Vision 2019.06.03

世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

GWの定番イベントへと成長した世界最大級のクラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』。大盛況に終わった当日の様子とともに、今回初参加の世界的に注目されるイタリア出身の若手ピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴ氏のインタビューをお届けする。

“万人が聞くべき音楽”を気軽に楽しめる音楽祭

フランスで生まれた世界最大級のクラシック音楽祭、ラ・フォル・ジュルネが今年も5月3日(金・祝)~5日(日・祝)に東京国際フォーラムで開催された。2005年の初上陸から15回目となる今回は、フランス語で“ハチャメチャな日”という意味を持つイベント名の浸透をうかがわせるように、これまで以上の華やかさと賑やかさに包まれていた。

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0600_mondo_lfj_tokyo_2019_08 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

――という説明だけでは、重厚で荘厳なイメージの強いクラシック音楽に“ハチャメチャな賑やかさ”が伴うなどあり得ないと疑う方もいるだろう。まず断っておくべきは、このイベントはクラシックが醸し出すフォーマルさを軽んじる意図など微塵もないということ。目指しているのは、クラシックとの自然でカジュアルな出会いだ。いかにして伝統的な音楽と気軽に触れあえるかについて、ラ・フォル・ジュルネには次のような一定のルールがある。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_018 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い©teamMiura

公演は基本的に45分。料金設定はリーズナブルな1,500円から。さらに複数の会場で同時に演奏会を行い、朝から晩まで多数のプログラムを実施(3日間に及んだ今回の東京での開催は、有料公演だけで6会場/124公演。国内外約2,000人の演奏家が集まった)。
以上のような数字的要素だけでも既存の音楽祭との違いは明らかだが、ラ・フォル・ジュルネが実現させたのは、音楽の展覧会をめぐるような、またはロック・フェスの形式に近いクラシック音楽との触れ合い方だ。アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏は、自身の役割をこう語っている。
「クラシックは万人が聞くべきもの。そんな音楽と触れる機会に恵まれていない多くの人の橋渡し役になりたかった」

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_01 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い©teamMiura

アルファ ロメオもセッションに参加

音楽や芸術を愛する国イタリアで生まれたアルファ ロメオは、クラシックを万人に広めたいというルネ・マルタン氏の考えに共感。『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』の会場内に、昨年に引き続き今年も3台のモデルを展示した。中でも4月6日(土)に発売されたばかりの『Alfa Romeo Stelvio 2.2 Turbo DieselQ4(ステルヴィオ・2.2ターボ・ディーゼル Q4)』の注目度はひときわ高かった。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_03 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

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0600_mondo_lfj_tokyo_2019_012 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

大ホールのコンサートから、食事も楽しめる地上広場のライブまで多種多様。開催期間中のチケットがあれば無料で楽しめるホールEキオスクステージでは、子どもたちが参加できるワークショップや演奏会を実施。それゆえ5月最初の週末の東京国際フォーラムは、どこにいても音楽が響いていた。

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0600_mondo_lfj_tokyo_2019_06 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

この環境を体験すれば、音楽にジャンルなど不要という事実と、何よりマルタン氏が感じた“万人が聞くべき”という衝動を実感することができるだろう。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_09 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

イタリア出身のピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴ氏 インタビュー
「心を開いて素直に聞くのが大事」

もしクラシックが未知の領域であるなら、道を指し示してくれる案内人がいるといい。今回出会ったのは、イタリア生まれのアレクサンダー・ガジェヴ氏。1994年生まれの若きピアニストは、10歳で初リサイタルを行った後、18歳の年にチェゼーナのブルーノ・マデルナ音楽院を首席で卒業。20歳のときには第9回浜松国際ピアノコンクールで優勝。同時に聴衆賞を受賞した、世界的に注目される新進気鋭の演奏家だ。少しでもクラシックへの理解を深めるため、彼の生い立ちやピアノに向き合う考え方を聞いた。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_013 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

――ピアノを始めたきっかけは?
初めてピアノに触れたのは4~5歳の頃でした。両親が音楽家だったので、ごく自然な流れだったと思います。

――英才教育のようなものは受けましたか?
ピアノに関して両親から厳しい指導を受けたことはありません。それに、高校までは普通科でした。そこで学んだ多くの事柄が、僕に限って言えばピアニストになるために必要不可欠なものだったのです。

――ということは、プロのピアニストになれたのは天賦の才ですか?
自分ではよくわかりません。いくつもの賞を獲れたからこそ今の場所に立っていますが、やはり自然な流れという他にないでしょう。ただ、初めて触れたときからピアノが好きになれたことと、ステージで演奏して他の誰かと音楽のよろこびをシェアする楽しさはずっと変わっていません。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_019 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会いカワイコンサート2019より

――他の音楽ジャンルを好きになったことは?
クラシック以外に興味を持ったことはなかったですね。けれど16歳のとき、キース・ジャレット(アメリカ合衆国出身のジャズ&クラシックピアニスト/作曲家)のファンになり、ジャズにも関心を寄せました。彼はよく日本のお客様の素晴らしさを語っていましたが、僕も同じ気持ちになりました。

――それはどういうものですか?
浜松のコンクールで優勝できた縁もあり、今回で9度目の来日になりますが、日本のお客様は集中力が高く、またサイン会などで感想を話してくれたり、演奏家にとても親切です。それから、日本には音響が素晴らしいホールが多いのも好きなところです。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_016 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

――ラ・フォル・ジュルネの参加は初めてですか?
はい。エキサイティングなイベントですね。同時に複数のホールで演奏が行われるというのは、僕ら演奏家にも様々な出会いを提供してくれます。

――クラシックとの出会い方に一石を投じたのがラ・フォル・ジュルネの功績と言えますが、クラシックはどのように聞いたらよいと思いますか?
まず言えるのは、クラシックは一部のエリートの音楽ではないということ。しかし、ミラノにあるスカラ座の初演の夜などは、集まる人々が権威を誇示する場になっているという現実はあります。それはそれとして、モーツァルトであれショパンであれ、何か特別な準備などすることなく、心を開いて素直に聞くのが大事なのではないでしょうか。特に小さな子どもには音楽に触れる機会が増えることを望みます。ラ・フォル・ジュルネがその役目を担うなら、僕もクラシック音楽の普及に貢献したいです。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_02 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い©teamMiura

――ピアニストとして心掛けていることは?
ピアニストには多岐に渡る才能が求められます。テクニック、耳の良さ、コミュニケーション能力、曲に対する知識、ステージでのカリスマ性など、多くの要素を常に探求しなければなりません。そのすべての達成は不可能に近いですが、可能な限り高いレベルを維持できるよう努力すること、でしょうか。

――ところでアルファ ロメオにはどんなイメージを持っていますか?
エレガントでグレート。80年代の古いアルファ ロメオをドライブしたことがありますが、とても楽しかった。最新モデルもいつか手に入れたいです。

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――アルファ ロメオを運転しながらどんな音楽を聞きたいですか?
東京なら、渋滞の中でも理知的で冷静な気分になれるヘンデル。イタリアならキース・ジャレット。日本を思い出せるから。

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_014 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

――最後に将来をたずねます。仮に10年後はどうなっていたいですか?
コンサート活動は続けているでしょう。家族はまだ持っていないかもしれませんね。生涯ピアノを弾き続ける上では人に教えることもやりたいです。誰かに教えることで自分が学べることも多いから。そう、10年で区切るなら、規模は小さくてもラ・フォル・ジュルネのような音楽祭を主催してみたいです。より多くの人たちと音楽をシェアする一つの形として。そのときにアルファ ロメオが協賛してくれたらとてもハッピーでしょうね。

自身の音楽性を“理性と本能の同居”と語ったピアニストは、話を聞いた翌日の17時から始まるコンサートに臨んだ。5,000人を収容するホールA。オーケストラを従える形で用意されたピアノに着いたガジェヴ氏は、時に優しく、時に強く、全身で音楽を織り上げるような演奏を披露した。心を奪われるとはこういうことを言うのだろう。短いステージではあったが一瞬でファンになった。同時に、彼を通じてもっとクラシックを知りたいと思った。
そんな出会いをもたらしてくれるのがラ・フォル・ジュルネだ。次回こそこのイベントを体験すれば、アルフィスタのプレイリストが大きく様変わりするかもしれない

0600_mondo_lfj_tokyo_2019_017 世界最大級の音楽祭『ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019』がもたらす、クラシックとのカジュアルで素敵な出会い

Text:田村 十七男
Photos:加藤 潤

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