News 2018.10.22

アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

自動車ジャーナリスト 河口まなぶ氏によるステルヴィオ試乗インプレッション。ルーツである伊ステルヴィオ峠で体感した“アルファ ロメオの血”とは?

Alfa Romeo Stelvio(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』の日本デビュー記念キャンペーンの一環として、イタリア・ステルヴィオ峠をロードバイクで駆け抜けるツアーが行われた。本ツアーに、自転車愛好家としても知られる自動車ジャーナリストの河口まなぶ氏が同行。ステルヴィオ誕生のルーツでもあるこの峠で、SUVの枠を超える圧倒的なパフォーマンスを体感した。

河口まなぶ氏が語る、ステルヴィオの鋭いパフォーマンス

イギリスのTV番組『トップギア』では、「世界最高のドライビング・ロード」と評されたステルヴィオ峠。イタリアの北部に位置し、ミラノから約200kmの山中にあるこの峠は、実に48ものヘアピンカーブを擁する他にも、この場所へ辿り着くまでの道路もまた素晴らしいロケーションにある、世界屈指のワインディングロードだ。

stelvio_mondo_1 アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

そんな素敵な場所の名前を冠したステルヴィオ。このアルファ ロメオの新世代SUVのルーツを走る機会が巡ってきた。とても興味深かったから二つ返事でイタリアへ飛んだ。

ミラノの空港でステルヴィオを受け取り、アウトストラーダ(高速道路)を走って街中のホテルを目指した。そんな初対面でまず印象的だったのは、とてもクイックな設定のステアリングだった。ステルヴィオは走り出して一つ目のカーブで、僕の操作に対して瞬時に反応してくれる。まるでスポーツカーのような鋭さに、最初は面食らう。しかし、これは思い返せば『Alfa Romeo Giulia(アルファ ロメオ ジュリア)』に初めて触れた時も感じた印象だった。ジュリアの場合は、サルーンなのに驚くほどクイックなステアリング・ギア比の設定だな、と思ったのだが、その後はすぐに慣れてむしろ、その反応の良さが独自の味と感じた。それと同じことがいま、目の前のステルヴィオでも再現されていた。だから僕は、SUVなのに驚くほどクイックだな、と感じたのだが、すぐに慣れた。そしてなるほどこの反応の良さこそ、現代のアルファ ロメオの味わいを構成する要素のひとつ、と理解したのだ。

翌朝、ホテルを出てミラノの街を抜けて再びアウトストラーダで、ステルヴィオ峠の麓の街であるボルミオを目指した。

朝のミラノの街中は、我先にと隙間を目指して車線など関係なくクルマが入り乱れる。そんなシーンで、昨日印象的だったクイックなステアリングが活きる。小気味よくステルヴィオは向きを変え、狙ったところにスッと入っていけるのだ。またこの時、2.0Lの直4マルチエアの力の出方も絶妙。低回転から最大トルクが発揮されるため、少しのアクセル開度で即座に力を手に入れることができる。だから街中では決して小さくないステルヴィオが、キビキビと走ってくれるのだ。

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一方で、アウトストラーダでは高い直進安定性とフラットな乗り味を見せてくれる。高速域でもサスペンションがしっかりと4本のタイヤを路面へと押さえつけつつ、ボディ自体は常に水平を保ってくれる。昨日感じたステアリングのクイックさは、通常こうしたシーンでは直進安定性を損なう要素になりかねないが、ステルヴィオはその辺りもしっかりと考えられており、クイックで反応の良さはありつつも直進性も両立する。この辺りは、ジュリアに通ずるものがあると感じる。

ミラノを出発して途中コーヒーブレイクを入れつつ、ボルミオの街に到着した。この街の入り口で地元のリストランテのランチにありつき、エスプレッソを飲んで早速ステルヴィオ峠へと向かっていく。

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連続するヘアピンカーブで確信した、ステアリング性能の真価

ボルミオの街は、ロードバイクやトレイルランニングなどのスポーツアクティビティの起点ともなる街。そんな街からロードバイクでステルヴィオ峠を目指す人も多い。またモーターサイクルもひっきりなしに走っており、みんなが峠を目指して行く。そしてもちろん、自動車は家族を乗せたセダンやワゴンを始め、スポーツカーも少なくない。そんな中をステルヴィオも一緒に上がって行く。

道路が徐々に細くなり、カーブがどんどんきつくなって行く。そしてしばらく行くと、車1台がようやく通れる交互通行のトンネルがあり、そこを抜けるとヘアピンカーブが連続する。谷側はかなり切り立っていて、その横を抜けていくスリリングな感覚。そして目の前には雪をかぶった山々が広がる。

stelvio_mondo_4 アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

少し行くと、さらにヘアピンカーブの連続。下から見ても相当のつづら折れになっているのがわかる。ここがステルヴィオ峠なのかと感慨を覚えつつ、ヘアピンをこなしていく。ステルヴィオのクイックなステアリングはここでも相当に効果を発揮する。この峠のヘアピンは、いわゆるフルロック近くまでステアリングを回す必要があるが、その際にステアリングを持ち替えずに回りきることができるのだ。まさにこうしたワインディングを走り、研究し尽くしたからこそのセットアップといえるだろう。

そうしてどんどん峠を上がって行くと、大きく開ける場所があり、ここもまたタイトではないが美しいワインディングを堪能できた。そうして頂上のロッジがある辺りまで行き、そこを起点に我々は撮影をした。そしてこの日は終了したのだ。

が、なにか腑に落ちない。と思いつつ、ホテルに戻ってグーグルマップで走った場所を確認する。するとそこは、確かにステルヴィオ峠に至る道なのだが、ステルヴィオ峠そのものではないことが分かったのだった。

そして翌日、昨日のロッジからさらに反対側へ進んで行くと……目の前の光景に圧倒された。雪をかぶった山々が、近くにも遠くにも見えて、さらにその山々は相当に切り立っている。そして谷の方を覗くと……そこに無数のヘアピンが連なって、みごとなつづら折れをなしていたのだった。ここが本当のステルヴィオ峠だった。

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即物的なスポーティさとは対極にある、走りの真骨頂

ステルヴィオ峠は、昨日の峠よりも道幅が狭い上に勾配もキツく、その上ガードレールがない。その代わりに、石でできたブロックがガードレール代りになっていた。それは城の周りを囲む取り付け道路を思わせるものだった。

早速ステルヴィオを走らせてみる。すると昨日よりもさらに忙しいステアリングワークを要求されることに気づく。しかしながら持ち前のクイックさで難なくこなしていく。すぐにシフトレバー後ろのDNAダイヤルからDを選ぶ。するとエンジンはさらにレスポンスを高めて、気持ち良いエグゾーストノートを響かせる。これにも驚かされた。なぜならそのサウンドは明らかにスポーツカーを思わせる響きだからである。

必然的に気持ちは高揚する。そしてステアリングコラムに取り付けられた大きなパドルを操作して、MTライクにドライビングを楽しむ、味わう。

そしてここから、アルファ ロメオが導く走りの真骨頂が展開されていくのだ。

クイックで鋭いステアリングに、レスポンスよく気持ち良いサウンドを響かせるエンジン。それが実に活き活きとしたものに感じられるのは、優れたシャシーがあるからに他ならない。

アルファ ロメオの乗り味走り味は、他のブランドに比べても独自の個性がある。その理由はなんといっても、サスペンションの絶妙なセッティングにある。僕はかつて『Alfa Romeo MiTo(アルファ ロメオ ミト)』を所有したことがあり、仕事ではもちろん数々のアルファ ロメオを走らせてきた。そうした中でアルファ ロメオは、駆動方式やボディ形状を問わず、どのモデルでも同じ走りを見せてくれるのである。

言葉にすると難しいのだが、アルファ ロメオのモデルはどれも、しなやかにボディを動かしてコーナリングする。

クイックなステアリングでシャープに曲がるきっかけを作るものの、その後のボディの動きは実にユニークだ。操舵によってボディにはロールが生まれるのだが、アルファ ロメオではこのロールの生まれる時のボディの動きに、実はしなやかな感覚が伴う。これは、ステアリング操作に対してギュッと向きを変えるような即物的なスポーティさとは対極にあるものだ。

特に顕著なのは、フロントから始まったロールがリアへと移り、リアの外輪が最大に踏ん張った時。この時も他のクルマのようにガッチリと踏ん張ってロールの動きを止めてしまうのではなく、さらにここから少しリアの外輪がスライドをするような感覚で回り込むような動きをしてくれる。これはコーナリングの内輪を支えるサスペンションが伸びきっていながらも路面を離さず、なおかつ外輪が綺麗に沈み込むからこそできる動き。

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だからアルファ ロメオの各モデルは、FFだろうが4WDだろうが、コーナリングではリアを回り込ませてまるで後輪駆動を思わせるような動きを感じさせる。

特にFFや4WDでスポーティな走りをする他ブランドの場合は、フロントでグイっと向きを変えてロールをなるべくさせないようにしてリアで踏ん張りきって強引に曲がる場合が多いが、アルファ ロメオはそれとは対極のしなやかな動きで姿勢の自在性が高い。そしてこれはもちろん、ステルヴィオにも共通する動きである。

クイックなステアリングはきっかけを作る道具で、あとはボディの動きで曲がって行く感覚。そしてここにレスポンスの良いエンジンが融合して、アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールドを構築してくれる。

こうしてステルヴィオ峠で、ステルヴィオを解き放ってみると、そこには最高の時間が流れたのだった。世界屈指のワインディングロードにインスパイアされたクルマで駆け抜ける。もはやSUVであることを完全に忘れさせるものであると同時に、その感触はまさにアルファ ロメオでしか味わえないもの、と思えるのだ。

単なるSUVとは一線を画す“アルファ ロメオの血”が通うクルマ

そうしてひとしきりステルヴィオ峠を走らせてステルヴィオから降り、クルマを眺める。すると空から舞い降りる光が、ボディの実に繊細な表情を際立たせくれたのだった。

翌日、僕は今回のツアーに参加している元プロ ロードレーサーの宮澤崇史さん、そしてツアーの当選者であるご夫婦とともに、このステルヴィオ峠をロードバイクでも走った。この場所はイタリアのグランツールであるジロ・デ・イタリアのコースでもある。

stelvio_mondo_8 アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

それだけに、かなりキツいヒルクライムであることも間違いない。急な登坂ではすぐに息が切れ、前へ進む力が削がれて行く。さらにカーブはきっちりとヘアピンで折り返しており、ここの内側はさらに勾配がキツい。

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なんというコースだろう…と思うと同時に、ここを昨日ステルヴィオは何のストレスもなく走っていったのだから、やはりクルマは偉大だし、その中でアルファ ロメオらしさに溢れた味わいを提供してくれるのだから、なんとエンターテイメント性に満ちた1台なのか、とも思えたのだった。

そしてこのイタリアの旅では、何度もステルヴィオのステアリングを握ったわけだが、走らせるほどにクルマが身体に馴染んで行くアルファ ロメオならではの感覚も味わうことができたのだった。

stelvio_mondo_10 アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

そう思うとステルヴィオは、現代を生きるための優れた道具である一方で、単なるSUVとは一線を画した“血”が通っていることを意識させる1台でもあると思えた。

生活の中で、ともに暮らしながら、望めば素晴らしい世界を味わわせてくれる存在。その意味でもステルヴィオはまさに、“アルファ ロメオ”だったのだ。

PROFILE

河口 まなぶ

stelvio_mondo_11 アルファ ロメオならではの官能的なドライビング・ワールド──河口まなぶ氏が、ステルヴィオ峠をステルヴィオで攻める。

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。2010年にWeb上の自動車部「LOVE CARS!」を設立し主宰。Facebook上に「大人の自転車部」を設立し主宰。また同じくFacebook上に「初めてのトライアスロン部」を設立し主宰。TV、新聞、Web、各種自動車メディアに出演・寄稿を行うほか、YouTubeでは独自の動画チャンネル「LOVE CARS!TV!」で動画を配信。Yahoo!ニュースに個人でも自動車に関する記事を発信している。趣味は水泳、自転車、マラソン、トライアスロン。トライアスロンでは毎年アイアンマンレースを完走している。

出典:東洋経済WEB

Text:河口 まなぶ

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