型に近いドラシューを求めるなら、カーシューで決まりだ。ちなみに私は、ここのドラシューの大ファンで、現在、色・素材違いで4足持っている。
アルファ ロメオとの関係も深く、2017年に『Alfa Romeo STELVIO QUADRIFOGLIO(アルファ ロメオ ステルヴィオ クアドリフォリオ)』が発表された際、四葉のクローバーをワンポイントとして配したレーシング・ブーツを発表している。

▼INFO:画像提供
コノリー
http://www.connollyjapan.com

“トゥボラーレ”の美しさは随一

Salvatore Ferragamo(サルヴァトーレ フェラガモ)『Parigi 20』

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▲Parigi 20はラグジュアリー感が高い洗練されたモデル。さまざまなカラーのスエードが提案されており、インナーには、ガンチーニ モノグラムのジャカード・ライニングが施されている。ドライバーラバーソールは柔軟性に優れ、履きやすい。 ¥74,000(+税)

創業者サルヴァトーレ・フェラガモは、1898年、南イタリアのボニート村で生まれた。人口はわずか4500人、14人兄弟の11番目だった。そんな彼が靴で大成するのは、万にひとつの可能性であったろう。しかし彼は天才だった。幼少の頃から靴職人ルイジ・フェスタのところへ入り浸り、14歳で6人の職人を抱え、地元に靴工房を開く。15歳で渡米。そして1918年には、ハリウッドにブティックを開くまでになる。彼の靴は、バーグマンモンローヘップバーンとあらゆるスターを虜にした。
フェラガモは、もともとはレディースの靴ブランドだったため、伝統的にソフトなタイプの靴を得意とする。服飾評論家、故・落合正勝氏をして、「マッケイ式でこれほど美しい靴に出会ったことはない」と言わしめた。
ドライビング・シューズは、その白眉である。ドラシューは普通、トゥボラーレと呼ばれる製法で作られる。木型に上からアッパーを被せるのではなく、下から被せて、モカ部分で縫い上げる製法だ。そしてこの製法を最も得意とするのがフェラガモなのである。モカの下に入った美しいギャザーが、その仕事のレベルの高さを物語っている。たとえ“ガンチーニ・ビット”が付いていなくても、見る人が見れば、ひとめで最高級だとわかる逸品である。

▼INFO:画像提供
サルヴァトーレ フェラガモ
www.ferragamo.com

素足に鹿革の心地よさを体験されたし

Moreschi(モレスキー)『パナマ』

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▲モレスキーの看板素材、鹿革(CERVO)が使われたドライビング・シューズ。ラストは日本でも非常に人気の高い、モレスキーの定番“MY”。カップインソールのクッション性が高く、足なじみが良い。 ¥56,000(+税)

モレスキーはイタリア・ミラノを州都とする靴の聖地・ビジェバノにて1946年に創業した。創業当時は日産30足の小さなビジネスだったが、その後のビジェバノ工業地帯の発展とともに成長を遂げ、今では世界80ヶ国以上で展開する巨大企業となった。今日モレスキーは500名弱の従業員を擁し、年間30万足の靴を製造している。工場は68,000㎡(東京ドーム1.5倍)の敷地を有し、イタリアの高級靴メーカーでは最も広大な生産拠点を誇る。従業員が安心して働けるよう、保育園までもが完備されているという。
古くから日本に輸入されていることでも知られ、昭和のビジネスマンにとっては、モレスキーの靴はステイタス・シンボルだった。
最大の強みは原皮の仕入から出荷に至るまでの全工程を自社内で管理していることだ。看板商品“パナマ”シリーズは、現在も100%手作業で、同社自慢の鹿革CERVOを使って作られている。鹿革は供給量が少ないので、牛革ほど馴染みがないが、柔らかく、水に強く、耐久性に優れており、手袋などに最適だとされる。日本最古の足袋は、鹿革製であるという。つまりは素足で履くモカシンに最適の革であり、これを自由自在に使えるのは、大メーカーであるモレスキーならではということだ。

▼INFO:画像提供
オークニジャパン株式会社
http://okunijapan.co.jp/

CPに長けた、トスカーナの掘り出し物

Bettaccini(ベッタチーニ)『6777B』

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▲独特のシボ模様を持ち、ソフトで耐水性が高いバッファローレザーを採用。メッシュと組み合わせれば、夏の素足履きにこれ以上のものはない。 ¥28,000(+税)

ベッタチーニは、イタリア中央部トスカーナ州のピエーヴェ・ア・ニエーヴォレに本社を置く、マニファットゥ-ラ イタリア-ナ カルツァトゥーレ社のブランドだ。同社は、ルチアーノ・ベッタチーニによって、1975年に創立された。トスカーナは伝統的に、パドヴァやボローニャと並ぶ皮革生産地であり、それが今でもこの地に多くの靴工房が集まっている理由だ。ちなみにここは、高級保養地モンテカティーニ・テルメ(イタリア語: Montecatini Terme)に隣接している場所でもあり、周囲ではいたるところに温泉が湧いていて、イタリア流の温浴施設(テルメ)が楽しめるという。
イタリアのファクトリーらしく、アッパーとアウトソールを直接縫い付ける、マッケイ製法を得意としている。アッパーに使われているのは、表面に独特のシボ模様を持つバッファロー(水牛)レザー。柔らかく、伸縮性があり、もともと水の中に生息する動物なので、耐水性も高いとされる。ゴム製のソールと組み合わされたベッタチーニのドライビング・シューズは、指一本で折り曲げることができるほど、柔軟性に富んでいる。
このブランドの一番の魅力は、コスト・パフォーマンスの高さであろう。これだけのクオリティの靴が、2万円台後半で手に入るというのは僥倖である。

▼INFO:画像提供
トモエ商事株式会社
http://www.tomoe-syouji.com/

PROFILE

松尾健太郎(まつお・けんたろう)

インターナショナル・ラグジュアリー・メディア「THE RAKE JAPAN(ザ・レイク・ジャパン)」編集長。
男子専科、ワールドフォトプレスを経て、1992年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。2005年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計Begin、M.E.特別編集シリーズ、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。公式ブログをTHE RAKE JAPANのホームページ内に持ち、ベスト・ドレッサーたちを紹介している。

Text:松尾健太郎

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