Experience 2020.02.06

イタリアのライフスタイルそのものを伝えたい。老舗チョコレート店「ヴェンキ」の挑戦

『ヴェンキ(Venchi)』は、イタリアのトリノに拠点を置くチョコレート・ジェラート専門店だ。創業は1878年。アルファ ロメオ同様イタリアを母国とし、140年を超える歴史を持つ。2019年12月12日(木)、その『ヴェンキ』の日本第1号店が銀座松屋通りにオープンした。なぜこの地、タイミングだったのか。『ヴェンキ』が見据える未来とは──。ヴェンキ・ジャパン株式会社の小﨑正貴社長に日本進出にかける思いを聞いた。

イタリアで絶大な知名度を誇る『ヴェンキ』が日本初上陸

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ヴェンキ』は、現在、世界各地に100を超える直営店を持つ、昨年創業141年を迎えた老舗高級チョコレート店だ。これまで日本に直営店がなかったのが不思議なくらいだが、小﨑正貴社長は「満を持してです」と笑う。

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▲ヴェンキ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 小﨑正貴氏

日本ではまだ知らない人も多いかもしれないが、欧米では『ヴェンキ』は絶大な知名度を誇る。イタリアを旅したことがある人は、ローマやミラノの街角で、また空港で店舗を見かけたことがあるのではないだろうか。
「SNSで“待っていました!”といったコメントを目にし、これほどたくさんの方が心待ちにしてくださったのだと驚くと同時に、とてもうれしく思いました」
銀座店の開店当日には、90分待ちを超える行列ができた。

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▲ジェラートコーンのファサードは全世界共通。「ヴェンキといえばチョコレートだった。ジェラートもやっているということをうたいたかったのですがおかげさまですっかり浸透しました」(小﨑社長)

1号店を銀座に構えたのは、「銀座の街がコンセプトに掲げている“伝統と革新”というキーワードに通じるものがあったこと。また幅広い年齢層、国籍の方が往来する銀座なら、たくさんの方に、『ヴェンキ』のチョコレートを楽しんでいただけると考えたからです」
実際、『ヴェンキ』が日本に上陸したと知りわざわざ訪れるお客様も多いが、カラフルなジェラートのオブジェが目をひくファサードに吸い寄せられるように、通りすがりに立ち寄る人も少なくないそうだ。

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▲銀座店のオープンを祝して制作されたポスタービジュアル

イタリアのチョコレート文化を伝えたい。

『ヴェンキ』は、イタリアのチョコレート文化そのものを伝えるブランドでもある。日本ではチョコレートというと、イタリアよりも、フランスやベルギー、スイスの印象が強いかもしれないが、小﨑社長は、「ヨーロッパの国で、一般の人々に最初にチョコレートが浸透したのは、イタリアだと言われているんですよ」と語る。
なかでも『ヴェンキ』の拠点であるトリノは、ヘーゼルナッツ入りのチョコレート『ジャンドゥーヤ』の発祥の地でもある。

『ジャンドゥーヤ』が生まれた経緯について簡単に紹介しておこう。
1806年、ナポレオン・ボナパルトは、領土拡大と経済発展を目指し、近隣諸国に高額な関税をかけた。さらに、産業革命真っ只中のイギリスを経済的に封じ込めようと、ヨーロッパ諸国と英国とその植民地との交易を禁じる“大陸封鎖令”を発令。イギリスは海上封鎖で対抗し、その結果、英領であった南米産のカカオの価格が暴騰した。当時、フランスの支配下にあったトリノもその煽りを受けた。

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▲ジャンドゥーヤは一個ずつ金銀の包装紙で包まれたチョコレートとしても知られている。チョコレートにヘーゼルナッツを混ぜると艶がなくなるため、少しでも見栄えがするように金銀の輝きを利用していたのだ。

しかし、当時すでにチョコレートはトリノの人々にとってなくてはならないアイテムとなっていた。菓子職人のミケーレ・プロシェは、ピエモンテの特産物であるヘーゼルナッツを粉末にし、カカオと混ぜ、『ジャンドゥーヤ』を作り上げる。そのジャンドゥーヤを創業時からの伝統的なレシピで作り続けているのが、1878 年、シルヴィアーノ・ヴェンキがトリノの地に、自らの名を冠して開業したチョコレートショップ『ヴェンキ』である。

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『ヴェンキ』では量り売りスタイルを採用している。銀座店では、43種類のチョコレートを1粒から選ぶことができるほか、多彩な詰め合わせギフトボックスやチョコレートバー、スプレッドなども用意。商品の展開は店舗により異なるが、銀座店では、「日本人の嗜好を意識するというよりも、本国のイタリアで支持されているものをバランスよく取り揃えました」。

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「色とりどりで眺めているだけでも素敵でしょう?」と、小﨑社長は相好を崩す。「この心躍るような内装も、『ヴェンキ』の特徴なんです」。

カラフルな包装紙をまとったチョコレートは、どれもこれも魅力的だが敢えておすすめをと尋ねると、「やはり『ジャンドゥイオット(ジャンドゥーヤ)』、そして、3層からなる四角いチョコレート『クレミノ』です。どちらもブランド創業時からの伝統的なレシピで作っています」と、小﨑社長は教えてくれた。『ヴェンキ』で販売されているチョコレートは、イタリアのチョコレート文化そのものといっていい。

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▲左;ジャンドゥイオット(エクストラダーク) / 右:クレミノ(ピスタチオ)

ジェラートラボが併設、本格ジェラートが味わえる

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▲ジェラートは、ピッコロ2つ、レゴラーレ3つ、グランデ4つまで好きなフレーバーを選ぶことができる。1つのフレーバーのみで注文も可能

「1年中、チョコレートを美味しく食べてほしい」という思いから、『ヴェンキ』では2007年からジェラートの販売も行っている。「イタリアでは、夕食後、ジェラートで締める人が多いんですよ」

銀座店でも店舗の2階にジェラートラボを併設。合成香料、フルーツアロマ、着色料、添加物の使用を極力おさえ、鮮度にこだわったジェラートを作っている。ラインナップは16種。『ヴェンキ』にはジェラートのレシピが90種類以上あるが、銀座店では「本社と相談しイタリアらしいもの、また、チョコレートを食べてほしいという思いもあるので、チョコレートをベースにしたものを多く選びました」

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なるほど、エクストラダークチョコレートのソルベ『アズテコ』、ジャンドゥーヤの『ジャンドゥイオット ベネズエラ』など、16種のうち5種がチョコレート系のジェラートだ。店名の表記が誇らしいカスタードジェラートの『ヴェンキクリーム』は、「卵黄を使ってこってりと仕上げています。卵を使うと品質管理が大変になるのですが、そこは譲れませんでした」とのこと。

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▲『アズデコ』×『ヴェンキクリーム』のジェラート。グルメコーンはラズベリー。

『ヴェンキ』のジェラートは空気の含有量が少ないのが特徴だ。
「私どものジェラートは他社のものに比べ、だいぶオーバーラン(アイスを攪拌しながら凍らせる際に混入された空気の量)が低いと思います」と小﨑社長は語る。オーバーランが低いと香りが立ち、濃厚さが増す。レシピも、使用する機械も主な原料もイタリア本国となんら変わらない。

「牛乳だけは日本のものを使っています。オープニングの際、イタリア本国の社長が来日したのですが、完璧だとお墨付きをいただきました(笑)」

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イタリアのライフスタイルそのものを紹介したい

本社からは、『ヴェンキ』の「ありのままのスタイルを貫くこと」を求められているそうだ。銀座店オープンに際し、小﨑社長は本国まで足を運び研修を受けたという。工場で、ジェラートやパッケージを作った。店頭も立った。また、レシピ開発者から、カカオ豆の違いも仔細に教わった。

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「140年の歴史を持つチョコレート店のものづくりへの強い思いを実感しました。そんな本国のこだわりを、アレンジせず、そのままのかたちで伝えることが私たちの役割です。イタリア人は、日々の小さなことに幸せを感じています。私どもは商品だけでなく、そんなイタリアのライフスタイルそのものを紹介したいと考えています。今日1日、頑張った自分へのご褒美にチョコレートショップに立ち寄る──、そんな風にヴェンキをご利用いただければうれしいですね。実は私も週に3回は、仕事帰りにジェラートを食べているんですよ(笑)」

創業から140年以上。『ヴェンキ』は、トリノ・ピエモンテ発祥のチョコレートブランドであることに誇りを持ち、ただ実直に、人々に喜ばれる、素材にこだわったチョコレートを作り続けてきた。そして、それがイタリアをはじめ、たくさんの人に受け入れられ、いまや世界を代表するチョコレートブランドとしての地位を確立している。

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「日本市場においてどうしたいというよりも、イタリアで誕生し、イタリアのチョコレートの歴史そのものを反映するような、『ヴェンキ』のチョコレートの味そのものを楽しんでほしい、『ヴェンキ』のチョコレートで、日々小さな幸せを感じていただきたいと考えています」

2020年3月には、池袋に日本2号店がオープンする。まだ正式発表にはなっていないが、3号店も出店が決まっているそうだ。「これから先も100年続くブランドでありたいと思っています」と、小﨑社長は未来を見据える。

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INFORMATION
ヴェンキ 銀座店 Venchi Ginza

住所 東京都中央区銀座4-3-2
TEL 03-5579-5930
営業時間 9:00~21:00
定休日 なし ※混雑状況により20:00以降の入店を締め切る場合あり
URL https://venchi.co.jp

 
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Text:長谷川あや
Photos:まるやゆういち

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