Passionista 2014.11.21

Alfa Romeoで行くロングクルージングの醍醐味

アルファ ロメオの歴史は、スポーツカーとグランツーリズモの歴史である。実際、アルファ ロメオの歴史をひもとくと、そう言い切っても過言ではない証拠がたくさんある。そもそも、グランツーリズモという言葉は元々、大陸を走るグランドツアラーの意味から来ているが、1930年代にはアルファ ロメオが車名に使いはじめている。筆者の乏しい知識からすると、それ以前に「グランツーリズモ」と車名に冠した自動車メーカーを知らない。

もちろん、第二次世界大戦以前には星の数ほどの自動車メーカーがあって、丈夫なルーフ付きボディの多くがベルリン製であったことからサルーンを「ベルリーナ」と呼んだり、グランドツアラーのことを「グランツーリズモ」と呼ぶ風習はあったし、誰かがそれを車名にしたかもしれない。が、少なくとも、現存する自動車メーカーでグランツーリズモの歴史を長年に渡って紡いできたのが、アルファ ロメオの特徴だとは言い切れる。

実際、アルファ ロメオは「グランツーリズモ」、あるいは「GT」という車名のクルマをたくさん作ってきた。アルファ ロメオと社名を改めたあたりからタルガ・フローリオで6連勝を上げるなど、レースシーンを席巻すると同時に、名機として名高い「1750 6C(イタリア語で「6気筒」を意味する)」をベースにした高性能の乗用車「グランツーリズモ」が登場した。まだ道路環境なども未整備であった時代で、かの有名なミシュランガイドも、ちょうどこの頃からレストランの格付けをスタートしている。当初は自動車で旅する人のために安心して泊まる場所や修理できる場所を案内したトラック野郎のためのガイドブックだったものが、この時期にようやく「乗用車でドライブを楽しむ」という行為が発展したのだろう。

ちょうど今年の夏、アメリカ随一のコンクール・デレガンスであるペブルビーチで「6C 1750 グラントゥーリズモ」を目の当たりにする好機を得たが、コンパクトなボディに高性能の心臓部を備えており、大陸を移動するにはこれほど適したグランドツアラーはなかったのではないかと思うほどだ。とてもモダーンなスタイリングを纏いつつ、内装にはすわり心地の良さそうなシートと視認性の高いメーター類が備わり、当時のひどい道路環境であっても、きっとこのクルマでならどこまでも走ってドライブを楽しめただろうと、想像をたくましくしてしまった。

その伝統は、現代に至るまで連綿と受け継がれている。私が所有する1970年代のジュリア・クーペこと、2000GTVもしかりで、初期のグラントゥーリズモから約40年が過ぎた段階でも、「グラントゥーリズモ・ヴェローチェ」の名を戴くのに恥ずかしくない性能を持っている。当時としては高性能なエンジンとそれを受け止めるシャシー性能のバランスの妙は、70年代の時点でもすでに、長年、グラントゥーリズモを作り続けてきただけのことはある。アクセルを踏み込むことで得られる鋭い加速感が応答性の高いステアリング・フィールと相まって、現代の交通環境で走らせてもまったく引けをとらない。

さらに、40年の時が経ち、現代のアルファ ロメオに目を向けると、「4C」のようなスポーツカーの伝統を紡ぐモデルが存在するのと同時に、「ジュリエッタ」はもちろん、コンパクトな「MiTo」にも、グラントゥーリズモの歴史が受け継がれている。ボディサイズの割にたっぷりとしたシートが備わっており、腰を下ろすと吸い付くような掛け心地だ。ソファのようにむやみに柔らかいのではなく、ほどよく硬いシートにおしりがしっかりと収まって、背骨の芯から支えるような感触でサポート感が高い。そもそも普通に考えたら、「MiTo」のサイズのコンパクトハッチで遠出なんて悪夢だが、このシートのお陰で長い距離を乗っても疲れが少ない。「ジュリエッタ」ともなると、ホイールベースが長くなり、走行姿勢が安定することもあって、さらに快適なドライブを楽しめる。もちろん、ただ快適なわけではなく、しゃきっとした筋の通った乗り味のクルマを走らせる楽しさがあるわけで、レースシーンで培ったスポーティな走りをグランドツアラーに落とし込んだ乗り味こそがアルファ ロメオのグラントゥーリズモの伝統なのだ。…と、少しばかりカッコつけてみたけれど、簡単に言ってしまえば、「運転して楽しいクルマで、長距離ドライブにも耐える快適なクルマ」であってこそ、アルファ ロメオなのだ。

kawabata1 Alfa Romeoで行くロングクルージングの醍醐味
川端由美(かわばたゆみ)

大学院で工学を修めた後、エンジニアとしてメーカーに就職するも、子供のころからのクルマ好きが高じて自動車雑誌の編集部員に。現在は、フリーランスの自動車ジャーナリストとして、自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性としての目線を活かしたリポートを展開する。自動車雑誌だけでなく、経済誌、ライフスタイル誌など幅広い媒体に寄稿する。
大学時代にフィアットアウトビアンキA112に乗り、二玄社『NAVI』編集部に入ってまもなくGTV(V6モデル)を購入。現在所有する1974年型アルファ ロメオ 2000GTVとは、かれこれ12年ものつきあいになる。

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