News 2022.02.28

アルファ ロメオ初の電動車がついにお披露目。松本葉氏が解説する新型SUVトナーレの全貌とその魅力

2022年2月8日(火)に、アルファ ロメオ初となる電動車である、新型SUV『ALFA ROMEO TONALE(アルファ ロメオ トナーレ)』のワールドプレミアがオンラインにて開催された。気になるトナーレの全貌を、作家・コラムニストの松本葉氏が徹底解説する。

待望の新型SUV『トナーレ』の3つの注目ポイント

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待ちに待った新型SUVの『ALFA ROMEO TONALE(アルファ ロメオ トナーレ)』がアンヴェールされた。車名は『STELVIO(ステルヴィオ)』同様、イタリアの峠に由来するものの、同じSUVでもこちらはコンパクト、クロスオーバーである。
いつも以上に待ちわびたのはトナーレが2019年開催のジュネーブ・ショーに展示され、その姿に魅せられたからだった。プラグインハイブリッド(PHEV)を示唆したコンセプトカーは完成度も評判もとても高く、市販間近と言われたにもかかわらず、すぐに実現することはなかった。3年の歳月が流れたが、その間アルファ ロメオはステランティス傘下となり、社会はパンデミックに襲われた。トナーレはどうなってしまうのか、世界中のアルフィスティをやきもきさせたはずだ。

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いよいよお披露目されたのは2月8日(火)のこと。ここで強調されたポイントは3つ。ひとつは初めてのハイブリッドモデルであること。もうひとつはコネクティビティ、インフォテイメント、車載ソフトウェア、顧客サービスなどの充実。最後のひとつは、もちろんデザインだ。そう言えば解説にはそれぞれのセクションの責任者が登場したが、女性も多く、自動車メーカーのワールドプレミアとしては新鮮な出来事だった。

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▲アセンブリマネージャー マリサ・ジャンニーニ氏

生産には、1970年初頭、国の意向によって南イタリア雇用創出の目的で建設され、アルファスッドを生み出した工場が当てられることになった。アルファスッドは技術的にも居住性やスタイリング面でも画期的な自動車だったが、自動車産業の土壌のない地で作られたために品質が安定しなかった。あれから長い時間が流れた。大ヒット作となったアルファ156をはじめ、一連のアルファ ロメオを生み出した工場は現在『ワールドクラス・マニファクチャリング』などで金メダルを受賞するまでに成長している。

初の電動化モデルは2種類をラインアップ

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今回、登場したのは前輪駆動のハイブリッドと四輪駆動のプラグインハイブリッドの2種。前者は直列4気筒直噴1.5Lガソリンターボエンジン、15kW/55Nmを発生するP2と呼ばれる電気モーター(48V仕様)、7段デュアルクラッチATで構成される。出力は130PSのエントリー版とその上を行く160PSの2タイプ。双方に搭載されるエンジンはハイブリッドと”最高に”マッチングすることをめざして新開発された。シャシーもしかり、可変ジオメトリーターボチャージャーもP2モーターも新しい。現代の自動車はコスト削減と時間短縮の産物、トナーレは潮流に逆らったことになる。実にアルファ ロメオらしい決断だ。
性能面と電動化レベルで同社が強い自信を持って送り込んだのは四輪駆動のプラグインハイブリッド。エンジンでは180馬力、モーターでは120馬力、システム全体で275PSを獲得した。1.3L直列4気筒マルチエア ガソリンターボエンジンがフロントを、電気モーターがリアを駆動する。100km/hに6.2秒で到達する実力派。EV走行可能距離は街中で80kmと公表されている。

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ハイブリッド化は今や普通のこと、この点に疑いはない。「それは難しいことをしましたね」と言う人は今の時代にはいないだろう。それでもプレビューで感じたのは同社のハイブリッドへの並々ならぬこだわり。彼らが求めたのは効率や経済性ではない、“アルファ ロメオらしさ”だ。ドライビングの楽しさ、エモーショナルな操縦性を与えること。つまり112年にわたって彼らが守り続けたDNAを盛り込み、さらに進化させる。21世紀のスポーティネス、その再定義と構築である。トナーレはどんなドライブ・フィールなのだろう。新設計のシャシーに組まれるサスペンションには全モデルにFSD(フリークエンシー セレクティブ ダンピング)ダンパーが組み合わされているとか、タイムラグのないIBS(インテグレーテッド ブレーキシステム)、最適化された前後の重量配分、クイックなステアリングレシオなど、アルファ ロメオらしい官能的で楽しいドライビングを期待させる解説に胸が躍った。

Dynamic2 アルファ ロメオ初の電動車がついにお披露目。松本葉氏が解説する新型SUVトナーレの全貌とその魅力

2つ目のポイントにはこの国らしさを感じずにはいられなかった。コネクティビティ、インフォテイメント、車載ソフトウェア、顧客サービスの充実。充実というより満載、記し始めたらキリがないほど。“お初”も多い。4G接続、Android OSはもとより音声アシスタント、Amazon・Alexaも内蔵しているという。Googleのホームアシスタントと連携してタイヤの空気圧から駐車場所までさまざまなことをチェックできるそうだ。現在でも路上駐車の多いイタリアでは、クルマをとめた場所が思い出せなくて通りをウロウロする人をしばしば見かけるから、これは朗報かもしれない。車両を宅配ロッカーとして使えることにもびっくり、どのくらいの人が活用するのだろう。また、最近美術品への紐付けでよく使われるNFT(非代替トークン)デジタル証明書の導入も驚きのひとつ。1台の自動車のライフサイクルを書き換え不能のデジタルで管理する。サステナブルな観点からリセールバリューに配慮して導入された模様。自動車では初の試みだ。

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個人的に好感を持ったのは、バッテリーの保証期間が8年間、もしくは15万kmとされたこと。セグメントでは最高レベルとなる。ラインナップのシンプル化も好ましい。グレードはスーパーとTiの2種類のみとなり、入門グレードのスーパーはスプリントというオプションでカスタマイズできる。Tiに用意されるのはヴェローチェだ。スーパーとスプリント、Tiとヴェローチェ、馴染み深い4つの名称が整頓されてわかりやすくなった。

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それにしても盛りだくさん、電動化技術も含めて最先端がぎゅう詰めである。そう言えば第二次世界大戦中、同社は家庭用オーブンを製作した。自動車販売が滞ったことでアルファ ロメオでは工員の生活を守るためさまざまなものを製作、そのひとつが自動車エンジニアの設計した“ガス台と一体化したオーブン”だった。そのスペックには驚くべきものがあって、例えば最高温度は300度を超えていた。家庭用ならここまでの温度はいらないはず。
以前、アルファ ロメオ歴史博物館の館長に取材した際「どうしてこんなスゴいものを作ったんですか?」と尋ねたら、彼が笑いながらこう答えた。「アルファ ロメオの技術力と情熱を以ってすれば家庭用オーブンでもこうなってしまう。これぞイタリアです。スイッチが入ってしまったんですね」
今回、トナーレに“スイッチが入ったイタリア”を感じた。

伝統的を継承しつつ、官能的で未来志向のデザイン

おそらく誰もが最も楽しみにしていた3つ目のポイント、デザインはどうだろうか。実車でないのが残念だが、画面を通して見る限り、紛れもなくビショーネ・ファミリーの一員である。フロントはしっかりした顔つき。浮き上がった印象を与えるスクデット、その下のエアインテークで構成されるトリロボは大きくなったようだ。ティーザー広告で活躍した3連ヘッドライトも強い印象を与えるが、かつてのSZやブレラを彷彿とさせる懐かしさもある。

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▲トナーレのヘッドライト

ティーポ33ストラダーレで有名になったテレフォンダイヤル式ホイールも健在、長い歳月に進化を遂げた。リアは8Cコンペティツィオーネにインスパイアされたと言う。確かに。特に横長5角形の角を丸め、長方形に近づけたようなリアウィンドーに8Cを想う。左右の3つの波を繋げたようなリアのライトは個性的、見つめるような目つきだ。サイドの形状を決定づけたのは1965年のジュリアGTから生まれた黄金の法則、彼が呼ぶところの『GTライン』。ヘッドライトからウィンドー下を通ってテールランプまで続く緩やかなラインが再現された。

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手に触れることが最も重要だと思うインテリアについては対面する日を待たなければならないが、これもまた伝統に乗っ取り、ドライバー中心、操縦のしやすさに最大限の配慮が払われたそうだ。
デザインのディテールにはルーツを思い出させるもの、クラシックを進化させたもの、DNAを感じるもの、ノスタルジーを覚えるもの、とどのつまり、アルファ ロメオの歴史が混在するが、全体で見るとそこには新しさがあって、クルマのフォルムというのはなんと面白いものなのだろうと思わずにはいられない。エレメントはたくさんあるのに、ひとつにまとまるとクリーンでダイナミック、筋肉質のトナーレが見える。

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このコンパクトSUVは幅広いユーザーに向けて送り出されたニューカーだ。生産台数はこれまで以上となるはず。ここに“かつて”が重なる。1950年代、1900の成功によって量産車メーカーとして基盤を作り上げた同社は、さらなる飛躍を目指して多くの人々が楽しめる『GIULIETTA(ジュリエッタ)』を生み出した。
“頑張れば誰でも買えるジュリエッタ”は、多くのイタリア人に愛され、ヒットモデルとなった。彼らは日曜日に恋人や家族をジュリエッタに乗せて湖にピクニックに行ったという。
果たしてトナーレは私たちを何処にいざなってくれるだろうか。

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※当記事は2022年2月8日(火)に行われた、アルファ ロメオ トナーレのワールドプレミアで発表された内容に準じています。製品情報は欧州仕様モデルに基づいたものであり、日本導入時の仕様と異なる場合があります。

PROFILE

松本 葉(まつもと・よう)

自動車雑誌「NAVI」の編集者、カーグラフィックTVのキャスターを経て1990年、トリノに渡り、その後2000年より南仏在住。自動車雑誌を中心に執筆を続ける。著書に、「愛しのティーナ」(新潮社)、「踊るイタリア語 喋るイタリア人」(NHK出版)、「どこにいたってフツウの生活」(二玄社)、「私のトリノ物語」(カーグラフィック社)ほか、「フェラーリエンサイクロペディア」(二玄社)など翻訳を行う。

Text:松本葉

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