Passionista 2019.06.26

アルファ ロメオ ジュリアに宿る『エレガンス、スポーティ』という二つの個性

2019年7月に、より精悍な印象とともにリニューアルされるジュリア ヴェローチェ(Giulia Veloce)が体現するスポーティネス。そして、アルファ ロメオの徹底した美意識と哲学が注ぎ込まれたジュリア スーパー(Giulia Super)のエレガンス。この2台には、どのような個性と魅力が潜んでいるのか。今回、ハイクオリティメンズ・ラグジュアリー・マガジン「THE RAKE JAPAN」編集長の松尾健太郎氏にご寄稿いただいた。イタリアンファッションに精通する気鋭の編集者が、アルファ ロメオ愛を交えながら、独自の視点から紐解く。

イタリア人のお洒落とは、派手なものなのか?

もし“イタリア流のお洒落”というものを、なんとなく「派手で、ギラギラした感じ」と思っている方がいたら、それは間違っている。イギリスフランスなど、ヨーロッパでもファッションを売り物にしている国は多いが、イタリア人のお洒落は、ぱっと見、派手というより、むしろ地味とすら言えるものだ。
私がまだ駆け出しの頃、ドライビング・シューズで有名なTod’s(トッズ)の会長にして希代の洒落者、ディエゴ・デッラ・ヴァッレ氏にお会いしたことがある。(彼は前FIAT会長、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏の盟友でもあったので、アルファ ロメオとも縁が深い人物だ)その時、デッラ・ヴァッレ氏と私自身の装いがまったく同じだった。それはネイビーのスーツとタイに、白いシャツ(柄はすべて無地)というものだ。これ以上シンプルなコーディネイトはないだろう。しかし使われている素材は、デッラ・ヴァッレ氏のものほうが数段高級そうで、オーラのような美しい光沢を放っていた。
彼は私の格好を見ると、笑みを浮かべながら「Very Italian !」といった。しかしポケットチーフの入れ方だけが気に入らなかったらしく、やおら私の胸からチーフを引き抜くと、「これは私の祖父から教わったやり方なんだ。君にも教えてあげよう」といいつつ、慣れた手付きでチーフに3つの山を作ると、再び私の胸ポケットに差し込んだ。「これでテントウムシが止まるかも知れない・・」(イタリアではテントウムシは幸運を運んでくると言われている)

虚飾ではなく、ディテールにこだわること

ここからわかることが3つある。イタリア人というものは、派手な虚飾を好まないこと、上質な素材を好むこと、そしてディテールにこだわるということだ。この3つは、アルファ ロメオのクルマ作りに、そのまま当てはまると思う。
Alfa Romeo Giulia(アルファ ロメオ ジュリア)』のエクステリア・デザインは流麗かつシンプルなものだ。今流行りのロボットアニメのように大げさで幼稚なデザインは採用せず、これ見よがしなメッキパーツも使われていない。大人のための意匠なのだ。アルファ ロメオのエクステリア チーフデザイナー、アレッサンドロ・マッコリーニ氏によると、「イタリアン・デザインとは形態と機能を統合させ、これに“美”を加えたもの」であり、「ジュリアは歴代のアルファ ロメオ、特に156にインスパイアされた」との言葉通り、ダイナミックなフロントまわりや盾形グリルを残しつつ、ボディの空力係数cd値はわずか0.23に抑えられている。往年のファンには嬉しく、性能的にも格段にアップしているのだ。

GIULIA_SUPER_RED アルファ ロメオ ジュリアに宿る『エレガンス、スポーティ』という二つの個性
Alfa Romeo GIULIA SUPER(アルファ ロメオ ジュリア スーパー)

ジュリア スーパーに継承された“エレガンスの哲学”

ジュリア スーパーにあらためて乗車し、そのインテリアに目を移すと、ウッドやレザーがふんだんに使われているが、その質感はマットである。天然素材はマットなほうが難しい。素材の善し悪しがそのまま出てしまうからだ。これは使われているマテリアルに自信があるからこそできる巧手だ。不自然にツヤツヤな木目がプリントされていたり、プラスチックなのにピカピカのメッキが施されていたりするのは、偽物のブランド・ロゴの入ったバッグを持っているのと同じだ。表面を嘘で固めると、ますます虚しい気持ちが漂ってしまう。このことをイタリア人はよく知っているのだ。

その代り、ディテールには、とことんこだわっている。例えば室内ドアのノブやシフトセレクター、そして一際大きなパドルシフトなどは、まるで現代アートのオブジェのようなシェイプをしている。欧州では昔は、彫刻は手で触って鑑賞するものだったというから、直接タッチする場所については、執拗なまでに形を追求するのが伝統なのだろう。

これぞまさにエレガンス。イタリア流のこだわりを貫き、その徹底した美意識を惜しみなく注ぎ込んできたことは、アルファ ロメオの歴代の名車たちが証明している。このブランド哲学は、ジュリア スーパーにも確実に継承されている。

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GIULIA SUPER

ジュリア ヴェローチェの圧倒的なスポーティネス

素材や造形によりエレガンスを追求する“スーパー”の魅力にいたく感激した一方で、今回280psを誇るスポーティ・グレードの“ヴェローチェ”がリニューアルし、更にディテールを磨き抜いたという。トップグレードである“クアドリフォリオ”と同じ、存在感のあるガンメタリック調の5ホールアルミホイールが選ばれ、従来よりもインチアップされた。このホイール、アルファ ロメオ伝統の「大梅」と呼ばれるデザインが施されたもので、ファンにとってはたまらないポイントでもある。この精悍な足元に呼応するよう、エレガント派の“スーパー”とは微妙に形状が異なるトライローブ(三つ葉)なるフロントグリルとの組み合わせで、より力強さを感じさせる。その印象は“スーパー”と比較しても、圧倒的にスポーティ。一度目にすれば、ゾクゾクするような「走りの予感」を感じさせずにはいられない。

1906_alfagiulia__1172_low-1 アルファ ロメオ ジュリアに宿る『エレガンス、スポーティ』という二つの個性
Alfa Romeo GIULIA VELOCE(アルファ ロメオ ジュリア ヴェローチェ)

しかし同時に、アルファ ロメオらしいスタイリッシュさも決して失われていない。そうした姿勢は、インストルメントパネルやドアパネルにレザーを新たに採用し、上質感を増した室内空間にも如実に現れている。
そのエクステリアもインテリアも、すべてはあくまでシックにまとめられ、大人のためのスポーティネスを体現している。こうした“ヴェローチェ”の絶妙なバランス感覚もまたアルファ ロメオ流だ。同じジュリアだと言うのに、ここまでグレードごとに異なる「美学と個性」を宿らせている点には、ほとほと感心させられる。

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NEW GIULIA VELOCE

装いに例えるなら、スーツではなくややタイトなブレザーあたりか?(決してスポーティなジャージ素材のそれではない)もちろんポケットチーフの入れ方には、相当なこだわりがある。
アルファ ロメオ ジュリアは、あなたに幸運を運ぶ一台となるかもしれない。

PROFILE

松尾健太郎(まつお・けんたろう)

1965年、東京生まれ。雑誌編集者。
インターナショナル・ラグジュアリー・メディア「THE RAKE JAPAN(ザ・レイク・ジャパン)」編集長。
男子専科、ワールドフォトプレスを経て、1992年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。2005年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。公式ブログをザ・レイク・ジャパンのホームページ内に持ち、ベスト・ドレッサーたちを紹介している。

Text:松尾健太郎

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