F1 / Alfa Romeo Racing 2020.05.08

開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性

新型コロナウイルスの感染が拡大している影響で、2020年シーズンのF1は開幕が延期されている。しかしその空白期間を埋めるため、様々なeスポーツが開催。現役F1ドライバーたちも、これに積極的に参加している。現在の危機は、将来のモータースポーツ、そしてeスポーツの未来を垣間見せる機会になっているのかもしれない。今回そのeスポーツのうちのひとつ、先月開催された『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』を紹介する。

現役F1ドライバーが参戦!『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』が開催

本来ならば今頃、2020年のF1は第4戦中国GPまでが終わっているはずだった。しかし、新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大していることを受け、F1の開幕が延期。現時点では第9戦までの延期が決まり、うち伝統の1戦であるモナコGPは、中止となっている。

オフシーズンの間、F1の激しいバトルを待ち望んでいた世界中のファンにとっては、さらに数ヵ月間にわたって待つ時間が長くなってしまったことになる。

しかしそんな“空白期間”を埋めるため、F1は様々な企画を展開。そのうちのひとつが『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』である。昨今注目を集めるeスポーツ(コンピュータゲームをスポーツ競技として、腕を競い合うモノ)。それを活かし、実戦さながらのバトルをお茶の間にお届けしようというのだ。eスポーツならばオンラインでプレイヤーを繋ぎ、接触を避けつつも戦うことができる。今の時世にはうってつけのコンテンツだとも言える。

screenshots-f1-2019-1 開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性

この『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』は、F1の公式ゲーム『F1 2019』を使って行なわれており、シャルル・ルクレール(フェラーリ)やアレクサンダー・アルボン(レッドブル)、カルロス・サインツJr.(マクラーレン)など、現役F1ドライバーが参加。アルファ ロメオからはアントニオ・ジョビナッツィが名を連ねている。その他、サッカー選手やプロゴルファー、そしてユーチューバーなども参加。本来ならばレースが行なわれる予定だった週末にイベントが設定され、その模様はYouTubeなどで生配信されている。最近はDAZN(ダゾーン)でも、日本語実況付きでの配信が始まっている。

ここまで3レースが行なわれ、1戦目はルノーのテストドライバーである周冠宇が優勝。第2戦と第3戦はルクレールが連勝している。
アルファ ロメオのジョビナッツィは、第2戦バーチャル・ベトナムGPから参戦。ルクレールの弟であるアーサー・ルクレールに敗れはしたものの、初挑戦で5位となった。続く第3戦でも、ネットワークのトラブルにより途中リタイアとなったものの、14番グリッドからのスタートにも関わらず、すぐさまトップ10圏内に浮上するなどバトル強さを発揮した。

またこの第3戦では、昨年F2のレース中に大事故に遭い、大怪我を負ったファン-マヌエル・コレアもアルファ ロメオのドライバーとして参戦した。

eスポーツが注目される理由とその魅力

eスポーツは、近年では世界でも注目度が高まっている。それは日本も例外ではなく、国体の種目としても数えられている。ただそんな中でも、eスポーツにおける“レース”は、特別な存在だと言えるのではないだろうか。

screenshots-f1-2019-1-2 開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性

eスポーツで争われる種目は、サッカーや野球、パズルゲーム、そしてレースなどだ。そのほとんどが、ゲーム用コントローラーで操作を行なう。しかしレースの場合は、ハンドルとアクセル、ブレーキなどを備えた専用のコントローラーを使用。つまり、実際のレーシングカーを操るのとほぼ同じ操作で腕を競い合うのだ。他のeスポーツと比べれば、格段に実際の競技との操作性が近い。

『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』もそれと同じ。だからこそ、現役ドライバーがすぐに高いレベルのパフォーマンスを発揮することができるのだ。

f1-2019-screenshots-1 開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性

実際、eスポーツ出身のレーシングドライバーも既に複数いる。日本のスーパーGTを走っているヤン・マーデンボローはその最たる例。またF1のサポートレースとして開催されているFIA F3に今季から参戦するブラジル人ドライバーのイゴール・フラガは、レッドブルの育成ドライバーとしてF1を目指している。

これまではレーシングカートがF1ドライバーに向けての最初の一歩だった。しかし今後は、eスポーツ出身のレーシングドライバーが増え、そこからF1にたどり着くドライバーが出てくることになるだろう。

なお今回紹介した『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』以外にも、現在新型コロナウイルスの影響で実際のレースが行なえない間、様々なeスポーツイベントが実施されている。アメリカのインディカーやNASCAR、2輪レースのMotoGPもオンラインでの戦いが開催され、現役ドライバーやライダーが多数参戦しているのだ。日本のレース界でも、多くのeスポーツレースが行なわれている。

screenshot-f1-2019-1 開幕延期のF1。新型コロナ危機で見えた、eスポーツレースの可能性

eスポーツのレースは、たしかに市販のゲームを使って争われるモノだ。しかし、そのグラフィックスは年々進歩しており、今では実物と見紛うほどの出来になり、実際のレースと同様のスキルがプレイヤーには求められる。その結果、実際のレースと変わらぬほど見応えあるバトルが展開されているのだ。

今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、メーカーやチーム、そして運営団体に対して大きな経済的ダメージを与えており、危機的な状況に追いやっている。しかしその一方で、将来に向けた動きも加速させることになった。そしてeスポーツの可能性を世間に知らしめ、eスポーツからF1へという流れを加速させることになるかもしれない。

2020年のF1はいつ開幕できるのか、まだまだ先が見えない状況だ。しかしその間、F1ドライバーたちはバーチャルの世界で熱い戦いを繰り広げる。次は5月10日に、『バーチャル・スペインGP』が予定されており、その他にも数多くのeスポーツ・レースが行なわれる。実際のレースの開幕は実に待ち遠しいが、今は彼らの戦いをオンラインで観て、そして実際のレースが始まった時には、思う存分楽しもうではないか。

『F1 eスポーツ・バーチャル・グランプリ』第3戦のハイライトはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=S87ETf6wor4

Text:田中健一(motorsport.com日本版)
Photos:Codemasters

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