シンプルで美味しいチョコレートを作りたい。ショコラティエ・村田友希が目指すもの

2022年のアルファ ロメオのバレンタイン試乗キャンペーンでは、注目のチョコレートショップ『nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO(ネル クラフトチョコレート トーキョー)』が手がけた、スペシャルなチョコレートボックスが抽選で10名にプレゼントされる。シェフショコラティエの村田友希氏に『nel』のこと、チョコレートに対する思い、また、今回のチョコレートボックスについて話を聞いた。
“手しごと”と“日本らしさ”というコンセプトを体現
都心でありながら下町情緒を感じる日本橋浜町を歩いていると、ふとチョコレートの甘い香りが漂ってくる。チョコレートラバー注目のチョコレートショップ『nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO(ネル クラフトチョコレート トーキョー)』(以下、『nel』)だ。同店は、2019年2月15日に開業した『HAMACHO HOTEL』の1階に位置する。
『HAMACHO HOTEL』は、日本橋浜町エリアのまちづくりのコンセプト“「手しごと」と「緑」の見える街”を具現化したホテルとして開業。『nel』もそのコンセプトを体現するチョコレートショップだ。道路に面した2方面には、街にとけこむような大きなガラス窓を配している。
カウンターには、カカオ型のシェードランプが吊り下げられている。カカオの皮を混ぜ込んだ特別な美濃和紙を使って作ったもので、タブレットチョコレートの包装にもこのカカオの皮入りの和紙を使っている。
「香りはカカオそのものなんです」と語るのは、シェフショコラティエの村田友希氏だ。村田氏は大きな瓶に入ったカカオの皮を持ってきて香りを嗅がせてくれた。甘い香りが体を駆け抜ける。
▲シェフショコラティエの村田友希氏
「日本らしさを意識し、大きな桐ダンスをイメージしました」というショーケースには、白木の陳列台の上に、約10種類のボンボンショコラが芸術作品のように並べられていた。なんて美しいんだろうと思わずため息が漏れる。
「商品や店内には、手しごとや日本を感じさせる要素を散りばめました」
笑顔でそう語る村田氏は、京都市出身の33歳。年齢的には若手とも言えるが、製菓に関わりはじめたのは15歳。すでに人生の半分以上の時間を製菓とともに過ごしている。
2019年には『ANA インターコンチネンタルホテル東京』主催の『第一回 チョコレート ショーピース コンペティション』で優勝を果たしている。いま、チョコレートラバーたちから熱い注目を受ける気鋭のショコラティエのひとりだが、そのキャリアの始まりはどのようなものだったのだろう。
「手に職を付けたいと、中学を卒業してすぐに、地元のケーキ店でアルバイトを始めたんです。販売からスタートして、そこで一通りのお菓子づくりを勉強させてもらいました」
その後、世界中のショコラティエたちが創造性や技術を競う大会『ワールドチョコレートマスターズ2007』で総合優勝を果たした、水野直己氏の仕事を手伝ったことをきっかけに、水野氏に師事することに。水野氏が営む京都府福知山市の『洋菓子マウンテン』でスーシェフを務めた後、フランスのアルザス地方やルクセンブルクなどで腕を磨いた。
「フランス人にとってチョコレートはなくてはならないアイテム。いかに生活に浸透しているか、気づかされました。食べる量も日本人とまったく違いますし、みなさんお気に入りのショップがあり、その店のチョコレートを常備しています」
美味しいチョコレートを作ることで、まちづくりにも貢献
日本に帰国後、『HAMACHO HOTEL』に開業するチョコレートショップ立ち上げの話に出会った。
「東京で働くのははじめてでしたがチョコレートを作るだけでなく、まちづくりに関われるという点にも魅力を感じました」
『nel』は『HAMACHO HOTEL』と同じ日にオープンを迎える。村田氏の作るチョコレートは瞬く間に評判となり、地元の人はもとより、遠方から足を運ぶ人も少なくない。店を切り盛りするなかで、村田氏自身にも新たな気づきがあった。
「師匠である水野シェフは『自分の知っている人にチョコレートを食べてほしい』と、世界大会優勝後はさまざまな誘いを断り、地元・福知山に戻られました」
水野氏が先代から続く『洋菓子マウンテン』を継がれたことが契機になったのか、福知山では新たなスイーツ店が続々とオープンした。
大幅なリニューアルを図った店も少なくない。
「今では福知山はスイーツの街と言われていて、スイーツを目当てに福知山に足を運ぶ人も増えているそうです。水野シェフはスイーツだけでなく街もつくっていたんだなと気づかされました。僕も美味しいチョコレートを作ることで、浜町を盛り上げていきたいと考えています」
ここでしか楽しめないものを大切にしています
『nel』は、カカオ豆の選別から始まり、チョコレートづくりの全工程を一貫して手がけるBean to Bar(ビーントゥバー)の手法を用いたチョコレートショップだが、それを前面には打ち出していない。
「Bean to Barはあくまでも製法のひとつ。日本ではチョコレートブームも手伝って、決して珍しいものではありません」
そうきっぱりと語る村田氏がこだわるのは、“実際に店舗に足を運ばないといただけないもの”。世間ではコロナの蔓延により、オンラインショッピングが加速的に規模を拡大した。そんな中でも村田氏は、「浜町の店舗に足を運んでいただきたいので、ここでしか楽しめないものを大切にしています」と語る。
たとえば、ショコラショー(チョコレートドリンク)もそのひとつだ。
「フランスではチョコレートショップになくてはならないもので、フランスの修業先で最初に任されたのが、ショコラショーの仕込みでした。『nel』では、専用スチーマーを使い、注文ごとにショコラショーを作っています」
店舗内に併設されたカフェでは、チョコレートパフェや、かき氷(夏季限定)もいただくことができる。
▲ショコラショー
ボンボンショコラは、時期によって多少前後するが常時12種類ほどを用意。定番の10商品のほか、季節限定のもの2種類がショーケースに並ぶ。紫蘇や柚子、胡麻といった日本の食材を使ったものが中心だ。
自らの仕事において大切にしていることを尋ねると「カカオの風味を楽しんで食べていただくこと」という答えが返ってきた。
「フレーバーが強すぎるとチョコレートを食べている感じがしませんし、弱すぎても物足りません。しっかりと味わえて、フレーバーも楽しんでもらえる。そのバランスを大事にしています」
たとえば、山椒のボンボンショコラは、センターのガナッシュとそれをコーティングするチョコレートとでは、カカオの産地や含有率を変えて作っている。
「口にするとフレーバーが口の中で広がった後に、コーティングしているチョコレートから、より強いカカオの味わいを感じられます。チョコレートが、いかにフレーバーに寄り添うか──。こだわりを話し始めると止まらなくなってしまいます(笑)」
村田氏の言葉の端々に、溢れんばかりのチョコレートへの愛を感じる。では、彼が考えるチョコレート、そして『nel』の看板商品であるボンボンショコラの魅力とは何だろうか?
「ボンボンショコラの良いところは、小さな粒のなかに、ショコラティエの表現したいものがギュッと詰まっているところではないでしょうか。一粒ごとに味や表情が異なり、食べる度にさまざまな感動と楽しみを届けられるのはチョコレート、とくにボンボンショコラの強みだと思います」
アルファ ロメオのためのスペシャルチョコレートボックス
シンプルに、美味しいと思っていただけるチョコレートを作り続けたいと考える村田氏が、今回アルファ ロメオのために用意してくれたのは、アルファ ロメオのエンブレム型チョコレートと4種類のボンボンショコラのボックスセットだ。
「新作のふじりんごと定番の梅で、アルファ ロメオのシンボルカラーである赤を表現しました。同じく和のフレーバーの山椒のチョコレートも入れています。もうひとつは、ベトナムの契約農家のカカオを使った、ブンチャブベトナム。ベリー系の爽やかな酸味が特徴です」
ふじりんごは2022年のバレンタインの新作。小さな頃からTVCMなどで耳にしている“林檎と蜂蜜”の組み合わせを「チョコレートに使えるかもしれない」と考えた。そんな風に、「日常生活からインスピレーションを受けることも多い」という。“日本らしさ”というコンセプトを表現した、山椒のボンボンショコラは、ガナッシュに京都の錦市場で出会った青実山椒の香りをまとわせた。梅は、紀州南高梅のペーストと梅酒を使った、フルーティーなガナッシュが印象的だ。また、『nel』のシグネチャーでもあるブンチャブベトナムは、村田氏が「いちばん食べていただきたいボンボンショコラ」と力のこもったアイテム。開店の準備段階で足を運んだベトナム中部・ブンチャプにある契約農家のカカオを使用している。
「そのベトナムの契約農家は、ご夫婦2人だけで小さな農園を営んでいらっしゃるんですが、地元の農産物研究所と一緒に、どうやったら美味しいカカオができるかを研究しながらカカオを栽培されています。ベトナムでは胡椒やコーヒーの栽培が盛んで、収穫後、様々な手間を要するカカオを作る農家はそう多くありません。ご主人に、『なぜカカオを作っているのか』と尋ねると、シンプルに『チョコレートが好きだから』とおっしゃる。その子どものような素朴さに魅かれました。実際、持ち帰ったカカオをチョコレートにしたところ、これがとても美味しくて。フルーティーながらも力強いカカオ感に惚れこみました」
こうして生まれたブンチャブベトナムは、ベリー系の爽やかな酸味を持ちその味わいは、カカオが果実であることを雄弁に語っている。なお、今回のセットは、チョコレートの中身はそのままに、通常、店舗で出しているものとはデザインを変え、アルファ ロメオのエンブレムに描かれている大蛇(ビショーネ)をモチーフに蛇柄をあしらった。
▲写真右下:ブンチャブベトナムは、ビショーネをモチーフに蛇柄をあしらった特別仕様。
そして、アルファ ロメオ 9代目のエンブレムをかたどったチョコレートは、今回のキャンペーンのために村田氏が特別に手がけたもの。まず、そのフォルムを忠実に再現するため、オリジナルの型から製作したという労作だ。ベースとしたミルクチョコレートには、前述の契約農家のカカオを使用。豊かな風味や果実味を実感できる。また、独自の食感を楽しんでもらいたいと、イタリア産のピスタチオをキャラメリゼして作った自家製のプラリネを挟み込んでいるのも特徴だ。
「外側はパリッとしていて、中はジャリっとした食感を出すため、コーティングの厚みにはとことんこだわりました。これをきっかけに、アルファ ロメオオーナーの方々に『nel』を知ってもらえたら、そして、チョコレートを美味しいと思ってもらえたらうれしいです」
『nel』のチョコレートは見ているだけでもわくわくする。村田氏の話を聞くと、さらに興味は増し、口にすると想像以上の美味しさに笑顔がこぼれる。
「浜町に住んでいる人が自慢できる店、浜町を訪れる動機となる店でありたいとも考えています。うちの店にしかない強みを生かしながら、もっともっとまちづくりに貢献していきたいですね。『nel』のチョコレートは、決して安くはないですがそれだけの価値を実感していただけると思います。ぜひ日常的に楽しんでいただければ嬉しいです」
チョコレートを買いに浜町に足を延ばす──。そんな小さな贅沢が日常をより豊かに彩ってくれるはずだ。
アルファ ロメオ バレンタイン試乗キャンペーン
開催期間中、アルファ ロメオ正規ディーラーで対象モデルにご試乗いただいた方の中から抽選で、当記事でご紹介したアルファ ロメオのエンブレムチョコレートとボンボンショコラをセットでプレゼントいたします。
nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO
住所 | 東京都中央区日本橋浜町3丁目-20-2 HAMACHO HOTEL |
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TEL | 03-5643-7123 |
営業時間 | 10:00 – 18:00(LO. 17:00)不定休 |
URL | https://nel-tokyo.jp/ |
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Text:長谷川あや
Photos:濱上英翔(Hisho Hamagami)