Products 2021.04.26

今なぜバルミューダは人々の心を捉えているのか?ブランドが貫く“五感に訴えるものづくり”に迫る

シンプルでスタイリッシュなデザインと、機能性を備えた家電といえば、今や真っ先に思い浮かぶのは、『バルミューダ』ではないだろうか。コロナ禍において、『BALMUDA The Toaster』は過去最高の売上を記録。2020年11月には、同社が初めて手がける掃除機『BALMUDA The Cleaner』が発売され話題を呼んだ。そんな今注目のバルミューダデビューを飾るなら、どのアイテムがふさわしいのだろうか──? PR担当者にぜひ生活に取り入れたいアイテムを紹介してもらうとともに、決して安価ではない価格帯ながら人をひきつけるアイテムを作り続けるブランドのフィロソフィーを紐といていく。

元ミュージシャンがたったひとりで起業

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のっけから質問で恐縮だが、バルミューダの本社がどこにあるかご存じだろうか。私はこの取材で出向くまで知らなかったのだが、本社は東京都武蔵野市にある。取材に対応してくれた、マーケティング部PR担当の鈴木聡氏は、「武蔵野市に本社があるというと、たいていは驚かれます」と笑う。さらに最寄駅からは徒歩約15分の道のりだ。聞けば、創業の地もこのエリア。もともとは吉祥寺に本社を構えていたそうだ。

ミニマルでスタイリッシュなデザインと高い品質で人気を集めるバルミューダは、今やおしゃれ家電の代名詞といっても大げさでないだろう。2015年に発売されたトースター『BALMUDA The Toaster』はスチームテクノロジーを用いて、“窯から出したばかりのような味”を再現した。二重構造の羽根を持つ扇風機『The GreenFan』や、既存の製品とは異なる使い方を提案する掃除機『BALMUDA The Cleaner』など、他社とは一線を画す様々なアイテムを展開している。

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▲BALMUDA Store 松屋銀座

代表取締役の寺尾玄氏は、大手レーベルと契約していたこともある元ミュージシャン。2003年に、たったひとりで前身となる有限会社バルミューダデザインを設立した(2011年に現社名へ変更)。

創業時にはノートPC用の冷却台やLEDデスクライトの開発や販売を行っていたが、2009年リーマン・ショックの影響で受注が完全にストップしてしまう。鈴木氏によれば、「この時、寺尾は未曾有の金融危機でも人が必要とするものは何かを真剣に考えた」という。

そして寺尾氏は、当時台頭していた、デジタルで回転数を調節するDCモーターを使い、自然界の風を再現することで、人間の暑さ、寒さを調節したいと考える。こうして、2010年4月、二重構造の羽根を採用した次世代扇風機『The GreenFan』の販売をスタートした。

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▲『The GreenFan』

「販売価格は3万5千円ほど。当時の感覚では、非常に高額な扇風機でしたが、これが売れました」

東日本大震災の影響による電力不足で、節電意識が高まり、エアコンの代わりに扇風機を使う人が増えたことも売り上げを後押しした。その後、空気清浄機や加湿器、トースターなど、さまざまなアイテムを発表。いずれも好評を博しており、2020年12月には、東証マザーズへの上場を果たす。

市場調査やマーケティングは行わない

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なぜバルミューダのアイテムは、受けているのだろうか。鈴木氏に率直な疑問をぶつけた。

「私どものいちばんの売りは、バルミューダならではのギミックが入っていることだと考えています。家電を通して、心躍るようなすばらしい体験をお届けしたいという思いから、弊社では、ちょっとクセはあるけれど、それが使っていただく方の五感に訴えるものを提案し続けてきました。デザインだけでは飽きられてしまいますが、デザイン性と機能性が両立していれば、多少高額でも購入したいと考える人は少なくありません」

バルミューダでは、企画段階での市場調査もマーケティングも行っていないという。

「そうお伝えしても、なかなか信じていただけないのですが本当にしていません(笑)。これまで市場になかったモノを作っているので調査してもあまり意味がないんです……」

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▲空気清浄機『BALMUDA The Pure』は上部に放出口を設けている。また、清涼感を感じさせる音にもこだわった。

“1製品1モデル”をベースとしているのは、そのモデルがそれだけ作りこまれたものであるという表れでもある。そんなバルミューダの商品のなかから、今回は鈴木氏に、日常生活にぜひ取り入れてみたいバルミューダ製品、また、バルミューダデビューにおすすめのアイテムをピックアップしてもらった。

インテリアとしてもなじむ掃除機

まずは、2020年11月に発売された掃除機『BALMUDA The Cleaner』は、“なぜ人が掃除機を使うのが億劫になるかを掘り下げて開発した”掃除機だ。バルミューダが導き出した答えは、収納場所から取り出すのが面倒だということ、そして、従来の掃除機は1つのブラシを回転させる構造になっており、ヘッドを前後に移動させることでゴミを吸い取るため動きが制限されるというものだった。

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▲『BALMUDA The Cleaner』

「この2つの“障害”をクリアしようと考えました。まず、2本のブラシを用い、これをそれぞれ内側に高速回転させることで床面との摩耗を低減しました。また、360度のスワイプ構造で、モップのように一筆書きで掃除機をかけることができます」

持ち運びが面倒だという“障害”は、出しっぱなしにしておいても違和感のない、インテリアとしてもなじむデザインを採用することで解決した。

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「ぜひ実際に使ってみてください」と鈴木氏に促され、『BALMUDA The Cleaner』を充電スタンドから抜いてみる。正直やや重さを感じた。本体重量は約3.1キログラム。他社の掃除機と比べ、決して軽量といえない。しかし、実際にスイッチを入れ、床を滑らせてみると、魔法にかかったかのように重さはほとんど感じないのだ。操作時の力を最小限にする低重量設計で手元にかかる負担を軽減しているからだという。「そんなはずないだろ!」という向きも多いと思うが、ぜひ量販店などで試してみてほしい。

「多くの方は、掃除機は前後にゴシゴシとかけるものだということが身についてしまっていると思いますが、垂直に掃除機を立てて持つとまったく疲れを感じない、そんな新しい“体験”をしていただけます」

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新しい音楽の“体験”を提案したい

バルミューダ初のオーディオ製品となる『BALMUDA The Speaker』も、今、いち押しの製品だという。前述のとおり、社長の寺尾氏は元ミュージシャン。音へのこだわりが強いがゆえに、スピーカーだけは作らないと明言していたが、ある時、デザイナーのひとりが社長のところへ、白い木の箱に入ったモックアップを持ってきた。

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▲『BALMUDA The Speaker』

「そのモックは、左右のスピーカーの間にステージのような空間があり、その中のミラーボールが音に合わせて光を放ったんです。音楽は耳だけで楽しむものというイメージがあるかもしれませんが、社長はオーディオの前に座ってレコードやCDの歌詞カードをじっくりと読みながら音楽を聞いていた世代でして、そのミラーボールの光が当時の体験を呼び起こしたようです。また、デザイナーは、そのモックで、社長の好きなブルーハーツの『夕暮れ』をかけたんですよ。それもあって、ピュアな社長は心が揺れてしまった(笑)」

そんな紆余曲折を経て、大手オーディオメーカーとは「サイズ感がまったく異なる」バルミューダは、楽曲に合わせて輝く3基のLEDユニットと、ステージライトが付いた、一見、スピーカーには見えないスピーカー『BALMUDA The Speaker』を開発。新しい音楽の“体験”を提案したいという思いをかたちにした。

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「真空管アンプを彷彿とさせるデザインにもこだわりました」
音は独自のアルゴリズムにより、0.004秒の速さで音を光の輝きへと変換。音の情熱を光に可視化させている。

「社長も言っていましたが、夜、このスピーカーで音楽を聴いていると、光ばかり見てしまうんですよ(笑)。多くの方はすでにスピーカーをお持ちでしょうし、100円ショップでも小さなスピーカーが売っている時代ですが、我々のスピーカーを通して、ご自宅で歌ったり、一緒に音楽を聴いたりなど、ご家族との楽しい時間を“体験”していただきたいと考えています。音に余計な色付けをしていないので、聞いていても疲れません。ボーカルが際立つのでラジオも聞きやすいものとなっています」

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食べることは幸せを呼ぶということを表現したい

2015年の登場以来、100万台以上を売り上げている大ヒット商品『BALMUDA The Toaster』も、社長の“体験”をベースに誕生したものだ。

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▲『BALMUDA The Toaster』

「17歳でスペインに行った時、まったく言葉は話せなかったけれど、どうにかパンだけを買うことはできた。そのときのうれしさ、食べることは幸せを呼ぶということを表現し、おいしくて食べた人を元気にできる世界一のトーストを焼きたいという、寺尾の思いが開発の発端となっています」

トースターの給水口に5ミリリットルの水を入れることで蒸気が充満。薄い水分がパンの表面を覆い、中の油分や香りを閉じ込めながら表面だけ軽く焼くことで、表面はさっくり、中はふわふわに仕上がる。また、餅やグラタン、ローストビーフなど、水を使わない調理にも対応する。

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鈴木氏は実際にクロワッサンを焼いて食べさせてくれた。朝、チェーン展開しているパン屋で購入したものだというが、表面は全く焦げておらずバターの香りもふんわりと漂い、パンで焼きたてを買って、すぐに食べた時となんら変わらない美味しさだ。

商品カタログの表紙に商品ではなく、トーストの写真を用いている点もバルミューダのフィロソフィーを体現している。

「世界でいちばん美味しくパンが焼けるトースターだということを表現したいと考えた結果、このようなかたちになりました」

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“なにか面白いものはできないか”

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▲『BALMUDA The Lantern』は家で過ごす時間が増えた今、温かな光で家族の時間を彩る。屋外に気軽に持ち出せるのも魅力だ。

商品開発のアイデアは社長から出るときもあるし、スピーカーのようにデザイナーやエンジニアが提案することもある。キーワードは、“なにか面白いものはできないか”。

「まずはシンプルで生活者に寄り添うものを作りたい。そして、常識にとらわれることなく、みなさんの五感に訴えるモノづくりを行い、新しい体験をしていただきたい。そんな思いで製品を作っています。コロナ禍で、これまで外側に向かって使っていたお金を内側に使うようになった今、家にいる時間を少しでも楽しく過ごしてもらえるような、驚きをもって楽しんでいただけるようなモノづくりを続けていきたいと考えています」

そう、バルミューダの製品は、生活に寄り添いながら、“新しい体験”を運んでくれるのだ。

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Text:長谷川あや

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