News 2019.05.16

いよいよ開幕するTCRジャパン・シリーズ。2台の参戦が決まっているジュリエッタのテスト走行をレポートする。

2019年より始まるTCRジャパン・シリーズ。参戦するジュリエッタのテスト走行の様子を、モータージャーナリストの嶋田智之氏が、ロメオ・フェラーリス・ジャパン代表である高橋誠輝さんへのインタビューを交えながらレポート。ジュリエッタのスポーツ性の高さやアルファ ロメオとレースの歴史とともに解説する。

以前、昨年の10月に鈴鹿サーキットで開催されたWTCRことFIA世界ツーリングカー・カップで『Alfa Romeo Giulietta(アルファ ロメオ ジュリエッタ)』が優勝を飾り、アルファ ロメオにとっての11年ぶりのワールド・タイトルを争うツーリングカー・レースでの勝利を挙げたことをレポートさせていただきました。そのレポートの最後を“ジュリエッタのレーシング・マシンが日本のレースを走ることになるかも”と思わせぶりな言葉で結んだのですが、ようやくちゃんとしたかたちで皆さんへお伝えすることができるようになりました。

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アルファ ロメオ・ジュリエッタTCR、今シーズンからスタートするTCRジャパン・シリーズを走ります。それも2台。1台は“GO&FUN Squadra Corse”、もう1台は“55 MOTO RACING”からのエントリーです。
アルファ ロメオが日本国内のメジャーレースを走ったのは、直近では2000年と2001年のスーパー耐久レースへの、チーム・イエローマジックによる『アルファ156』での参戦。これは市販の156ツインスパークをベースに、国内でレース仕様に仕立てたマシンでの参戦。様々な面で有利な日本勢を相手に苦戦しながらも、何度か入賞を果たしました。そしてファンの間では今も語り草になっているのが、1994年と1995年の“JTCC”こと全日本ツーリングカー選手権への、ユニコルセ・レーシング・チームによる155 D2 シルバーストーンでの挑戦です。
当時はFIAクラス2規定による通称“スーパー・ツーリングカー”によるレースが世界的に大人気で、JTCCにも国内メーカーが大挙してワークス参戦していました。ユニコルセはそんな中に、本国のワークスマシンといえるアルファ・コルセ製作の155 D2を持ち込んで戦いを挑んだのです。関西拠点のチームゆえ阪神大震災の影響を受けて順調にプロジェクトを進めることは叶いませんでしたが、幾つかのレースでポイントを獲得する速さを見せてもらうことができて、当時のアルファ ロメオ・ファンは大袈裟でなく感涙したものでした。アルファ ロメオ・ファンがモータースポーツに夢を見ることができた、素晴らしい時代だったのです。

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そしてこの2019年、僕達は再び、日本国内で公式戦を戦うアルファ ロメオの勇姿を見ることができるようになるのです。これを喜ばずして何を喜べばいいのでしょう?

……と興奮する前に、TCRというレースとジュリエッタTCRというマシンについて、もう一度軽く触れておきましょう。

このレースは、現時点におけるツーリングカー・レースの最高峰のカテゴリーであり、その頂点にはWTCRというワールド・タイトルを争うシリーズがあります。WTCRはFIAの“TCR”規定によって細かくマシンのレギュレーションが定められていて、全長4200mm以上、全幅1950mm以下の4ドアか5ドアの前輪駆動車、エンジンは2000cc以下の量産型4気筒シングル・ターボ、サスペンションは量産型のレイアウト/設計を維持、車重はレース用ギア・ボックスを使用する場合にはドライバー込みで1265kg以上などなど、ベース車両に対して改造できる範囲が決められています。そして自動車メーカーのワークス・チームおよびセミ・ワークス・チームの参戦は禁じられており、プライベート・チームのみによって争われます。TCRジャパン・シリーズは、そのWTCRの下部カテゴリー的な国内戦であり、レギュレーションもほぼ準じていると考えていただいていいでしょう。

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TCRジャパン・シリーズを走る2台のジュリエッタも、このWTCRに参戦しているマシンと基本的に同じです。イタリア本国でアルファ ロメオやアバルトと協力関係にあるレーシングカー・コンストラクター兼コンプリートカー・メーカーの“ロメオ・フェラーリス”が、市販のジュリエッタをベースに開発・製作しているマシンです。規定の範囲内で車幅とトレッドを拡大したほか、エアロダイナミクスの部分やシャシー周りも競技向けに改良し、エンジンはジュリエッタ・ヴェローチェの “1750”こと1742cc+ターボを350ps/6800rpm、420Nm/3500rpmまでチューンナップし、6速のドグリング式ギアボックスと組み合わせて搭載しています。車重はミニマムの状態で1145kgまで軽量化されています。

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このマシンを駆るドライバーは、“GO&FUN Squadra Corse”は前嶋秀司選手。スーパー耐久レースなどで上位入賞の常連となっている、経験豊富なドライバーです。そして“55 MOTO RACING”は、Mototino選手。アルファ・チャレンジなどのアマチュア・レースからステップアップしてきたジェントルマン・ドライバーです。また“GO&FUN Squadra Corse”にはエグゼクティブ・アドバイザーとして、スーパーGTでも活躍し、スーパー耐久レースや数々のワンメイク・レースでのチャンピオン経験も持つ佐々木雅弘選手がサポートし、“55 MOTO RACING”にはかつてJTCCに155D2で参戦していたユニコルセの大川謙治代表が帯同します。
実は3月にTCRジャパン・シリーズの公式テストが富士スピードウェイで開催されたのですが、2台のジュリエッタTCRと2名のドライバーは参加することができませんでした。イタリアでのマシンの製作と調整にかかる日程と合わず、上陸が間に合わなかったのです。そのためロメオ・フェラーリスの日本の窓口である“ロメオ・フェラーリス・ジャパン”が中心となって、4月22日と23日にマシンのシェイクダウンを兼ねたプライベート・テストが、同じ富士スピードウェイで行われました。

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そのときの様子を、ロメオ・フェラーリス・ジャパン代表である高橋誠輝さんからうかがうことができました。

「初日はあくまでもシェイクダウンで、クルマの感触を探ってセットアップの方向性を考えるのとドライバーに慣れてもらうことを目的にしてたんです。だから最初はイタリアからきたままの、基本的なセッティングの状態のままで走りました。まだマシンが未知の段階だから、当然、フル・アタックなんていていません。なのに、最初の走行の20分めぐらいで、1分50秒フラットというタイムが出たんです。3月の富士でのテストでは、他のマシンでプロがタイムアタックをして1分48秒ぐらい。3月の方が気温が低くてエンジンのパワー的に有利だったことを考えると、今回のジュリエッタのタイムはかなり期待のできるレベルですよね。
そのタイムは“GO&FUN Squadra Corse”のアドバイザー、佐々木選手が出したものだったんですけど、その後に前嶋選手も同じくらいのタイムを出してました。“55 MOTO RACING”のMototino選手は1分53秒台でしたけど、それは3月のテストのときの他車のジェントルマン・ドライバーとほぼ同じぐらいのタイム。気温差を考えると、Mototino選手の方もかなりいいタイムだと思います。

佐々木選手によると“コーナーからの立ち上がりからストレートが遅い。もっとパワーが欲しい”ということなんですけど、それはジュリエッタTCRが他のマシンより排気量が250cc小さくて、ちょっとトルク不足だからなんでしょうね。それでもタイムはいい。コーナリング・スピードが速い、ということですね。タイヤの減り方も綺麗だったから、マシンに変な癖のようなものもないんだろうと思います。その辺りは本国の(ロメオ・フェラーリス代表)のマリオ・フェラーリスさんからも聞いてたんですけど、まさにそのとおり。ツルシの状態でこれだけのポテンシャルですから、これからそれぞれのサーキットに合わせてセッティングをして上手く決まれば、上位のいいところを走れるんじゃないかと思います。それが確認できた有意義なテストでした。

実は僕個人もイタリア車が好きでアルファ ロメオ・ファンで、ユーザーでもあるんです。だから今回、アルファ ロメオのレーシングカーが日本のサーキットを走ってる姿を見て、涙が出そうになるくらい感動しました。ジュリエッタTCRは、僕と同じようなアルファ ロメオ・ファンのために走らせるようなもの。皆さんにも2台のジュリエッタを応援して、楽しんでいただけたら本当に嬉しいです」

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前のレポートの時にも記しましたが、こうした市販車ベースのレーシングカーの場合には、ベースとなる車両のクルマとしての基本的な資質がとても重要です。いかにモディファイが認められているとはいえど、もともと持っている基本的な物理特性などを激変させることはできないからです。ジュリエッタTCRも、市販のジュリエッタ同様、素晴らしいコーナリング・パフォーマンスを持っている、ということですね。

TCRジャパン・シリーズの開幕戦は、5月18日(土)〜19日(日)のオートポリス(大分県)。そして6月22日(土)〜23日(日)の第2戦/スポーツランドSUGO(宮城県)、7月13日(土)〜14日(日)の第3戦/富士スピードウェイ(静岡県)、9月28日(土)〜29日(日)の第4戦/岡山国際サーキット(岡山県)、10月25日(金)〜26日(土)の最終戦/鈴鹿サーキット(三重県)と続きます。

また機会を作って、今度はドライバーによるインプレッションやレースの成り行きなどをレポートしたいと考えていますが、いずれにしても楽しくなりそうな予感。まずは開幕戦の行方を、全力で見守りながら応援しましょう!

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Text:嶋田 智之
Photos:Hiroyuki Orihara
協力:ROMEO FERRARIS JAPAN

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