Passionista 2019.09.09

アルファ ロメオ ステルヴィオでイタリア・ステルヴィオ峠を駆ける!モータージャーナリスト・山田 弘樹氏による試乗インプレッション。

旅の目的は、イタリアにあるアルプスの峠道“ステルヴィオ峠”をステルヴィオで走ること。自動車ジャーナリスト 山田 弘樹氏によるステルヴィオ試乗インプレッションをお届けする。

アルファ ロメオ110年の歴史。その余韻に浸りながら“ムゼオ アルファ ロメオ”(アルファ ロメオ博物館)を後にすると、最新モデルである“ジュリア”と“ステルヴィオ”が待ち構えていた。イタリアの乾いた風と、太陽の強い光が気持ちよかった。

旅の目的は、とてもシンプルだった。
Alfa Romeo STELVIO(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』で、その名の由来となったアルプスの峠道「“Passo dello STERVIO(パッソ・デッロ・ステルヴィオ)”を走ろう!」というのだ。
とってもシンプル。だけれど心が躍る。とびきりうまいマルゲリータを頬張るような旅である。

アルファ ロメオ初のSUV、ステルヴィオの魅力

ところでステルヴィオは、アルファ ロメオがその長い歴史において、はじめて作ったSUVだということをご存じだろうか? しかしだからこそ、初めてステアリングを握ったとき、その出来映えには驚かされた。なぜならそこには、アルファ ロメオの魅力がぎゅっと凝縮されていたからである。

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ステルヴィオの魅力とは、ずばり走りだ。
先んじて’16年に登場したスポーツセダン、『Alfa Romeo GIULIA(アルファ ロメオ ジュリア)』。そのコンポーネンツをそのまま踏襲したことこそが、SUVとは思えない運動性能の高さを実現した。
特にアルファ ロメオがその復活を賭け、巨額の投資を行って開発した「ジョルジオ・プラットフォーム」の功績は大きい。そのガッシリとしたモノコックをベースに、常用車として最もバランスの取れた運動性能を発揮する、フロントエンジン・リアドライブの駆動方式を実現したからである。この復活は、アルファ ロメオにとっても長年の悲願だった。
そしてアルファ ロメオは、さらにこのFRレイアウトをベースに、トルクスプリット式の4WDシステムをステルヴィオに与えた。だからこそステルヴィオは背の高いSUVにして、スポーツカー顔負けのハンドリングと、優れた安定性の両方を獲得したのである。

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その高いアイポイントを駆使してミラノの街中を駆け巡り、郊外では要所要所に設けられたランナバウトを颯爽とクリアする。
上限が130km/hと、日本より速度レンジが高いイタリアの高速道路“アウトストラーダ”。ここではドライバーの腕前と、クルマのステイタスが試される。イタリア人はみんな、クルマが大好きなのだろう。目立つクルマが来ると自然と緩やかなカーチェイスが始まり、その中でときには大胆に、ときにはスマートに、われ先と急ぐのである。

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そんな中にあってもステルヴィオは、見事にそのステイタスを保ってくれる。
今回試乗したのは「2.2TURBO DISEL Q4」。2.2リッターの排気量を持つ直噴ディーゼルターボは、8速ATのオーバードライブギアを巧みに使いながら、極めて静かな高速クルージングを可能としてくれるのだ。
そしてひとたび右足に力を込めれば、470Nmのトルクをグッと盛り上げて、ダッシュを決める。1750rpmという低い回転から最大トルクを発揮するその特性から、敢えてシフトダウンをする必要はない。しかしレスポンス良く反応する8速ATを大ぶりなパドルで操作する行為は極めて楽しく、これをレブリミットまでグーッと引っ張り上げてから次のギアへとつないで行けば、アッという間に周囲を置き去りしてしまう。

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緩やかに曲がるカーブは、この速度域だと立派なコーナーになる。ここでもステルヴィオのサスペンションは、路面の起伏をいなしながら、しなやかにその巨体を支えきる。その曲がりやすさは何度乗っても新鮮だが、呼吸が合ってくるとこれがピタリとカラダになじんでくる。

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ステルヴィオでステルヴィオ峠を走る

ミラノから約300km。高速道路を降りて、クルマ一台が通れるのがやっとな山道を延々走り続けると、目の前が大きく開けた。
麓の街には至る所に“PASSO DELLO STELVIO”の看板やのぼりが掲げられ、「アルファ ロメオの国際試乗会が開かれているのか?」と一瞬勘違いしてしまうほどだった。
そう、ボクたちは遂にアルファ ロメオ ステルヴィオで、ステルヴィオ峠に着いたのである。

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はやる気持ちも手伝ってだろう、そこからステルヴィオは、水を得た魚のごとく山道を駆け上った。
狭くて暗いトンネルをくぐり抜ける度に、その景色はストイックになって行く。断崖は激しさを増し、景色は徐々に灰色になり、目の前の山々が迫ってくる。窓を開けると、乾いた空気が少し冷たかった。

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目の前に現れた峠道は、連続するつづら折りだった。
曲率の高いヘアピンカーブをクルッと回ると長い登り坂が現れ、再びヘアピンカーブをクルッと回って、加速を繰り返す。
正直ルートは単調で、ステルヴィオの実力をもってすれば難なくこれを走りきることができた。ハンドルを切ればアンダーステア知らずで曲がり、アクセルを踏み込めばディーゼルターボの分厚いトルクと、4WDのトラクション性能で加速する。これを嬉々として繰り返すうち、そのつづら折りはすぐに終わってしまった。

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しかし、そこから見た景色は目が覚めるほど素晴らしかった。
今まで登ってきた山道が、まるで稲妻のように山肌を走っている。カタログで見たのと同じ景色だ!
そもそもこのジグザグ道は、アルプスと暮らす人々の生活道路なのだろう。断崖を切り開くためには山道を直線とカーブでつなぐ形が最も効率的で、登り坂こそ厳しいが道そのものは安全になる仕組みだ。
だからステルヴィオ峠は、「ジロ・デ・イタリア」をはじめとした様々な自転車競技の舞台となったのだろう。折しもこの日はバカンスシーズンまっただ中だったようで、峠を登り切った頂は、ヨーロッパ中から集まったサイクリストたちで賑わっていた。

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ステルヴィオのコーナリングがダンスだとすれば、ジュリアの走りはワルツ

もちろんアルプスの山道は、つづら折りだけではない。これをやり過ごすと広く道が開け、牧草地の合間には大小様々な素晴らしいカーブがいくつも現れた。
ここで最高のハンドリングを見せてくれたのは、愛しの『Alfa Romeo Giulia(アルファ ロメオ ジュリア)』だった。

Alfa-Romeo-Giulia-33 アルファ ロメオ ステルヴィオでイタリア・ステルヴィオ峠を駆ける!モータージャーナリスト・山田 弘樹氏による試乗インプレッション。
※写真はイメージです

試乗したのは、2リッター直噴ガソリンエンジンを搭載する、最もベーシックなモデル。パワーはわずかに200PSしかないグレードだが、その身のこなしは華麗という他なかった。
ステルヴィオのコーナリングがダンスだとすれば、ジュリアの走りはワルツとでも言えばよいのだろうか? 実用性を十分にとった、ジャストサイズのDセグメントボディ。ここにコンパクトな直列4気筒エンジンを搭載したシャシーバランスは、歴代随一といえる素晴らしさだ。
ステルヴィオがグイッ! と切り込んで車体を曲げるとしたら、ジュリアはわずかな舵角でヒラッとカーブを曲がりきる。低い重心と、素晴らしいサスペンションセッティング。これを12:1のクイックなギアレシオを持つ小径ステアリングで、タクトを振るように操る。するとジュリアは最小限の舵角で、狙い通りのカーブをトレースして行く。

最初はこの走りに没頭し、果てはそのしなやかな乗り味に安らぎすら覚える。カーブの遠心力をアクセルでバランスさせ、後輪から車体を押し進めて行く感覚は、これこそが甦ったアルファ ロメオの走りだと太鼓判を押せる。ドイツ勢ともイギリス勢とも違う。大人びた、しかし熱い走りだ。

ステルヴィオがカジュアルなイタリアンジャケットだとすれば、ジュリアはテーラーメイドのスーツ。ステルヴィオがスポーティなクロノグラフだとすれば、ジュリアはシンプルで美しいドレスウォッチとでも言えばよいか。コンポーネンツの多くを共用しながらも、その世界観は上手に棲み分けられている。
いまの流行りを考えれば断然SUVのステルヴィオがお勧めだが、私は古風な人間なので、自分だったら今一度、フォーマルなセダンであるジュリアを選びたいと感じた。

Alfa-Romeo-Giulia-19 アルファ ロメオ ステルヴィオでイタリア・ステルヴィオ峠を駆ける!モータージャーナリスト・山田 弘樹氏による試乗インプレッション。
※写真はイメージです

ステルヴィオ峠をステルヴィオで走る。
そんな冗談のような、しかし素晴らしい体験を通して得られたのは、こうした大自然が、ヨーロッパにおける数々の名作たちを作りあげてきたという実感だった。アルプスの山々を駆け巡って、その神髄の一端に、少しだけ触れられた気がした。
やはり道が、クルマを作るのである。

PROFILE

山田 弘樹(やまだ・こうき)

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、ツーリングカーでは「LOTUS CUP Japan」やスーパー耐久、フォーミュラでは「Formula SUZUKI隼」やスーパーFJに参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。また、並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

Text:山田 弘樹

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