Culture 2020.12.02

日本随一の金融街・日本橋兜町の再活性化を担う『K5』の楽しみ方

2020年、東京にはいくつもの新しいホテルが誕生した。なかでも建築好きやホテル好きの心をとらえてやまないのが、中央区兜町の東京証券取引所裏通りに、2020年2月にオープンした『K5』だ。いや、簡単にホテルとカテゴライズしてしまうのは乱暴かもしれない。今回は、日本橋兜町に新たな命を吹き込む、複合施設『K5』の魅力を、同施設にかかわる人たちの言葉を通して紹介する。

金融街に佇むスタイリッシュな複合施設

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日本橋兜町は、2024年から新一万円札の顔となることで、注目が集まっている実業家の渋澤栄一が邸宅を構え、日本初の銀行や証券取引所などが生まれ栄えた場所だ。この日本が誇る金融街に、ほかのどことも似ていない、スタイリッシュな複合施設『K5』が誕生した。

日本橋兜町には明治から昭和初期にかけて建てられた建物がいくつか残っている。『K5』は、1923(大正12)年に日本最初の銀行として竣工し、渋澤氏が頭取を務めた、地下1階、地上4階建てのビルを、歴史的建築物の重厚な雰囲気はそのままに、内部をフルリノベーションした複合施設だ。『K5』という施設名は、改修前名称の兜町第5平和ビルに由来する。

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▲兜町第5平和ビル(画像提供:K5)

建築と空間デザインは、スウェーデンのストックホルムを拠点に活躍する建築家デザインユニット『CLAESSON KOIVISTO RUNE(通称CKR)』が担当。同ユニットが、日本でホテルを手がけるのは今回が初となる。CKRは、“静と動”のコントラストを意識し、地下1階と1階を賑わいのある“動”のスペースとし、ホテルは外界の喧騒から隔絶した“静”の場所とした。耐震構造を加えた上で、元の建物の躯体(くたい)や、荘厳な仕様を可能な限りいかしている。

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▲『K5』の正面玄関は本来の建物の裏側なんです。そんな外観のファサードにも愛着を感じています」(館長・山下氏)

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▲“静”を意識したホテル内の廊下。喧騒を感じさせない、どこかノスタルジックな作りも印象的だ。

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▲“動”を体現する地下1階にある『B』。インパクトのあるネオンアートは、ブルックリンを拠点に活躍する中山誠弥氏の作品。

“TOKYO”でいちばんかっこいい場所

『K5』に誕生から携わり、現在、館長を務める山下聡一廊氏は、「立ち上げの際には、トウキョウでいちばんかっこいい場所を作ることを意識しました」と語る。「ここでいうトウキョウは漢字の東京ではなく、アルファベットの“TOKYO”をイメージしています」。

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▲館長・山下聡一廊氏

『K5』全体のコンセプトは、“マイクロ・コンプレックス”だ。地下1階から地上4階までの延床面積が2000平米。1階のレセプションの右手にはライブラリーバー『青淵(あお)』が、左手には目黒の人気レストラン『Kabi(カビ)』の流れを汲む新レストラン『CAVEMAN(ケイヴマン)』、そして、『Switch Coffee(スウィッチコーヒー)』の国内3店目となる店舗がある。地下には、ブルックリンブルワリーの旗艦店となるビアホール『B(ビー)」を配した。2階から4階が『HOTEL K5』だ。“都市における自然との共生”をテーマにした、全20室(20~80平方メートル)のゲストルームを有する。

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「ホテルが主体となっているイメージがあるかもしれませんが、僕たちはそれぞれがイーブンな関係であり、それが『K5』の良さだと考えています」と山下氏。なるほど、『K5』の底知れぬ魅力はここにあるのかもしれない。

ハード面においても、ソフト面においてもさまざまなこだわりがある、独創性の宝庫だ。すべてを紹介するのは難しいので一部を紹介していこう。

デザインのコンセプトは、先鋭的でありながらも、その場所における“時の重なり”や“日本の伝統”を意識したタイムレスな空間だ。エレベーター内や客室のドアには日本製の無垢の銅を使用。年月をかけて、経年変化を楽しめるようにと、「CKRからは、清潔を保ちながらも磨き上げすぎないようにしてほしいと言われています(笑)」(ゼネラルマネージャー・中川知子氏)。飲食フロアや、『K5』の客室の床は、竣工当時のものをそのままいかしている。

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▲ゼネラルマネージャー・中川知子氏

バスルームとリビング・ベッドルームを仕切る扉などには杉材を使用。和室の欄間のような格子の意匠も見られ、また、お米からインスピレーションを得て、CKRがデザインした照明もある。客室にはテレビは置かず、オーディオとしてレコードプレーヤを用意した。20室のうち17室の客室には、グラデーションを施した藍染めの麻布の天蓋(てんがい)カーテンを設置。ベッドを360度取り囲む。「このカーテンが作る世界観がとても好きなんです。朝日に照らされる様子を、ベッドに横になって眺めるとまたとても美しいんですよ」中川氏は力説する。──これはぜひ体験してみたい。「夜もすごくいいんです。バスタブ部分が赤く照らされるのですが、これがとてもムーディーなんです。ぜひお風呂で、いつもと違う時間を過ごしてみてください」(中川氏)

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▲レコードも“静”をテーマにセレクト

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共有部分や客室の多彩な植栽は、それぞれの場所に合わせ、山梨県の植栽演出集団『Yard Works(ヤードワース)』がアレンジしたものだ。ローカルアーキテクトとしての建築設計は『ADX』が担当。福島県を拠点に活動する同社がCKRのデザインを落としこんだことで、北欧と和が絶妙に融合した空間が誕生した。

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▲スイートとジュニアスイートには、スウェーデンの『Kasthall(カスタール)社』の、畳をコンセプトにしたラグを置いている

各施設担当者が語る、『K5』の魅力とおすすめの過ごし方

『K5』を構成する、ホテル以外の施設についても紹介していきたい。

メインダイニングにあたる『CAVEMAN(ケイヴマン)』は、発酵にフォーカスした目黒の人気レストラン『Kabi(カビ)』の流れを汲む黒田シェフが監修する、ノージャンルなレストラン。

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画像提供:K5

「ホテル自体がどっしりと構えているので、ここに必要なのはダイナミックなカウンターカルチャーのような施設が欲しいと考え、最初にアートのような店を経営している『Kabi』のチームを口説きにいきました」(山下氏)

『K5』のプレスの大倉皓平氏は、『CAVEMAN』でいただく、オープンサンドの朝食を絶賛する。
「彼らの朝食はいつもハッピーな気持ちになれるんです。ここに宿泊し朝を迎えると、少し大げさかもしれませんが1つ階段をのぼったような感覚を覚えます」

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『B(ビー)』は、ニューヨークのクラフトビールメーカー『Brooklyn Brewery(ブルックリンブルワリー)』の世界初のフラッグシップ店。タップと瓶を合わせ、常時20種類ほどのビールを取り揃えている。日本ではここでしか味わえない直輸入のビールのほか、普段、ビールを嗜まない女性にも楽しんでほしいと、口あたりのいいフルーツビールや、ビアカクテルも用意。岩本町の『北出食堂』監修によるタコスをはじめ、マヨネーズなども含め、すべて店内で手作りしているというフードも好評だ。

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▲タコスはグリルした豚肉をはさんだ『アルパストール』や鶏肉の『ティンガデポヨ』など約10種類を用意。
写真右:タコス2種(右:ティンガデポヨ、左:カルネアサダ)
写真左:B(右からブルックリンラガー、ソラチエース、ブラウンエール)

『B』のマネージャーを務める、元ホテルマンの本多克行氏は、「ビールの概念を変えたいと考えています。ここには熟成感のあるものから酸味のきいたものまで、たくさんの種類のビールがあります。質問して頂ければご提案させていただきますので、ぜひ声をおかけください」と語る。

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▲『B』マネージャー・本多克行氏

『K5』の魅力についても尋ねてみた。

「すべての料飲施設にそれぞれ特徴があり、どこに行っても違う体験ができる、何度足を運んでいただいても飽きない場所です。ホテルでは、日常から隔絶された、タイムレスな時間を過ごすことができます」

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▲本多氏の『K5』のおすすめの過ごし方として、『Switch Coffee』で飲む朝のコーヒーを挙げてくれた(画像提供:K5)

『青淵(あお)』は、バーコンサルティングブランド『ABV+』の野村空人氏と、新宿ゴールデン街のレモンサワー専門店『The OPEN BOOK(オープンブック)』の田中開氏が手がけるライブラリーバーだ。かつて渋澤氏の邸宅も兜町にあり、書斎にはさまざまな人を招き入れていたことから渋澤氏の書斎がテーマとなっている。建物の心臓部分にあたるとし、CKRはこの場所のテーマカラーを赤に設定。店名は渋澤氏の雅号(ペンネーム)である“青淵(せいえん)”に由来する。

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メニューは、アジアのお茶や漢方をベースにしたものを中心にセレクト。渋澤氏に関連した名前の、数々のオリジナルカクテルのほか、『B』の本多氏が「本当に美味しいですよ」と自慢げに語る、漢方ブレンドティーをいただくこともできる。

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▲Alphee Rouge

『Switch Coffee(スウィッチコーヒー)』は、目黒、代々木八幡に店舗を構える人気コーヒーショップの3店目となる店舗だ。エスプレッソやカフェラテなどのほかシングルオリジンの丁寧なドリップコーヒーを提供している。

創業者の大西正紘氏は、2013年、27歳の時に「暮らしの負担にならない価格で、質の高いコーヒーを気軽に飲めるようにしたい、決して特別なことでなく日常のリズムを作るためにコーヒーを飲んで欲しい」と目黒に1号店をオープン。『K5』への出店は、目黒で親しくしている『Kabi』のメンバーに声をかけられたのがきっかけだった。

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▲『Switch Coffee』創業者・大西正紘氏

「既存の2つの店舗にはその場でコーヒーをお飲みいただくスペースはありませんが、ここでは席に座って飲んでいただくこともできます。近隣の方には日常的にご利用いただきたいですし、ホテルにお泊まりになる方には、ホテルで特別な体験をしつつ、コーヒーを飲むという日常を味わう──、日常と非日常をつなぐ場所でありたいと思っています」

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大西氏にも、『K5』の魅力、そしておすすめの過ごし方について尋ねた。

「変わるものと、変わらないものがグラデーションに混在しているのが、このエリアの魅力ではないでしょうか。ここを拠点に東エリアを楽しんでもいいし、『K5』にこもってもいい。さまざまな楽しみ方ができると思います」

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取材を進めれば進めるほど、すべての施設を存分に体感したいという思いが強くなる。1泊ではとてもたりない!そう伝えると山下氏は笑顔でこう言った。

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「1泊目は『B』で飲んで、『CAVEMAN』のワインバーに行きレストランで食事をして、最後は『青淵』で仕上げるといった感じで、とことん酔っ払っていただきたい(笑)。その翌日はホテルでゆっくり過ごして、施設のコンセプトである、”動”と”静”の部分の両方を味わっていただきたいです」

山下氏は続ける。

「僕らのミッションのひとつに、兜町の再活性化というものがあります。地域と協働し、人の流れを作っていきたいですね」

想像しただけでワクワクしてきた。今後ますます面白くなっていきそうな、『K5』を満喫する2泊3日ツアー、決行はいつにしようか。

INFORMATION
K5

住所 東京都中央区日本橋兜町3番5号
TEL 03-5962-3485
URL https://k5-tokyo.com/

Text:長谷川あや
Photos:大石隼土

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