News 2019.01.11

WTCR鈴鹿でアルファ ロメオ ジュリエッタが優勝!ジュリエッタのスポーツ性の高さに迫る。

ツーリングカーレースの最高峰、FIA世界ツーリングカー・カップ(WTCR)にロメオ・フェラーリスが運営するチーム・ミュルザンヌが参戦し、アルファ ロメオ ジュリエッタが初勝利を挙げた。オーナーのマリオ・フェラーリス氏、ドライバーのケヴィン・チェッコン選手のコメントを交えながら、モータージャーナリストの嶋田智之氏がジュリエッタのスポーツ性の高さについて解説する。

2018年はF1グランプリへアルファ ロメオの名前がカムバックしたり、日本へも待望の『Alfa Romeo Stelvio(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』が導入されたりと、ファンにとって心が浮き立つ1年でした。が、もうひとつ、諸手を上げて喜ぶことのできる大きなトピックがあったことを御存知でしょうか? 2018年からスタートした新しいツーリングカー・レースの世界選手権、WTCRことFIA世界ツーリングカー・カップで、『Alfa Romeo Giulietta(アルファ ロメオ ジュリエッタ)』が優勝を飾ったのです。まさしく「待ってたぞ!」な出来事だったのでした。

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なにゆえ「待ってたぞ!」なのか。アルファ ロメオの歴史を知る皆さんなら、いわずともお解りでしょう。かつてアルファ ロメオは、スポーツカー・レースはもちろんのこと、市販モデルをベースとしたツーリングカー・レースにおいても強豪中の強豪と呼ばれる存在でした。が、時代の流れの中でレース参戦の規定にマッチしたベース車両が市販モデルのラインナップからなくなり、“速いハコ”であることを証明するそのレースの中に、伝統的な名前が不在であった期間が続いてきていました。ワールド・タイトルを争うツーリングカー・レースへ最後にアルファロメオがフル参戦していたのは、2007年のWTCCこと世界ツーリングカー選手権。そしてそのシーズンに156が2勝を挙げていますから、11年ぶりの復活、そして勝利だったのです。これを喜ばないわけには、さすがにいかないでしょう。

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──と盛り上がる前に、ちゃんとご説明しましょう。

まず、WTCRというのは、2017年まで行われていた『スーパー2000』というFIA規定によるWTCCの後継となるシリーズで、現時点におけるツーリングカー・レースの世界最高峰のカテゴリーです。1ラウンド3レース、計30戦でチャンピオンシップが争われます。WTCCと同じくWTCRもFIAの『TCR』規定によって細かくレギュレーションが定められていて、全長4,200mm以上、全幅1,950mm以下の4ドアか5ドアの前輪駆動車、エンジンは2,000cc以下の量産型4気筒シングル・ターボ、サスペンションは量産型のレイアウト/設計を維持、車重はレース用ギア・ボックスを使用する場合にはドライバー込みで1,265kg以上などなど、ベース車両に対しての改造できる範囲が決められています。ジュリエッタはまさにうってつけ、というわけなのです。

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そしてもうひとつ特筆すべきなのは、WTCRは自動車メーカーのワークス・チーム(自動車メーカーが自己資金で運営するレーシングチーム)およびセミ・ワークス・チーム(ワークス・チーム用のマシンやドライバーを供与されたレーシングチーム)の参戦は規定で禁じられており、プライベート・チーム(自動車メーカーではない企業が運営する独立系レーシングチーム。プライベーターともいう)のみによって争われる、ということ。なので、このレースへの参戦は、アルファ ロメオの正式なレース活動ではありません。イタリア本国でアルファ ロメオやアバルトと非常にいい関係にあるレース・コンストラクター兼コンプリートカー・メーカーの『ロメオ・フェラーリス』の運営による『チーム・ミュルザンヌ』としてのチャレンジです。マシンはロメオ・フェラーリスが市販のジュリエッタをベースにレーシングカーへと仕立て上げたもので、規定の範囲内で車幅とトレッドを拡大したほかエアロダイナミクスの部分も競技向けに改良し、エンジンはジュリエッタ ヴェローチェの『1750』こと1,742cc+ターボを340ps/6,800rpm、440Nm/3,500rpmまでチューンナップして搭載しています。

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そのジュリエッタが好成績を収めたのは、10月の27日と28日に決勝が行われた第9ラウンド、第25〜27戦の中の1レース。日本のクルマ好きであれば誰もが知っている、鈴鹿サーキットでの勝利でした。表彰台の頂点に立ったのは、2010年から2016年までF1直下のカテゴリーとして開催されていたオートGPのチャンピオン経験を持つ、ケヴィン・チェッコンというイタリアの若手ドライバーでした。チェッコン選手は25戦で優勝、第26戦で6位、第27戦で3位という結果。しかも第27戦はブッチギリでゴールしたのですが、スターティング・グリッドでのクルマの停止場所をミスしたことが違反とされ、5秒加算のペナルティを課せられての3位。第9ラウンドこと日本ラウンドでは、ジュリエッタが圧倒的な強さを見せたのです。そこに至るまではBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)に苦しめられ、本領を発揮できないような側面もありましたが、ようやく本来の速さと強さを見せることができたのです。

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ドライバーのチェッコン選手、それにマシンを製作したロメオ・フェラーリスの代表でありこのチーム・ミュルザンヌのオーナーでもあるマリオ・フェラーリス氏から、コメントをいただきました。まずはチェッコン選手から。

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「世界的にもハイ・レベルなWTCRで、アルファ ロメオが勝つことができて、本当によかったです。僕自身にとっても、このマシンを製作したロメオ・フェラーリスにとっても、アルファ ロメオにとっても、本当によかった。このジュリエッタはエンジンが350ps近くまでチューンナップされていて、ストレートも速いし、コーナーも特に加速を続けながら曲がっていくような高速コーナーがとっても速い。それに路面に食いつくみたいに安定しているので、とってもドライブしやすいし、コントロールしやすいんです。イタリア人ドライバーとして、イタリアのチームが作ったイタリアのクルマで勝てたことは、とても誇らしいですよ」

続いて、マリオ・フェラーリス氏。

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「ジュリエッタでこのレースに出場してるのは、アルファ ロメオがイタリアのブランドであることが一番の理由ですよ。私自身もアルファ ロメオがとても好きで、こうしたレースから長い期間離れていたのが寂しいと感じていたところもありました。私達はアルファ ロメオで勝ちたいと思ってずっと地道にやってきたので、今回の勝利はとにかく嬉しいですね」

我々のような一般のドライバーはレーシング・ジュリエッタをドライブすることは叶わないので、フェラーリス氏には開発者としての立場から、ベースとなった市販のジュリエッタについても少し語っていただきました。

「ベースになるクルマが優れていないと、レーシングカーにしても速さや強さを発揮できないんです。色々と調べたり研究したりしてみて、ジュリエッタは色々な面でレースに向いていると思えましたし、もちろんレースごとにコースやコンディションに合わせて上手く調整する必要はあるけど、実際にTCRのレースに通用する性能を発揮できるクルマにするのも、それほど難しいことではありませんでした。私は歴代のアルファ ロメオも知っていますし、ステルヴィオもジュリアも素晴らしいと思いますけど、このジュリエッタもそれまでの市販モデルから大きな前進を果たしているクルマだと思いますよ」

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おっしゃるとおり、こうした市販車ベースのレーシングカーの場合には、ベースとなる車両のクルマとしての基本的な資質がとても重要です。いかにモディファイが認められているとはいえど、もともと持っている基本的な物理特性などを激変させることはできないからです。WTCRでの勝利はジュリエッタのスポーツ性の高さの証明であり、フェラーリス氏の言葉はその裏付け、というわけですね。

ジュリエッタのオーナーさんやこれからジュリエッタに乗りたいと考えている人達にとって、とても素晴らしいお話ではありますが、ちょうどジュリエッタに関して3つニュースがあるので、お伝えしておこうと思います。

一つ目は、わが国に導入されるジュリエッタが、新たに『Alfa Romeo Giulietta Veloce 1750 TBI(アルファ ロメオ ジュリエッタ ヴェローチェ 1750 TBI)』に1本化されたこと。これまでもシリーズ最強だった240PS/340Nmを発揮する直列4気筒1742cc+ターボエンジンを搭載する、最もスポーティなジュリエッタです。レザーシートを標準で備えていて、価格は399万円と従来よりもかなりお買い得な設定とされています。

二つ目は、ジュリエッタにモータースポーツの薫り漂う限定モデルが設定されたこと。その名は『Alfa Romeo Giulietta Veloce Carbon(アルファ ロメオ ジュリエッタ ヴェローチェ カーボン)』です。その名のとおり、ヴェローチェ1750 TBIをベースにして、フロントグリル、ドアミラーハウジング、サイドスカートをカーボン仕上げとし、ホイールをシルバーの専用品としたモデル。ボディカラーはアルファ ロメオブラックとミザーノブルー(メタリック)の2色が用意され、インテリアはどちらもレッドという設定。両カラーとも50台が用意され、価格は419万円です。

0111_mondo_wtcr_12 WTCR鈴鹿でアルファ ロメオ ジュリエッタが優勝!ジュリエッタのスポーツ性の高さに迫る。▲Alfa Romeo Giulietta Veloce Carbon(写真協力:FCAジャパン株式会社)

そして、三つ目。今回紹介したジュリエッタのTCRマシン、日本のサーキットを走ることになりそうなのです。実は2019年から、WTCRの下部カテゴリー的な国内戦、『TCRジャパン・シリーズ』が開催されることになっていて、そのシリーズにジュリエッタで参戦する方向で動いているチームがあるようです(現時点では正式発表となっていないため、皆さんにお伝えすることはできないのですが)。お知らせできる段階になったら、またあらためて皆さんにもお伝えしたいと思います。どうかお楽しみに!


Text:嶋田 智之
協力:ROMEO FERRARIS JAPAN/Mie Ishi/Kenji Yokota

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