Event 2019.07.12

混戦を制しアルファ ロメオ ジュリエッタが優勝!TCRジャパン・シリーズ第二戦を振り返る

6月22日(土)〜23日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催されたTCRジャパン・シリーズの第2戦において、GO&FUN Squadra CorseチームのジュリエッタTCRが見事優勝を飾った。モータージャーナリストの嶋田智之氏が当日のレースの模様を振り返りつつ、ジュリエッタTCRの資質や魅力をドライバーやエンジニアのコメントとともに解説する。

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Alfa Romeo Giulietta(アルファ ロメオ ジュリエッタ)』が日本の公式レースを走ることは5月のレポートですでにお伝えしましたが、ファンの皆さん、アルフィスタの皆さん、どうか遠慮なしに喜んでください。アルファ ロメオ・ジュリエッタTCR、勝ちました! いや、昨年10月に鈴鹿サーキットでジュリエッタTCRは優勝を収めているわけですが、あちらは世界選手権のラウンドのひとつとして行われたレースでの勝利。今回のジュリエッタTCRの優勝は、アルファ ロメオの日本の国内公式レースにおける初めての勝利であり、同時にアルファ ロメオを日本人ドライバーが駆っての公式レースにおける初めての勝利。記念すべき戦績でもあるのです。これを喜ばずして、何を喜べばいいのでしょう!

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ジュリエッタTCRが戦うTCRジャパン・シリーズは、すでに5月18日(土)〜19日(日)、大分県のオートポリスで、ラウンド1のレースを終えていました。このラウンドではジュリエッタTCRの1台、“GO&FUN Squadra Corse”の前嶋秀司選手が練習走行の段階からトップタイムをマークするなど期待どおりの速さを見せてくれましたが、走行中にアクシデントに見舞われた影響が最後まで残ってしまい、満足の往く戦績を残すことができませんでした。

そして6月22日(土)〜23日(日)に宮城県のスポーツランドSUGOで開催された、ラウンド2。前嶋選手(ゼッケン33)はここでも初回の練習走行ではオーバーオールで4位のジェントルマン・クラス首位、2回目は同じくオーバーオールで3位のジェントルマンクラスで首位、と実力を発揮しはじめます。もう1台、“55 MOTO RACING”のMototino選手(ゼッケン55)も、こうした本格的な公式レースでの経験は浅いながら、走るたびに着実にタイムを上げ、ジェントルマン・クラスで初回は8位、2回目は9位と健闘します。

ちなみにTCRジャパン・シリーズのクラス分けについて触れておくと、このレースはFIAが定めるドライバー・カテゴリーのシルバーとブロンズに相当するドライバーのみが参戦可能で、双方合わせたものをオーバーオール、ブロンズのみをジェントルマン・クラスとして、年間のチャンピオン争いを繰り広げていくかたちです。シルバーやブロンズといったカテゴライズは単純に速さだけで決められるものではなく、これまでに経験してきたレース自体の格付けや年齢など様々な要素を加味して決定されるもの。前嶋選手もMototino選手も、どちらもブロンズに相当するため、オーバーオールとジェントルマン・クラスのふたつのタイトルを狙うことができる、というわけです。もうひとつ特徴的なのは、土曜日と日曜日のそれぞれに予選と決勝が行われ、土曜日はサタデー・シリーズとして、日曜日はサンデー・シリーズとして、それぞれにチャンピオンシップがかかっていることです。

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SUGOでのラウンド2のサタデー・シリーズでは、前嶋選手はオーバーオールで予選第2位。続く決勝ではスタートと同時にトップに立つ素晴らしいダッシュを見せてくれましたが、第1コーナーから第2コーナーへとアプローチするタイミングでリアタイヤがグリップを失いスピン。ブレーキの前後バランスの調整が路面状況と合ってなかったのが要因だったようで、一度は最後尾までポジションを下げてしまいましたが、そこからは鳥肌が立つような追い上げを続け、最終的にはオーバーオールで7位、ジェントルマン・クラス3位でフィニッシュというドラマチックな展開を見せてくれました。そしてMototino選手は予選より順位をふたつ上げて、ジェントルマン・クラス8位でゴールしています。

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サンデー・シリーズの予選も、前嶋選手はオーバーオールで2位。決勝では素晴らしいスタートダッシュを決めた他車に囲まれ、1台と軽く接触し、ベテランの前嶋選手はそこでは無理に張り合わず4番手で第1コーナーに侵入していきます。すると、そこで前を往く3台が接触し合って乱れながらコースアウトしていくという、いきなりの波乱。そこを巧みにくぐり抜けた前嶋選手は、ここでトップに立ちます。このレースではこれも含めて停止してしまったマシンを回収するために2度ペースカーが入りましたが、いずれもレース再開のときには危なげなく再スタートを決め、後続を引き離し、そのままチェッカードフラッグを受けました。オーバーオールで優勝、もちろんジェントルマン・クラスでも優勝、です。またMototino選手もスタート時の混乱を見事にかわして順位を上げ、オーバーオール8位、ジェントルマン・クラス5位でフィニッシュしました。

観ていて気持ちいいぐらい、ジュリエッタTCRの速さが光ったSUGOのラウンド2でした。

TCRジャパンは、全ての決勝レースのオフィシャル映像が公開されています。SUGOでのラウンド2は以下から御覧になれますので、ジュリエッタTCRの勇姿をぜひ楽しんでください。

2019 TCRジャパン Round 2 SUGO Saturday Series 決勝
2019 TCRジャパン Round 2 SUGO Sunday Series 決勝

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ところで僕達取材班は、レースレポートのみを目的にしてSUGOまで走っていったわけではありませんでした。一番の目的は、ジュリエッタTCRはどんなマシンなのか、ドライバーやレースエンジニアの声を通じて皆さんにお伝えすることだったのでした。

まずは今回の優勝ドライバーでもあり、実績を持つベテランでもある前嶋秀司選手からお話をいただきました。

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▲前嶋秀司選手

「扱いやすいクルマですね。それにとにかくよく曲がるんです。基本特性としてはどちらかといえば弱オーバーステア(※曲がるときにコーナーの内側に巻き込んで行きやすいシャシー特性)なんですが、セッティングの自由度も高いんですよ。TCRっていうレースはクルマに手を入れることが許される箇所がガチガチに決められているんですけど、その範囲でセットアップしてもちゃんと目指した反応を示してくれるんです。ドライバーの操作に対しても忠実に反応してくれる。ものすごくコントロールしやすいクルマです。それは大きな武器ですよね。

それにタイヤに優しいクルマ。だからタイヤのマネージメントもしやすいんです。レースのスタートからゴールまでペース落ちがなくて、ずっと同じくらいのタイムをキープできる。全体的に、クルマとしてのバランスがかなりいいんでしょうね。

エンジンの排気量が他のマシンより小さい分だけトルクの面でつらいところはあって、ゼロ・スタートすると結構引けを取ると思います。ただ、コーナーでの旋回スピードが高いので、それを活かしてコーナーを立ち上がれば、ストレートでのスピードは稼げるんです。立ち上がるスピードはかなり速いし伸びもあるので、実はレース中のトップスピードも他のマシンに負けてはいないと思いますよ」

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「だから他のマシンと一緒に走っていて、抜くのに一番苦労するのはもう1台のジュリエッタ(笑)。他のマシンは旋回中に差をつめて、立ち上がりからスリップストリーム(※前車の背後に入り空気抵抗を避けるなどして走ってエンジンの余力を残し、その余力を使って加速しながら前車を追い抜く方法)を使って次のコーナーの侵入で抜くことができるんですけど、ジュリエッタ同士だと特性が一緒ですからね。

レーシングカーとしての資質は高いし、満足度も高いです。充分にトップを狙えるクルマだと思いますよ」

続いて、Mototino選手です。155に一目惚れして手に入れて以来のアルファ ロメオ好きで、アルファ ロメオで10年以上アマチュア・レースを走り、晴れてジュリエッタTCRで公式レースにチャレンジすることになったMototino選手。実はジュリエッタオーナーだったこともあるそうです。

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▲Mototino選手

「初めて乗ったときの印象は……まず嬉しかったです(笑)。アルファ ロメオ好きとして、レース好きとして、アルファ ロメオで公式戦に出られる。走らせてみたら、とってもアルファ ロメオらしいけど最初からレーシングカーとしてカッチリ作られていて、パドルのタッチなんかもすごく気持ちいい。そういう喜びと、自分だけがスリックタイヤが初めてだったりするくらいこういうレースの経験が浅いという不安と、そんな複雑な気持ちで走っています(笑)。

クルマは、イタリアから届いた基本セットアップの状態ではオーバーステアで、テストのときには何回かスピンもしました。僕はリアがドッシリしてる特性の方が好きなので、今はそれを抑えたセットアップにしてもらってます。だからということもあるのかも知れないんですけど、乗りづらさはないんですよ。全体的には変な癖はなくて、乗りやすい。もっと速さを追求していこうとすると基本特性を活かす方向に戻していく必要があるようなんですけど、この状態でもレースを戦えるぐらいには走れるし、乗るたびにタイムが速くなってます(笑)。そういう意味では柔軟で多様性があるクルマなのかも知れませんね」

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「エンジンは低回転域ではトルクが薄いんですけど、ターボが効いたら凄い。わりといきなりドーンと来て伸びていく感じで、ギャップはかなり大きいですよ。ただ、サーキットでは低回転域はほとんど使わないですから、基本、クルマは速いです。1.2トンない車体に350psですから。ストレートでも劣ってるような印象はありません。それにコーナーがかなり速いです。ポテンシャルは相当高いと思います。

普段は仕事をしていて休んで練習することもできないし、レースウィークしか乗ることができないので、なかなか学習が進まないんですけど、それでもやっぱりこのクルマでレースを走るのは楽しいです。アルファ ロメオ好きでよかったな、って思いますね」

Mototino選手のジュリエッタTCRのメンテナンスやセットアップを担っている、窪田俊浩エンジニアにもお話をうかがうことができました。

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▲窪田俊浩エンジニア

「非常にシンプルですね。シンプル・イズ・ベストというか、あまり複雑なことをやらず、抑えどころをキッチリ抑えてる、的を射たクルマという印象です。レベルは高いですよ。ポテンシャルもかなり高いです。最初のシェイクダウンのときに基本セットのまま乗らせてもらったんですけど、これでいいじゃん! っていう感じ。

実戦を走るとなるとコースやドライバーにアジャストしていかないといけない部分もあるんですけど、このクルマは手を入れるとその分はしっかり反映される。理論どおりにやっていけば応えてくれる。だから博打のような大振りはできないんですけど、逆に細かい部分をつつきながら全体のバランスを整えていって大きなものに仕上げていく、というやり方ができるクルマです」

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「だから、このクルマはこうセットすると速くなるからドライバーが慣れなさいというのではなくて、ドライバーの好みに近いセットアップから少しずつ速く走るためのセットアップに換えて、少し走ったらまた換えて、ドライバーがどんどんタイムアップしていく。そういうステップを刻むようなやり方ができるんですよ。Mototino選手はこういう公式レースでの経験が浅いわけですけど、それでも走るたびに速くなってきてるのには、本人の頑張りももちろんあるんですけど、小さな変更にもちゃんと反応してくれるクルマの性質にも助けられてる部分もあるんです。そういう意味ではジェントルマン・ドライバーにもとても適してると思います。もちろんWTCRでも勝てるぐらいのクルマですから、プロ中のプロのようなドライバーが速さを引き出すためのセットアップもできるわけですよ。ものすごく幅が広い、柔軟性のあるクルマ。ドライバーが頑張っていける要素がたくさんあるクルマですね。だからセットアップしていくのも楽しいです」

今回、ジュリエッタTCRは見事に勝利を手にしたわけですが、まだまだ大きな可能性を秘めているようです。次のラウンド3は、7月13日(土)〜14日(日)の富士スピードウェイ。ジュリエッタTCRの活躍が楽しみですね。

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Text:嶋田 智之
Photos:Hiroyuki Orihara
協力:ROMEO FERRARIS JAPAN

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