Diversity 2019.10.29

金沢21世紀美術館で開催、LGBTカミングアウト写真展「OUT IN JAPAN」をレポート

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズが主催し、世界的写真家レスリー・キー氏も撮影に参加するLGBTカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN(アウトインジャパン)』が9月7日(土)〜16(月)まで金沢21世紀美術館で開催された。ダイバーシティ(多様性)推進活動として、“Be yourself.”をスローガンに掲げてさまざまな支援を行なっているアルファ ロメオもこれをサポートしている。そのイベントの様子をお届けする。

アルファ ロメオはダイバーシティ(多様性)推進活動として、“Be yourself.”をスローガンに掲げさまざまなサポートを行なっている。9月7日(土)には、金沢21世紀美術館でアルファ ロメオが支援する認定NPO法人グッド・エイジング・エールズLGBTカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN(アウトインジャパン)』が開催された。レスリー・キー氏が撮影した約2,000人分のポートレートを公開。また、撮影会も行われた、そのイベントの様子をレポートする。

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現在、人口の3~5%が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど“セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)”と言われている。異性愛者よりも少ないため、“マイノリティ”と呼ばれているが決して珍しいことではない。それは古都・金沢でも同様だ。9月7日から16日まで、誰もがいきいきと輝いていられる金沢を目指し、さまざまな視点でLGBT等について知り、交流することのできる『金沢レインボーウィーク』が開催された。そのメインイベントとして位置付けられたのが、金沢21世紀美術館で開催された、LGBTカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN(アウトインジャパン)』の大型写真展だ。

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『OUT IN JAPAN』は2015年4月にスタートしたプロジェクトで、LGBTなどセクシャルマイノリティーの人々のポートレートを撮影し、ウェブサイトや写真展を通じてカミングアウトをサポートしながら誰もが生きやすい世の中を標榜する。アルファ ロメオは、グッド・エイジング・エールズを、同団体が設立した2010年4月からサポートしている。

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アイデンティティを守るプロジェクトを行っていきたい

写真展で展示されているのは“カミングアウト・ポートレート”──、被写体となるのは、「LGBTをカミングアウトしている」、もしくは「これをきっかけにLGBTをカミングアウトしよう」という人たちだ。今回の写真展では、これまでこのプロジェクトで撮影された約1,700人のポートレートに、姉妹プロジェクトである『OUT IN SINGAPORE』や『OUT IN TAIWAN』で撮影した写真を加え、約2,000人分の写真を展示している。プロジェクトスタート時から現在に至るまで、撮影は世界的写真家のレスリー・キー氏がボランティアで担当。これまで東京や大阪、広島など9都市で19回の撮影会を実施してきたが、北陸で開催されたのは今回が初めてだ。

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▲写真家 レスリー・キー氏

「(このプロジェクトをスタートした)2015年当時、LGBTという言葉はそれほど浸透しておらず、このプロジェクトに参加することでほかの仕事に影響が出るかもしれないという懸念もありました。でも僕はどうしてもやりたかったんです。この企画に、最初に参加してくれた人たちには本当に感謝しています。これまで約2,000人もの人たちを撮影して来られたのは、彼らの勇気があってこそ。目指すは1万人です!」(レスリー氏)
写真展開幕の朝に会場を訪れた際、こみあげてくるものがあったとも明かしてくれた。

写真展の開会イベントには、FCAジャパン・マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセ氏が登壇。日本文化が好きで来日してすでに14年もの時間を日本で過ごしていることなど、自身と日本との関わりに触れつつ、スピーチを行なった。

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▲FCAジャパン・マーケティング本部長 ティツィアナ・アランプレセ氏

「アルファ ロメオでは、“Be yourself.”というスローガンのもと、日本のLGBTを支える活動を行なっています。“なぜアルファ ロメオが?”と、よくその理由を聞かれますのでお答えしましょう。私どもの会社には複数のクルマのブランドがありますが、アルファ ロメオは特にアイデンティティが強いクルマです。だからこそ、ひとりひとりが自分らしくいられる、アイデンティティを守るプロジェクトを行っていきたいんです。誰もが自分らしく輝き、生きることができる世界を実現できるよう、これからも頑張っていきます!」(アランプレセ氏)

主催団体の代表であるの松中権(ごん)氏は地元金沢の出身だ。
「(故郷である金沢で開催できるのは)夢みたいな話です。いま会場にいても信じることができません。でもこれはスタートでしかありません。レスリーの写真展ということで足を運んでくださった方々が、より深くLGBTについて知るきっかけになればうれしいです」(松中氏)

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▲認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表 松中権氏

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人生を変える1枚の写真

来場者はレスリー氏が撮影した写真に見入っていた。被写体となっている人のほとんどは、市井で生きる人たちだ。しかし、明確な意思と勇気を持った、写真の中の人々はそれぞれの美しさをたたえ、その表情は輝いている。レスリー氏は語る。

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「写真は嘘をつきません。これらの写真の被写体となっているのは、カミングアウトをした強い心を持つ人たちです。その心の強さ、目の輝きが写真に表れているんです。1枚の写真が人生を変えることがあります。これからも僕は人生を変えるたくさんの写真を撮り続けていきたいです」

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レスリー氏は開会イベントの挨拶で、自身の人生も『OUT IN JAPAN』プロジェクトの1枚の写真によって変わったというエピソードを披露した。広島の撮影会に参加したアメリカ人男性と、来年、結婚式を挙げるという。

それぞれの魅力を引き出す、レスリー・キー氏による撮影会

北陸初の開催となった今回の写真展でも撮影会を実施。会場内に撮影場所を設け、19人が撮影にのぞんだ。メイクアップアーティストによるメイクを施された参加者が、順番にレスリー氏の前に立つ。レスリー氏は緊張をほぐすように参加者に声をかけ雑談をし、撮影時には、「目を閉じて」「眉間にシワをよせないで」「歯を見せないで笑って」と細かな指示を出していた。時にはレスリー氏自らが参加者の着こなしを整えたり、ポーズをとってみたりすることもあった。

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被写体にもよるが撮影時間は1人5分強程度。限られた時間のなかで、参加者の表情がくるくると変わっていくのがわかる。また、レスリー氏とともに画面に映し出された自分の写真を見ると、参加者はひときわ鮮やかな笑顔を浮かべた。

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カミングアウトをしたプロジェクト参加者、その後の心境

なお、OUT IN JAPAN×アルファ ロメオのプロジェクトムービーでは、プロジェクトへの参加を通してカミングアウトをした人々にフォーカス。4人のプロジェクト参加者がバッググラウンドやカミングアウト後の心境について語っている。その一部を紹介しよう。

ひとりはゲイを告白した小学校教諭。6年生を担当していた3年前、「子どもたちに素直になれと言いながら、自分自身が素直になれていない、カミングアウトして誠実に生きたい」と思ったことをきっかけに撮影会に参加した。カミングアウト後は、「強い自分も、弱い自分も、ありのままに受け止められるようになりました。より良く、より自分らしく生きたいと思ったら、それがきっかけのひとつかもしれません」

1 金沢21世紀美術館で開催、LGBTカミングアウト写真展「OUT IN JAPAN」をレポート ▲写真協力:FCAジャパン株式会社

もう一人はFTM(女性として生まれ、性自認が男性の人)の、現在は男性として生きている人物だ。カミングアウトは18歳の時。高次性機能障害で新しいことが覚えられない母親に実は心は男だと伝えたところ、ごく普通に「えぇ〜そうなん、別にいいんじゃない?」と言ってくれ、「言ってよかったなと思いました」。翌日やはり母親は忘れていたが、迎えに来た介護士に、彼のことを「息子です」と紹介したという。「前の日まで娘だった僕が息子になった。忘れられないカミングアウトになりました」

2 金沢21世紀美術館で開催、LGBTカミングアウト写真展「OUT IN JAPAN」をレポート ▲写真協力:FCAジャパン株式会社

24歳でレズビアンとして生きていく覚悟を決めた女性は、カミングアウト前は自らの性的嗜好を隠すことばかり考えていたという。「それまで悩みはすべてレズビアンであることに直結していました。カミングアウトして、嘘をつかなくてよくなったら、人生に楽しみが増えたような気がするんです。家族へのカミングアウトはいまも問題になっていますが、自分のセクシャリティを偽らなくていい家族関係を築きたいと言えたことは前進だと考えています」と語る。

4 金沢21世紀美術館で開催、LGBTカミングアウト写真展「OUT IN JAPAN」をレポート ▲写真協力:FCAジャパン株式会社

「自分の弱さや怖さを乗り越えたかった」時期に、大好きなスーパースターを撮影しているレスリー・キー氏が撮影すると知り、「一か八か飛び込む気持ちでOUT IN JAPANに参加しました」という人もいた。
「カミングアウトは失うことだと思っていましたが、たくさんのものを得られる機会になりました。それぞれ、もう嘘をつきたくないと思うタイミングがくると思います。その時に我慢しないでください。年齢とか人の目とかは気にせずに、自分の心と向き合って、それぞれのタイミングややり方で、自分の人生をドライブしてほしいと思います」

3 金沢21世紀美術館で開催、LGBTカミングアウト写真展「OUT IN JAPAN」をレポート ▲写真協力:FCAジャパン株式会社

LGBTという言葉そのものの認知度は数年前とは比べものにならないほど上がっている。しかし松中氏は「まだまだこれから」と未来を見据える。
「その人がその人らしく幸せを追求したいという権利は誰もが持っているはずのものです。それを邪魔してはいけないし、その誰もが持ち得るはずの人権を持てずにいる人がいるのは、おかしなことだと感じています」(松中氏)

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「人と人との出会いは奇跡。僕は奇跡を撮影しているんです」と語るレスリー氏が撮影した、同プロジェクトの写真が旅を重ねるたび、セクシュアリティを越えてすべての人が、自分らしく素敵に歳を重ねていける社会が近づいてくる──、そう感じるのは単なる希望的観測ではないはずだ。

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Be yourselfすべての人々が、自分らしく生きていける社会のために

Text:長谷川 あや
Photos:濱上 英翔

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